Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した!   作:何処にでもある

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 例えば特定の練度と実力のプレイヤーしかクリア出来ないクエスト、ギミック、強敵。
 シナリオで言えば特定の選択を選んだプレイヤーの前にしか出ない第三の道。
 PCやスマホが古すぎてゲームがそもそも出来ない。
 課金圧。
 そういう時、プレイヤーはゲームに選択されていると言えますよね。




プレイヤーが選択される事態とは?

 

 

 エラトリア ワトシト皇國

 精霊歴2001年 春 「不可逆の時代」

 

 

(‭─‬‭─まじかぁ‬)

 

 一つ問おう、他人の生首に宿った時、人はどうするべきだろうか。

 

「‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬漸く、この身体を手に入れられたな?」

 

「……誰だ、お前は」

 

()()()()()()。如何なる身体であろうと、それに変わりはない」

 

 答えはただ一つ。なんか大事な事を話している連中を見守るしか無いのである。

 なんとも奇妙な光景だよな、ヤマトとかえる(将軍)がシリアス顔で話してる光景は。

 なんで俺がかえるの頭部に宿ってるかどうでも良く…ならないわ。一瞬放っておく気になりかけたけどこっちもこっちで大概な異常事態だわ。

 

「そうか。ならば‭─‬‭─‬」

 

「殺す、だろう? 我が父よ。その殺めることしか出来ない手はいつもそうして真っ赤に染まっていたな」

 

「‭─‬‭─‬よく分かってるじゃないか」

 

「この身も心も父上から継いだもので出来ている。子が親を知るこそなぞ、容易かろうよ」

 

 でも向こうもなんか意味深で気になるんだよなー!

 なんで殺し合うのが前提みたいな空気なんだよ、お互いを知る話し合いは大事だってそれ1番俺は実感してるから! ちゃんと話そうぜ本気で。

 

(じゃがなぁ…どうすべきか。かえるの翼があれば上手くいけば飛べたじゃろうが、生首ではそれも難し………あっ)

 

 そうだいい事思いついた。これ運命だろ、俺だからこそ、今だからこそ出来る事があるじゃん。

 先ずさ、俺の翼は謎空間にしまってるし、ワンチャン出せるんじゃないか?

 よく考えたら何故かかえるの身体に付き纏っていただけだし、魂的なのから出せば飛べはするよな。

 それで何が変わるかは分からないけど、驚かせて怖がらせれば一旦頭も冷えると思うんだよね。

 よし来い、俺の翼。

 

 バササササ!!!

 

「「!?」」

 

 するとどうした事だろう。他人の翼である筈の、斬られたかえるの翼からバサバサと翼が生えてくるではないか。

 …え? もしかしてあの翼って元々俺の? なら今乗っ取られてるかえるの身体も俺のものになると思うんだけど……えい。

 

「「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!?」」

 

「…⁉︎ 何が起きている! なんでお前から声が二重に聞こえるんだ!?」

 

 あ、もしかして出来るかなって思ったら出来た。

 

 "入魂"の絵の具()役の押し付け。

 

 いやあ、懐かしいな。悪魔との2人暮らしの時はこれで黄金を荒稼ぎしてたっけ。

 魂を込めて芸術作品を創る技術なんだけど、最近はメッキリ使わなくなったんだよな。

 なんでやらなくなったんだっけ……ああそうそう、確か今の一度限り悪魔の力を使える身体を創り出し、転生したからか。

 なら今も使えない筈だよな? 同じ身体ではある訳だし‭─‬‭─‬逆に考えればいいのか?

 

「「なぜ俺が削られている!? 誰なんだ、俺を、わたしを削り取っているものは!?」」

 

 今は同じだけど同じじゃない…あー、"別の奴が混ざってるから出来てる"って感じ?

 身体はかえるの分、心は将軍の分、それを使い物にならない俺の身体で(かさ)増しに出来てる訳ね。

 成程、転生した俺と寓話世界の住民であるルシファーの関係其の物だな。2人で一つだ。

 

 パキャッ‭─‬‭─‬ポキャボキパキガリグチャ!!!

