Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した!   作:何処にでもある

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 前に[R18版]のじゃロリ天使姫に転生した!を投稿したじゃないですか。
 気付いたらルシファーのイメージ図が書けてました。
 エロってすごいですね。折角なのでコッチにも載せようかと思いましたが下着姿なのでやめました。見たい方はR18の後書きか活動報告でも覗いてください。




立ち絵がある凄さは実際に絵を描いて理解出来る

 

 

 エラトリア ワトシト皇國

 精霊歴2000年 秋 「不可逆の時代」

 

 

「ん……むう? ここはどっ⁉︎」

 

 やあみんな! 気付いたら下着だけで牢屋に入れられた時、どうすればいいと思う?

 そうだね、人の眼を第一に気にするよね。誰も居なかったのは幸いだったな。

 誰だぁ、おい? 俺をひん剥いた馬鹿野郎は。手袋だけはオマケで残してる辺りガチの変態だと思うんだが。

 

「うー…恥ずかしい格好にさせよって……妾でなければ叫んでおってもおかしくはなかったのじゃ」

 

 これが元々男だった奴の力ぁ!!

 それならもっと堂々としていろと言われるかもだが、腐った教育でも長年女として育てられた以上反射で隠すくらいはする。

 

「…あ、そういえば妾は誘拐されておったの。フィアは…おらぬか」

 

 ともあれだ。冷静になってくると状況が頭に入ってくるものだ。

 直前の誘拐を思い出して、今は監禁されてるのを理解した。

 行き止まりの部屋だからか向かい合った牢屋は無いし、廊下の方は……なんだろ、直ぐに行き止まりで、途中が曲がり角になってる情報がしかない。

 

「うーむ……あ、上から見ると占いって漢字(感じ)じゃわ」

 

 占←これみたいな部屋割りだ。下の口が今いる牢屋である。

 格子窓も無いし、トイレやベッドすらない殺風景だ。

 俺を拘束するような手錠や鎖がないのは良かったけど、此処まで何もないと本当に困るな。

 せめて攫った奴くらいは様子を見に来て欲しいわ。必要だろ、そういうの。

 

 ガシャガシャ。

 

「むぅ…しかしここまでされるとはな。異能相手なら残当ではあるが……あくまで容疑じゃろうに」

 

 ちょっとやそっとでは現状が変わることは無さそうだ。一度じっくり考えてみることにしよう。

 

「最後に聞こえた連絡…相手の所属は国、または秩序側じゃろうな」

 

 だとすると、現状は普通のことなのかも知れない。

 俺にはここまでされる謂れがあるからな。異能持ってるし。

 収容もなぁ……世界中で人の年齢と見た目が変わってるし仕方ないと思うんだよな。

 将軍の話のついでにされたフィアの調査によると、"昔からこうだった"ことになってるみたいだし、"過去の偉人像や写真の人物も俺の異能の影響を受けている"。

 

「写真や絵が変わっているとはいえ、実際に過去が変わってるか定かでは無いが……いやそれでもなんか可笑しいのじゃ。異能の効果と範囲バグっとるじゃろ、バグじゃったわ」

 

 異常な(バグった)力。

 言い得て妙…というより直球の言葉だ。

 そりゃ世界の寿命も削れるよな。世界中に影響与えてるもん。テレビ観て驚いたからな、歴代将軍画がヘイローのあるショタの絵になってたの。

 

「……あれ? これ妾が悪いのではあるまいか?」

 

 まとめると故意で異能に目覚めた俺の自己責任である。

 なんてことだ、相手は正当性のあるプロだった訳だ。

 センになんとかして貰う為に無罪にならないといけないのだが、出来るかの雲行きは大変怪しくなった。

 

「むむむ……すやぁ」

 

 ………ぐぅ。

 

 

「‭─‬‭─‬よくもまぁのうのうと眠っていられるな? 異能者めが」

 

「むにゃ?」

 

 そんな風にどん詰まりに悩んでいると、いつの間にか牢屋の前に軍服を着た男達が居た。

 まぁ全員俺のせいでショタなのだが、本来の年齢通りの見た目だったら犯罪臭がすごいことになっていそうだ。

 ヤマトが俺を殺したく無いからってやばい手段に手を出したのは俺らの方だけど、ここまで警戒される振る舞いをした覚えはないぞ?

