Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した!   作:何処にでもある

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 戦闘で上がったり贈り物で上がったりするのが好感度です。
 「エラッタ」の場合は両方+ホーム画面のタッチで上がりますが、上がっても通常はガチャ石やボイス解放しか恩恵はありません。
 何を言っても信用してくれるとか、自分より優先してくれるかは好感度が30以上の時に限ります。これは贈り物や戦闘をしないとリアルで5ヶ月は掛かる数値です。




好感度の重みは上昇させる手段の少なさと難しさ次第

 

 

「なあユダよ」

「なんでしょうか、女王様」

「時にな、其方ってそこまで妾に好意を持つ奴じゃったかの?……と、ふと思っての」

「……? どういう事ですか、女王様」

「多少考えてみたが…妾的には再現から解放されてから、毎日最初に会話しているのが原因じゃと思うのじゃよ。接触回数効果?という奴じゃ」

「はぁ…?」

 

 [黄金の愚王]ってさ、大雑把に言うとユダが俺、ルシファーを処刑する話なんだよ。

 だからユダは俺のことをここまで好く筈がないってついさっき気づいたんだよね。

 どうせ嫌われるって前提でくそ雑に話していたんだが……物語から脱却させてから、毎日時間を進めた時に最初に話しているせいで、ちょっとずつ好感度が上がってるくさいんだよな。

 元のゲームでもそうだったからな。ホーム画面タップで好感度アップ。微々たるものだが、大体3ヶ月くらいやってればそりゃあもう、結構な上昇量になる。

 

「そこでじゃ、何処まで妾と其方で好意のあれそれがどう違うか試そうとも考えてみたのじゃ」

「……考えただけですか?」

「普通に面倒じゃからやらない事にしたのじゃ。絶対其方と妾で認識の違いとかありそうじゃが……それを解くのは手間じゃからな。それならアルカに色々教えた方が有意義というものじゃ」

「なんだか今日は一際のじゃってますね」

「だって疲れとるし……それにのう‭─‬‭─‬?」

 

 ところで、今日は珍しく王の間じゃなくて外に出ている。

 何故かと言えば、目の前の光景が全てだろう。

 ルシファーの身体は、困惑していると語尾ののじゃ率が急上昇するからな。

 

「あぁ、王が来ましたな。遂に飛行船が出来ましたので、そろそろ報告に上がろうとしていた所ですな」

「こんなデカ物が有ったら言わんでも気付くのじゃよ。どうした、何が有った?」

 

 それは‭─‬‭─‬飛行船と言うには余りにも大き過ぎた。

 

 何より‭─‬‭─‬それはまぐろだった。

 

 しかも‭─‬‭─‬10匹も居た。

 

「なに考えてまぐろの飛行船なんてもん10匹も作ったのじゃ?」

「心外です、精霊神石で同じ物の大量作成……家具制作で偶然出来ただけですな」

 

 見上げて首が痛くなるほどの、隣にある王城を超えるキング・オブ・MAGURO。

 王冠を被っているから、本当にキングなまぐろだ。

 目が痛くなるくらいショッキンググリーンな色をしているし、謎の広告幟を付けているが……まぐろだ。

 

「サイバネ・マグロでよいのか? これは」

「それは世界か星に訪ねるべきですな。私はそれに従ったに過ぎません」

「てか、なんじゃあの広告は。ヤオロズとはなんじゃ、八百屋か?」

「魚屋ではありそうですな」

「存在が喧しいしあのまぐろを処刑してやろうか?」

「三枚下ろしなら私も手伝いましょうか?」

「刺身より活け造りが妾は好みじゃ。本物でやるならそうせよ」

 

 たまげるとは魂が消えると書くそうだが、今まさに頓珍漢な事を言っている自分の様子を言うのだろう。

 あのまぐろは意味不明だが、家具から出た点から考えると、恐らくコラボで登場した家具だ。このソシャゲってモチーフの家具だけのコラボとか結構あったからな。

 その中にトンチキニンジャの作品が有っても不思議ではないし……いやでもあんなだったか?ニンジャをスレイする方は機械…ミサイルとか撃っていた筈だ。これは普通? の飛行船だから中身はかなり違う。

