Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した!   作:何処にでもある

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 「エラッタ」の場合、転生要素は「ディストリカ」が持っています。
 放置するほど強くなる。進行の進み具合でより強敵になる仕組みです。




転生は放置要素があるならほぼある

 

 

『‭─‬‭─‬と、いうのがお前を迎えるまでの経緯だ』

「生霊ってなんじゃ?」

[入魂した作品を黄金にしてただろ? アレで使った分だ]

「つまり…う◯こか?」

[その例えで言うとクソ(残り滓)はお前の方だな]

『生霊は糞ではないな…』

 

 悪魔にう◯こ認定されつつ、チャラ男の言うことの半分も理解せずに取り敢えず頷いた。

 なんだかよく分からなかったけど、なんだかよく分からなかったな!

 取り敢えずコレからはチャラ男の下で暮らすらしい。

 そうか、長居も悪いし3泊したら現代か未来に行こう。それが良い塩梅だろ。

 

「取り敢えず分かったのじゃ。要はあれじゃろ? スーザンとクイーンが問題児だったという話じゃろ?」

『……まあ大体合ってるな。牢屋に入れていたにも関わらず脱獄し、爆弾で莫大な被害を出しかねない危険を犯した。その2人は特に注意するように覚えておけ』

「ほーん、で、護衛とかおるのか?」

『それならば私が…メイドの「アリア」です。今後とも末長く宜しくお願いします……()()()

 

 なにやら随分と不服そうな顔のメイドが出て来た。

 緑の髪と黄色い眼に白い肌だが、ひび割れみたいな黒い線や複眼だったりする。

 多分怪物が無理に人型を取り繕ってると思うが……元はなんだろうな?

 

『我なりに考えて信用に足ると判断した者だ。常識から少し外れてはいるが…其処は多めに見て欲しい。物知りでヤンチャな同級生と考えよ』

『そういう訳です。見ての通り人外の者ですので、人の世は又聞き程度。あまり情報では頼らずにして下さいませ』

「うむ、よろしくの!…で、何故に姫呼びじゃ?」

『私にとっての女王様はお一人ですが、立場もありますから妥協案で姫としました。不服でしょうか』

「問題ない! 妾はもう王ではないし全然構わん! 好きに呼ぶがよいわ!」

 

 女王より女の子らしい呼び名になってしまったが、今更な所があるのでまあ良いだろう。

 俺的には大した違いはない。どっちも女の文字が入ってる訳だしな。

 

「しかし…騒動とやらの話を聞くに、終わったのは昨日の今日ではないか。そんな直ぐに票が集まるものか?」

『していない。…していないが、この家が皆にバレたからな。我だけが道を知っている時ならいざ知らず、こうなってはいっそ我の下で過ごす方がいい』

「そうか、それならば妾は今を楽しむとしよう! 久々に観るものが多くて探検したかったんじゃ!」

『姫様、その前にやるべき事があります』

「…のじゃ?」

 

 と言う訳で俺は飛行船を歩き回ろうとして、そのままアリアにヒョイと抱えられて連行される事となった。

 おいチャラ男、見送るな。助けろよ。おーい?

 

『先ずはテストの時間です。入国審査を終えましょう』

「なんじゃあその審査とは。妾は箱庭しか作っておらぬぞ!」

『今回の件でこの箱庭に「他国」の概念が生まれる事がアルカ様から示唆された為の呼称です。中身は移民の移住可否審査ですのでご理解を』

「のじゃあ…」

 

 そして始まるテストの時間…!