 

「なんじゃ、食事を運ぶにしては随分と付き人を連れておるのじゃな」

 

 先頭に立つ偉い人、その後ろに7人。ぞろぞろと下っ端っぽい見た目の連中を引き連れてきた。

 しかし軍服か。て事は国、軍の一部って感じかね。

 付き人が持つ物が物騒だったり変なのがあったりするのだが、まさか俺に使うつもりか?

 

「異能者は天皇陛下の臣民ではない。存在自体が罪だからだ」

 

「さようか。妾をそうと思ったのなら殺せばよかろうに」

 

「異能者は死を合図に世界を殺す類いの連中もいる。最優先は情報を得ることだ」

 

「つまり尋問か? よかろう、その末に死があるならば絶えてみせようではないか」

 

 言っとくが、俺は耐えずに生き絶える気はまだあるぞ!

 まだまだ生きる気と死ぬ気は均衡中だからな!

 

「……冷静だな。大抵の者は無自覚に得たが故に混乱するのだが。自覚があるのか?」

 

「そんな物を"使った覚え"はないが、これでも1500年は一国の王をしておった。今更拷問の一つや二つ、屁でもない」

 

 そう言うと相手は変なのを持った付き人をチラリと見てから、僅かに眉をぴくりとさせる。

 どうした、やらないのか? 俺の異能は自動発動みたいだから使った感も持ってる感も全くないぞ!

 まあ自分から定義したからやる事やってる自覚はあるけど。

 

「……嘘ではない? まさか、本当に王だと?」

 

「嘘を吐く理由なぞないわ。……まぁ、コチラではなく6つに分れたる寓話世界(ミソフィア)の一角ではあるがの?」

 

「待て、寓話世界(ミソフィア)だと?……そんな筈…いや、まさかその翼…もしや…異能由来ではないのか?」

 

「生まれ付きじゃよ。天使族、天の寓話世界「セレスティア・ミラージュ」で「女王」とよく呼ばれておったわ」

 

 そういえば予想上の大男とかじゃ無いから下着姿でメッチャ堂々としてたな。

 まぁいいか。子供に見られて恥ずかしい所なんて一つもない。

 中身は大人でも見た目が見た目だからな、案外普通に話せちゃうわ。

 

「………ならば1つ、いや2つ問いたい」

 

「おう、なんでも聴いてみよ。妾に恥すべきことなぞない」

 

「1つ、自身を件の女王と証明するものは? 2つ、魔道具で"こちら(エラトリア)側のある戸籍が改竄されていた"理由について」

 

 どっちもサラッと言えるな、ヨシ!

 

「1つ、"そんな物は元よりない"。女王とは妾こそを指す言葉だったが故に、妾の存在こそがその証明。この血、この顔、この翼こそが何よりも証明である」

 

 これはマジでそう。

 サクラが俺に成り変わってるのがどう処理されたか定かでは無いけど、継続自体必要とされなかったから特にそういう証とかはないんだよ。強いて言うなら俺自身が権力の象徴か?

 

「2つ、現実世界(エラトリア)側の者が妾と成り代わったからじゃ。あそこは大抵のものはあるのじゃ。事故か(わざ)とか、妾も気が付けば現実世界(エラトリア)で目が覚めておった」

 

 使った当初マジで混乱してたのを覚えてるぞ。

 起きたら寓話世界(ミソフィア)に繋がる奈落が何処までも続いているんだ。

 崖でプラプラしてる廃電車の座席で目覚めてびっくりしたからね。飛べても肝が冷えるわ。

 その後自分から落ちてヤマト達と合流する辺りは関係無いから端折るとしよう。

 

「ま、そんな訳じゃ。今の妾は其方らの言う通りワトシトの一市民、ということになっておる。証明をこの場で出来ない以上、どんな扱いも甘んじて受けようではないか。よかったの、妾の国の見解としては無罪確定じゃ」

 

「………者共、一旦戻るぞ」

「はっ⁉︎ 宜しいのですか!?」

「異能の影響を受けた被害者の可能性がある。なに、異能は異常な分融通が通じない。特にあれら(真偽関係)ならばな。なにより測定によれば未だ1段階、まだ信じるに値すると判断した」

「しかし…単なる気狂いかも…」

「身体検査は終わらせただろう。脳にチップが無く、翼も本物と確認したのはお前だ」

「は! 身体は華族以上のそれでした!」

 