 まあ世界観に合わせて変えただけなのだろうが……すっごい嵩張るまぐろ達だ。

 

「あー、トンチキじゃのう…」

「ですが中身は有用です。飛行船の原理、ガス、エンジンの本物を見られるのですからな。これも精霊神石の、時間を多少前後しても問題なく呼ぶ力の賜物……家具の創造も案外捨てた物ではないと感心するばかりですな」

「ガスとか此処だと特に貴重じゃもんなあ…値は張るが、一度呼べば再現出来るだけお主らは良くやっておるよ」

 

 呆気に取られたものの、その利便性は本物だ。

 なにせ定期的に家具として呼び出して乗り換え続ければ、それだけで一時的な避難生活は出来る。

 短所は見た目がすごくトンチキな所だが……其処はもう愛嬌で済ませるべきだろう。

 

「それはそうと女王様、一つ報告したい事が」

「なんじゃアルカ、このまぐろ以上の大惨事があるのか?」

「採掘場の精霊神石ですが、我々の予想より早く消耗しています、このままだと我々は1月も経たずに落ちるかと」

「……なんじゃと? アルカ、詳しく説明するのじゃ」

 

 冷や汗が背筋に垂れる感覚を無視して、詳細を詰めた。

 どうしてだ? 本来なら後5ヶ月は持つ筈……まさか、採掘していたからか?

 いや、まさかぁ? 精霊神石は見渡す限り有ったし、俺たちが採ったのは全体から見ればとても少ない筈だ。バケツ一杯の水の中からスプーン程度の水を掬った程度なのに……まさか、それだけで?

 

「そもそも、我々の採っている場所は[黄金の愚王]を再現している精霊神石の固まりからですな。その中の……既に再現に当てがわれた分を避け、下層の未使用の物を使っていましたな?」

「それは妾も承知じゃ。真に問いたいのは、妾達が採っている分は大した量では無い筈だと云うことじゃ」

「さて、私達にはなんとも言えませんな。なにせ、精霊神石とは魔力もはまた別の理の物。その力の由来が星や世界なのか、時間や因果なのか、それさえも未解明ですからな」

 

 煙に巻く言葉に苛立ちが募る。そんな事は分かっていると、アルカの肩を掴んで睨んだ。

 時間が足りないんだぞ? 飛行船を頼りにするのはジリ貧だと分かっているのか?

 確かに飛行船に乗れば落下からは助かるだろう。だが、それだけで人は生きていけない。

 ご飯と水と空気と熱と寝る時間が無ければ、人は生きていけないのだ。

 

「答えになっておらんぞ! アルカ、妾は力の正体なぞ求めておらん! 此処から逃げて、その上で生き続ける方法を探しておるのじゃ! 原理でなく、使い方! 答えさえあれば良いのじゃ!」

「そうですな、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……どういうことじゃ、アルカ」

「使い方ばかり目を向けて、原理を究明しなかった。だから、我々に猶予が減った原理は分かりませんな。途中式な必要なのに、この公式が分からないのです。これでは計算など夢のまた夢でしょうな」

 

 つまり、なんだ? 俺が使い方ばかり追い求めてたせいでこうなったと?

 もっとゆっくり、実験を重ねておくべきだったと?

 8ヶ月しかないのに、それで1400年先の結果を出そうとしているのに?

 悠長に調べてれば良かったと? この、寝ようとすれば明日が来る……眠れない世界で?

 

「……それは、妾の責だと弾劾しておるか?」

(俺の指示と方針が間違いだって言いたいのか?)