 ここで問題なのは、この世界の文字が日本語を弄った物だと言うこと。

 読めはするが書けない。読みも微妙に忘れてて半分も理解出来ない。

 数字と計算式記号は同じなので其処は問題ないが、地味に割り算で詰まるし分数を理解出来なかった。九九を覚えていたのは幸いだったけどな。

 え? 微分積分二次関数? 名前なら聞いた事あるよ! 因数分解はやり方も覚えてたけどね。

 

『ダメダメですね。仮にも姫がこのザマで良いのですか?』

「のじゃあ…記憶は大体黄金に変えたし、この30年は農民やってたから普通に忘れたのじゃ…」

『ふむ…では次、一般常識と倫理観、寓話世界への理解度のテストです』

「顔が梅干しになるのじゃ……」

 

 渋顔になりつつもこの辺りはいい感じに出来た自信がある。

 落とし物は交番で人は殺さない。泣いてる子供が居たら助ける。

 ついでに「募金」や「生命保険」や「小さな政府と大きな政府」の概念も「あなたにとってのいい事とは?」欄に突っ込んだし、「悪いこと」欄には「ひもじさ」と書いた。

 これで高得点確定だぜ! ふぅ…汚名挽回ってところか?

 

『ふむ…テストの結果を伝えます』

「ふふふ…合格じゃろ?」

『不合格です。凄いですね、スーザンや今回暴れた悪役も合格したテストに落ちるなんて』

「ふふふ…ま、引き分けって所じゃな!」

『負けですよ、紛う事なく』

 

 原因は自己主張のし過ぎだとか。舞台の個性豊かな人材から裁定する都合上、社会に従えるかどうかが真っ先に来るらしい。

 それだとモブは顔パスじゃないかと思うんだが、其処は知識や実力、大人しく試験に向き合えるかの足切りに引っかかるらしい。ぶっちゃけ試験中の態度次第だとか。

 

『本来、この試験をやる時はこの結果の是非で生きるか死ぬか決まる状況です。そんな状況で真剣に向き合えない者は生存意思が薄いと見て放っておかれます。ぶっちゃけ実力は二の字ですね。試験官による個人加点も可能ですので』

 

 ……という訳らしい。要は臨機応変に印象で決定するようだ。

 それだと悪人入り放題じゃないか? 入ってたな。この審査終ってるな。

 

『はい。なのでこのテストも私個人の加点を入れて合格です。私が試験官な訳ですからね』

「 忖 度 !」

『スーザンは良くやりました。表向きは実力テストを全面に押し出し、実情は入れる人を息の掛かった試験官が決める……本人は多少入り易くしただけと主張していますが、実態は殆ど悪人ばかりだったみたいですね』

「…其処までして何がしたかったんじゃ?」

『……さあ? 元々奴隷だったので上に反逆したかったんでしょう』

 

 生粋の悪い人も居たものだが、今は捕まって余罪の調査中とのことだ。

 良かった、それなら安心だな! 俺も枕を高くして寝れるぜ!

 

「…ん? それならこのテスト、やらなくとも良かったのではないか?」

『入国の点で見ればそうですが、今から行う勉強の点で見れば大いに意味がありますよ』

「……勉強はやっ!…なのじゃ」

『ごたごた言うな残り滓。さっさと記憶取り戻して私の盟友に戻れ』

「うえぇ…いやじゃー! やりとうない! 盟友ってなんのことじゃー!」

 

 俺は普通に勉強が嫌いだ。前世の受験で散々苦労したからな。

 しかしこのメイドに容赦の二文字は無く、逃げようとする俺は机の上に拘束される事となった。

 

 ジャラ…。

 

 物理的に。

 

「アリアよ、物理的に拘束するのはどういう了見じゃ?」

『私は伸び伸びとした教育なんて悠長な事はしません。ルシファーに任された任をささっと終わらせて詰め込みます』

「任とはなんじゃ、答えよアリア。妾もルシファーじゃからそれじゃと紛らわしいぞ。待て、何故脱がす? やめよ、其処は汚いから本当にやめよ!」

『問題有りません。私は両生なので男役も可能かつ、怪物なので前でも中でも後ろでも種付……田植えは可能です。大丈夫、スーザン曰く鼓動の度に気持ち良いそうですし、実際元気にもなります』

「人の身体で田植え!?」

 

 ダメだコイツ…完全に人外の価値観をしてやがる…早過ぎたんだよ! 異文化交流がさぁ!

 こうなったら情に訴えるしかない…!

