Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した!   作:何処にでもある

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 ソシャゲの運営に限らず失敗したらエグい事になりますよね。エロ売りならモブキャラの性別で、致命的なバグならそれはもう盛大に。




運営以外の不祥事も藪の中にある

 

 

 ██フ██? ██「███時██」

 ██歴‭─‬‭─‬‭─██‬‬█████████

 

 

「……と、言う訳で何かないか? サクラと世界を蘇らせる何か」

[君は僕の事を青狸のロボのように思ってやしないかい?]

「勿論、時間を戻す道具をくれた辺りからそのくらい頼もしく思っている」

[…くっそー。ちょっと照れる事言ってくるじゃん]

 

「イチャ付きは構わぬが、何故妾は此処に連れて来られたのじゃ?」

 

 無駄にあれそれと時間を掛けた気はするが、失敗者を筆頭にローズとセン以外の転生者が死んで、無事にこの世界がこれ以上悪化しないようにする事に成功したヤマト達。

 一先ずこれ以上あそこに居ても仕方ないということでフィアの箱庭まで帰る事に。フィアに助けを求めつつも、ついでに連れて来られたルシファーは耐えきれず疑問を口に出したのだった。

 

「妾は別に構わぬがなぁ…仮にも大国の象徴じゃぞ? 自らの心配はせぬのか?」

「大丈夫だろう。失敗者があそこで起きる事は誰も気にも留めない様にする……魔法か何かを使ったみたいだからな。3ヶ月経っても誰も近寄らなかったのがその証左だろうさ」

[こう言ってはアレだけど、聞いた限りだとあそこに居た者は全員世界から消えたものとして扱われてるんじゃないかな]

「ふむ、それで連れて来た理由は?」

「仮にも今のお前はサクラの立ち位置にいる。それが死んだ時にどう成るか……終わってから疑問に至ってな。念の為に保護する事にした」

[事実、僕から見たらそこで死んでる者よりも、君をヤマト君の妹のように感じるからね。君の国よりは安全な此処に居た方がいい]

「ほう、大国の王宮よりもか。先に聞いた限り通りならばそうじゃろうなぁ」

 

 ヤマトはサクラとルシファーを正しく認識出来ているが、他はそうでもない。

 失敗者や継承者達を殺しても洗脳は解かれないし、今後ルシファーは姫にも女王にも成れやしないだろう。

 哀れに思ったのもあるだろうが……言葉にした理由が大半を占めているのも事実だった。

 それはそれとしてルシファーはすっかり「エラッタ」のフィア関係を忘れていた。顔を見て説明を聞いても思い出せない辺り完全消却済みである。

 

[それでなんとかする方法…か。無い訳じゃないよ]

「やっぱり何かあるじゃ無いか」

[そんな期待しないでくれ! 僕としてはコレを使うのは控えたい事なんだ。幾ら君が転生者達を打倒し、こうなった原因を解決したとしてもコレばっかりは諦めて欲しい!]

「……俺の一生に一度の頼み事だ。頼む、フィア。先ずは説明だけでも聴かせてくれないか?」

[むむむ……まぁ、説明だけならいいか]

 

 やはり転生者に頼らなくてもなんとかなる。ヤマトはフィアの青狸指数を上昇させた。

 世の中ある所にはあるのだと勝利を確信し、場合によっては強引に行くのも視野に入れて聞き手に回る。

 

[何をするか。言葉にするなら単純だよ。「無地の演目」を歴史改変ではなく歴史の追加に使えばいい。元は無限の可能性とか時間とか、運命其の物を編み込んだ布織。その程度なら容易いだろう]

「アイツらが求めてた物か……聞く限りだと使っても問題無さそうだが、何がダメなんだ?」

[……その前にヤマト君。君は歴史の区分は知ってる?]