「戦で品定めしてる傭兵みたいな言い回しじゃな」

 

 おお、なんかいい感じに進み始めた。チップとかちょっと怖い言葉があるけど服くらいは貰えそうだ。

 

「それに俺は一度天皇陛下に会った事がある。品位と立ち振る舞い、何よりも度量が本物のそれだ。異能はそんな細かい所まで手を回さない。異能専門の我々ではなく「魔対(魔法犯罪対策班)」の連中と歩調を合わせるべき案件と見た」

「出ましたね、隊長の天皇自慢」

「護衛として遠くから見ただけなのにな」

「……そこ、後で処罰を覚悟するように」

「「はっ! 申し訳ありません!」」

 

「楽しそうじゃの、お主ら……クシュ!……風邪引いたかの?」

 

 そこからはなんか色々大変そうだなぁってなる事ばかり言っていた。

 何を言っていたか? 申し訳ないが俺は理解を放棄した。専門用語が多かったのは覚えてるぞ。

 

「おー…ここがそうか」

「ええ、上官の判断が狂ったとしか思えませんが、泊まる事も出来る来客室です」

「なんでもよいわ。元より脱出など考える気も湧かんからの」

「そうですか。目隠しを外すので大人しくするように」

 

 ぼーっと聞き流していたらワンピースくらい簡素な服を貰えて、中からは出づらいがそこそこ快適な部屋に連れてかれたのは確かだ。いやー、いつでも食べられる物があるだけでも最高だね。

 

「以後は処罰として2週間のトイレ掃除か貴女の監視の二択のじゃんけんに負けた私が監視として付くこととなります。滅多な要望を通すつもりはないので悪しからず」

「分かってお…なんじゃあその二択は。妾のこと、トイレ掃除以上に嫌なのか?」

「異能者の監視なんて命が幾つあっても足りませんから」

「ははぁ…そんなものか…ま、元より大したことを頼むつもりはなかったわい…」

 

 まぁ俺は寝るけど。

 

「むにゃ…布団があついのじゃ……あたまいたい」

「風邪ですか。異能の物ではないですよね」

「なんじゃ病気の異能もあるのか? んな訳あるかい…のじゃ…」

 

 俺が風邪なんてなぁ、天使は死んでも風邪引かないって思ってたんだが。最近のことといえば普段より沢山飛んで動いて、雪山登ったり色々と有りつつも1500年振りに食べる事が出来たくらいで……だからかぁ。

 

「ケホ、ケホ…さすがの天使でも無理が有ったか……情け無いのぅ」

「見た目と相まって本当に死人のようですね」

「生きておるよ、いやになるほどの……」

 

 運が良いことに部屋は良い所に移し替えて貰った。しばらくはここで静養することにする。

 ちくしょー…簡単に死なないからって辛いのは普通に辛いんだぞ…うおお、3日で治してみせらぁ!

 

「うぅ…やまとぉ…取り敢えず水をおくれ…」

「……このくらいでしたらやってもよいでしょう。はい、どうぞ。薬は許可が下りないでしょうから、そこは気合で治してください」

「おお、ありがたい…50年無税…」

「そこは100万年では?」

「1000年すら途方もないのに、それ以上を生きるつもりか? 死にたくなるほどつまらぬからやめておけ…ッ! ケホッゲホゲホ!」

 

 しかし、この時の俺は知らなかった。

 

 俺の長年の酷使で弱りきった身体に現実世界(エラトリア)特有、ワトシト特有の風土病が身体に致命的な破壊を齎すことを……薬を飲めず手遅れになったことを……かつての死病だが、天使のしぶとさで死にはしないと……。

 

「あ"ー…ま、長くても5年までには来るじゃろ」

「誰がですか?」

「妾の旦那じゃよ」

「居るんですか!? 異能者なのに婚約者が!?」

「疑惑じゃろがーい…まだ指輪は貰っとらんが、平民じゃったからの、」

 

 この風邪は‭─‬‭─‬ずっと治らないまま、死ぬまで付き合う事になる事を、この時の俺は知るよしもないのだった。

 

 


 

 

 エラトリア ワトシト皇國

 精霊歴2001年 春 「不可逆の時代」

 

 

 テーブルを囲う4人の人影があった。

 