 

「それやったら本気で嫌いになるぞ! いいのか!? 妾、其方に本気で失望するぞ!?」

『む……なら妥協して羽のつけ根としましょう。私の種は本来の部位と同じ役目を果たしますから、その毟られた羽の代用として使える筈です。そして最後は全身を()()にしましょう』

「むむむ、本当じゃろうな…信用するぞ? 裏切るでないぞ?」

『盟友が裏切らない限り裏切りませんよ』

「なら心配ないか…」

『ただし、勉強に向き合わなければ裏切ったと看做します』

「なら心配すべきか…」

 

 お前ぇ…不思議そうにコテンと首を傾けてても、可愛いって言ってやらないからな?

 だがセックスの意味は理解した。要は田植えだ。繁殖の言い換えだ。

 それなら別に怖がる必要はないか? リンゴとかの果樹で俺も受粉させてたし、それをやられるだけ…か?

 

『では植えますね。横になって楽にください』

「……その前に他の者に一度やって見せよ。それを見てから判断するのじゃ」

『良いですよ、試しに其処のネズミにやりましょうか』

 

 結果から言おう。

 

 ヂュ⁉︎

 

「うわああぁあ!!? 一瞬で枯れ果てよったあ!? こんなもの誰が受けるかあ!」

『あれ…おかしいわね…この程度なら背中に小さな木を生やすだけな筈…』

「はっ!! そういえば大抵の受粉した草花は直ぐに枯れていた…! つまり、ヤる=死の危険行為ということ!……妾はまだ生きたいから絶対やらんぞ! 絶対にじゃ!」

『……まあ、さっさと詰め込みに移りたいしコレでいいかな』

 

 新たな命を産む=死ぬ。

 

 俺は覚えたぞ。記憶のある俺が何故忌避していたかも理解した!

 死にたくないなら普通そうなるわな。納得したぜ! 仮にやるとしても沢山生きてからだ!

 

 よし、しっかり学んだ事だし勉強はこの辺りでお開きとしようか。

 

『行かせませんよ。そこいらの農民に並ぶのは流石に見過ごせません』

「くっ……拘束されててそもそも歩けぬ……もう好きにせい!」

『なら植えましょう』

「前言は撤回された! 妾は勉学頑張るのじゃ!」

 

 という訳で、俺の悲鳴が響く勉強会はなんとか無事に幕を下ろした。

 ……恐怖体験ではあったものの、知識自体はすごく役に立つものばかりだったと明記しておく。

 

「つ…疲れたのじゃ…」

『なんだ、やれば出来るじゃないですか。一気に学者達のレベルまで並びましたよ』

「そやつらに色々教えてたの妾じゃし…思い出せれば出来て当然ではあるのじゃ…」

『……案外元通りにするのは簡単そうね』

 

 言われたらやったら案外思い出せるのも相まって案外楽だったのもあるかも知れないが、これなら続けられそうだと思う。

 しかしこれ以上は俺のメンタルが保たないのでやめて欲しいとも思う。

 別に万能になりたい訳じゃないんだよ。日銭を稼げれば俺は満足なんだ…そっとしてくれ。

 

『ダメです。姫様にはコレから権力の象徴として働いて貰います』

「いやじゃあ…妾はそれが嫌で農民になってたのじゃあ…」

『嫌も何もありません。コレからはこの箱庭の姫として長生きして貰います。寿命でも死ねるとは思わないでくださいね

「……寿命でも?」

 

 なんか変な言い方なので聞いてみると、このメイドは先程とは打って変わって機嫌の良い笑顔になった。

 それが本当に素晴らしい事だと信じきっている顔だった。

 

『私も、スーザンも、アルカも、セージも、ルシファーも…満場一致でしたよ。愛されてますね』

「そっちではない。寿命でも死なないとはどういうことじゃ」

『文字通りです。スーザンが不死の秘法を用意したんですよ。コッソリ邪教徒に絶対服従と奉仕を確約させたみたいで、今はその功績で無罪を主張してます』

「……お主ら、何をしているか分かっておるのか? 異端じゃぞ? 妾、死なないのは嫌じゃぞ?」

 