 

「違いますな。ただ、その事も承知の上でやっていたと思っておりましたので、意外だと驚いたのです」

 

「つまり‭─‬‭─‬妾が、先を見通せぬ愚かな王だと言いたいか」

(苛つくなあ……俺は眠りたいのを我慢して必死に策を練ってるのに……俺が明日に飛んでいる間に眠れているお前らになんで責められないといけない?)

 

 寓話の世界で3ヶ月経ったけどな……俺にとっては2日間ずっと眠れてないデスマーチなんだよ。

 前世でもやったことのない徹夜状態なんだよもう。精霊神石探して、海に突入して、モブに色々教えて、もう疲れたんだよ。

 それでどうして矯正された自分の言葉や、お前の考えまで気を回せる? 加速しているお前らから見たら俺は玉座で長く寝てるように見えても、俺にとっては3回の瞬きの間のことなんだ。

 

「いえ、私は罵るつもりで言った訳では‭─‬‭─‬」

 

「言い訳は不要じゃ‭─‬‭─‬兵よ、牢屋に連れて行け。妾の心労も気にかけぬ者の頭を1日冷やさせろ」

(少しは反省してくれよ…俺の辛さを理解しろよ、あれだけ時間が有ったんだし、ユダから聞いてる筈だろ?)

 

「はっ!! おら、着いてこい!」

「何を……こら、離せ! 私の1日がどれだけ貴重だと分からないのですかな!?」

 

 苦痛なんだよ、この世界が。そろそろ心の余裕が売り切れるんだよ。

 [黄金の愚王]なんてクソみたいな話の為に、一睡も出来ないのが辛くて仕方ないんだよ。

 この事実をユダと2人きりだった時に話しても、あの馬鹿野郎は、

「はぁ…? 何だか大変そうですね。時間の流れが違うだなんて」

 ……と、くっそ腹立つ反応しかしなかった。あの時はまだ全然余裕があったから許したけど、今やったら絶対処刑してる。だって最初の方のユダ、やたら褒めてきて少しウザかったし。

 それでも最初の時に周りに言い含めるように指示はした。だからアルカも知っているだろうに、アイツは俺の人生初めてのデスマーチを煽りやがった。

 

「‭─‬‭─‬ユダよ」

「はっ! 何でしょうか、女王様!!」

 

 だが、それはそれとしてやるべきことはやる。

 タイムリミットが短くなった以上、今までのプランは廃棄してしまおう。

 

「学者に一艘で何人乗れるか、どれだけの物資を載せられるか、空気を虚空に漏らさずに済むか、どうすれば一月保てるか考えさせよ。そしたら、兵士を護衛に当たらせ、助けられる庶民、農民、兵士の家族……規定人数分、船に乗れる切符を配らせよ。誰を優先するかは配る者に任せる。絶対的に皆に責められる立場じゃからな、その者の親しい相手を優先させてもよいと伝えるのじゃ」

 

「はっ!! 必ずやそうさせて頂きます!」

 

「では行け。妾は……少し、休むとする」

 

 背後で飛び立つユダを気にせず、まぐろの大群を見上げる。

 まさかこんな馬鹿みたいな物が命綱になるとは思わなかった。

 だが……最後の最後に手が届いた物だ。多少見てくれが悪くても、俺達はこれに命を預けるしかないだろう。

 

「はぁ……」

 

 近くの草原にのっそりと横たわり、空を見上げる。

 眼を閉じれば明日になるから、じっと見上げていた。

 

「土はまとも作れたが……火は松明まで、水は如雨露(じょうろ)の中にあるもの、風は未だ吹かず、星の光と闇を保つ蜘蛛の巣が精々か……世界を創るとは、まっこと難しいことじゃのう?」

(全然研究進まねぇ……その上制限時間も来た……俺だけ生き残るには、もうモブにも情が移ってしまった……始めは死んでも気にしないつもりだったのに、今は召使いが擦り傷をするだけで心配してしまう……人間、案外非道に成りきれないものだな)

 

