Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した!   作:何処にでもある

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 現実側と寓話側の間の時間の関係は曖昧です。
 寓話側が100万年経っても、現実ば一瞬だったり、その逆も有り得ます。
 再現される作品と、そのモチーフとなった時代の期間次第です。




お金として価値があるのは絶対に腐らない

 

 

「報告します! 前方10km先の海が途中から途切れています! それに道中から岩が四角くなり、海がのっぺりと…このまま進めば落下する恐れが…!」

「そうかそうか。ではこの辺りで船を留めて置き、妾を乗せた小舟で更に進むのじゃ! 小舟が落ちたらすぐ飛べるよう、身軽にしておくがよい!」

 

 このゲームには寓話世界の6つの世界に合わせ、六つの種族が属性として付与されている。

 火の人間、水の人魚、土のドワーフ、風のエルフ、天の天使、闇の悪魔、だ。

 この種族属性だけは現実の影響に関係なく、寓話として再現される際に全てのキャラを改変して付与される。

 何故かといえば寓話側の「ミソフィア」が夢などではなく、確かに物質を伴って存在する異世界だからなのだが…そこらへんの細かい設定は覚えてない。

 だが、この種族の強制変更は俺達にとても素晴らしい恩恵を齎した。

 

‭─‬‭─‬飛行である。

 

「くっくっく…天使族は先駆けにて最強なのじゃ…! 他世界の種族より虚空に落ち難い翼こそ最強の証…!」

(ゲームじゃ最初に文明を興した気がするし、やっぱり体力が続く限り飛んで探索出来るのは強みだよな!)

 

「また女王様が独り言をおっしゃっている…」

「気にするな、聞けば未来を観ているとの噂だ。きっと未来の誰かと話しているのだろう」

 

 「ミソフィア」は無限に広がる虚空の上に6つの世界がある空間だ。

 基本的に泡沫の夢のように寓話の再現がされては永遠に落ちていく関係上、その再現から外れて独立する事は困難を極める。

 最低限必要なのが探索の為に空を飛ぶ手段、再現に頼らずに虚空に浮き続ける土地と水、生きるのに必要な人以外の動植物、虚空を照らし続ける光や空気、「虚空の魔物」の発生を阻止する闇……挙げればキリがないだろう。ぶっちゃけ世界一つ作るようなものだ。

 ゲームでは全ての世界がそれらを整えていたが、それもゲーム開始時点で100年前…今の俺からしたら1400年先の未来だ。現実側の文明が発展し、創作に登場する人や道具の性能もインフレしていった結果に過ぎない。

 

「じゃからのう…大昔の作品かつ現実沿いの妾達の寓話…[黄金の愚王]は土台作りも厳しいのよな…」

(1400年ってすごい長い時間だからな…その間に虚空に落ちず漂う事になった人や魔道具もスカスカ…ゲームでは星空みたいになってた虚空が、五つの一等星(他の世界の輝き)以外真っ暗だし…マジで何もない…)

 

「黄金の愚王ってなんだろうな…?」

「さあ…言い草から察するに俺たちのことじゃないか? …あれ、もしかして女王様、自分のことを愚王と…?」

「いやいや、先代の王の事だろう。今の俺たちが苦しいのはそいつのせいだって聞くしな」

「うーん、噂によると悪魔が化けていたとも聞くし…我が国家に悪魔が潜んでいたりするのだろうか…ん? あれは…」

 

 こんな事なら「ディストリカ」に再現された方のルシファーに転生した方が……いやいや、生まれ変わっただけ御の字だ。文句言っちゃいけないよな、うん。

 

 さて、そんな厳しい「ミソフィア」事情だが、何も悪い事だけじゃない。

 大昔という事はゲーム開始時点では大体取り尽くされていた資源も山のように残っている事を意味する。

 「精霊神石」はその代表例だろう。ゲームではガチャやコンテニュー、家具や箱庭の増設(行動力や資金を稼げる奴)に使える枠なのだが、これが現実だとゲーム以上に万能なのだ。

 数さえ揃っていれば、望んだ物に変化したり因果や時間すら捻り、現実と寓話の世界を繋げる事だって出来る。こんなの取らない奴いる? 居ないよねぇ! 

