Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した! 作:何処にでもある
仕事が多い場合投稿頻度が落ちます。
社会人のゲームのプレイ頻度と同様の仕組みです。
ミソフィア? 箱庭「幻話の時織姫」
精霊歴───年「████████」
「──と、いう訳で一旦素材を置きに戻って来た訳だ」
[なるほど…その選択をしてくれたのは本当に嬉しいけど、Nルシの事はもっと早く戻って教えて欲しかったな]
「其処は…すまん。小瓶の転移は位置が変わらないようでな…飛行船みたいな移動してる乗り物の中で転移すると、次出た時には外に放り出されるんだ」
[あー…足元に依存してないのか。なら仕方ない。移動中は転移できない。僕も覚えておくとしよう]
Nルシの自宅からありったけの夢と財宝を掻き集め、それを自分達の倉庫を収めていた時の事である。
様々な収穫物を手に入れたヤマトは取り敢えず全てを回収し、フィアと2人で改めて中身の検分を行う。フィアの謎の知識、それを期待しての判断であった。
「改めて見ても…大半は黄金細工、像や装飾品だな。売りに出すにも出所は訝しげられる以上、やはり書物などの方が……フィア? 布団のシーツなんかを見てどうしたんだ?」
[そんな…何で…悪魔に渡した筈…]
「フィア、本当に如何した? とても貴重な物でも有ったのか?」
返事がないのでフィアの方を振り向くと、其処には
如何したのかと肩を揺すると、フィアははっとした顔でヤマトの方に反応した。
[あ、いや…大丈夫さ! ちょっと此処にあると思ってなかった物が出て来たのに驚いただけ!]
「物知りなフィアが其処まで言うなんて……どんな物なんだ?」
[いや、僕からすれば特別さは無いんだけど、それが問題って言うか…僕が手作りした物が何故か有ったから驚いたって言うか……]
そういえばフィアとNルシは手紙を交換していた筈。
その時に渡した贈り物を見て、改めて手紙の友人が彼女なのだと実感したのだろう。
ヤマトはフィアの反応にそう判断を下した。
「いや、これは俺の愚問だったか。友人なら贈り物の一つは当然だったな」
[そういう訳じゃ……いや、大体その通りだよ。うん、僕の数少ない友人へ贈った物が時間の流れによって帰ってくる。それにとっても驚いたのさ]
だからコレは僕の方で預かっておくね。
フィアはそう言うと、倉庫に山積みとなった素材の山から布を持って出て行ってしまった。
どうやらよっぽどの品物だったらしい。友人へ贈るならそりゃ貴重な布か……ヤマトがそう納得して分別に戻ろうとすると、きいっと扉の開く音がする。
「早いな、何処にしまって……」
「どうもー、暇なのでーお手伝いさせてくださーい」
「こんにちは、ヤマトさん。後輩達の手は借りたくありませんか?」
帰って来るにしては早いと振り向くと、其処にはフィアが釣り上げた2人が入ってくる。
名前は確か……。
「霞む勝ち…?」
「カヅチでーす」
「カスミですよ、ヤマトさん! 縁起の悪い呼び方はやめてください!」
「あいや、すまない! 如何にも中々此処で長く過ごす事がなくてな…?」
南蛮者のカヅチと沖縄風のカスミ。
言われてヤマトは思い出した。そういえば此処で活動しているのは自分だけではなかったと。
殆どの時間を舞台での捜索に使っているので仕方ないことではあるが、ヤマトは不躾な態度だったと2人に謝罪をし、それから何故来たのかを尋ねた。
「そりゃ先輩、
「身も蓋もなく言うとフィアさんと仲良くする為の手段です! 断られると私達は困る事になります!」
「カスミー、ちょっと静かにお願いなー? お前はなんでも言い過ぎな所あるから」
「なによ、居心地を良くするために仲良くなるのは普通よ? 隠して恥じる事は何もないわ!」
「なんであれ有り難い。それなら……今は分析担当のフィアが居ないから、大雑把な仕分けを頼む」
そんな訳で3人は雑多に積まれた宝の山を種類ごとに分け、その後の雑談でこの機にお互いを知っておこうという話になり、流れでNルシを召喚する事となった。
《ヤマトよ、そろそろ妾以外の戦闘外要因も育てよ。特に乗り物。戦闘もLRのレ90再3S7S7凸2は嗜みなのじゃ。装備は集まっとらんから其処は妥協しての提案じゃぞ?》
「出て来て早々だな。俺は別に
《いやー分からんぞー? 案外とんでもない連中に捕まっとるかも知れんぞー?》
「むっ…」
《そうでなくても今の主は正直言って弱過ぎる。舞台即死軸は格下殺しに向いておるが、格上や同格には負けるからのう。せめて格上同格への逃走用にRの「猥談の戦士」を3凸になるまで引くのじゃ》
「わいだ…なんだって?」