 

「「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!?」」

 

 よし、じゃあ今2人が使ってる骨と髪と血と肉と皮と内臓と魂の9割9分9厘を貰おうか。

 あ、残り1厘分の骨は俺の筆と指にする分な。眼は今の状態でも見えるから勘弁してやる。

 ちょっと2人の血が混ざるかも知れないけど、まぁ兄妹くらいの関係に落ち着くくらいには分けるから安心してくれ。

 

 今から2人に分けて描き直してやるから。

 将軍の方もさっきの言い方的にヤマトの息子だけど身体が無かった感じだろ? 母が誰か知らんが、それならちょいと用立ててやろうじゃん。異母の縁って奴だ。

 

「……リフター! セン! 何が起きたか教えろ!」

「自分で見た方が早いわよ、たったさっき異能を元の眼に戻してやったから」

「あ、ついでに言うと出口も開いたし私達はこのまま帰るよ。もう約束は果たされたし、もう1人の方は案外手間が掛からなくて楽に終わったしね」

「……何を言ってるんだ!」

「"もう眼を開けられる"って事よ。じゃあね凡人、強いだけのおバカさん?」

 

 さぁて、生首も材料にしたからか意識が骨の指に移り、ヤマトの連れが帰ってったがやる事は変わらない。

 本当なら彫刻の方が得意なんだけど…今の状態がどれだけ続くのか不明だし、時間が押してるなら断然絵だ。

 1人の子供の体積で2人の人間を創る……まぁやれるだろ。材料になるのって死ぬほど痛いけど、その苦痛の分だけ良い作品(身体)になる訳だし、存分に苦しんでくれ。

 

 俺なんて何度もやったんだからさ。

 

「…開眼……本当に元通りだ。いつの間に……って、ルシファーにサクラ!? なぜ魂だけに!?」

 

 あ、そういえばコイツ(サクラ)のこと忘れてた。

 お前起源遡れば俺がルーツだし、魂あるなら雑に身体創るだけでいいか。俺だしそれでいけるだろ。ほい、ちょちょいっと。

 後はフィーリングで身体と魂を繋げればええか。ほい一線(リンク)

 

「一体何を描いて…サクラの生首が生えた!? 待てルシファー、今何をした!?」

 

 芸術活動。

 もっと言うなら人体錬成。

 更に加えるならテーマは「継承」にしようって考えてる感じ。

 まぁ…。

 

(そこに妾の感情を混ぜるならば、家族同士で争うくらいなら、このくらいいい加減な終わりの方がマシって話じゃよ。血と消毒液(アルコール)の臭いを嗅ぐのはもう懲り懲りじゃからな)

 

「…………」

 

 どうせ聞こえないと思うけど…一応ね、家族な訳だし。独り言でも説明しようじゃん。

 積み重ねが少なくても、家族なら争う必要だって無い筈だし、お互いに支え合えば幸福になれる筈だ。

 俺は一度も経験したことないけど、みんながそう口を揃えて言うならいつかはそうなる筈だろ? 

 

「「いだい"……辛"い"……も"う"…」」

 

(あぁ、子供らよ。死にたくば殺してくれと欲するでないぞ? それはこの世を諦めない苦痛で、意欲じゃ。………楽しい、嬉しい、気持ちいい…そんな達成感に通ずるのが活力ならば、悲しい、辛い、苦しい‭─‬‭─‬死にたい。それらはより長い生を掴む為の意欲である)

 

「「「…………子供ら?」」」

 

 俺は死んでも願いとか、希望とか捨てられないタチだし、使えるならどんな失笑を誘う手段でも使うんだよ。

 生きたいと思ってた時は…今でもそうやって笑い話のような、質の悪い冗談のような今を最大限活用し、させられて生きて来た。

 一周回ってそのせいで死なない今に苦しんでる訳だが……まぁ、何もかも諦めてしまうのが1番いい筈なんだよな。

 俺はそれを悟るのが随分と遅く、飢えに耐えかねて己自身の魂を食い尽くして死ねなくなったからな。

 どれだけ死ねないか? 骨の指先だけなのに意識がある、今の姿を見てから言ってくれ。どうやったら死ねるんだこんなの。

 

(意があるからこそ生を欲せて、活があるからこそ生を得られる。だからこそ、それは"活動意欲"と呼ばれるのじゃ)

 

「待て、子供とはどういう事だ?」

「…もしかして"友だち"ってママだったの?」

「何故…なぜ俺が貴女の子供だと分かったのですか?」

 

 何言ってんだお前ってなるかもだが、これは実感しないと分からない話だからその感覚が正しい。

 俺のこの感覚を言葉にしようとするとこうなるんだよ。

 昔から言葉にするのは大の苦手だったからな、口調の補正で辛うじてそれらしく喋れてるくらいだ。これ(口調の強制)も長い付き合いだが、これはコレで悪く無い。偉そうに喋るにはかなり向いているしな。

 