 唯一非道になれたのも、殺さないと世界が崩壊する6人のルシファーを殺した時だけだった。

 俺にとってはほんの2日間一緒にいただけだというのに……そう考えいると、いつの間にか明日になっていた。

 どうやら無意識に目を閉じて、時間を進めてしまったようだ。

 

「あー……いつの間にか瞬きをしておったか……本当に寝れぬのう、何処で寝ても同じなのが特に辛いのじゃ……あれ? まぐろ達が無いのじゃ。まあ流石に邪魔だったし場所を移したかの?」

(頭痛い。くそっ海では気絶出来てたってのに……下手に入ったらそのまま死にそうだから取れない手段なのが辛い)

 

 震える指で膝を支え、黄金で重たい身体を起こす。タダでさえ疲れてるのに、この重りは余りにも邪魔だ。

 ぽたぽたと汗のように流れる黄金が、本当に忌々しい。日の反射でチカチカして眼に痛いから本当に忌々しい。視界の端で光の雫が下に流れるんだよ……もう寝させてくれよ。

 

「‭─‬‭─‬あ! 女王様、こんな所におられましたか! ご報告があります!」

「ああ、お前か……今日はなんじゃ?」

 

 いつも報告を挙げに来る伝令の方に振り向く。

 この金髪焼け肌伝令、毎日俺の所に色々報告しに来ては俺の話を他に広める立場だからか、他のモブと違って口と眼の影があるんだよな。まるでエロ同人に出て来る寝取り男だ。

 確かモブにも自我が宿る段階が云々とかなんとかあったし、他の顔なしモブよりは自我があるのは間違いないだろう。お陰で唯一見分けが付いて助かる。

 

「‭─‬‭─‬逃亡です!宰相のユダを筆頭にアルカ研究員と精霊神石の研究者達、及びその関係者およそ1500人が、貯蔵された物資を全て、夜間に積んだまぐろ飛行船に乗って、この地から逃げ出しました!!」

 

「……はぁ?」

 

「それだけではありません!ユダが何かしたのか、民衆が口々に女王様を非難して城に無理やり入ろうとしており……このままでは、抑えの兵士を突破されるのも時間の問題です!」

 

「…………‬はぁ?」

 

 寝耳に水とは、このことを言うのだろう。

 だってついさっきまで俺に忠誠を誓っていた奴らが、急に敵対行為をしたのだ。

 寝不足で辛い俺の脳には理解に時間をかける内容であり‭─‬‭─‬理解した瞬間、俺の中で何かが切れた。

 

「‭─‬‭─‬裏切り者がぁ!! 自分の事しか考えない屑共が!! くそっくそっクソォ!!!」

(あの野郎!! 三味線弾きながら太鼓叩いてやがった!! [黄金の愚王]の物語から脱却出来てなかった!! ずっと俺の話に適当に合わせて、信じてなかったんだ!!)

 

 勘違いしていた。

 ユダは俺の話を聞いて、俺と同じ目線に居ると思っていた。

 だが違った。本当は何も信じて居なかったのだ。

 ……或いは、物語から脱却した上で何処かで見切りを付けたか。

 

 どの道、このタイミングで裏切った事実は変わらない。

 

「‭─‬‭─‬〜〜〜〜〜ッ!!! 兵士を集め……いや、今はいい。どうせもうこの世界にはおらんだろうよ……! 伝令、兵士にこう伝えよ! 幾らでも黄金を渡してやる、だから何をしてでも目の前の反逆者共を鎮めよとな!」

 

「それは‭…─‬‭─‬はっ!! 女王様のご命令、しかと届けてみせます!」

 

「頼むぞ……妾の口はもう、お主しかおらぬのだからな…!」

 

 ああ、本当にイヤになる命令だ。

 金を渡すから見せしめで殺す判断を自分でやれと言ったのだから。

 同じ種族というだけで、殺すのに抵抗する自分がイヤになる。

 ここまで追い詰められているのに決断出来ない自分が、本当に。

 