 単純に不死は嫌なので問い詰める。

 不死が素晴らしいと言う奴もいるかも知れないが、俺は嫌だ。

 だって、俺は既に一度人生を味わって、今はロスタイムみたいなものだ。

 そりゃあ長生き自体はしたいと考えているが……それは人の範疇でだ。

 ぶっちゃけ、俺は人生の苦労も幸福も割と味わってきたんだよ。

 今でこそ記憶は欠けてるけど……"既視感は消えない"んだ。

 だから思い出せてこうして元に戻れる訳だしな。

 

『熱心なキリス教だったんですか? ですが関係ありませんね、必要だから、愛してるから生かすんです。それに今回の事は貴女が居れば起きなかった。姫様は必要なんですよ』

 

「愚か者め……人生の生誕祭(パーティ)に並んだ食事は無限ではない。いずれ尽きてしまうものじゃ。お主らは空になった皿の前にずっと座るような、意地汚い真似を妾にさせるのか?」

 

 どうだ? 我ながらかなり会心の言葉を言えた自信があるぞ?

 どうかこれで考えを改めて貰えば……。

 

『それなら心配に及びませんよ。用意した不死の秘法は()()()()、自分が(みごも)っている胎児に生まれ変わるやり方ですから』

 

「‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬はあ?」

(‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬はぁ?)

[‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬ハァ?]

 

『これなら姫様の言う新しいパーティに行けますし、延命に黄金を使う必要もありません。どうやら姫様と契約した悪魔は姫様を黄金に変えていく様ですからね。その為に我々の用意出来る中で最高の手法を選びました』

 

[ハ? は? ハァ? 俺とコイツの縁を切らさないつもりかコイツら?]

 

『命のスパンが短くても問題ない手法です。姫様に打ってつけですよ』

 

[ッチ! 指輪だと周りに声が届かないか! おい、今すぐ転移の魔道具を取り寄せるぞ! このままだと絶対にとんでもない目に遭う!]

 

 声に反応出来ないくらい、脳がフリーズする。

 理解出来なかった。

 転生の儀? 身籠った我が子に生まれ変わる?

 命を何だと思っているんだ?

 次に託す行為を……馬鹿にしているのか?

 

「悪魔、用意」

[ああ……⁉︎ 何故契約が行使されない!?]

「……取り寄せられないじゃと?」

 

『気付いたようですね。鎖で縛られても反応しないので、もしや効かないかと思ってましたが……そんな事はなかったようで安心です』

 

 アリアは徐にチョーカー風の首輪を取り出して、俺の首に嵌める。

 抵抗はしたが…悪魔の力も使えない今、俺が怪物の剛力に勝てる通りはなかった。

 

 カチャ。

 

「…アリアよ、説明せよ」

 

『此処は天の寓話世界。悪魔との契約に特効の魔道具なんて幾らでもあります。鎖はそれでした』

 

これ(首輪)はなんじゃ」

 

『アルカとルシファーの用意した魔道具、一生絶対外れないペット用の首輪です。躾や脱出防止に便利だそうですよ』

 

 まるで奴隷だな。

 

「お主ら、愛すると言っておきながら…これがその仕打ちか?」

 

『唯一渋っていたセージも、ちゃんと話し合って分かり合えましたよ。技術が進化するまでは迷子対策で使うだけ、と言えば納得してくれました』

 

 あぁ、また騙されたか。

 俺もアイツ(セージ)も、前世の時みたいに騙されたんだな。

 勘違いって辛いよな、分かるよ。信じただけでアウトになるんだからさ。

 

「はぁ……アリアよ、それで嫌われないと思っているのか?」

『生かす為に嫌われるなら許容しましょう。必要な処置です』

 

 まだ実感は湧かないけど…何となく理解した。

 

『では姫様、休憩も終わりましたのでお勉強の続きを。()()()()に戻るまで、ずっと続けていきましょうね』

 

 俺は、永い永い罪の円環に囚われた。

 

[……待てよ? お前確か、正しい評価をされない事を対価にしたよな?……仮に理想通りになっても、ずっと違うって言われないか?]