 

 フィアが問いかける。

 ヤマトにとっては学校で学んだ容易い内容を…だ。

 

「神話、黄金、精霊、英雄……そして、時間が狂って無ければ今が不可逆の時代だな。それがどうした?」

[疑問に思わないかい? その名前は一体誰が名付けたか……それらは全て、僕が編んで創り上げた時間で、布織で、僕が名付けて定義した物だ]

「……だからどうした?」

「ヤマトよ、聞いて分からぬか? コヤツは自分を時間を運航させ続けた神みたいな存在と言っておるのじゃぞ」

「……だからどうした? 初めから特別な存在だと、自分は神に語られて来た存在と言っていた。それの何が問題なんだ」

 

 ヤマトからすればそのくらいの相手なのは初めから分かっていた事だ。

 それな今更なんの問題になるのかと、そう言う。

 

[……その通り。元来、僕は神々に語られた戒めの寓話だ。時間や運命の女神が1人の男に惚れて、ただ布織するだけで済ますべき物を服に仕立て上げた。本来の役割を乗り越えて()()()()

「よくある惚れた腫れたか。神々とやらがいつから居たかは兎も角、いつの時代も変わらぬ定番(ベーシック)な話じゃのう」

[これは実話だけど…そうだね。よくある禁断の恋、結末は"服にした布の分だけ世界の寿命は削れ"……男は巻き込まれて死んで、女神は……世界が終わるその時まで、時と運命を織る役割以外の……全てを禁じられた]

 

 フィアは言う。

 あってはならない過ちであったと。同時に、酷くつまらない結末であったとも。

 

「実話……演目の再現が何処まで及ぶか知らないが、その者を基本(ベース)に構築された…と。だから寓話の通り男に布織を渡したくないという話か?」

[違う、もっと救えない理由さ。男が死んだのは巻き込まれたと言ったね? では、男は何に巻き込まれたと思う?]

「そりゃあ世界の寿命が減ったからじゃ……まさか、()()()()()()()?」

 

 ヤマトはフィアの顔を見て、今自分が口にした答えがどちらも違うと悟った。

 では答えは何か?……フィアは刻々と脳に刻むように念話を響かせる。

 

[女神は何を禁じられたか。言葉、視界、意識、肉体、自我、魂……分霊の作成。文字通り、世界を運航する機織りとして、寓話の再現体すらも本人として統合された。僅かな自由も、幸福も本人が得るのは許さないとばかりに]

 

「ほう、つまり今のお主はその女神本人か? 先に此処は寓話と現実の狭間とも聞いたし……神と名乗るならば牢屋代わりの箱庭程度、簡単に創れるじゃろうな」

 

[……ルシファー、神々は本当に容赦が無かったんだよ。それこそ僕がこうして肉体を持ち、念話でも話せてるのだって()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 元来神様とは、人の形をしている方が稀だからね。

 フィアはそう付け加える。連戦で疲れているヤマトは答えに辿り着かなかったが……ルシファーは違った。

 

「……あー。なんじゃそういうことか」

「どういうことだ、説明しろルシファー」

「分からぬか。分からぬよなぁ…じゃが、転生者達を関わった直後じゃぞ、流石に思い至れ」

 

 遠回りな言い方だがそれだけで理解した。

 自分もそうだったからこそ、その可能性に直ぐに思い当たったのだ。

 

「"お主、巻き込まれた男の方か"」

 

 出された答えは単純な物だった。

 同時に、これ以上ない程"巻き込まれた"という表現が合っている状況も無かった。

 

[……うん、その通り。()は女神に惚れられた男で、機織りとなった女神を動かす役目を与えられた者‭─‬‭─‬の、2()()()さ]

 

 へへっびっくりした?

 フィアはそう苦笑いしながら、ルシファーの言葉を肯定した。

 ただし……2代目という、厄介な言葉も添えて。

 

「フィア、関係がややこしい。要約しろ」

 

[えぇ? そんなにややこしくはないよ? 現実側と演目で2人居た。女神は統合されたけど、僕達はそうじゃない。ただ惚れられたってだけで、身に覚えのない罪の償いをさせられてるだけ。だから、ダメになったら解放されるんだ]

 

「ならば何故お主は解放されておらぬ」

 

[壊れてないからね。現実の男の方は普通の農民だった。だから飲み食いも眠りもせず、女の身体で機織る日々にたった数百年で壊れてしまった。神々は壊れても直さないからね、代わりに寓話としての()が代役となったのさ]