 

「報告します! 赤い光を纏う、鳥のような怪物が3体現れました!」

「んお…? 来たか…! 1匹に当たり魔法使い2人と兵士を3人で対処するのじゃ! 一定の距離を維持しつつ魔法で圧殺、兵士は魔法使いに近づけない様に阻止、付かず離れずに誘導するのじゃ!」

「「「はっ!」」」

 

 別の小舟に乗っていた兵士と魔法使い達が空を飛び、俺の指示通りにヒットアンドアウェイを繰り返す。ゲームでは最弱の敵なんだが…残念ながらこっちも昔の作品だけあって武装や魔法が貧弱だ。だって回復魔法や鉄の剣と鎧もないんだぞ? 石をぶつける魔法と青銅の剣……現実側はもう少しマシなんだろうが、何事も強調されがちな寓話側はこんな物である。

 酷いレベルでバランスが取れているが…それでも数の力と普通のモブよりちょっとマシなモブ天使だったおかげで倒すことが出来た。

 その際に落とした青い粉や小さな骨は無理のない範囲で回収させ、初戦は無事に終わった。

 

「女王様、あれらは一体…」

「虚空の魔物だそうじゃ。別世界とこの世界で差異が生まれた時に現れる者達……敵にも味方にもなり得るが、赤い輪郭は敵で青いのは味方、黄色は中立とだけ覚えておけば良い」

 

 一緒の小舟に乗っていた船乗りや兵士のモブ天使達に解説する。

 コイツら俺やユダと違って顔が無くてのっぺりしてるから、見分けつかないんだよなぁ…何処で喋ってるんだろ。

 寓話の再現の為に作られた人形に近い連中なのだが…まあ顔が無ければ死んでも心が痛まないからいいか。

 ゲームだと長く生きれば独自の自我を得て顔を得られるとか何とか言ってたし、産まれたばかりの赤ん坊や有精卵だと考えるとしよう。生き残って顔出来るといいな! 

 

「では倒し方は覚えたな? 兵士共は飛んでる奴に剣を当てようなどと考えるでないぞ? 振り払う時だけ使え! 魔法使いは兵士の後ろに立つでないぞ? 味方に当てる程馬鹿なことはない! では行け! 奴らはすばしっこいが弱い! 分かったら船を前進させるのじゃ!」

「「「はっ!」」」

 

 だがまあ…この素直さだけは褒めてやっても良いだろう。

 まるで親の言う事を聞く小さな子供みたいだし、俺は子供とか好きな方だからな。

 …今は俺が子供だけど。

 

「…ええい! 思い出したらムシャクシャしてきたのじゃ! この! この!」

(あーなんかイラついてきたなあ。何でSSRやLRじゃなくてNなんだろうなあ。こんな開拓みたいなことせずのんびり過ごしたかったなあ!)

 

「あー!静まりください女王様!小舟が転覆してしまします!あー!おやめ下さい!あー!」

 

 いや違、流石に物に当たるつもりは.ちょいストップストップ! 身体よ止ま‭─‬‭─‬!

 あっ。

 

 ザッパーン!

 

「もがもがもがのじゃ…!」

(あーくそっ! 翼が邪魔で泳げない! 沈む! 沈む!)

 

 この身体カナヅチかよ! いやずっとふんぞり返っていた奴の身体なら当然か?

 しかもだ、何があれって一緒に乗っていた船乗りや兵士は直前に飛んで無事なのに、俺だけ落水している事だ。鈍臭いってレベルじゃねーぞ!

 

『キキキ…力が欲しいか?』

 

 その時である。光が届かない闇と光の届く海中の狭間で、黄金の亀裂が入った悪魔がやって来た。

 おい、まさかこんな時に悪魔と契約するシーンをしろって事じゃないよな…! もうそんな時期なのか!?

 いやまだ焦るな…もしかしたらそれっぽいだけの泳ぎの悪魔かも知れない。

 そしたら契約も"アリ"だ。

 

「もがのじゃ…!」

(何者だ!)

 

『俺は悪魔…黄金の悪魔だ…欲するならば無限の黄金を与えよう!』

 

「もが!? もがのーじゃ!」

(いやだ! 今黄金なんて貰ったら完全に沈むじゃないか!)

 

『んー? 今契約すると言った気がするなー? …首も横に振って肯定しているし、ならば成立だ! 無限の富を其方にやろう! それに今日の俺は機嫌がいい、対価無しでくれてやる!』

 

「のじゃもがー!」

(馬鹿ヤロー!)

 

 ふざけるな! ふざけるな! バカヤロー!

 まさか耳の中に黄金でも詰まってるんじゃないだろうな⁉︎

 てかこの国だと首を横に振るのが肯定になる文化なのかよ!

 ふざけるな! インドじゃねーんだぞここは! お前はインド人か何かかよえー!?