「へえ、彼女がルーシーさんかー」
「ちんまいわねぇ。ご飯とかしっかり食べてるの?」
《なんじゃあ見覚えのある奴らじゃな》
出て来て此処が舞台では無いと悟るや否や、ヤマトの戦い方に小言を言い始めたNルシだったが、それもカヅチとカスミに絡まれて中断する事となった。
「あ、どうもどうもー俺はこの箱庭に住む事にした……」
《墨カツ丼…?》
「カスミとカヅチ! 変なあだ名はやめて貰っていい!?」
「あははカツ丼かあ! あれなに、俺達のこと知ってるの? あ、かとちを抜いて勝ち抜き! はは! 確かに勝ちが霞むなあ、勝ち抜きって勝利の重みが薄くなるからなあ!」
「なにも上手くないわよ。そこ、変なツボに嵌まらない!」
「つまり蛸壺の墨だ! あっははは!」
《蛸は何処から来たのじゃ?》
「先に言うと俺は教えてないぞ?」
「それ私等のこと? それともコイツのギャグセンスが終わってること?」
「どっちもだな」
変な所でぐだりつつも、3人はだらりと雑談を始めた。
フィアの帰りが遅くなりそうだと、ヤマトが糸の流れを見て言った為である。
「で、真面目に私等を如何知ってるの? もしかして不自然なくらい詳しいフィアの同類?」
《多分フィアとやらとは違うのじゃ。単に別世界のヤマトのアバターとして使われておったからじゃの》
「……あばたー? 別世界?」
《なんじゃあ知らんのか? 火の寓話世界産の箱庭には登録するだけで別世界の登録した自分同士で戦い始める魔道具があり、勝つと色々貰えたりするのじゃよ》
「別世界の自分…それも勝手に行われる…アバターは?」
《同じ見た目じゃと観戦の時に紛らわしいじゃろ? その魔道具には使っている間、知人の見た目に出来る機能もあるのじゃ》
「その見た目をアバターと言う…か」
要はオートモード固定の対戦機能、「戦術コロシアム」である。
事前に登録された防衛編成を勝ち抜いて一位を目指し、様々な賞品を手に入れられるという仕組みだ。
Nルシの前世が特にやり込んでいた戦闘方面の、特に罵声の飛び交う領域がこれだ。
「物騒な仕組みねぇ…ルーシーはそれをやり込んでたってこと?」
《とても昔の話じゃがな?……じゃが、それを使えばいかに自分が弱いか分かると思うぞ? なにせ、登録したのは別世界と言えど自分自身なのじゃからな!》
「……理解した。火の寓話世界に行った折りには探してみよう」
《火の寓話世界で人気じゃから探す程でもないわい。…ま、色々な戦い方を覚えてくるんじゃな》
Nルシはその言葉を最後に光と戻る。
気付けば相手のペースに乗せられて、結局カヅチ達と話させられなかったが……此処はフィアの箱庭だ。召喚のクールタイムは直ぐに無くなった。
《……いつもより間隔が短いのじゃ》
「俺が舞台にいる間に、フィアがそうなるように箱庭を調整したらしいからな」
「ヤマトさんと話すばかりじゃなくて、俺らとも駄弁りましょうよー。何したらフィアさんが喜ぶとか知ってたりしますー?」
《知らんが……普通にヤマトを手伝ったり、過去の話でもすれば良いのではないか?…というか、妾が知っとるのはやるべき事じゃし、其方を聞けい》
「それなら…はい! やるべき事を教えてください!」
《うむ、ヤマトから使っとらん者を借りて強化する。執筆や強化はヤマトでなくとも出来るから、代わりに強くしてやればよい。魔物が来ても身を守れるし名案じゃろう? 後は──》
そんな感じに話している内にカヅチ達に新しい仕事が解放された。
「
「
「
以上3つである。ゲームに有ったシステムを紹介しただけだが、明確にやる事が出来たのは喜ばしい事だった。
「ありがとうございます! 此処って何もしなくても不自由なく過ごせるんですけど、それだと暇で仕方なかったんですよ!」
「やったわね、コレからは居心地悪く住む必要はないわよ!」
「だなー。みんな優しいけど、それが申し訳無かったから……よし、早速虚空釣りからやろう!」
「やり方はドールズに教えて貰いましょう。もし人を釣り上げても良いように準備もしないとね」
「……行ってしまったな」
《仕事を見つけたのはよいが…ヤマトと仲良くなるのを忘れているのは大丈夫なのじゃ?》
「それはまた今度で良いだろう。話す機会はまだまだあるさ」
早速やってみる事にした2人を見送りつつ、ヤマトはフィアの帰りがあまりに遅いのに引っ掛かって、Nルシを置いて探しに行く事にした。
「それじゃあ俺は探しに行く。ルーシーは此処で待っててくれ」
《妾、待つのに向いた者では無いのだがのう…? 召喚されるのに慣れて来たとはいえ後7分程度しか…》
何処かで倒れてやしないかという心配そうにヤマトが小屋から出て……。
[いやー、随分と遅れてしまったね……うん?]