 

「そういえばフィアは世間知らずだったな」

 

[僕は農民の方と違って機織り、罪を償う為に産まれたようなものだ。それ以外の何も知らなかった。だから数万年、或いは数億年の間を壊れず……禁じる力も弱くてね。その内自我を得て、人恋しくなったんだ]

 

 だから演目では元男の子という設定だっただけの…女の子だね、僕は。

 そう付け加えながら語られたのは、今日に至るまでのフィアの生誕経歴。

 彼女が意図して話題にするのを避けていた部分。

 どういう感情で話しているのか……気恥ずかしそうに話すフィアの内心を、ヤマトは一生わからないだろうという確信が有った。

 

「で、それが俺に無地の演目を渡すのとどう繋がる?」

 

[結論を言うとヤマト君が僕に……3代目になる。無地の演目を渡すとは、女神が行った服を仕立てて渡すのと同じ行為だからだ]

 

「神々が未だ生きとったりするのか? だとしたら相当気長な連中じゃのう?」

 

[いや、確かに死んでるよ。そうなるのは契約が有効なままなせいだ。仮にも契約の神や秤の神、審判やらなんやらが何千と集まって構築された刑罰の契約だ。老わず、死なず、壊れるその日まで罪は執行され続けるんだ]

 

「なんじゃあ妾と黄金の悪魔と似とるのう」

[そうなのかい? だとしたら気が合うね、僕の手紙の友人と共に語らえないのが残念だよ]

「お? 奇遇じゃのう。妾もそんな奴が居た気がするのじゃ。次郎だか神龍(シェンロン)だか名乗ってた奴」

[うーん……僕の記憶にそんなのは居ないなぁ……気のせいかな]

 

「………なんか忘れてる気がするが気のせいか?」

 

 ルシファーはこんな事を言っているが普通に過言である。

 契約した、不死になった、老いなくなった、ずっと役目に縛られていた。

 確かに箇条書きだとそっくりだがその過程も何もかも違う。

 ヤマトが元々手紙の友人探しに来た事を思い出しかけているが、この分だと話している間は自力で思い出す事はないだろう。サクラ優先である。

 

 全員が「うーん」と唸る場面を挟み、誰も何も思い出せずに話は元に戻る事となった。

 

[……そういう訳でこの案はオススメ出来ない。僕は初代…オリジナルと同じく機織りの一部になるだろうし、折角壊れた機織り(女神)も復活する。君も僕の身体になって永遠に機織る事になる。誰も幸せにならないんだ]

 

「サクラは蘇り幸福を掴めるだろう。よし、躊躇する必要は無さそうだな」

 

 そう言うヤマトの頭が引っ叩かれた。痛みはない。

 ルシファーの身体は非力だった。ヤマトは無視して立ち上がる。

 

「これ、サクラが聞けば殴りそうなことをほざくでない。それに、この案はフィアも巻き込むではないか。漸く掴めた自由を好き勝手にする資格などお主には無いのじゃ」

「提案した。なら合意の上だろう」

「説明をせがんだのはお主じゃ馬鹿タレシスコン小僧。コヤツは諦めて欲しいとハッキリ言っておるわ」

「フィア、そこの所はどうじゃ」

[正直後1万年は遊んで生きていたい。この箱庭からも解放されて寓話世界を巡りたいし……け、結婚式を好きな人と挙げてみたい…]

「ほおれ見ろ。女子(おなご)から言外に好きな人ではないと宣言されておるではないか」

「むっ……そもそも一万年も世界に寿命があるのか?」

 

[うん? それは今日を含んで10日だね。寸前だけどなんとかなってるよ]

 

 あ、全然無いな。

 ヤマトとルシファーの意見が一致した瞬間であった。

 

「あ、案外少ないのう……ヤマト、やっちまうか?」

「やろう。コイツと俺は必要な犠牲だった」

[そ、そんな獲物を見る眼はやめてくれ! まだある! まだ考えはあるから!]

