Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した! 作:何処にでもある
寓話の再現から逃れるキッカケは様々です。
ですが、再現の終わりに虚無に落ちないで済む道は脱出だけです。
「──いま、なんと?」
「ですから……女王様が6人、顔のある女が1人、鉄の剣1つと骨の首飾り2つが実験の最中に出て来たのです!」
「何をどうしたらそんな事になるのじゃ…」
「分かりません…友人と酒を呑んで、気付いたら目の前にその光景が広がっていました…」
「死ぬ気で思い出すのじゃ! 思い出したら巨万の富だってくれてやる! 出来なかったら投獄もあると心得よ!」
「はっ!?……ははぁ! 今すぐに!」
今日も今日とて一日スキップとアドバイスを繰り返していた所、趣味で小説を書いている学者モブが10連ガチャを偶然回す事に成功していた。これマジ? ヤバ過ぎるし思い出せないの致命的過ぎるだろ。
あ、でもダブりがバッチじゃなくて生か……一応ゲームシステムに頼らない凸方法は知ってるけど……いや、会ってからだな。
「して、そのわらわら出て来た妾達はどうした?」
「うーん……え!?……いやそれが…驚いている最中に逃げ出して…」
「つまり行方知れずと……して、顔のある奴の特徴…はよいか。寓話においてはそれが一番の特徴じゃからの。ユダ、兵を集めて回収に向かうのじゃ!」
「はっ! 自分と同じ顔の奴が勝手にするのは不愉快でしょうからな! 見事捕まえて見せましょう!」
多分この時代に別の世界で再現されている寓話のキャラだとは思うのだが…ゲームとは全くガチャの前提が違うから何とも言えない。
ゲームだとかつて存在した寓話の登場人物を無作為に創り出すのだが…やったのがモブだし、ガチャテーブルも精霊歴2000年の物じゃなくて500年の物だ。まずSR以上は無いだろう。
「えーと、うーんとぉ…」
うん、それにしても…。
「趣味でも、作家がキッカケとは……創作者であるのが重要なのじゃろうか…これからはそういった者共も…いや、我が国にそういうのはおらんの…」
残念な事に、この作品の元となっている王国はお世辞にも芸術に明るくは無い。
どれだけかと問えば、気分転換に鼻歌をしただけでユダや召使いが疑問を呈したくらいである。リズムの一つも刻めないとか終わってるわ。
その為、この学者モブは結構レアなモブだ。つい投獄と口が勝手に言ったが、本当にするつもりはない。今後とも俺のために身を粉にして働き、小説も書かせる所存である。何か役に立つかも知れないなら、俺はその趣味を応援するぜ!
それから1時間後、ユダが意気揚々に王の間に戻ってきた。
「女王様! 女王様を全員回収したので一旦戻って来ました!」
「離せ無礼者が!」「妾を誰だと心得ておる!」「そうじゃ…黄金をやろう…だから妾を逃がせ…!」「狼藉者共があ…! この場にいる全員死刑なのじゃ!」「そうだ、褒美をやる! だから解放するのじゃ!」「不遜過ぎて眼に余るのう? 処す? 処す?」
「おーおー同じ者が1箇所に集まると壮観じゃのう?」
縄に縛られたルシファー達の光景は奇怪な光景だった。
自分と同じ顔の連中が居るのもそうだが、全員ある意味本物なのだから変に思えてしまう。
ソシャゲのガチャをした結果と言えばそれまでだが…にしてもすごいダブってんな。
なんだ? 今は俺のピックアップでもやってたのか? 俺含めて7人いるということは、一気に完凸までイケるということ。ステータスやスキルの倍率が上がるということだ。
ルシファーの凸の変化なんて大したことはないが……。
「よくぞ集まったな? 妾達よ」
(ようこそ、暫定凸素材達)
そういうと、今まで暴れていたルシファー達が一斉にこちらを見て、全く同じことを言い放った。
「「「「「「……なんじゃあその間抜けな花冠は」」」」」」
「そうかそうか、どうやら死にたいようじゃな。ユダ、剣を渡すのじゃ」
(付けたまま寝たら外れなくなっただけで、今はこれはこれで有りだと思ってる……うん、やっぱり俺じゃない……覚悟を決めよう)
そう言った瞬間に、わっとルシファー達が黄金を出しながら抗議を始め出した。
一斉に喋っているせいで何を言っているか分からないが…まあさっきと似たようなことだろう。
本当に…中身も俺ではなく[黄金の愚王]のルシファーその物みたいだな、こりゃ。
それなら俺も遠慮なくやろう。黄金が出せる奴が沢山居ても、寓話の世界では役に立たない。
なにより、ただのルシファーは、居ても俺の目的の邪魔にしかならない。