それから暫くしてフィアが小屋の中に入って来た。
どうやらすれ違ったらしいが……こんな対面の仕方をするとはNルシは思ってもいなかった。
Nルシにとっては転生からの召喚による原作介入だ。召喚された以上、与える影響は良い方向に持っていきたいとは考えているが……取り敢えず本人では無くその影、ドッペルくらいの存在として弁えようと襟元を正した。
《其方がフィアか? 妾はルシファー、其方を探しに行ったヤマトが置いていった留守番係なのじゃ》
[うん。僕がフィアだけど……君、本当にNランクなのに僕と会話が出来てるんだね?]
《そこを聞かれても詳しくは知らぬから言えぬな。妾も所詮は精霊神石が模倣した歴史の影に過ぎん筈じゃが……其処はフィアの方がよく知っているじゃろ?》
[僕の見解としては本人の魂の欠片があるなら成立する。だから何かしらの影響で、君に本人の魂が宿っていると観ているよ]
フィアが言うには、これは"作者の化身に作者の魂が入る時に発生する物と同じ現象"らしい。
元来現実から寓話に行く際、その負荷に耐えられず散り散りに別れ、本人に関与する"あらゆる存在"に魂を宿すのだとかなんとか。
《つまり……なんじゃ?》
[現実と寓話の世界の通り道は高性能なミキサーってこと。通る時に絶対にバラバラに切られるから、絶対魂が一つの肉体だけに入るなんて事はあり得ない……何処か遠い世界から来た覚えはある?]
《ある。めっちゃある。妾が箱庭作れたのはそれが2割占めておるのじゃ。そうかあれかあ……納得なのじゃ》
具体的には「エラッタ」をやっていた前世、残り8割は悪魔との契約である。
しかしそうかと、Nルシは納得した。黄金を集めれば前世に帰れるなら、その行き来も「エラッタ」の法則が適応される筈だと。
よく考えたら転生要素が原作に存在するタイプの作品への転生なのだから、そりゃこうなると。
《納得したのじゃ! そうかそうか、妾の魂はバラバラになってあったかあ…実感が湧かないのう?》
[納得した所悪いけど、僕はあくまでも現状に当て嵌まる法則を挙げただけだよ。コレが絶対の正解である保証はない。実態は色々調べてみない事には……だ]
《妾は如何でもよいがの。死んだら終わり。それでよいのじゃ》
[うーん…この豪胆さ、何処かで見た覚えがあるような…気のせいかな]
Nルシとルフィアがそうやって雑談に興じている内に、ここで一つ留意して欲しい情報がある。
《お? 偶然じゃのう。妾も其方の喋り方に見覚えがあるのじゃ》
[喋り方なのに
"ヤマトは、フィアにNルシ=手紙の友人の事を伝えたつもりでうっかり言い忘れている"。
《……それはほれ、細かいことじゃ。妾、勉学は嫌いじゃからそういうのは気にせんのじゃ》
[そこは学んどこうよ。世界を知る事はとっても楽しいことだよ?]
《そんなことするまでも無く、妾にとっては目の前の全てが広過ぎるのじゃ。人が寝そべるくらいの土を弄るだけで、必要な知識が山とあるかのう?》
[……ん? 意外だね。こんなにも沢山の宝を持っているのだから、てっきり王族だと思っていたけど……畑を持つタイプなのかな?]
