Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した!   作:何処にでもある

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 高難易度クエストを始めに、明らかに課金圧を強めてるステージがありますよね。




負けイベントに見える戦闘は基本

 

 

 エラトリア ワトシト皇國

 精霊歴2001年 夏 「不可逆の時代」

 

 

「Quick‭─‬‭─‬」

「大将軍‭─‬‭─‬」

 

 初動、戦闘開始前。ヤマトの橙の2名による速攻。

 時間を遡る最()の一撃と、幼くとも世界の修正力を込めた存在を削り殺す一撃。

 戦闘技術も思考の読みも関係のない、対応が無ければ確定で死を与える勝利の剣。

 

『筆、()()()()

 

 対抗有り。一言の命令。思い描いた全てを描き記す、芸術家の力。

 ルシファーが死ぬ迄振るうのを自粛していた、超越技巧の概念的創造。神の筆調べ。

 

 "本来必要な対価まで描き出して代用する、無尽蔵と墨を得た筆調べ"。

 

 マクスウェルの、ラプラスの悪魔を証明出来る、永久機関にすら到達した芸術技能。

 

 筆が、一刀の武器に変容する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(さて)、これより開くは地獄門』

‭l

『黄金天使の罪人審判』

‭l

『もし全て斬り伏せたならば、喝采を』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『審判 コレにて終幕』

 

 

 

「‭─‬‭─‬‭─‬!?」

「カハッ!?」

 

 バタリ、バタバタバタと。

 2人が24の斬撃に晒されて倒れ伏し、その余波でサクラとミカエルも、辺り一帯の全てが倒れる。

 なんて事はない。錆びた雨と終末に生誕した名刀、赤い歴史に全てを染めて斬り伏せただけ。

 失敗者とその従僕を葬った一撃で対抗しただけだ。

 

「うぐっ…今…のは」

 

『ふむ、やはりと言うべきか死んでないな。やはり実物には遠く及ばぬか』

 

 その惨状を見て、ルシファーはなんて事なくヤマトを蹴り転がして、本来の0.001%にも及んでない再現度に落胆する。

 もしかすればアレをやれるかと思ったが…あくまでも絵という事だろう。

 これが本業かつ実像のある彫刻の類いならば兎も角、趣味の悪い血に濡れた絵に出来る事は、見た者を恐怖させることだけ。心を削り消耗させるだけだ。

 本物と見間違うような再現度だとしても、実際に切れないなら意味がない。

 精々心の弱い者が斬られて死んだと錯覚して心停止し、世界が騙されて物が実際に斬れるだけ。

 寝ていれば、目に入らなければ気付かれない一撃だ。ヤマト達のような心の強い者なら、倒れさせる事しか出来ない。

 

『じゃが、それでもお主らには過剰で有ったか? いや、死んでないならば過小か。うむ、殺す気でやったが火力が足りんかったしな』

 

 戦闘は慣れてないのだろう。ルシファーはグダグダと殺す前に評価をし始める。

 圧倒的な隙、コレを攻めないならばその戦士は名を折る事になるだろう。

 しかし……ヤマト達の身体は動かない。身体が死んだと勘違いし、脳の指示を実行しないのだ。

 それが解けるのは果たしていつ頃か。今すぐ解けることを祈る他に、活路を開く術は‭─‬‭─‬。

 

「‭─‬‭─‬"全体状態回復"」

 

 ある。口が開き、脳が動く。

 ならば、それをトリガーとする術を起動すれば良い。

 「言霊匣」、言葉と思考をトリガーに"自動"で定めた動きを実行させる魔道具。

 たった一言命令すれば、瞬く間に終わらせるそれで、ヤマト達は全員動きを取り戻した。

 

『奴らの頭が高い。ひれ伏せさせよ、筆』

 

 ピシリとヒビ割れる筆に構わず指示を出し、襲い掛かろうとするヤマト達に向けて宙に一筆描く。

 

「…ッ! 吸い込ま…れる!」

「父上、虎穴に入ってこそだ! いっそ破壊した方が早い!」

「ならば…はぁ!」

 