「………」

「ヤマト、今日で高3になったな」

「………ああ」

「…ええと、今日はヤマトの為に良い牛肉を買ったの。しゃぶしゃぶにしましょう!……ほら、将軍様が治めたっていう場所のお牛さん! ママ、奮発しちゃった!」

「………ああ」

 

 気まずい沈黙が場を支配する。

 ヤマトの反応に両親が困り果てたように眉を下ろし、もう1人の《女物の学生服を着た》人影に助けを求める。

 この1年ですっかり定番になった流れだった。

 

「…んしょと、ヤマト君。ぎゅーっだ」

「……」

「大丈夫、大丈夫だよ」

 

 この1年間を訳アリだがヤマトの恋人…という事にして居候させているフィアである。

 始めは困惑と共に無理やり住まわせて貰ったものの、後々の振る舞いによってすっかり家族の一員として受け入れられる事となり、諸事情でヤマトの行っている学校にも通う事となった。

 その為、最近では今までの十二単ではなく普段から学生服を着用している始末である。

 

「帰ってくる。帰ってくるから、ね?」

 

 あの後、急いでルシファーの元へ行ったヤマトは担がれたルシファーと出待ちされているフィアを発見。速攻で取り返しに入ったものの、いざ刀を当てると幻覚のようにすり抜ける。

 するとフィアのことは諦めたのか、幻のようにすり抜ける相手はそのままルシファーを連れて行き……フィアが目覚めた時には全て終わっていた、という結果となった。

 

 ヤマトにとってそれがどれだけ悔しく腹立たしい事だったか。

 フィアがそのさまを見て"憤懣(ふんまん)"と形容したのだから相当である。

 

「…腹は空いてない。今日は先に部屋に戻る」

「ぁ…」

 

 後はもう転げ落ちるように事態は悪い方へと流れ、サクラが消息不明になったのだから堪ったものではない。

 

 ギィ…ギィ…ギィ。

 

 寓話世界(ミソフィア)と違って学校に通う必要もあり、出席日数の為にサクラの代わりとしてフィアが魔道具で変装して通い……ただでさえ忙しないのが学生だというのに、橙将軍の急な改革に2人の消息と手応えのない捜索。

 

 バタン。

 

 この1年でヤマトの精神がすり減るのも、仕方のない事態だった。

 

 カチ、コチ、カチ、コチ…。

 

「……………クソッ!!」

 

 梯子を登る時の木のしなり、屋根裏の扉を閉める音、時計が空間の支配者面をする様に鳴る。

 それら全てが異能を使わない為に眼を開けないヤマトの精神を逆撫でにする。

 イラつき、乱雑に散らかった物に当たる。音と臭い、触れる感触だけの世界は、見る力のあるヤマトには酷く退屈で苦痛なものだった。

 

「……1年だ。召喚も魔道具も全て使って、思い付く限りの策を練ってなお‭─‬‭─‬奴らの影も踏めない!」

 

 最初に手持ちの影武者として優秀な者に、召喚時間を延長する魔道具を併せて時間を作った。

 次にルシファーとサクラから拐われる要素を洗い出し、其々の要素を持たせた者達を仕立てた。

 慣れないながらもスマホやパソコンの使い方を覚え、テレビや新聞、人伝いに虱潰しに探した。

 

 勿論授業の内容や友人関係の変化を影武者から又聞きしながら、フィアや友人、ダメ元でも探偵などに金を振り撒いての捜索網を敷いた。

 屋根裏を拠点としてフィアの協力の元、再編(レベル上限拡張)臨界(スキル性能向上)を行う為の施設や探査専用の設備だって用意した。

 

 それでも、ヤマトはあの日以降彼女達の姿を見る事は叶わなかった。

 

「預言者、未来予知者、名探偵……糸は見えずとも、手持ちのお陰である程度の推測は出来てるんだ……異能関係、転生者の仕業、国家規模……最大の問題はそれらが"具体的に何処まで影響を与えられるか、分からない"ことだ」

 

 異能関係だ。なるほど、使う側か取り締まる側か不明だな?

 転生者の仕業だ。なるほど、どの転生者で、全員で何人居るんだ?

 国家規模だ。なるほど、捜索範囲が全国に広まるな?