《妾はただの農民なのじゃ。黄金に触れる機会は山と有ったがの》
更に言うと、"Nルシにもフィアが手紙の友人だとも言い忘れている"。
[農民なのに? あ、それって君の[黄金の愚王]って話に関わることかい?]
《うむ、大まかに言うと悪魔と契約した妾が黄金を出せる様になり、なんやかんやで森で孤独に住む者になったのじゃ》
[雑な説明だなぁ…しかもそれ、君自身の経歴だろう? 物語の方じゃないじゃないか]
《バレたか。正直詳しくは知らん。実際の話を見た訳ではないからの》
その結果何が起きたのか?
フィアにとっては"なんか遠い所から来た魂を持つNランク"、ストーリースキップ勢のNルシにとっては"「エラッタ」のチュートリアルに居た人"という、お互いにとって微妙な関係性の完成だった。
故に劇的な感情がぶつかる事もなく、しかしとんでもなく悪くなる事もない。
お互いに手紙による先入観のない状態での出会いとなっていた。
[で、ぶっちゃけさ。君が箱庭を作ったとかなんとか聞いたけど、それ本当? 話しててそんな威厳感じないんだけど]
《マジマジ。実際に作ったのは黄金の悪魔(天使)じゃが、一緒にやったのは妾じゃ》
[……んん? 悪魔…天使族なのは勿論だとして…もしやあの時の…ん? そういえば角とか有ったな……]
フィアは一度、10年程前に黄金の悪魔と取引をしている。
現実世界を見渡す眼と好きに書き込める歴史書との交換でだ。
その際は向こうから取引を持ちかけただけなのであんまり話したりしてなかったが、思えばあの悪魔には角が有った。
[因みに、その悪魔って一人称が俺で、鬼だったりする?]
所で、寓話世界において鬼が主役で出る話は闇の寓話世界、悪魔族に分類される場合が多い。
其処でフィアはこう考えた。
箱庭を作っている。鬼(悪魔)と主張する。ずっと一人(箱庭作りに使ったのと一緒)。
もしや手紙の友人は天使→悪魔の種族変化を遂げた鬼だったのではないか?…と。
このNルシはその際に使った道具(生贄)だったのではないか?…と。
雑な振り分けのするこの世界と、豪胆なあの友人の事だ。あり得ない話ではないとフィアは推理した。
[うん?……まあ合っとるのじゃ]
(ん?……
そして、Nルシは一人称は合ってるので肯定し、それを半分と口にしようとして、口調は"半分"を"まあ"と訳す。機械翻訳も真っ青な三重翻訳である。
この違いはフィアにとって、推理を確信させるのに十分なズレだった。
[つまり…黄金の悪魔=箱庭の創造主で、手紙の主で……]
そうなると不思議な話で、フィアは過去に友人と出会い、その思いを遺した指輪と託そうとした
Nルシを"友人"ではなく、"友人が託そうとした大切な誰か"と看做すのだ。
[君は……僕の友人にとって、僕以上に大切にしたい相手ってことかい?]
《のじゃ?》
(あん?…ヤマトの話か?…悪魔の話か? てか、手紙ってなんのことだ? いつ話に出てた? 困ったな、召喚されてない間はストーリースキップも同然だから流れが分からないぞ?)
そうなるとどんな感情が向けられるか?
嫉妬である。
[そうかそうか……君はそういう奴なんだな?]
《妾は「僕」ではないぞ?》
[……はあ!? 君、煽っているのかい!? 僕は君の立場には成れないと!?]
《…? そりゃあそうじゃろ?》
[少年の日の思い出] 著ヘルマン・ヘッセ。
エーミールの蝶や蛾の標本を「僕」が腹を立てて盗み壊して走り出す話である。
Nルシは前世のネタを伝わらなくても言うタイプだった。
[あったま来た……歴史の影が生意気だぞ! 僕の大切な人を取った泥棒猫が!]
《…? 盗んどらんよ。彼の者の所有物なだけじゃ》
[
《ふむ…奴隷が近いかのう?》
[奴隷……爛れた関係!?]
今のNルシは自認を召喚物に自重を置いて襟元を正している。
そんなNルシにとって、ヤマトはどんな命令でも聞き入れなければならないご主人みたい存在だった。
[そ…そんな…僕との関係は遊びだったっていうのかい?]