「……ああ、何処で間違えたのじゃ」

 

 もう無理な話だろうが…叶うことなら一つだけユダに聴きたい事がある。

 お前は何を目的に裏切ったのかと、今はただ、そう聴きたかった。

 

『ならば‭─‬‭─‬契約はどうだ?』

「お前は……黄金の悪魔?」

 

 その時だった。

 全身から少しずつ漏れている黄金が集まり、海で見た悪魔の姿になったのは。

 

 


 

 

 エラトリア パシェード王国ルーシー期

 精霊歴503年「黄金の時代」

 

 

「‭─‬‭─‬今、なんと?」

「言葉通りでさあ…今、陸の方に女王様を渡せやしません。即刻処刑されることになりまっせ」

「何故」

「ユダ伯爵様が賞金首を懸けたから…ってのが理由になりやすが、聴きたいのはその心内の方とは思いやす。それに関しては……すいやせん、あっしには測りかねることにやりやす」

 

 演説に失敗し、引き篭もってから6ヶ月が経った頃、私は寝耳に水を入れられたような言葉を、私の似顔絵と共に書かれたデッドオアアライブの紙を渡されながら聴いていました。

 

「…………」

「心中お察ししやす。ですが、起きた事は事実として受け止めなきゃ前を向けやしやせん。今はあっしらが匿いますんで、今暫く辛抱を‭─‬‭─‬」

 

 言葉など最早耳に入りません。

 心の中で渦巻くのは、何故こうなったのかを後ろを向いて順番に確認する、記憶の迷廊をぐるぐると巡る私自身の迷走でした。

 

 先ず、私はあれから暫くの間は引き篭もって、扉の前に差し出される物を食べるだけの存在でした。

 しかし人は案外勇気が出せるもので、一歩部屋から出て、出会った人々に私の失敗なんて何も無かったような対応をされ、安心したのを覚えて居ます。

 

 それからは私も船員の1人として手伝い、その最中に魔法使いの1人から星の見方を学んだ経験は、夜空の景色と共に決して忘れる事はないでしょう。

 星を見て、一度体調を崩しても持ち直し、無事に先住民から精霊神石をありったけ貰い受け‭─‬‭─‬最後の最後に嵐に遭って、本気で死ぬ事を覚悟したのを覚えています。

 まあ、そんな嵐も多少荷物を捨てるだけで済んだのは幸いでしたが…この冒険の最後が、これですか?

 

 そこまでして漸く帰って来て、最初の受けた仕打ちがコレなのは……私の知る限りでは、理解出来ないことでした。

 

「‭─‬‭─‬ま、女王様! 魂が抜けてやすよ!戻ってきてください!」

「はっ!……申し訳ありません。何故こうなったのか思わず思い馳せてしまって……」

「……いえ、仕方ないことでさあ。故郷に凱旋のつもりで帰って来たら、殺しても罪に問われない罪人扱いなんですから」

「それでも……いえ、ありがとうございます。ここまで慰められた以上、私は私の未来の為に前を向きましょう」

 

 正直、未だ混乱は冷め止まりません。

 止まりません…が、それで心配をかけさせ過ぎるのも違うでしょう。

 だって私は女王で、堂々として人々に安寧を与えるのが仕事です。

 こんな風に心配させられるなんて王失格、なのですから。

 

「船長、どうするにしても先ずはユダに会わなければなりません。何故この様な事をしたのか、この様な事をすることになったのか、それを知らなければ、非難も賛同も出来ないでしょう」

「……やっぱり、そうするしかねぇですかい」

「ええ、先ずは匿って下さろうとした事に感謝を。ですが、此処で止まっては和解する機会が無くなる気がするのです」

 

 この冒険で私は船長達と随分仲良くなれました。

 ですから、こうなった私が妥協しないのも分かっていることでしょう。

 船長は観念した様にガックリと項垂れた後、渋々とした顔で頷きました。

 