 

 永遠に終わらない、誰かにとっての理想の誰かに成り下がり続ける日々に。

 

「かも、知れんのう? ははは……契約が使えず、罪だけを重ねなければならぬか……この演目、終わりが見えないのう?」

 

 唯一の道があるとすれば……きっとそれは「エラッタ」の主人公だろう。

 

「悪魔よ、一つ頼み事があるのじゃ」

 

 勉強で終わった夜に、飛行船の窓から指輪を放り投げる。

 未だ指輪が悪魔の新たな姿だと知られてない今が彼を解放する唯一のチャンスだった。

 

「朱鷺宛に残した手紙。残り3年分を送り、最後の警句の粘土板の一部として朱鷺の元で待機せよ。聞けばあやつは死なずの存在じゃ。その下で過ごせば必ずや妾を助ける手段と巡り会えよう」

 

 疎らな光が見える都市の中に、微かな希望が落ちていく。

 こんな飛行船に乗らなくても此処にたどり着けるのに、政治やら安全やらで飛んでいるのが功を奏した。投げるだけで逃がせるのだから、本当に良かった。

 

 お陰で、悪魔に希望を託すことが出来た。

 

「……頼むぞ。何千年経とうと、妾は待っておるからな」

 

 悪魔がずっと居た薬指を少し眺めてから、祈る為に手を握る。

 契約したアイツなら裏切ることもない。

 どれだけ時間を掛けても俺を助ける為に頑張ってくれるだろう。

 

 だからどうか……俺によって摘まれる機会は少なくあってくれよ、頼むからさ。

 

 


 

 

 ミソフィア? 箱庭「幻話の時織姫」

 精霊歴‭─‬‭─‬‭─‬‬年「████████」

 

 

[‭─‬‭─‬え、警句を壊しちゃった⁉︎]

「すまない! 降って湧いた精霊神石で召喚した拍子に…済まない!」

[ウゴゴゴ……僕を誘ってくれなかったのも許せないけど、それ以上に友達の手紙を壊されたのが許せない…!]

「本当に済まなかった!! この通り何でもする!!」

 

 あれから風の寓話世界の住民をどうにか余裕のある箱庭に移し、新たな舞台に飛び込むか考えている時の事、ヤマトはフィアをカンカンに怒らせていた。

 

[LRをもう一度召喚するなら許す…]

「ほぼ運じゃないか!? もっと確実な物はないのか?」

 

 事情を説明しよう。

 ヤマトがある日歩いていると、空から精霊神石が落ちて来た。

 恐らく現実世界の物だろうと拾い上げ、折角なので単発で引くことに決定。

 単発なのでフィアを呼ぶ必要も無いだろうと1人で儀式を進行させ‭─‬‭─‬LRの登場演出が発生。

 まさかの召喚に興奮したヤマトは軽率に近づき、召喚の衝撃で吹き飛ぶ事となる。

 結果、運悪くフィアが出したまま放置した警句にぶつかって壊してしまったのだった…。

 

[なら何か許せる気になる物を持って来てよ。言っとくけど今の僕はすごく機嫌が悪いから、生半可な物じゃダメだからね?]

「承った。 それなら丁度良いものが手元にある」

[なんだい? 言っとくと宝石やお金で動く気はないし……そんな古びた指輪で動かされる気だってないよ]

「これはな、壊した警句から出て来た指輪だ」

[それを先に言ってくれ!]

 

 差し出した指輪をフィアが奪う様に取り上げて観察する。

 無理もない。此処に来て新たな文字が彫られている可能性のある要素の登場だ。

 まさか見逃していた情報が有ったとは……フィアは相手の凝りように舌を巻いて観察に集中した。

 

[…………どうやらこれは悪魔が指輪になったものだね。身に着ける事でその悪魔と会話が出来る仕組みのようだ]

「悪魔…闇の寓話世界の者か……それは大丈夫なのか?」

[どうやら今は封印されているみたいだからね。ただの話し相手にしかならないと思うよ]

「ふむ……それならフィア、お前が着けてみたらどうだ? 友人が遺した伝言を伝えたりするかもだろ?」

[お、良いのかい? それなら遠慮なく!]