《爛れた?…おーい、多分それ勘違いしとるぞー?》
[僕への手紙を出す間にもあんな事やこんな事を……ううっ]
《うーむ…不味いのう。聞いておらぬのもそうじゃが、そろそろ召喚の時間切れになりそうじゃ。後45秒…何が出来るか…うむ!》
そういう時は取り敢えず彼氏彼女に好きと伝え、惚れれば良い。
Nルシは前世のネタは伝わらなくても使うタイプだった。
《フィア、安心せい》
Nルシがフィアの肩を叩き、意識を向けさせる。
フィアは顔を上げないまま、ほのかに燻っていた恋心を心の奥底に埋める手を止めた。
[ううっ…なんだい…こんな惨めな負け犬に言うことなんてないだろ…]
《彼はお主の事が好きなのじゃ。妾から見れば、両想いじゃから安心せい》
(ヤマトとお前は恋人になるエンドが多かった気がするし、そんな心配する事じゃないよ。多分)
その言葉を最後に、Nルシは召喚限界を迎え光に戻った。
光がヤマトの方へ向かうのを、フィアはぼうっと眺め……Nルシの言葉を理解した瞬間、ボンっと頭から煙を吹き出した。
[ふぇ……? ウエェぇぇ!?]
「うるさ…フィア、戻って来ていたんだな」
ワタワタと右往左往しながら、涙目で混乱している所へヤマトが戻ってくる。
Nルシが光となって戻って来たのを機に一度様子を見に来たのだ。
[あヤマトちょ待って今とても驚い友達が爛れでも僕が好きだって!?]
「……ちょっと休もう。フィア、最近は色々あったからな。きっと休息が必要なんだ」
脳に響く要領を得ない言葉に対して、ヤマトがフィアの頭を自身の膝に乗せて手を握る。
膝枕。稀に悪夢を見てどうしても眠れない妹によくやっていた事だった。
[……ふぇ!?]
「寝るまで一緒にいよう。だから、そんなに怖がるな」
[あいや……!? そんな怖がってなんか…!]
「理解し切れない事があって慌ててたんだろう? それを「怖い」と言わずになんと呼ぶ?」
[えっと…それは…! でもここまでされる必要は…!]
「経験則だが、こういう時に必要なのは「安心」と、怖がらなくていいと思える「信頼」だ──違うか?」
[あえっと……うんと……違わ…ないです]
その時の妹はヤマト兄ちゃんではなく、お兄ちゃんと呼んでいたっけ。
ヤマトは懐かしく思いつつも、フィアの頭を撫でて優しく微笑んだ。
俺が居るから大丈夫だ。だから安心して休め。
そんな雰囲気に包まれたからだろうか。恥ずかしがっていたフィアも次第にうとうととし始めて、最後には静かな寝息を建て始めた。
普段は念話ばかりで無口な分、寝息の分起きている時より声が出ているな…と、無粋な事を考えつつヤマトは筆を執った。
「さて、書き置きはここにっと…枕はこの座布団でいいか」
ヤマトはそれを確認した後、そっとフィアの頭から脱出し「黄金の愚王」の箱庭へと転移する。
時間は有限。幾ら愛くるしい寝顔でも、何時迄も見ている訳にはいかない。
最優先すべき事は何一つ変わってなどいないのだ。
ミソフィア? 箱庭「黄金の愚王」
精霊歴───年「████████」
「──あ、ヤマトさん! 荷物を置くだけなのに遅いですよもう!」
「す、すまない。有用なのがあればと、先に鑑定しようと考えたんだが…思いの外時間が掛かる感じになったものでな」
「本当に〜? もう夕方ですよ〜? 私、もう待ちくたびれましたよ!」
廃屋の埃の臭いを感じて眼を開ければ、直ぐに戻ると待たせていたニャルに叱られる事となった。
しかし、それはあまり得策では無い。ヤマトはじゃりと外から鳴る足音に反応し、刀を抜いた。
宝の移し替えに雑談に……時間をかけ過ぎたようだ。
チャキ
「や…ヤマトさん? 逆ギレとかしております?」
「信仰と守護感情の糸……ここの守人だ。済まない、本当に時間を使い過ぎた。少し手荒な真似をしなくてはな」
条件は一つ。
自分達がバレる前に気絶させ、脱出する。
「ならば使う札は……こうだな」
ヤマトは口の前に指を寄せ光を9つ纏わせると、それを振り下ろして一斉に召喚した。
編成(10/20)