 それだけで描かれた空間は捩れて開き、ヤマト達の攻撃と共に丸ごと飲み込んでしまった。

 残ったのはサクラとミカエル、ルシファーでも辛うじて勝てる相手だけ。

 

「何を…」

 

『さぁの、妾は一言命じただけ。問う相手は妾では無かろうよ』

 

「ママを…かえしてよ!」

 

 絵の世界。

 現実に描いても効果的でないなら、それが傷となる世界を創れば良い。

 筆はそう判断し、一瞬の時を用いて絵の世界を創造した。殺意は別として時間稼ぎなら十分以上に果たせる領域である。創るのに多少ひび割れはしたが…まぁ、大した傷では無いだろう。

 

『ならぬ。妾は狼藉者も、不義の子も、その家族も、恩知らずも、赦してやるほど慈悲深くないのじゃ』

 

「うぅ〜っ! あなたはママのなんなの! ママそっくりなのに、ぜんぜんちがう! かえしてよ!」

 

『‭─‬‭─‬主人(あるじ)、芸術家に対しての本物の姫、あやつの1499年の全てを見た、天の使い‭─‬‭─‬にして』

 

 そう言って、ルシファーは手にした筆を黄金の剣へと変貌させる。

 それだけでなく、もう片手には黄金のハート、傍らに現れた神仏阿修羅の像、足元に泥のように這い出る黒い稲妻と、闇よりも暗い炎が展開されていく。

 

 そしてミカエルとサクラは見た。

 

『妄執具現品、因果の骨筆、神像原典の創造主、根源の先駆け‭、深淵を照らす灯火(ともしび)─‬‭─‬コヤツが創り、過去と未来に明け渡し、『歴代継承』の継承物として選ばれた諸々の因果………それによって紡がれ、虚より実を纏った象徴(テーマ)、"本物のルシファー"』

 

 空を飛び、夏の逆光を背にしたルシファーの顔が、真っ黒に塗り潰された瞬間を。

 

『"無貌の神" "神に逆らう者" "地獄の底の大罪人"…名前(テーマ)は数多と。好きに呼べ、どうせ一通りあるからのぅ?』

 

 瞬きする間にルシファーの顔が戻る。

 

「…分かった、お前は‭─‬‭─‬!」

 

『往け』

 

 彼女が一体何者なのか。それを答える間もなく、黄金の剣は振り下ろされた。

 

 芸術が押し寄せる。

 

 


 

 

 「無銘域」の世界

 精霊歴2001年 夏 「不可逆の時代」

 

「ふっ…ここは…」

「…ルシファーの創った絵の世界。そう言うしかないだろう」

 

 小さな蟹がぷかぷかと泡を浮かべて遊ぶ海中の世界に、ヤマトと橙の2人が着地する。

 その登場に蟹や魚達が驚いて逃げていく中、2人は冷静に現状を確認していた。

 

「海の中だが息は出来るな」

「そして敵対的な者は居なさそう……父上、厄介な事になったぞ」

「……ああ、得意分野には持ち込めなさそうだ」

 

 空のように頭上に広がる海面に、流れのない海中、何処までも広がるなだらかな岩礁の丘に、穏やかに漂い続ける海藻の草原と、そこに点々と住まう子蟹とめだか……。

 

 海というよりも大きな川の中と言われた方が納得できる光景であり、天使の梯子…一筋の光が差し込み、泡の浮かぶ海中は、見ていて惚れ惚れする美しさと幻想の調和を創り出していた。

 

()()()()()()()()()()()()()。頭を使う必要がある」

「眼に映る光景もそう告げている。ここは、成すべきことを成さねば進めない場所だ」

 

 ヤマトの眼には一つの糸しか無いまっさらな世界が、橙の眼には乗り移れる者が1人として居ない景色が。

 其々がこの美しく、生命の気配の無い世界に、今までのやり方が通じないことを予感させていた。

 

 唯一見える糸の先を追い、その正体を解き明かす。

 

 