「……でしたら、あっしは反対しやせん」

「なら‭─‬‭─‬」

「ですが! 今のあっしらの後ろ盾は女王様だというのを忘れないでください。もう貴女1人だけの命ではなく、その言葉と振る舞いにあっしらの生活と人生が乗っかっていると、そう心得て貰いやすよ!つまり、あっしらもその対談にいっちょ噛ませて貰いやす!」

「それは‭─‬‭─‬ええ、そうですね! 私はもう、私とユダだけの女王ではない。今はもう、貴方達の王でもあります。当然、生きてこの国の栄華を取り戻してみせましょう!」

 

 船長に言われ、決意を新たにします。

 この冒険で私は多くの経験を得た。なら、今度はそれをこの国の為に役立てる様にするべきでしょう。

 なにせ今の私は、王として前よりもずっと成長したのですから。

 

「此処らは昔、一回襲撃した事があるんですが……その時に使った川賊の秘密の道がありやす」

「後で話す事が出来ましたが、続きをお願いします」

「堪忍して下さいよ……ユダ伯爵のお宅の近くには川があり、これが満ちる瞬間に海から一気に流れるんでさあ。それこそ一瞬だけ、川の流れが逆流する程に。これを使わない手はありやせん。時刻にして早朝‭─‬‭─‬不意を突くならいい頃合いでさあ」

「その様な物が……ではその様に。期日は今宵から日が昇るまで。私達が帰って来たと対策されたら元も子もありませんからね」

 

 そうして話を詰めて行き、決行の時刻となりました。

 人員は少数精鋭という事で私と船長、そして一番腕の良い魔法使いの兵士の三人。

 星について教授してくれた女性の魔法使いです。信頼も置けますし、3人目として私自ら船長に推奨致しました。

 

「では行きますよ!」

「面舵いっぱーい!」

「星辰は揃ってます。やるならば良いタイミングですね」

 

 小舟に3人で乗り、船から離れ、かつて出航した海峡の麓でその時を待ちます。

 出航の日とは随分と様相を変えた街並みを遠目に目を細め……ユダに、正しき彼の事を思い馳せました。

 

 トン。

 

「‭─‬‭─‬えっ?」

 

 ジャボン。

 

 そして‭─‬‭─‬大きな波と共に、小舟が川の方へと向かい始めました。

 

「じゃあ、行きやしょう、普通に馬車でな? 女王様はユダ伯爵の正統な行為への怒りで転覆し溺れたって事で」

「丁度波の大きい時刻です。不自然な事もありませんし……しかし、()()()()のユダの財産に眼を眩ませた馬鹿な女が自滅したと……9歳の女の子に与える設定にしては不自然では?」

民衆(馬鹿ども)はそんなの気にしやしねぇよ。普段自分らの前に出ねぇ王の年齢なんざ……」

 

 ただ1人……背中からの衝撃で海に落ちた私を置いて。

 

「あ…あ! 待って下さい! 私が落ち……落ちて……落とされた……の、ですね」

 

 思わず手を伸ばし、それから聞こえていた話を咀嚼して、私は裏切られたのだと理解しました。

 

「いつから……いえ、そういえば彼らはユダの()()()()()でしたか。ならば、本当の主君がユダなのも当然……」

 

 きっと、なんて事のない話なんでしょう。

 嫌々引き取った相手を排除したくて、しかしそれが手にした富は欲しい。

 だから私を出航させて、富は自分の物にして、余裕があるから、本当に帰って来た時の為にその栄光も貰い受ける準備もした。

 

「考えれば、私が正しいと感じた彼の思考は全て、王国の為の、自領の為の、自分の利益になる物でしたか」

 

 この事をどう言えば良いんでしょうか。

 悲しい訳でもなく、怒りが湧くでもなく、只々に喉元に引っかかっていた違和感が取れた感覚。

 表の言葉の裏に隠れていた真意を悟った時の感覚。

 これをありきたりな言葉に収めて仕舞えば……そう。

 