(つまり、お主らはまだ死にたがってない。殺せと思うのはそれが楽になるからじゃ。楽が死の先になく、生の僅かなひと時にあると知れば、自ずとお主らの足先は生に向かうじゃろうな。ほれ、喜怒哀()とよく言われておるじゃろう? 死の先に楽は無く、次の生があるだけ。楽とは、生を四分割した中にこそ有るのじゃよ)

 

「ダメだ、まるで言葉が聞こえてない!」

「まって、まって? え、ママなの? ほんとう? まって友だちがママだったのにあたまがおいついてないから!」

「答えろ! おい、さっき苦しんでる時に反応していただろう!」

 

 まぁ、戯言(でまかせ)だけど。

 ちょっとキザっぽいが、独り言だし少しカッコつけても良いだろ。

 それはそれとして俺はサクラになった俺を目指してるって続いてるけどな。

 

 死の先に生が有っても、次に任せれば前任者は無へと消える。

 

 俺の狙いはそっちだからな、ヤマト次第、状況次第でもう少し長生きするのもやぶさかじゃないけど、それはあくまで死ぬまでのサブプラン。本命の死を遂げられるならそっちを優先する。

 初志貫徹って奴だ。これも大事な考え方だろ?

 

(故に其方らには家族としてやり直す機会と‭─‬‭─‬‭─‬()()()を与える)

 

「「「だから待てって言って‭─‬‭─‬!!」」」

 

 さて、ここで一つ伝え忘れていた事がある。

 

 語る時間が足りないから作品を凝ってたら絵の具()が足りなくなっちゃった。てへ。

 

 だから俺の魂やその他諸々も使って仕上げをしていた。

 お陰で記憶や人格となる"俺自身"は筆に残ったが……それら全てを抜いた「無垢な魂」はこの2人の子供達に与える事に成功した。

 子供かどうか? 血より濃いのを分けたから実質子供って事で。

 痛みは無かったか? 死ぬ為の痛みだから無視したよ。作品を創るのに邪魔だったし。なんか途中色々騒いでたのを聞く余裕が消えてたが、まぁ作品に集中出来たから結果オーライだ。

 

「…………えっ」

「……母上の…命?」

 

 くくくっ意味もわからず身体が二つになったらびっくりしただろうな。

 意味もわからず転生させてやって旦那と子供達を怖がらせてやったぜ!

 そして見てるか? 前世の中学の友人よ、お前が口走るなんか妙に記憶に残ったネタ達もコレで全部達成だ! 随分と長い時間を掛けたが遂にコンプリートだ! やったぜ!

 

(文字通りの「永遠の魂」の二分割じゃ。あらゆる因果も因縁も妾が持っていった新品、その白紙はお主らの楽しい記憶で埋め尽くしてやるがよい。活で満たせば、生は楽しいものに成るのじゃからな)

 

 肉体も魂も消えたからか、俺という存在もこの筆に溶け込んで消えていく。

 思った通りになって俺も嬉しい限りだな。名付けて「転生の女神」作戦だ。イケてるだろ?

 

 物に心は宿らない。故に物になれば己は消えていく。

 

 どうだ? 俺も中々賢いことを閃けたって思うんだが。

 翼の確認から始まって全部自分の思い通りになったのコレが初めてな気がするわ。

 

「‭─‬‭─‬待て、待てったら! くそっ! なぜ触れない!」

 

(どうせ最後まで誤解が解ける事もないんじゃ。死に別れの挨拶は不要じゃろう。妾の事は各々勝手に思い、忘れるがよい。ではな、ヤマト、ミカエル、橙、サクラよ)

 

 心残りとしては腹の中に居た子供は結局守れなかった事だが……まぁ、母親なんてそんなもんだろう。

 結局前世の親と、妹にした選択と同じことをした気もするが…そこは血と因果だな。

 水よりも濃く、死んでも切れない縁だった。

 己の行い(殺す選択)己に帰って来た(更に殺す選択になった)

 

 この後はそうだな。

 意識が無くなり、いつかこの骨筆が残らない程壊れて、この世界に還っていくだろうな。

 随分と長い時間を掛けたが、余りにも薄く、性に合わない道のりだった。

 

「‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬!‭─‬‭─‬‭─‬!」

「‭─‬!‭─‬‭─‬‭─‬!」

「‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬!‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬‭─‬!」

 

 ではさようなら。どうかコレからの一生で、死にゆく俺に嫉妬しないように。

 

 

 

 

 

 

 

 光も音も消えて来たな? これだよコレ。俺が求めてたのはコレな。

 

『ふむ、望み通りとなったか』

 

 だな。望んだ通りになった。

 

『ならば、謝る相手はおらぬのじゃな?』

 

 ………実は申し訳ないと思っている相手はいる。

 

『ほう、誰じゃ? 妾か?』

 

 俺をルシファーにした奴が居たなら、ソイツはきっと織姫か彦星だろう。

 居ないなら、もう1人も居な………うん、誰ですか?