 題名「無銘域」

 1、

 精霊歴505年/2001年 「黄金の時代」 著作:ルシファー

 ルシファーが魂を込めて描いた川底の絵。それを本人の手で再構築した世界。

 くらりなんちゃらとか有ったよなぁって思いながら描いており、本人としては見ても鮭食べたい以上の感想はない。絵の世界の元ネタにしたのも適当に思い付いたから。

 制作後は黄金の悪魔の手によって1677年の戦乱期の華明国のとある武将に明け渡され、その後様々な人の手に渡り続けた。現在では「泰平の世が成された時、それがいつまでも続く事を願った作品」として、国宝として秦周国の国立博物館に展示されている。

 寓話世界の「演目」無効化の性質を持つ。

 

 

 1段階の謎を解き明かしたヤマトは、更に奥深くへとその糸先を辿る。

 いつも通りの慣れ切った作業だ。

 

「もっとだ。進む道まで晒し出せ」

 

 

 2、

 再構成されたこの世界において、その役割は先に進ませない以上の意味はない。

 故に出れる道のりは設定されておらず、先に進む方法もまた存在しない。

 何処までも息の続く大きな川底でしかなく、緩やかな死を待つ他ないだろう。

 なにせ「永遠に続く平和の絵」と解釈したのは、貴方達なのだから。

 

 

「なのだから……嘘だろ? コレで終わりなのか?」

 

 解き明かしていた糸先が先端に辿り着く。少しほつれた糸が、橙に伝える為に口にした言葉が虚しく漂っていた。

 

「本人も知らない事を知る眼だぞ? 異能だった時は使ってなかったが、それでもかなり熟してると……あ」

 

 ヤマトは糸の先を見てその正体を明かせる。そうして糸を一つずつ読み解いて、世界をより深く知って、好きに動かし結んできた。

 だから今回もその定石が通じると、入ってしまう方が早いと言う橙の言葉に賛同して踏み込んだ。

 

()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()

 

 迂闊だったのは、同じ能力を…それもより深く理解していた者が敵の手に渡っている事だ。

 偽物を見て怒りに囚われた。その勢いのまま力を持ってその遺体を取り戻そうとした。あわよくばそのまま蘇生しようとしていた。

 

「っ!!」

 

 慌てて転移や移動に類する魔道具や召喚を行い、念入りに確認する。

 起動しない、召喚の光も灯らない、魔導刀の魔力も反応しない。

 全てが封じられていた。物語無き出口のない異界。出口のない閉鎖空間(クローズド)。初めて体験する理不尽で現実的な異空間。

 

 成程、こんなのがあるなら悪手にしかならない情動と行動だった。

 寓話世界に慣れ切っていた代償だ。これは、演目の産物(人気作の約束)じゃない、ルシファーの作った作品(閉じ込める為の物)だったのだ。

 

「……つまり」

 

「詰みか……などと、そう言うつもりでは無いな? 父上」

 

 挙句に言葉を飲み込む。図星であった。

 しかしコレ以上何も出来ないのも事実。ならばどうするのかと、ヤマトは無言で橙に問いかける。

 出会って数分、それも初めは敵対していた相手だ。息子だと言われて納得出来るような相手ではない。ルシファーのような慈悲深さは、ヤマトには無いのだ。

 

「そう思うのは無理もない。俺は成り代わりを、父上はその眼を、お互い最も頼りにしている手札が封じられた。‭─‬‭─‬しかし、それは諦める理由にはならない」

 

 橙は言う。

 この程度の苦境なんて屁でもない。

 何度も経験した、世界の修正力が使えない難題に比べれば何とかなる類いだと。

 時間だけはあるこの世界で、今まで足りなかった時間を取り戻すように言葉を紡ぎ始めた。

 

「新大陸に血を流さずに治めようとした時、恐怖ではなく遊戯と親しみで民の信頼を得ようとした時……父上の家族に、なろうとした時」

 

 取ろうと思う手段はいつだって世界から梯子を外される物だった。

 世界は血を、犠牲を出る道こそを歓迎していた。母の願いを見て見ぬふりをして、世界の情報を少しでも少なくしようと画策していた。

 異能のせいで滅んだトラウマを世界は抱え込んでいて、望んだ将軍像となる道はいつだってそれと正反対だった。

 