「なら早く言え。たった一つの冴えたやり方しか無いと思ったじゃないか」

[その為には説明が必要になる。無地の演目を諸事情で一旦他の者の手に渡した話だ]

 

 また説明かとルシファーとヤマトは思いながら聞いていると、なんだか身に覚えのある場面が流れ来る。黄金の悪魔に白かった無地の演目を渡した、それがヤマトの戦利品として黄金色になって帰って来た。だから一度所有者になっていたその者がヤマトに渡せば僕は助かる……という、そういう案だった。

 

「「……あれかぁ」」

 

 ルシファーは黄金の悪魔と協力した末に爆死したベッドのシーツを。

 ヤマトはルシファーの家から回収した黄金のベッドのシーツを。

 あぁあれが無地の演目だったのかぁ…と2人の思考が思い至り…2人同時に動き出した。

 片や逃亡、片や捕獲。身体能力の差は残酷だった。

 

「永遠の命とか嫌なのじゃ! もう直ぐ死ねるのに! 機織り機に成るなど! ヤマトよ離せ!」

「ダメだ! 俺の妹の犠牲になれ! 残酷な話だがこれから何億年は俺と共に機織りをしよう!」

「愚か者がぁ…そなたの事はあんまり好きでは無い! そんな奴と付き合うなど以っての他じゃ!」

 

[もっとちゃんと僕と真摯に付き合ってくれたなら僕がヤマト君に付き合っても良かったんだけど……ごめん、やっぱり手紙の友人の…明星の遺品を見つける方が大切だから]

 

「明星…明星…あ、そうだ言い忘れたな」

 

 あぁ、無情。まるで好感度が足りない。

 ヤマトはフィアとあんまり仲良くなれていない。

 だが……明星と聞いて先ほど思い出しかけた事のつっかえが消えたのは確かだった。

 そういえば手紙の友人=ルシファーと言ってない気がする…という具合にだ。

 

「あの手紙の主はコイツ(ルシファー)だった。これで遺品を調べるという約束は果たしたな。では連れて行くとする」

[待ちなさいヤマト君。僕は今冷静さを欠こうとしている。誰が、誰だったって?]

「手紙…明星…あぁ、そういえば妾のメル友は朱鷺(しゅろ)だったのじゃ。いやー懐かしい。喉の小骨が取れた気分じゃ」

[誰にも言ってない僕のペンネームを知ってる…! 友人確定! ヤマト君酷いじゃ無いか何がなんでも止めてやる!]

「止めようとしても無駄だ、お前が機織りになりたく無いなら俺はコイツを犠牲にするだけだ」

「やめんか! 妾は死にたいのじゃ! また物として永遠に働かされるのはごめん被るのじゃ!」

[死なせないから! 明星は絶対死なせない! 僕の最初の友達だぞ! 一緒にびぃちばれぇをするって決めてるんだ!]

「なんじゃあその限定的な望みは。まさか後99個あると言わんよな。妾は100もリスト埋めに付き合う気は無いのじゃ」

[僕の友人とやりたい事は108飛んで4000は有るぞ!]

「それやってる最中に増えて終わらんじゃろ。妾は詳しいのじゃ」

 

 フィアがヤマトの腰に引っ付いて引き摺られ、ヤマトがルシファーを米俵の様に抱えて糸を辿り、ルシファーが翼をばっさばっさとしながら川に溺れた鳥の様に暴れる。

 

 こうなったら誰にも止められない。

 あまりにも場は混沌として、全員の向かおうとする方向が違う。

 世界が後10日だけだというのに、全員が未来への欲望と望みを主張する様子は、有る意味世界中のどこよりも希望に満ち溢れているかもしれなかった。

 

「いい事を教えてやる。これ以上代案が無いなら俺は実行する」

[僕もいい事を教えてあげよう。時間を巻き戻す魔道具の準備は終えた。これ以上進むなら僕だけ知識を持って過去に逆行する]

「[……くそっ強情な奴だな!]」

 

 一向にお互いに譲らない。話は平行線のまま、事態は膠着しようとしていた。

 そして……こうなると一石を投じる事に定評のある者が動かない道理は無かった。

 

「……あぁ、妾も何か言った方が良いか? ならば……フィアよ、幾つか確かめたいことがあるのじゃ」

[なんだい? ルシファーの問いかけなら幾らでも答えてあげるよ!]