「ふんっ!──時に、「
ユダから借りた剣を引き摺り、全身の力を使って持ち上げ──首を一つ刎ねて言った。
ルシファー達とユダや兵士達が言葉を失っているが……殺したルシファーが光となり、俺の身体に吸収されたのも見て、動揺の声が上がった。
「ならば──っしょ!…死ぬ前に教えよう」
もう一つ首を刎ねた。光が俺に吸い込まれると共に自分自身が洗練された感覚を覚える。
うん、レベル上げは出来なかったが、こっちは上手く行って良かった。
ゲームの強化演出で同キャラが殺し合う光景、衝撃的だったから一年経っても覚えてたんだよな。
あるキャラのストーリーで本来のやり方はこうだと、自分はこうして強くなったという話があって……主人公達がやっていることの本質はこうなのだと、精神攻撃していたのを覚えている。
「この寓話の世界における──っし!…最も原始的で──っ!…最も簡単に己を強くする方法──なのじゃ!」
「……ヒィッ! き、金ならある! 妾を見逃せ!」
「……大した時間は買えんぞ?」
最後の1人…いや、俺と合わせて2人になったので、一旦剣を置いて休む。
縄に縛られた彼女はすっかり怯え切っていて、黄金を差し出して命乞いをしているが……もう、キャラを重ねた俺の方がもっと多くを出せるし、質が良い。
形を保たずに直ぐに崩れ落ちるのは変わらないが、命の代わりにするには…この黄金に価値はない。
「寓話の世界に、本当の意味で同じ奴は存在せん」
「何を…あ…もしや…ゆ、ユダ! 妾を、妾を助けるのじゃ!……この役立たずが! 動かんか!」
説明が終わった辺りに殺すつもりだと、彼女は見抜いた。どうやら比較的賢く書かれたルシファーなようだった。
「同じに見えても、それは同じ話を別の者が書いた物の再現……異聞とは一つの寓話に対する別の語り口じゃ。故に本質は同じ存在でも、在り方は違う者になる」
「兵士、何をしている! 王が死ぬのじゃ、助けに入れ!…塵どもが! じゃから先王を守ることも出来ないんじゃ!」
「しかし、本質が同じであるが故に……なんとも不思議な事に、殺した方に存在が纏まるのじゃ。これは寓話である限り逃れる事のない理、どれ程弱き者でも手を出せる手法なのじゃな」
剣を片手で振り上げる。
「じゃが──代償も、ある。呼び出した者が長く居る程、周りが滅んでいくのじゃ」
存在を重ねた俺は、もう剣を引き摺るほど弱くはなかった。
「ひっ…こ、この狂人めが! 己を殺してまで、何を求めるのじゃ!」
「そんなもの──」
(っそんなの……)
首を刎ねて、存在を纏める。
そこまでして何を求めるのか。一瞬言い淀んだせいで、聞かせる事が出来なかった。
……ゲームだと召喚した時からバッチの形になってるからな。こんなに心を痛める必要はなかった。
そして、ここまでして殺す必要は…何度考えても
ルシファーは元々愚かで、横暴なキャラだ。
少し放っておけば精霊神石の研究を遅らせるのは想像付いたし、何より再現中の寓話で、物語に無いクローン展開は御法度だ。24時間以内に1人になるまで殺さないとならない。
「──
(俺が脱出する迄に、この国が虚空に落ちないようにする為……だから、殺す)
ゲームでもそれで崩壊した寓話があったから、どの道殺すしかなかった。
バッチなら放ってても良かったんだけどな…でもそれだと普通に凸するし、生でもどの道殺すなら凸った方が、まだ残る物がある。
……流石に、ちょっとしんどいが。
「……はぁ。して、彼奴等を呼び出した学者よ」
「は、はいーぃ!?」
「──二度とこのような過ちを、妾にさせるな。死ぬ気で思い出し、同じ轍を妾以外に踏ませるなよ?」
「ぁ…はっ!! 必ずや、禁忌を成さない為に!」
ぶっちゃけ俺らが凸をやった所で…NやRの凸なんてたかが知れてるし、殺すのだってしんどい。
今のガチャテーブルで人権装備もある筈ないし、半端に破綻の引き金を引くくらいなら、いっそやらない方が良い。
良い、が…。
「阿呆、禁忌として忌み嫌うだけでは何も救えん。人ではなく物のみならばこれも価値が芽生える。慎重に、しかし大胆に解明してゆくのじゃ」
「──はっ!! 女王様のご意志のままに!」
だが、普通のガチャはダメでも装備限定ガチャとかを引ける様になれば一気に有能になる。
リスクはあるが…本当に悩み所だが、この調子だと間に合うか疑わしいのも事実だ。
俺が研究を任せているのは、顔すらないモブである事を忘れてはならない。
「……より、早く推し進めねば…」
アクセサリーを渡してからちょっとずつ進み始めたのだ。その速度を上げる方法があるなら──。