 

『妾はルシファー。姿は見えるじゃろ。つか見えよ』

 

 さよか。見えないからこのまま死ぬ。

 

『待て、最後まで身体を使っておいて妾に何一つ遺さぬつもりか』

 

 腕を掴まれた感覚がある。骨筆になった筈なのに、だ。

 うーん、何も感じなくなったけど消える感覚が止まっちゃったな。

 もしかしてまた死に切れない感じか。今度は筆として過ごす事になりそうだなぁ。

 

『それよりほれ、妾の分の身体と魂を返せ。利子付けて100億万年生きられる天生を返せ』

 

 この厚かましく感じる物言い…間違いない、ルシファー界の小物の方だ。

 まぁその人生を奪った俺が全面的に悪いし…分かったよ。

 一向に夢にも出てなかったからてっきり居ないのかと思ってたけど、居たならやるだけやる。

 ちょっと待ってろよ? 今から筆の身体で描く感覚掴むから……よし分かった。

 

『はよ、はよ、言っとくが妾の黄金も全て返せよ? 芸術家よ、はよ』

 

 承知しました、お姫様。

 精々この身が壊れ果てるまで描き続けましょう。

 死にたいだけで死に急ぐ気は無かったけど…まぁルシファーには借りが沢山有るからな。

 なんで居るのかもう気にするのも疲れたし、脳死でやらせて貰います。

 

『うむ、よきに計らえ。今こそ妾の天生を取り戻させよ』

 

 ルシファーの人生を取り戻す…あ、ヤマトと子供達はどうします?

 

『殺せ。妾達を穢した奴とその子供じゃろ? 悍ましゅうて吐き気がするわ』

 

 ですよねー。1500年俺の人生をどう見てたか分からんけど、自分の意思で無ければそりゃそうだ。それなら力は渡しときますね。

 

『なんじゃあ妾を働かせるつもりか? お主も自分の身体を作ってなんとかせい』

 

 あ、はい了解です。イヤなんでサボります。

 

『コヤツぅ…死にたがりの被害者の癖に擁護しよって…ストックなんちゃらか?…はぁ、仕方ない。罪人の掃除も王の役目よな』

 

 うーんこの妙に活動的な感じ……やっぱりルシファーだな。すげぇや前世の記憶そのままだ。

 

『代わりに、妾が勝てば其方は自分の身体もこさえよ。材料は…業腹じゃが、罪人共を使うとする』

 

 いやぁ……はぃ…そうなったら何万年でも付き従います…はい。

 

 こうして、俺は身体を借りてたルシファーの為に動く事になったのだった。

 出来れば負けてげふんげぶん…。

 

 


 

 

 エラトリア ワトシト皇國

 精霊歴2001年 夏 「不可逆の時代」

 

 

 ミーンミンミンミンミンミーン……。

 

 蝉の声が聞こえる中、ヤマト・ミカエル・橙・サクラの4人はワトシト皇國への帰還を果たした。

 行く前の冬の寒さは何処へやら。日差しの暑い中首筋に汗が伝う晴天の日だった。

 

「……ひっく、えぐ……ママ…ママぁ…」

「何故母上は…俺が息子だと分かったのだ…? それも名前まで…」

 

「……憎い程の青空だ」

 

 3歳程の子供2人の手を繋ぎ、ヤマトは天を仰ぐ。

 そして青空に唾を吐きたくなった。

 

「なんの為だ? 俺はなんの為に、何をやれた?」

 

 結局護りたい物は守れず、世界の悪戯で産まれた2人の子供が手元にやって来ただけ。

 サクラは元通りになったが、それはルシファーのお陰に過ぎない。

 ルシファーが将軍もとい橙と、かえるもといミカエルを子供と認め、自分以外を助ける道を選んだからこそ、ヤマトはこうしてお互いに許し合い、和解して、帰って来れた。

 

「…分からない。私は気が付いたらあそこに居たから、ヤマト兄ちゃんの悩みは何一つ分からない」

 

 サクラは、そう言ってヤマトの独り言に応える。

 サクラからすれば保護者と名乗る者に連れ去られたと思ったら、この3人が筆を囲んで泣いている光景だったのだ。筆が塵となって消えて哀叫が響き渡る程、心は3人から離れる程だった。