 勘違いが解かれた。

 

「ああ、なんだ」

 

 私は誰にも必要とされず、ただ騙されていただけの、愚かな王だったか。

 滑稽だな、滑稽極まって笑えて来そうだ。

 今までの全ての努力が空振りで、全ての経験が白痴の夢のような物だったと知った時、人はこうも無力の二文字に苛まれるのか。

 

 ダプン。

 

 息を止めて、海に沈み波に身を任せ逆さまになる。

 青い景色が広がって、自分がこの大海と一つになった気分になれそうだった。

 きっと悪くない事だろう。無用の存在が母なる海の一部として在れるのだ。

 

 でも…まだ未来を見る事は出来てないから、私はまだ私で有り続けたい。

 

(きっと私は愚かだろう。それでも…私は王だ。未来を思い続ける王だ。例えそれで破綻しようとも、私はこの選択をし続けるだろう)

 

 きっと我が父も同じ思いだったのだろう。何となく、その事が分かった。

 血の繋がりが、這い出る過去の様に突きつけられる。

 

(それでも…それでもだ。私が諦めてやる理由にはならない。愚王は言葉で止まらない。ならば、私もこの程度で止まってやる必要は‭─‬‭─‬ない!)

 

 水中で一回転し、顔を海面に出して呼吸する。それからもう一度潜って、帰りの事など考えずに海底まで潜って辿り着いた。

 

(今の私の手元には、ユダに見せるように持っていた一際輝いている精霊神石がある。そしてもう一つ……私と黄金の縁、そしてこの地の黄金の鉱脈の大きさを信じて‭─‬‭─‬見つけた!)

 

 既に思考は霞がかかってきた。

 それでも、精霊神石と黄金の二つが揃った。

 

(先住民の人が言っていた……この石は対価さえ釣り合うなら、どんな事でも叶えられるって!)

 

 それなら、私には最も不要で、価値のある物がある。

 

 無限に続く、黄金の血脈。

 私が最初に見つけた、本来ならユダではなく私が持つべき巨万の富。

 

(これは賭けだ。私が信じた精霊神石に、私が見つけた黄金を捧げる行為。上手くいかない可能性の方が高いだろう。それでも、最後くらいは私が信じた物を信じたい‭─‬‭─‬!、)

 

 愚王と私を規定するなら、その通りに。

 黄金に手を当てて、最も欲するものを想起する。

 

 それは信じられる臣下ではなく、それは無限の富ではなく、それは眩しい程の栄光でなくて……。

 

(私が‭─‬‭─‬私らしく生きられる力。この国の行末を見守る力が、身体が、出会いが、欲しい!!)

 

 果たして、その願いが精霊や神に届いたかどうか。

 定かではないが、確かに()()は応えてみせた。

 虚空がまろび出て、6色の一等星の内白い星が輝いて、金色(こんじき)のヒビと蝙蝠の翼を持つ灰色の()が現れた。

 

『さあ、契約を。悪魔と踊る覚悟は出来てるかな?』

(勿論、愚か者にはこれ以上ないお相手だからね)

 

 私は、迷う事なくその手を握った。

 

 






N「[黄金の愚王]黄金の悪魔」
 精霊歴503年、黄金の時代のパシェード王国で書かれた作品のキャラクター。
 プロパガンダとして制作された作品内の、黄金の象徴として登場した。
 悪魔という設定と天使化で矛盾しており、悪魔の力と天使の力の両方を完全には引き出せなくなっている。その為常にひび割れており、最弱の一つ上程度の存在となった。
 性能としては契約によって敵味方のスキルの内一つを黄金で埋め、任意のタイミングで自らを退場させるだけ。契約自体の成立率も低く敵味方の識別をしない為、ただの肉盾として使ったほうか有意義。しかし、一度黄金に変えたスキルは契約解除不可の為、低確率さえ抜ければ永久に相手の手札を一つ封じられるロマン型でもある。

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