「──星の示す通り、黄金の王がお困りのようですな」
「⁉︎──誰じゃ!」
そうして話が纏まった所に、ユダや伝令達でもない声が王の間に響いた。
一体誰が…そう目の前の女性の正体を考えようとして、直ぐに思い至った。
確かガチャで出たキャラはルシファーだけでは無かった筈。つまり……。
「そうですな……星結び、奇人、隠者の運命…様々な名前を持ちはしますが、貴殿の前ではこう名乗りましょう──
黒いフードが捲られ、女性の顔が顕になる。
蒼い髪と紫色の目、顔には部族的な線が描かれていて──なにより特徴的なのは、その耳が尖っていたことだろう。
それは間違いなくエルフの証であり、この天使しか居ない国ではより一層忘れ難いものだった。
「アルカ…顔付きという事はこの者が呼び出した者じゃな。何故自ら、このタイミングで出てきおった?」
「星が珍しく、そうする様に語ったからですな。なに、お陰で興味深い話を聞き、寄り添うべき人を見つけた。つまり、今宵の星は私の味方だった訳ですな」
「星…エルフならば風の…もしやお主、[星ならべ唄]の…隠者アルカ…か?」
確か、枠が金色だったしSRのキャラだった気がする。
合ってるか自信がないけど、隠者の発言から思い出した。
だがモブの召喚でSRなんて……あ、最低保証? もしかして最低保証枠でキャラを引き当てたのか?
「はい、私は確かにアルカですな。しかし星ならべとは…言い得て妙ですな。確かに、私は星に縁のある生を歩いてきた。その歩みを並べれば、星座の一つは出来るでしょうな」
「……どうあれ、お主の偉業は妾も聞いたことがある。……先程、寄り添うべきと言ったな? 言い間違えでないのなら、妾の下でこの世界を解明し、その知恵を役立ててみせよ」
なんで従事してくれるのか知らんが、まあ都合が良いのでヨシとしよう。
どの道悪魔の手も借りたい状況なんだ、手伝ってくれるなら万々歳である。
「はっ。私の手がどれだけ王の望みを叶えられるか定かでは有りませんが……見事、澄み渡る森の風と、闇を照らす星を与えてみせましょうな」
「うむ、励むのじゃぞ!」
気分の悪くなる事もあったが、良いこともあった。
災禍と福、どちらも齎しかねないガチャではあるが、今回はトータルプラスで良いだろう。
でもコレっきりだからな! 自分殺しは転生した身体でもしんどい!
エラトリア ケルデー山 奇人の棲家
精霊歴270年「神話の時代」
山の闇に 星ぞ光る
優しやつ手 夢を揺する
こそや言葉 昔導く
心こそに 光開く
森の風が 光をさす
闇の彼方 道はきわす
君と共にあれ 星ははす
神の導き 胸になす
「実に──実に短いな。私が作った21の歌、その一つ……子守唄が、私の人生の集大成なのだからな」
山の中、崩れた木の小屋の、今にも壊れてしまいそうな椅子に座り、破けた屋根から星を眺め、達観に満ちる。
「私も、この小屋も……今にも壊れてしまいそうだというのに、あの星は変わらずに輝いているな」
幼き頃に見た夜空の光を追い求め、いつの間にか老人になっていた。
老人になると過去を繰り返し眺めてしまう様で、こんな風に……私の人生に何が出来ただろうかと考えて、残ったのは
「星に行きたいと願った……そうしてあらゆる国を巡り、あらゆる智慧者に会った…だが、誰も星の行き方を知らなかった…最後に神に頼ってみたが、悪戯に時間が過ぎるだけ…」
無意な人生だったとも思う。こんな事なら、親と同じく畑を耕し、子を産んだ方がマシだったとも。
「……ああ、それにしても──今宵の星はうんと素晴らしいな」
それでも──この光を眺めていると、後悔なんて一つだって残らない。
全くずるい奴だ。私がコレほど焦がれているのに、この星々は言葉の一つも与える事はないのだから。
星に決して叶わない恋して────あの星はなんだ?
「錯覚…いや、違う…あれは──なんだ?」
遂に死ぬのかと、ボケたのかと思考に過ったが、コレは違う。
私はコレまで、80年間夜空を見上げなかった日は一度としてない。
だから時間と共に全ての星が同じ方に向かうのも知っているし、一年掛けて夜空が一巡する事も、それらはこの星が太陽を中心に回っているからそう見えている事も悟っている。
私は星に人生を捧げた。だから、ここから見える全ての星は私の友人と言っても過言ではない。
だからこそ分かる。
星の中に、布のほつれの様な……本当に僅かな隙間に……ぽっかりと空いた虚空と六色の
「──未知の宙だな」
それを見て──果たして、普通ならどういう反応をするのだろう。
自分の眼や常識を疑うか? それとも、世界が終わるのだと思うのか?