 

 チラチラとヤマトを伺っている様子だったので、ヤマトは遠慮せず使うように後押しする。

 悪魔でも力が封じられているなら大した事はないだろうという判断だ。

 しかし……指輪を着けていたフィアの表情が段々と険しいものになっていくではないか。

 

「フィア…? 何を話しているんだ?」

[………あ、ああ済まない! どうやら悪魔は既に自我が擦り切れていたようでね? 会話自体は出来なかったんだが……代わりに、彼が遺した記憶を追体験する事が出来たんだ]

「ではその映像に何か問題があったのか?」

[あー…これは実際に着けてみた方が早いね。ヤマト君、君も指輪を着けてみてくれ]

「…何でもすると言ったからな。やろう」

 

 記憶の追体験に少し躊躇することになったが、負い目のあるヤマトに断る選択はない。

 フィアから指輪を受け取ったヤマトは素直に指輪を装着し‭─‬‭─‬情報の断片が目の前に流れることとなった。

 

[何故、今‭─‬‭─‬][対価‭─‬‭─‬][信用‭─‬‭─評価だ‬]

[其方なら出来る‭─‬‭─‬][機会をやろう‭─‬‭─‬][意地汚い‭─‬‭─‬]

[転生の儀‭─‬‭─‬][‭─‬‭─‬愚か者が][胎児を‭─‬‭─‬][手紙を‭─‬‭─‬]

 

[何千年経とうと、妾は待っておるからな]

 

 断片、断片、断片。

 記憶が飛び飛びに流れ、欠片程の音と景色が流れ込む。

 黄金に輝く髪を背に流した、エメラルドの様に輝く眼を持った少女が裏切られる光景だ。

 具体的に何が起きているかは判然としないが……少しでも聞こえてくる単語(キーワード)だけでも、碌でもない何かが起きているのは明白だった。

 

「見えた。だが、どういうことだ? あれは確か‭─‬‭─‬」

[困惑する気持ちは分かるよ。だって、主体に映っていたのは他でもない‭─‬‭─‬]

 

「[黄金の愚王]のルシファー…だよな?  Nランクの…一際力のない者だろう?」

[泡沫の夢の如く消え去るしか出来ない筈の、 Nランクのルシファーだ]

 

 言葉は合わずとも、言いたいことは同じだ。

 だって、彼女は自分たちの手持ちの中でも特に弱く影の薄いものだったのだから。

 

「いや待て…そもそもランクはどういう分け方なんだ?」

[色々要素が絡まってはいるが……最重要なのはどれだけ早く演目に気付き、箱庭を作り上げ、舞台から逃れられるかだよ。基本的に長生きする程ランクが高くなって呼び出しにくくなるからね。結果的に寓話世界での生存能力と同義なんだ]

「それならNはどれだけの確率なんだ?」

 

 ヤマトが最低ランクがどれだけの確率で生き残れるかを問いかける。

 ランクの高さは生存能力だというのなら、果たして今の光景が出来上がるのは‭─‬‭─‬箱庭らしき場所で何千年も待てるようになるのは、どれだけか細い可能性かを問いかけた。

 

[0%…ただ、これはNだけじゃないよ。LRの条件がこの確率が0.01%以上ある必要があるんだ]

「そうなのか…いや、それなら過去に居た空飛ぶ船団は? 彼らが居たから水の寓話世界は箱庭が多く出来たと聞いたぞ? 沢山居ただろうLR以下はどうなんだ?」

[あれは纏めていた「リリカ・タイム」がLRだったからだよ。伝説の時と水の賢者の子孫。その伝説が寓話として再現された者! 時間すら運航出来る者が纏めてたから出来た所業さ!]