 

「のじゃーー!?」

(うわー!? セルフコンクリ詰めだ! 黄金が溢れて取れない! タスケテクレー!)

 

 未知の力を受け取ってしまった場合、人は大抵最初から使い熟すのは難しい。

 特に溺れている時なんて最悪だ。普通に死ぬ。

 

「ッポゴ!?」

(しまった! 肺から空気が抜けて! …意識が…遠く…!)

 

 混乱で力み、それによって黄金が溢れ、それが更に落ちる速度を上げていく。

 最悪のサイクルだ。こんな…こんなアッサリと俺の第二の人生が終わるのか?

 

 こんな…こんな間抜けな絵面で?

 

「‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬ッ!」

(そんなの‭─‬‭─‬嫌だ!)

 

 無理矢理意識を取り戻し‭─‬‭─‬自ら大量の黄金を創り出した。

 逆に考えよう、ここは虚空と「セレスティア・ミラージュ」の間だ。

 ならば、下の方に爆速で落ちれば海から虚空に抜け出せるのではないか?

 

「‭─‬‭─‬ぽごっ!」

(ルシファーの取柄の一つは黄金の重さ! 落ちることなら誰にも負けない!)

 

 俺の生きる意思に呼応したのだろうか、黄金が段々と形を変えて翼に纏い始める。

 そして出来上がったのは‭─‬‭─海の‬暗闇の中で尚も光り輝く、8対の黄金の翼だった。

 飛ぶ事は叶わない。地上では自重に潰れて溶けて流れる。なんなら水の中でも動かせば溶ける。

 そんなハリボテでも、今だけは何よりも美しく重い翼として、俺を囲む様に包みこんだ。

 

 それから……果たして何分経っただろうか。既に気絶していた俺を叩き起こす衝撃が走った。

 

‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬ザパァ!

 

「カホッ!! クハッ!! ゴボッカヒュー!! ハァーー!!」

(生きてるゥーー! 落ちて死ぬゥーー!)

 

 落ち続ける海水の瀑布の中、空気を取り込んだ生を実感し、その後直ぐこのままだと落ちて死ぬ事に気付いて悲鳴をあげた。

 黄金の翼は幸いにも海から抜け出して直ぐに溶けて、俺よりも早く落ちたが…それでも身体には固まった黄金が張り付いている。

 そして、俺は黄金を貼り付けたまま飛ぶ能力はない。終わりだ。

 

「こ・な・く・そ・がーー! 妾を舐めるでないわー!」

(くそが! 俺は死んでも転生する不死身人間だぞ! やってやる!)

 

 海に落ちた後に虚空に消える? それがどうした! 

 確かに虚空を一定の場所まで落ちると凄い勢いで存在が削られるが、今の俺には幾らでも削っていい黄金がある。

 こっちはストーリーでリソースとしては優秀のお墨付きを貰ったキャラだぞ? 削られるよりも大量の黄金を産み出してやる! 

 

「ウオオオーー!! へぶっ!」

(グオオーー!! うわらば!)

 

 そして俺は何かにぶつかって情けない声を出した。

 

「なんなんじゃ…ってこれは! 精霊神石なのじゃ! しかも、こんなに沢山!?」

 

 常温でもずっと溶けているタイプの、柔らか黄金クッションを全方位に出していたおかげだろう。

 俺は大した怪我もなく着地する事に成功して…今立っている場所全て、曇って光を失ってはいるものの、精霊神石だった事に仰天した。

 うわ、これ何処まであるんだ…「セレスティア・ミラージュ」を支えてるみたいな…まさか、本当に支えてるのか? 

 

「そうか…[黄金の愚王]が再現されているこの地は、この途方もない精霊神石があるが故に在れるのじゃな…遥か未来で「ミソフィア」が崩壊すると騒いであったのも、これが有限だったが故に…か」

(そういやそんな設定があったような無かったような…あーでも確か、第二部の崩壊編が有ったな。俺はスキップしてたけど…これが理由かあ)

 

 だが好都合ではある。何処だろうと掘れば見つけられるなら、これ程楽な事はない。

 精霊神石はガチャ石らしく、一度使用したら用途の変更は出来ないが…これだけあればまだ未使用の物もあるだろう。

 少なくとも、当てのない虚空に向けて闇雲に船を漕ぎ出す必要は消えたのがデカい。正直それに時間の大半を注ぎ込むつもりだったからな。

 

「じゃが問題はどうやって戻るか…海は泳げぬし…目立つものは……あっ」

 