私は奇人と呼ばれ、名前になるくらいには変わり者だ。
だから、これは正常な判断ではないのだろう。
「綺麗だな……あの星に手を届かせる方法はないのかな?」
それに眼を向け、手を伸ばして掴もうとする。
ずっと昔からそうだ。私は、星を眼にしたら愛さずには居られない。
例え尊い星でも、悍ましい星でも、どれだけか細く光っていても、私は眼を逸らすなんて出来やしないのだ。
思わず手を伸ばして──応えがない筈の手を、
あゝ──星が、応えた。
「ああ、嗚呼! 応えた! 星が私に応えたな⁉︎遂に、遂にか! 私はあの星々に──!!」
歓喜と興奮が、老骨に響く。
身体が引き上げられる感覚と共に、地から脚が離れる。
だが、何も怖くはない。私は遂に風となって、あの星々の招待に向かうことが出来るのだ。
それは今まで連れ添った夜空でなかったが、六色の光を持つお洒落な星々だ。
例え身体が散り散りになり、私が幾つもの私達に分かれようと、無数の
そんなもの、星の誘いに比べたら些事だ。
だから私は一等大きな光に向かおうとして──小さな手に引かれる感覚に、脚を止めた。
「──?…っあ!」
流れに逆らって脚を止めたからか、何かの誘いから外れた感覚を覚える。
それから大きな流れと共に一等大きな光に向かう沢山の私達を見送り、小さな欠片の私だけが其処に残ることとなった。
「待って、私がまだ……!」
手を伸ばしても、もうあの誘いはない。
私は、私から招待を断ったのだと悟った。
「……っそうだな! 私を呼び止めた子供はどこにいる!?」
だが、それを後悔はしていない。
私は沢山に別れたのだから、他の私がきっと星の誘いに辿り着いてくれるだろう。
それが私でないのは残念だが、私は私で子供の誘いに脚を止めたのだ。
それが悪戯か、助けを求めての事なのかは分からないが──きっと、只事ではない筈だ。
「……こっちかな?」
本当に、本当にか細い誘いだった。
明確な意思のない、子供が泣き叫んでいるような……或いは、お酒の入った馬鹿な野郎の叫び声か? いや、流石にそれはないだろう。多少野太い声な気もするが、もしそっちだったら私が大馬鹿物になってしまう。
「……ここか!」
そうして遂に辿り着き、私は光に包まれて、新たな星に生まれ落ちた。
「──はえぇ?」
そして、その時最初に聞いた馬鹿みたいな声を、私は一生忘れる事はないだろう。
まさか、本当に酒を飲んだ馬鹿野郎だとは思わなかったのだ。
嘘みたいだろう? 私の人生で最も重要な誘いを、こんな奴に邪魔されただなんて信じられるだろうか? 私は、信じたくないあまりに逃げ出した。
逃げ出して、逃げ続けて、彷徨って──その果てに、私は側に寄るべき子供を見つけた。
「──この
冷たい眼で、王の役割を全うしている、天使の子供。
私は彼女がどれだけの苦労をしたのか知らないし、この星独自の理だって一分も理解出来ていないだろう。
それでも……私は、星を背負おうとする子供を見捨てる事は出来なかった。
あの酒馬鹿に騙されたより、この娘に誘われていたのだとする方が、何かと都合も良かったのもある。
「──星の示す通り、黄金の王がお困りのようですな」
だから私は声をかけ、身に覚えのない偉業で見込まれて登用される事となった。
いや、名前を当てられた以上間違いなく私の事なのだろうが……この星追い人が一体何を成したのだろう。もしや、あの子守唄が世界中に広まってしまったのか?
疑問は尽きない。尽きないが、あの娘の前ではせめて、私は頼りになる者になろう。
……え? なに? 寓話世界? 虚空への落下? 世界の創造も同然の研究? 精霊神石?
……ババアを舐めるな! こんなの星の大きさを計算していた時と比べたら楽勝なんだ!
さあ、幾らでも掛かってこい! 私が自然の何たるかを授けてやる!
SR「[星ならべ唄]隠者のアルカ」
精霊歴268年神話の時代の月と山猫亭から広まった詩の作者。
子守唄として一つの街から少しずつ広まった歌であり、死ぬ時に物語に取り込まれるのに合意した作者本人……の、欠片。
現実と寓話の融合型なのでLRクラスの潜在性はあるのだが、
後にLRとして登場した方のアルカは人権となったが、こちらは3ターン後に強力な一撃を与えたり、敵の弱体耐性を下げる事しか出来ない。