 

「無駄足、骨折り損、徒労、空回り……もう何度経験したかも覚えてない。とっかかり…とっかかりさえあれば…」

 

 何度糸の眼を、ルシファーの精神を自分の身体に持ってこようとしたか覚えていない。

 これを『糸』にさえしなければと、支配が2度と解けないと知らなければと何度考えたことか。

 世界が持つべき寿命を削るからこそ使わないで……なによりルシファーの心を消したくないから使わなかった力だ。

 文通すら出来ない事がどれだけ口惜しいか、ヤマトはこの日々で何よりも痛感した。

 

 そうして暗く、物を当てて時計の音すらしなくなった静かな空間で壁を背にずり落ちるようにして(うずくま)る。

 

 だからだろうか。

 

 …!……!……ろ!

 

「‭─‬‭─‬人の…助けを求める声か」

 

 この1年で研ぎ澄まされたヤマトの耳に、その声が聞こえたのは。

 

「関係ない。それどころじゃ……」

 

 ……だ! し………な……よ!

 

 対して珍しくもない。

 あちこちを巡る間にそういう出会いは何度かあった。

 幾ら将軍の改革が煌々と輝き凄まじくとも、影も闇もその分広くなるものだ。

 特に態々天皇に権力を返した将軍を名乗る手合いだ。

 不満を持つ者は陰に隠れて活動しているのはこの1年で把握していた。

 ヤマトが撃退したのも一度や二度では、決してないのだ。

 

 ……チャキ。

 

「………はぁ、どうせ今は暇だ。助けなければルシファーとサクラに合わせる顔が無い」

 

 だから今回も同じだろう。

 乱れた世の夜はいつだって剣呑だ。ヤマトの住む都心は特に。

 憲兵に任せても良いだろうが、それよりも自分が向かう方が早いだろう。

 糸が見えなくても音の色は辿れるのだから。

 

 出入りのし易いよう取り付けた窓を開けて、屋根を渡って走る。

 夜の冷えた風を滑る様に通り、助けを求める者の元へと向かった。

 

「散歩してたら面白そうな奴が通り過ぎたわねぇ。……少し物色と洒落込もうかしら。前の私から寄り道しろって伝えられた事だしね?」 ギィ…。

 

 ヤマトの立ち去った屋根裏に、冷えた秋風と青い月明かりが差した。

 

 

 ↙︎視点変更:EX → LR

  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

『応答しろ!……ッダァもう! こんな所で死にたくはないでありますよ!』

 

 使えない通信機を放り捨て、少しでも走り易い様にする。

 後ろから放たれた剣が自分の銀髪を掠り…間一髪と避ける。

 そのついでに前方に走る勢いは殺さずに一回転。後方を向き、出鱈目に銃弾をばら撒く。

 結果は見ない。どうせ足止めにもならない気休めだ。それでもタイミングさえ良ければ数秒は稼げるのだからやるしかない。

 

「‭─‬‭─‬異能者がそっちに向かった。回り込め」

[了解、引き続き狩り立てて追い詰めろ]

 

『くそっ…! 休戦と思ったらこれだなんてツイてない!』

 

 全方位から突如として飛翔し襲い掛かる剣を銃剣で弾き、または発砲して撃ち落とす。

 一歩でも間違えたら終わりの戦場は幾らでも渡り歩いたが、ここまで(せつ)を狙ったものは初めてだ。

 

『‭─‬‭─‬ダァ! 走馬灯がうざったいでありますねぇ!』

 

 脳が現状を打破しようと、拙の意思に反して思い返す。

 拙は一体何をしたのだろうか。悪い事は確かにしたが、ここまでされる覚えはない。

 

 拙は村長だ。とある田舎の、軍役を6年経験したじいちゃんの家の一人娘として育って、じいちゃんが死んだ時に村長となった。

 だから銃剣だって他の平和ボケした村人よりは使えたし、小生意気で拙に楯突く連中だってすったもんだの末に和解してやる度量を見せてやった。

 そんな風に拙なりに毎日を必死に生きていたら、突如として小さな世界(箱庭)に閉じ込められて放流された。

 それでも閉じた世界で和解した奴らと協力して生きていると、見知らぬ連中が狭い世界を壊して侵入した。

 すわ助けかと思えば……慣れない武器、慣れない軍服、覚えのない所属、聞き慣れない単語を捲し立てて立ち去り……程なくして、"ちんまくて丸っこい連中が殺しに来た"。

 