1・EX「[
└S1「一文字」×3 S2[代筆]×2 M1[*未解放*]×1
・LR「[ダムス予言書]ルシファー」
└S1「見放された罪」×1 S2「定められた罪」×1
・N「[馬の一生]薔薇の馬」
└S1「P:時間延長」 S2「加速」×2
・R「[カワラ駅]不気味な車掌」
└S1「P:切符拝見」 S2「P:乗車案内」
5・R「[カワラ駅]黄泉行き列車」
└S1「P:運行開始」 S2[*未解放*]
・SR「[異郷旅行]マルタ」
└S1「連鎖:タラスク」 S2「異郷適応」×1
・SSR「[ヘライト旅行]ガリバー兄弟」
└S1「P:空の旅路」 S2[*未解放*]
・N「[雲]錯覚」
└S1「P:浮水」 S2[*未解放*]
・SR「[殻破りのひよこ]ヘルマン」
└S1「P:夏の日の思い出」 S2「隠されていた破壊衝動」×3
10・R「[悪路王]イスカンダル」
└S1「P:悪路制圧」 S2[*未解放*]
《乗車する方ですね。切符は確認済みです》
「えっ? うわ!?」
「どうし──なんだこれは!?」
キィィ──……がたん、ごとん。
「場所が……変わった?」
「ここは、列車か」
「まだ動き始めたばかり…何が起きている?」
「誰の仕業だ?」
定期的な見回りをしに来た彼らにとって、運が最も無い日はきっと今日なのだろう。
突如として背後から現れた畏まった服装の者な現れたかと思えば、唐突に列車の中に居る。
窓を見れば先ほど居た場所からはドンドンと遠ざかっている様子が見えた。
「…異常事態! 全員窓から脱出しろ!」
「「「はい!」」」
《……おや皆様。これから異郷へ旅立つというのに、何をなさっておられますか》
現状を把握して直ぐに脱出しようとするも、そこに待ったをかける者が居た。
装いは長耳の、旅人の服を着た一般的なエルフだったが……現状から推察するに、彼女が元凶なのだろう。
《旅は道連れと言うでしょう? 少しばかり仲間が欲しかった所でして、すこーしばかり、時刻をズラしてお伝えして居たんです》
仮に違っても後で謝罪すれば良いと、天使達は殴り掛かり──その剣は突如停止した列車の衝撃と、一体のずんぐりとした竜の甲羅によって阻まれた。
《カワラ駅〜カワラ駅〜ご乗車の皆様につきましては、死にゆくまでごゆっくりなさってください》
「亀!」「トカゲ!」「竜!」「象!?」
《GURR……》
《タラスク! かの者達を薙ぎ払いなさい!》
《GAAA!!》
この時に少しでも横を見れば、此処が[黄金の愚王]の地ではないと気付けたのだろうが……既にそんな事を気にせる程、猶予は無かった。
襲い掛かる怪物が火を吐き、前転し、その巨体と硬さ、閉所という立地を活かして圧殺しに来るのだ。外に逃げるにしても、こうも窓が狭くては翼を通らせるのは至難の業だ。
「逃げろ新人! このままじゃ全め──」
《ヒヒ! 全てぶっ壊せば──!!》
最も前に出てタラスクを抑えていた者の言葉は最後まで言われる事もなく、列車の屋根と纏めて一撃で葬られた。
ズタボロの学生服を着た、消防斧を手にした若いエルフが狂ったように笑い、直ぐ様に横に居た者の首へと斧を振るう。
挙句に剣で受け止めるが──それは、タラスクへ隙を晒すのと同義だ。
《この地の事は理解しました──タラスク、目覚めの刻です》
《GUAAA!!!》
竜の眼光が光り、殻にドス黒い光を宿す。
手足は象のそれから竜のように爪は鋭く鱗が生え、全身を変容させた。
カワラ駅、黄泉と現世の狭間の地の力を宿した竜は、目前で斧を振るう少年を気にする事なく暴力を振るい──誰も逃す事なく、全てを破壊した。
「──御苦労、交代だ。ガリバー、舞台を変え、落ちた者を治療。錯覚、落ちる連中を回収するよう平たく広がれ」
《──今だァ!》
《あいさ兄貴!》
ガラリと隣の車両からヤマトが現れて指示を出すと、列車の光景は一変し、澄み渡る海が広がる上空へと全員が放り出される。
近くにはこれを成した飛行する双子がおり、下には不自然な速度で広がる雲がヤマト達をキャッチし、雲が捕まえ損ねた者はルシファーがキャッチして雲の上に避難させた。