「妙にテンション高いのう…まぁ大したことでは無いのじゃが……あのシーツ…じゃなくて演目とやら、初めは白かったな?」

[うん。どんな可能性も込められるように白を選んだからね。どんな絵空事でも叶えられる様に織ってあるよ]

「それ、妾がずっとベッドシーツに使ってる内に黄金色になってたんじゃが、コレはどういう変化じゃ?」

「そういえば俺が回収した時には黄金色だったな。何か変なのか?」

 

 そこで投じられた一石は色への疑問。

 無地と言うには既に使用済みになっている事への疑問だった。

 

[うーん……ルシファー、使ってる時はどんな感じに使ってた?]

「………ヤマト、妾を召喚出来るなら呼べ。当時のことならばそっちの方が鮮明に語れる筈じゃ」

「よし、出てこい」

《………ん? 妾がおるではないか。なんじゃやはり死んでおらなんだか》

「聞きたい事がある…‭─‬‭─‬」

 

 そして、召喚されたNルシが語ったのは随分と……かなり……とても粗雑に扱った日常だった。

 やれ藁を包んで洗濯もせずにベッドに続けた。

 汚れないから風呂上がりに身体を拭かずに横になった。

 というか積極的に帰った時に身体を拭くタオルとして扱った。

 直ぐに乾くしなんでも吸うから油汚れとかそれで拭いてた。

 なんなら寝起きの小便程度は厠に行くのが面倒でその場で……。

 

「ええいやめい、やめい! これ以上は妾の尊厳を辱めるでないわ!」

《恨むなら己の出不精、悪因悪果を恨め。特に寝起きの奴は癖になってたではないか》

「知らん! 妾は介護の必要な老人ではない! そんな事実は無いったら無い!」

《黄金(笑) ここまで言えば思い出したか。安心せい、流石に記憶をなくしてあうあうしてた頃の話じゃ》

「隠語じみたものにするでなーい!! 芸術に囚われてた時は言わずともよい! アレはノーカンじゃろうが!!」

 

「……うわあ」

[…赤ちゃんみたいで可愛いね。ぎゅってしてあげようか?]

 

「そこ! やめろ! 子供を見る眼で見るな! へったくそな擁護も不要じゃ! 妾はもうそんな事する年ではないわ!」

 

 コレがヤマトの身体で鏖殺劇をやった者と同じ中身だと果たして誰が信じようか。

 赤裸々に語られて思い出したのも相まって、林檎のように真っ赤な顔は余計子供らしく映る光景だった。

 穴が在ったら入りたいだろうが、残念ながらヤマトに拘束されている。実に公開処刑に似ていた。

 

[まぁまぁ…理由は明白になったね。無地の演目は使う者の一部を取り込みながらその望み通りの歴史を構築する。この場合だと夢が望みとして、取り込む一部は汚れの一部。取り込む物に貴賤はないから……]

「……つまり、もう使われたってことか?」

[いや、それならとっくの昔に歴史に反映されてるはずだ。精々夢に見た場面が決定したくらいだろう。何が有っても変わらない運命地点(ターニングポイント)みたいな物だね。記された以上、どれだけ荒唐無稽なことでも現実になるよ]

「一応聞こう。ルシファー、使っている間どんな夢を見た?」

「覚えとる訳無かろうて。1500年前の夢じゃぞ? しかも意識が朦朧とした時じゃ」

「だろうな……誰にも分からない定まった時間(シーン)がある歴史か。使う前に把握することは?」

[僕は無理だ。其れこそ僕を封じている契約を結んだ神様達でも無理だろう。時間と運命はそれだけ複雑で奇妙な織り方をしないとダメなんだ]

 

 話して分かったのは、無地の演目はもう落書きがされた後だということ。

 例え使ったとしても、ヤマト達が望まない場所で文字通り夢のような何かが起こりかねないという事実だ。

 ルシファーがシーツとして使い続けた数十年分の変えられない(シーン)。それを呑み込めるなら、全ての問題は解決する。

 