 

 それだけ難題であり、箱庭を築くのは難しいのだとフィアは言う。

 選りすぐりの物語から、更に選ばれた強者が、万に一つの可能性を信じて乗り越えるもの。

 ならばあの箱庭は、彼女よりも昔の存在が創り出した物なのだろう。

 そう、丁度……自分達の主力である方のルシファーとか。

 

「つまり、あの箱庭はルシファーが創り上げた物か」

[そういうことになるね。少し年代は合ってないけど……そこはNランクだし、知名度が微妙で後々に演目になったのかも]

「……確か最初に彼は同名の女性と過ごすとか…」

[彼女なのだろうね。何処かで会ったみたいだ]

 

 NルシファーとLRルシファーの接点…指輪から流れた記憶…囚われた様子…ヤマトは点を繋げようとするも、情報不足だと後回しにしようとして‭─‬‭─‬。

 

[‭─‬‭─‬待て、これは僕の手紙から出た指輪だろう? そしてNの方、手紙と口走ってなかったかい?]

「! それだ! つまり手紙の友人=Nルシファーだ! つまり、これは彼女の送った助けを呼ぶメッセージ……1500年前のメッセージだな…」

 

 手紙と記憶の意図が分かっても、そこに横たわる事実は終わった物だった。

 気付くには余りにも遅く、助けに行くのは不可能だろう。

 だって、とっくの昔に死んでいる相手なのだから。

 

[……ヤマト君、君が良ければなんだけど、天の寓話世界に行った時にこの箱庭に行って、色々と調べて来て欲しいんだ]

「俺は構わないが…いいのか? 自分が傷付くだけかも知れないぞ?」

[分かってる。でも、彼…ううん、彼女は僕の友人で、雑だけど嘘だけは言わなかったんだ。その子が何千年も待っていると言っていた以上、本当に待っているかも知れないんだ]

 

 フィアはその言葉を言うのに罪悪感を感じているのだろう。

 完全な寄り道、余計な仕事、関係ない話。

 間違えたような、背筋に冷たい感覚を覚えながら言葉を続けた。

 

[お願いだ、勝手なのはわかっている。完全に寄り道なのも承知している。直ぐにとは言わない。ただ、そうして欲しいとだけ言わせて欲しい……どうか、僕の友人を助けてあげてください]

 

「………」

 

 フィアにとっては、今までの経験の中で最も長い時間に感じた。

 静けさが痛ましく思え、話を無かった事にしてしまいたいとすら思う。

 それでも、譲れない一線だからこそ、フィアはそれに耐え続けた。

 古い古い、されど一目だけでも本人に会いたい相手だったからだ。

 

 

運命点(チェックポイント)

 更新()

 

 

天の寓話世界編-時系列2-R√

 

 

「そこまで言われて後に回す程、俺の度量は狭くない。いいぞ、どの道行かなければならない場所だったからな」

[‭─‬‭─‬本当かい!! ありがとう!! 本当にありがとうヤマト君!!]

 

 

 選択が下され、フィアがパァッと明るく笑う。

 喋れなくても、その分かりやすい顔がある限りは彼女の感情を間違える事はないだろう。

 ヤマトはフィアの笑顔に釣られて楽な気分になった。

 

「少し早いかも知れないが……この謎と結末を放っておくのは俺も嫌だ。だからフィア、今回は前よりもより助けて貰うことにするぞ?」

[当然さ! 友達を助けるため、もしくはその死を辿る為! 身銭を切って支援しよう!]

「……ここが破綻しないようにな?」

 

 こうして、ヤマトの次の行き先は「セレスティア・ミラージュ」に決定することなったのだった。

 

 






LR「[生体電磁による発電]リリカ・タイム」
 1881年、暗黒期で書かれた伝記のキャラクター。
 人魚ではあるが、モチーフ元の影響により人化も出来る様になっている。
 時間と水に深い造詣のある家系の産まれであり、元ネタは先祖の開発したオーパーツ「魂の波動で発電する炉心」をより科学的にして炉心を量産し易くしてみせた。
 性能としてはMPの自動回復とMP上限アップと過剰回復に、渦潮による範囲殲滅。
 施設としては戦闘や別選択回収用の仕切り直し魔道具「目覚めの砂時計」のデイリー生産を解放する。

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