よく見れば雲が人の形をしているが……それは大したことでは無いだろう。
《…! テメェ、どこ中だ!》
「抑えてくれヘルマン。舞台の上書きに必要な追撃分の、殴られ役が足りなかったんだ。殺す訳にもいかなかったからな。後で奢るからそれで許してくれ」
《シンクレア…ッチ。今回は許してやる》
「ありがとう。後で一緒にいい店にでも行こう」
いつもより痛い事になって済まんとヤマトは謝りつつ、ガリバーの二人によって怪我人が癒されたのを確認し、薔薇の馬に乗せたイスカンダルに舞台を一掃させて、元の場所へと帰還する。
「あ、ヤマトさん。終わりましたか?」
「ああ……いつも通り、異界で処理して来た」
「便利ですけど、不便ですよねーそれ。戦闘が見られないのは利点でも、毎回何処かに行っちゃうんですから」
「言うな、現状コレが1番強いんだ……変な戦い方になっているのは自覚している」
今回は殺して事態が派手になるのを防ぐ為に手加減したが、本来ならあそこにルシファーとガリバー達の追撃も乗りつつ、効率的に列車を破壊して下車させる仕組みなのだ。
忙しなく風景が変わって落ち着かないのが最大のデメリットだが、それ相応に強い。
それが今のヤマトが扱う舞台軸のメンバーだった。
「いやー…下手すると出られなくなる戦い方なんですから、そりゃ強いですよ」
「最悪転移を活用するだけだ。大したことでは無い」
「大した事ですよ。ヤマトさんだから乱用出来るんですからね?」
イスカンダルと薔薇の馬コンビ、主に帰宅の足用だが、居なければ面倒な事態になっていただろう事は想像に難く無い。
思いの外舞台破壊が帰りに便利で、毎回転移しなくていいのは精神衛生的に有り難いのだ。
ヤマトは、案外俺は引き運が良かったなと毎回使う度に思っていた。
「コイツらを置いた所で……早急に立ち去ろうか」
「ですね! 起き上がる前にトンズラです! で、何処に行きますか?」
ニャルの言葉に、ヤマトをあちこちに視線を送り、何かを辿るように周囲を見渡した。
それから、何かを見つけたように満足そうに宙を掴んで、頷いた。
「──この運命の糸に任せようか。国立図書館に面白そうな流れがある」
「私が気に入った時に言ってた奴ー。やっぱりそれズルっこいですよー」
「そう便利でも無い。コレは無意味な行動を減らす程度の物。詳しい中身迄は知れないし……まだまだ使い慣れてもないからな」
「いやいや、イベントが起きる場所が分かるだけでもズルいですって。反則ですよ反則。チートです」
「そうだろうか。やる事を考えたら、こらでもかなりギリギリのペースだと思うんだが……」
「冷静によく考えて下さい。例えギリギリでも3日で一国の機密全部ぶっこ抜くのはチートです」
かもなぁ…と言うが最後に、ヤマトは走り出した。
そうでもしないと間に合わないのだろう。
彼と一緒だと退屈しませんね、本当。
ニャルは舌を噛まないように肩に掴まり直し、コレから起こる事にドキドキと心臓を跳ねさせる。
久々に物語の中に居るような、約束された栄光と転落の渦中に酔いしれながら──彼の行末を見守る眼を、絶えず注いでいた。
SSR「[
精霊歴1997年、暗黒期の時代に書かれた12巻まで連載されている現行作品のキャラクター。
死者が天国と地獄どっちに行くかを測る儀式が、神々のゲームに魔改造された世界で、ゲームの運営を行う裁判官が天使となった為SSRまで昇格──否、降格した。
物語における立ち位置としては閻魔の一個下辺りの存在であり、彼女は死と生の狭間を彷徨う生霊達へのデスゲームが主な仕事。その為か悪役ではなく、公平な裁きと采配を行う味方側として描かれている。
現行作品の為、本来なら移民審査官なんて大それた立ち位置に付ける余地も産まれる時間もない筈だが……どう言う訳か、こうして目の前で実現している。
性能はプレイアブル化していない為存在しない。現行作品は未完成として召喚不可能なようだ。