「つまり……問題は二つ。俺ともう1人、ルシファーとフィアのどちらを道連れにするか。そしてルシファーの夢がどれだけ歴史に影響を与えるか……か」

 

 全くもって未知数で混沌とした現実だ。

 絶対に望み通りにならないと確信出来る事実だ。

 仮に覆せたなら、その人にどれだけ感謝しても足りないだろう。

 それだけ厄介な障害だった。

 

「使わないという選択は無いのじゃな」

「残酷な話だが、残された時間が10日しか無い以上コレ以外に手は無いだろう。他の手段を探すには余りにも時間が足りない」

[……其処は僕も分かっている。だけど、ヤマト君ならコレ以外の道を見つけられるんじゃ無いかって思うんだ]

「そも、改変では無く継ぎ足しじゃろう? 猶予は10日、余裕を持たせても後5日は別の手段を探してもよい筈じゃ。フィアに織らせて時間を延ばしてもよい」

[あ、それはもう無理だよ。あの機織りが一度壊れて女神が死んだ以上、もう時間と運命を織る力は無い。手持ちの布を織り直すのが精々だ]

 

「……ならば探すとしよう。転生者達なら或いは何か思いつくやもだ」

 

 ルシファーが手放されフィアがヤマトの腰から離れる。

 堂々巡りの話は一旦やめて、無地の演目以外を探す事となった。

 

[それならルシファー! 早速僕達は旧き交友を温め深めようじゃないか! 何をするにも腹拵え。休みは必要だろう?]

「のじゃ!? 離すのじゃぁー……」

 

「…………」

 

 ルシファーが早速フィアに抱えられて連れ去られるのを見送りつつ、ヤマトは帽子を目深に被る。

 どうあれ手段は見つけ、どちらかを犠牲にすれば何とかなる選択は見つけられた。

 保険があるなら人は余裕が出る物で、約束の日まで何もしないのも良いだろう。

 そう考えられる程度には、ヤマトも思考を巡らす余裕が有った。

 

「転生者も世界が終わるのは嫌な筈だ。先ずはセン、それからもう1人……自殺していないなら顔や糸は変わって無いだろう。ベルと交換されたなら……」

 

 情報を整理する。やるべき事、目指す場所を決めていく。

 手掛かりはベルの始まりの記憶とリフターの癖だ。死に様すら芸術性を求める相手の思考を読めばいい。

 となると……。

 

 

運命点(チェックポイント)

緊迫(タイムリミット)

 

 

水の寓話世界編-時系列3√

 

 

 ……最初に行く道のりは定まった。

 後はこの箱庭の動かせる者を全て使って探し出せばいい。

 

 

運命点(チェックポイント)

 

 

「……いや、やはり引っ掛かるな」

 

 いざ行動に移そう。そう意気込もうとした時である。

 ヤマトは足を止めて、また考え込んでしまった。

 

「大概の謎は解け、手段も決着も全て終わった」

 

 世界の見方を変える。全てが糸となった世界だ。

 

「フィアの正体、手紙の友人、サクラの居場所、「ディストリカ」、現実の落下……全て答えが手に入り、当て嵌まった状態だ」

 

 女神は機織りの方で、フィアは2代目の罪なく巻き込まれた者だった。

 手紙の友人はルシファーであり、別れてた魂が転生者に、巡り巡ってサクラとなった。

 サクラは魔道具の影響で箱庭の姫となり、転生者だったサクラは不幸にもレナイアに乗っ取られた。

 「ディストリカ」は転生者に転生できる失敗者による恐怖政治であり、頭を押さえる者が居なくなった以上これ以上の悪さはしないだろう。

 自分達が落ちたのは「ディストリカ」のせいであり、歴史を改変する前段階に過ぎなかった。更に言うならば、落ちること事態は『異能者』を産み出さない為の世界の理だった。「ディストリカ」は其処を利用して現実世界を落としたのだろう。

 

 "俺が糸の視界を得たのも、刀を振るえるようになったのもコレが理由だ"。

 