 思えば最初の連中が何かを言ってる時、生意気な連中の中に居たメガネの小賢しい奴が冷や汗をかいていた気もするが、もう後の祭りだろう。

 訳もわからず戦って、逃げ惑う村人を鼓舞して立ち向かわせ、指揮して、攻撃の手が緩んだ時に押し返して、防衛線を作って、無線を手作りして情報を集め、拙達は「フレア・クロニカ」と「テラ・ファブラ」の戦争に巻き込まれたと知った。

 

 大きい話で言えば、「寓話世界(ミソフィア)」の構造やらも聞いたが、そんな事は大事ではない。

 自分らが空想の人物だと知ってどうするというのか。拙はじいちゃん譲りの馬鹿野郎だ。賢い考えは出来ないし、褒められたら天狗になるし、同級生の連中に散々してやられるくらいには学習しない。

 それでも、村人共の為に眼の前の戦火を生きて潜り抜けるくらいは出来た。

 拙はじいちゃんから教えられた戦場(いくさば)の走り方と勝負勘が有った。

 使ったのも活躍したのも初めてだが、拙はみんなと一緒に戦場を生き残る事が出来た。

 

『それが落とし穴に落ちたと思えばコレでありまする! まこと世の中とは不条理でありますなぁ!』

 

 空になった弾倉を交換し、訳のわからない事を宣う連中から逃走する。

 しかし……それも長くは続かない、弾丸が限られているのもそうだが……撒けないまま行き止まりに辿り着いたからだ。

 

『くっ!』

 

「どうしますか?」

「戦闘能力がある。現場で殺処分するべきだろう」

「了解」

 

 壁を背に銃口を向ける。カチッと打ち尽くした音。……相手が曲がり角から姿を見せる。

 1人は虚空から取り出した剣を持ち、1人は砂を纏って護りを固め……もうダメだ。

 

『また美味しいご飯を腹一杯食べたかった……』

 

 そう思って眼を瞑り‭─‬‭─‬春風が頬を撫でた。思わず尻餅を搗く。

 

 カァン!

 

 ‭─‬‭─‬何かが弾かれる音と共に眼を開ける。2人の襲撃者が倒れると共に、自分が助けられたのだと理解した。

 

「……なら、俺の家に来るといい。お目当ての連中を引き連れたお礼だ、良い牛肉をご馳走しよう」

 

 それから助けてくれた人を見て‭─‬‭─‬月明かりに照らされた一筋の赤を見た。

 

『‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬』

 

 それを見て、自分は何を強く思ったのだろう。

 憂いを帯び閉じた眼に、夜に馴染んだ立ち振る舞いに、憐れにも似た感情を抱いたのは覚えているが……。

 

「ああ…だが一つ。これは先に聞くべきだろうな」

 

 窮地を助けられ、助けた者がイケメンで、しかも訳アリそうなの危険な雰囲気を持っていて……。

 

「‭─‬‭─‬お前、名は?」

 

 トドメに、そのすごく"らしい"雰囲気は……。

 

『……ギュン!!!』

 

 田舎者の乙女心には、余りにも毒であった。

 

「…えぇ?」

 

 とんでもねぇスケベ男児でありまする……都会はこえぇ場所だぁ…。

 

 結局最後に思ったのはそんなくだらない思考。

 戦闘直後で興奮した脳の性欲であったとさ。

 

「…もしやこれ、俺が全員運ぶ必要があるのか?…マジか」

 

 その後ヤマトは3人を家に持ち運ぶことになったのだった。

 その終始納得出来ない顔をしていたのは……ご愛嬌ということとする。

 

 






LR「[7日をめぐっては]ツマヨイ」
 精霊歴1999年、「不可逆の時代」に書かれた作品のキャラクター。
 所謂(いわゆる)日常モノであり、毎月7日の出来事が書かれたエッセイ。七夕が一大イベント。
 魔法や魔道具も無い田舎なので戦闘は不適切であり、箱庭を育てる一住民として扱った方が懸命だろう。
 知名度はあるものの、世界的に見れば其そこまて。それでも敵キャラであるツマヨイがLRまで押し上げられるのは、寓話世界を含む世界全体の人口が増えた結果でもある。
 性能としては銃弾を扱い回避性能もある遠距離アタッカー。ランクが高いので高威力ではあるが、性能の噛み合わせが悪いので育成の優先度は低い。

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