 そう思うのも道理であり、状況についていけないのも当たり前だろう。

 

「…だけど、その気持ちは分かるよ。あの時、私の中から何かが欠けた。大事にするべき、私が私であるべき何かが」

 

 しかし、その光景はサクラにとっても心に穴の空く物でもあった。

 ルシファーは確かにサクラを蘇生させた。しかし、その対価として……肉体と魂を繋ぐ物に自分のルーツという事実を、転生者としての力を消費した。

 

 何が起きたか。

 

「半身が欠けた気分。ヤマト兄ちゃんもそうなんでしょ?」

「……あぁ、その通りだ。お前も子供も居るのに、とても虚しいんだ」

「そうだね。私もそう。あるべき者が何処にも居ない感覚。明日が灰色になって、どんよりと気分が沈み続けるんだよね?」

 

 サクラは転生者の力と「自動記録(ダイヤリー)」を無くし、悪魔との繋がり(所有権)を無くし、ルシファーとしての自分の思考を無くした。

 徹底的にサクラの中からルシファーという存在が消えたのだ。

 それがどれだけ虚しいか。泣き叫ぶ3人を気に掛けられないほど意識が空白となり、死に思いを馳せ、共すれば数日共にしただけのヤマト達よりもその()()は深い物だろう。

 

「ぐず……ママぁ…」

「泣くな。誰もが悲しんでる。お前だけではないのだ」

「やだ! ママは生きてるもん…ひょっこり出て来てだきしめてくるもん!」

 

 ミカエルが突如として走り出す。十字路を曲がり、視界から消え失せた。

 

「…あっこら!」

「追いかける! お兄ちゃんはそっち見てて!」

 

 そうして子供達から意識を逸らしていたのが不味かったのだろう。

 子供同士で話している内に片方が逆撫でるようなことを言ったのか、ミカエルはヤマトと繋いでいた手を離して何処かに走り出してしまう。

 慌てて手を伸ばすが、それだけで間に合う筈もなく、サクラが続けて追いかけていった。

 

「あぁ…くそっ! いくぞ!」

「うわっ!」

 

 ヤマトも慌てて将軍を抱えて走る。

 幸いと言うべきか不幸にもと言うべきか、転移した事でルシファーの異能の影響から抜け出したのだろう。

 ルシファーの異能が効いてない何人かの異能者は兎も角、複雑な気持ちになる状況だ。

 ヤマトとサクラは元通りの17くらいの身体に戻り、ここまで横を通り過ぎる人々も元の身体に戻っていた。

 身体能力の差はあるから問題なく間に合うだろう。

 しかし、だからと言ってルシファーの遺した子供達を見捨てる気はない。

 ヤマトはヤマトに似た黒髪に赤いメッシュの入った子供、橙を抱き抱えて走り出した。

 

「サクラ、ミカエル! 急に走り…だす…な?」

 

 実際、先に行った2人には直ぐに追いついた。

 曲がり角を曲がった直ぐ其処に。

 

『うむ、コレが現世か。実に心地良いな?』

 

 1対の大きな純白の翼を誇示するように広げた、ルシファーとそっくりなのに、全く似ても似つかない少女と共に。

 

『‭─‬‭─‬では処刑としよう。王は2()()だけで良いからのぅ?』

 

 彼らの目の前で塵と消えた筆が、其処に有った。

 

「「「「‭─‬‭─‬殺してでも奪い取る」」」」

 

 彼ら全員、迷う(選択する)時間は存在しなかった。

 …もう争いを望まない者は居ない。

 

 






N「[黄金の愚王]ルシファー」
 追記1、
  精霊歴503年、「黄金の時代」のパシェード王国で書かれた作品のキャラクター……が、「[現代]‭─‬口‬‭─‬‭一」に転生された姿。
 ランクや名前などに違いはないものの、1500年ほどその生を見せ続けられた影響か多方面に好奇心を持ち、玉座に座れなくなったし、折角なので様々な事をやってみたいと考えるようになっている。要はジェネリックフィア。
 芸術家に人生を取られたのは苛付いてるが、芸術家の事は半身程度に親しんでおり、ヤマトに薬を盛られて汚されたのは自分の身体を汚された事よりも苛ついている。身内には優しい暴君…お姫様。
 性能としては唯一誰がどう勘違いしているか把握し、オマケで望み通りの物を描ける筆を持つ。スキルやステータスとかは有ってもザコにしかならないので筆の力で捨てた。

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