「落としたいから重くする。重くするには情報を増やす。確かに"見える"景色が増えるのは情報の増大、身に覚えのない経験は……やり口は不明だが、確かに増えている。兎に角、これらは情報を増やす為にやられたのに間違いない」

 

 失敗者の事だ。あれだけ手段があればそんな芸当も出来るだろう。

 事実、その力を行使したのは糸の視界を見れば一目瞭然だ。思い返すとあの未知の糸の一部は別世界に繋がる糸だった。

 

 だからこそ引っ掛かる事がある。

 全ての点が繋がり、大きな模様となって輝く真実を見たからこその疑問が。

 

こんなにも別の世界があるのに、何故俺と同じ道のり(条件)を辿った世界が何処にも無いんだ?

 

 見えていた。

 全てが糸となって見えていた。

 糸を辿り続け、冒険を続け、いつの間にか糸の先にある物が分かるようになった。

 キッカケは失敗者と戦っていた日々。完全に使い熟せるようになったのは別世界の自分の力を借りた後。

 

「ある俺は途中で諦めフィアの箱庭で死んだ。あの俺は転生者によって完全に詰まされた。あそこの俺は、未だ箱庭で強くなるのに励んでいる……」

 

 今のヤマトには見えていた。

 崩壊した世界に露出した糸を辿って、その縁を自在に結ぶことすら可能としていた。

 だが、何処まで見渡してもこの時点で……3つ目の舞台を探す段階前に「ディストリカ」を崩壊させて……それどころか"「ディストリカ」に歴史の改変をされていない世界は一つも見かけなかった"。

 

「何処までもそうだ。横を見ても存在せず、数百年数千年先の未来を見て漸く壊滅を確認出来る。少なくとも、改変されないまま「ディストリカ」を壊滅させ、残り10日を乗り越えようとする世界は見当たらない……」

 

 例えばそう、量産された布織工場の製品の一つだけ全く別の模様だったような……1人だけ別の問題と解答を解く事になったような疎外感が近いだろうか。

 他は正しく歩んだ自分を見本に進められるのに、自分だけ全く未知の選択を強要されている。

 理不尽にも特別にも感じられるが、それ以上に困惑と不可解さが勝る。

 まるで本来とは別のグループに間違って入ったような……"或いは他とは違う歴史の改変がされた"ような……見知らぬ街で迷子になってるような、言いようのない焦りが背筋を這うのだ。

 

「……異物が居る。今に至るまでじっと機を窺えるような、目的不詳の異物が」

 

 

疑心(ライアー)

 

 

‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬運命は新たに選択された。

 

 

██世界編-時系列██

 

 

 何処かで石噛んだような音が鳴った。

 

「ならば‭─‬‭─‬」

 

 こうして世界はズレていく。

 自分だけの模様を受け入れなかった者によって、藪の中まで足が運ばれる。

 果たして鬼が出るか蛇が出るか……確かなのは、混沌が更に渦巻こうとしている事だけだった。

 

「最有力はフィアとルシファー。センの捜索を理由に別れさせて……隠した手札まで暴いて、新たな可能性とする」

 

 「自動記録(ダイヤリー)」となんら関係ない転生者を暴こうと、ヤマトの眼が遂に向けられた。

 

 






LR「[刀剣:百花繚乱シリーズ]羅刹之花」
 精霊歴‭─‬‭─‬年、「不可逆の時代」に創られた刀の一振り。
 落下の日以降の現実世界の人類の生き残りが拵えた虚空の魔物用の武器であり、刀剣の表層に寓話を刻む事で特効性を持たせるのに成功している。後の文字単体で魔法の意味を持たせる「鬼文字」の走りであり、人類の生存に大いに貢献した武器として歴史に刻まれた。
 羅刹之花はその中でも最上級の頑丈さと活躍をした一振り。元々の使い手は女性なのもあって人気がある。演目では擬人化せず、しかし「鬼文字」の影響でキャラとして1/5まで弱体化しつつも、その存在を成り立たせた。
 性能としては武器として編成1番に装備されるキャラ。S1の一度での発動回数を24回に変更し、S2をターン処理なしでいつでも発動可能にする。

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