 身体から垂れ流し続けている黄金を見る。

 無駄に光って目立つそれは、普段であれば寝るのに邪魔だったり敵に見つけられやすそうな物だったが‭─‬‭─‬今ならこれ程役立つものはないだろう。

 

「女王様! こんな所に…よくご無事…ご無事で!」

「うむ、よくぞ妾の呼び掛けに応えたな。後で褒美を取らそう!」

「しかし…その全身に纏っている黄金と…この大地は?」

「悪魔に押し付けられた力と、妾達が探していた精霊神石じゃよ。分かったら直ぐに回収の船を出すがよい! 妾はもう少し此処で待つからな! 妾が黄金を出せるようになったのは誰にも言うでないぞ!」

「え、悪魔……はっ! 直ちに!」

 

 上の開けた場所で黄金を垂らしながら文字を書いて待っていると、無事に様子を見に来た奴が来た。

 こうなればもう助かったような物だ。完全勝利と言っても良いだろう。

 

「ふぅ…しかし、この黄金はどうすれば止まるのじゃ? 止めねば賊に拐われかねんのに…」

 

 終わってみればそこそこ役に立つ黄金と、研究に使えそうな精霊神石の大地を発見した。

 結果良ければ全て良し。研究時間も沢山出来たし、後は寝てても解決するだろう。

 この戦い、俺達の勝利だ! 

 

 

 だが、俺は知らなかった。

 本来ならルシファーが悪魔召喚の儀式をして呼び出していた黄金の悪魔に、バッタリ会う形で、しかも対価無しに力を貰った意味を。

 

 現実側の賄賂や中抜きの象徴から、文脈が変わった事実を。

 

 現実側で無から金の大鉱脈が出現したなんて、この時の俺には知る良しも無かった。

 

 


 

 

 エラトリア パシェード王国ルーシー期

 精霊歴503年「黄金の時代」

 

 

「…では…本当の本当に、この国の近く、普段から使っている海峡で、金の大鉱脈を見つけ、その上精霊神石も…?」

「何度聞いても事実は変わりませんよユダ様。私も未だ夢なのでは無いかと疑っていますが、本当です」

「……情報の規制は?」

「選りすぐりの兵士のみです。全員、今もこの屋敷に居ます」

「……夢ではない?」

「大真面目に何度も言っています。現実です」

 

 現在、屋敷ではユダ様が頭を抱えて唸っていました。

 ですがそれも無理はないでしょう。

 まさか出港の準備をしている最中に私が足を滑らせて落ちて。

 その時に偶然輝く物を見かけ、気になって少し拾ってみたら。

 とんでもなく純度の高い純金だったなどど、誰が予想付くでしょうか。

 

 その後慌てて選りすぐりの兵士と魔法使いと共に調べてみたら、街の真下に調べるのが億劫になる程の、途方もないレベルの黄金が有ったなどと、誰が予想つくでしょう。

 しかも純度が高く、そのまま金貨に加工しても差し支えないレベルなどと…。

 

「……なんだ? 私たちは道化だったのか? 全て解決する物が地下に有ったのに、飢えに喘いでいた大馬鹿者達だったと?」

「確かにあそこは畑には向かない地でしたが……それは海の街ならば何処も同じですから。それに、私が見つけた金粒も、先月の地震で僅かに割れた大地から零れたものだろうと…」

「だとしてもだ…これ売れば一発で…何でも買えるじゃん…」

「…なんだか、気が抜けてしまいますね。決死の覚悟で海に飛び出そうとしたら、それだけで解決してしまうだなんて」

 

 私が見つけた物ですが、未だに現実味がありません。今だって、溺れている時に見た泡沫の夢ではないかと疑っています。

 確かに金の鉱脈を見つけるのは夢のある話ですが、だからって今?……と、どうしてもそう考えてしまうのです。

 良い事なのに…少し前の状況と落差が凄まじいですよもう本当。世の中って案外チョロい疑惑が私の中で芽生える程です。

 いっそ一人称妾にしても許されるのでは? だって天然の金の山なんですよ? 掘り抜くだけで黄金の部屋が完成するだなんて、とんでもない純度じゃないですか。噂に聞く錬金術で作られた物って方がまだ納得できますよ。

 