「上に立てと定められた。しかし、そこに積み重ねるのが死体の山か、信頼の山か、世界と俺はいつだって対立していた。約束された日までに間に合わせるには、どれもが無理難題で、人と向き合わなければならない物だった」

 

 将軍は言う。それでもこの道を選んで自分は成し遂げたと。

 成り代わりで184人の人命を犠牲にしながらも、世界が望むよりはずっと少ない道を選び続けた。

 歩み切ってみせた。完全無欠で無くても、その掌で隠せる程度の血で世界を獲った。

 

「…サクラに何故成り代わった?」

「異能者は世界が特に怯える相手だ。即刻居なくなって欲しいと俺の耳で騒ぎ立てる程に。意見は違えど悪く思ってない相手の頼みだ。だから親族に成り代わって不意を打ち終わらせる、その為の迅速な対応をした……謝罪はしない。それが"俺"の親族と知ったのはミカエルと出会った後だが、罪深い事なのに変わりはないからな」

 

 似ていた。

 家族を、身内の為なら他者を犠牲に出来る在り方が。

 自分自身に。

 

 ヤマトは、心の奥底でこの自分そっくりな子供を責める気力が消えていくのを実感した。

 

「ならば俺もお前を…いや、橙を責めはすまい。それは"仕方なかった"事だ」

 

 赦すことなく、その罪に共感するつもりで言う。

 ヤマトは橙に一歩だけ歩み寄った感覚を覚えた。

 

「しかしどうするんだ? 結局何をするかは不明瞭だが」

「あぁ、それなんだが‭─‬‭─‬」

 

 だからと言ってこのまま停滞する訳にも行かない。

 ヤマトはキリよく話を切り上げ、今後の作戦を問うて……。

 

「‭─‭─‬‬‭1つ、やってみたい事が有ってな?‬」

 

 橙は、そう悪戯を仕掛けようとする悪ガキのようにニンマリと笑った。

 それを見て、不意にヤマトの眼がその在り方を読み解いた。

 

 

 N/EX「[黄金の愚王/現実世界(エラトリア)]橙」

 1、

 精霊歴2001年、「不可逆の時代」に生誕したルシファーとサクラの子供。

 本人も与り知らぬ事だが、血縁に値する素材元でサクラとルシファーのものが使われた為に奇妙な組み合わせとなっている。一応サクラが父側。

 人の手によって練り込まれた肉体であり、通常の出産では無く錬成の物に近い。

 その為か「全存在選択目録」の成り代わり後の身体の絶命を無効化する。「大宇宙大将軍」専用。

 

 2、

 題名「大体橙」

 精霊歴2001年 「不可逆の時代」 著:ルシファー

 大隊率いる大大将軍橙の代々使える大体の代替になる体躯。

 難散って、難無くなる、難来る無いさー、なのじゃな。

 

 

(……どういう意味だ? いや、それよりも)

 

 不意に見えた橙の情報から眼を離し、彼の語る言葉に耳を傾ける。

 驚くほど簡潔でしょうもない洒落が盛られた二つ目が妙に記憶に残ったが、こんなくだらない事を気にする場合ではないと、ヤマトは橙の提案を実行してみる事にした。

 

 






[ルシファー著の作品群]
 1、
 正しい評価を誰もが与えられない為に、ランク付けと演目化が不可能な作品群。
 ルシファーが寓話の者…本来なら居なかった存在でも、その全てが確かに演目として最優先で選ばれるのに相応しい物ばかりである。
 本人はその才能、作品を黄金に換金するものとしてしか捉えてなかったが、「創作物が寓話世界で実態を持つ世界」で「世界すら騙せる傑作を創る才能」と「あたかも命が宿ってるように振る舞い、力を持つ作品」は、本来なら寓話世界を切り拓くに相応しい物だった。
 現在は"正しい評価を与えられない代償"の影響で過小評価され、大幅に弱体化している。

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