「兎に角、そうと分かれば秘匿と採掘を…降って湧いた物なので頭が回ってない感じがしますが…初期投資を含めても直ぐに利益が出る以上、手を出さない理由はありません」

「では…私はもうお役御免と?」

「いえ、女王様には寧ろ、何が何でも出港して貰わなければならなくなりました」

「え、何故ですか?」

「簡潔に言ってしまうと、我が国の法においてこう言ったものは"発見者とその土地の領主の共用"になります。ですが、女王が発見したとなるとこれが厄介になります。"王族は領土を持ってはならない"という法が邪魔をするのですよ」

「なぜそんな法が…?」

「王は権威の象徴であるべきだからです。もっと言えば、土地を持たないからこそ、全ての貴族の土地に干渉が出来る。贔屓のない公正な象徴だからこそ、その発言に貴族は従わなければならない」

 

 難しい話ですが、要は私が財産を持つのがダメなのだとか。

 本来なら発見者を貴族の一族に迎え入れて、それを報酬とする為の物なのだそうですが…偉いからダメな事も世の中にはあるみたいですね。

 

「なので発見者は私と言う事にして、近々その海峡に向かいたいと思います。女王様には自然な出張の名目の為…カバーストーリーとして出港して貰うのです。婚約者の晴れ舞台に夫が向かう。とても自然な事で、疑われない。……それに、その後の権利のアレコレも、権威に影がある王族よりも私の方が有利に立てますから」

「……そうですか」

 

 それはつまり…結局、私が何を発見し、未来を見出しても関係ないということでは? 

 既に結果を出したと言われたらそうかも知れませんが…こんな、何の努力もなく出した結果では素直に喜べません。

 何だか私ではない私の手柄を横取りしているような、そんな惨めな気分になるのです。

 

「…いっそこの事を本に纏め、貴族や大衆に宣伝しても良いでしょうね。先を見通す女王による、この国を救う話を。落ちた権威を回復させる手段として、脚色して尚揺るがないこの事実は余りにも()()()()

 

 ハキハキと、生き生きとした顔で彼が語る。

 今まで見たことのない、眉間に皺のない笑顔が、どうにも今の私には気まずくて眼を合わせられない。

 なにより‭─‬‭─‬彼の眼には、もう私が映っていないのが見てられない。

 私を国を救う道具としか見ていない事実を、見たくない。

 

「そうですね…出港自体の目的は無茶な話ですから、向かう理由は合理ではなく情にしましょう。それから船乗りや兵士、魔法使いは国中の者から最高峰の者達を、説得力の為に集めて……‭─‬‭─‬」

 

 いても経っても居られずに席を立つ。

 今度は呼び止める声も聞かずに出て行った。

 それを愚かだと言ってくれて構わない。

 どうせ期待されていない出航を行う道化の女王だ。

 愚かな王だと、船旅で言われるのを耐えなければならない運命だ。

 

 だからこそ今だけは‭─‬‭─‬この情動を抑えたくない。

 私が信じている物の方が素晴らしいのだと、叫ばずにはいられない。

 

 バン!

 

 窓を乱暴に開けて、思いっきり息を吸った。

 

「黄金のバカヤローーー!!! 悪魔のバカヤローー!!」

 

「私の決意を!!! 感情を弄んでそんなに楽しいのか!!」

 

「ふざけるな! 私の…! その期待は私の物だったんだ! 奪うな! 返せ! 私への喝采を返せーェ!!」

 

 ああ、そうだ。

 叫んで納得した。この黄金は、私にとっては悪魔なのだ。或いは…堕天使だ。

 全部全部、黄金の悪魔のおかげで、私の手柄ではない。

 期待も、決意も、全て台無しにしやがった。

 私の冒険を‭─‬‭─‬愚かで意味のない、陳腐なものに堕とした。

 

「……絶対、仕返してやる。こんなクソ運命を編んだ機織りをぶっ壊してやる」

 

 今に見ていろ、悪魔め。

 私は、私の手でこの国の未来、人々の幸福を掴む。

 そしてこう言ってやるのだ。

 

 どうだ、お前の負けだぞ…と。

 

 






R「[黄金の愚王]正義のユダ」
 精霊歴503年、黄金の時代のパシェード王国で書かれた作品のキャラクター。
 プロパガンダを制作した作者の化身であり、書き手の望んだ姿が反映されている。
 物語の強度は弱く主人公でもないが、書き手の化身ということで存在を確立した。
 天使族なのと正義側の存在なのも相まってその実力は真っ当に強く、真っ当なので搦め手や上のランクには確実に負ける。
 性能としては自己バフと強攻撃の悪魔族特攻持ちの飛べるアタッカー。面白みはないが、貴重な天使族の低レアという一点で使われることもある。

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