Nランク[のじゃロリ天使姫]に転生した!   作:何処にでもある

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 どっちも自身のお金や信用を削って力を引き出す事に違いはありません。
 昨日の自分に任された借金を返せるかどうか、結局は使い方次第です。
 次回は他視点ラッシュです。




課金と裏切りは一度やったら常に思考の片隅に居座る

 

 

「何故、今なのじゃ」

『何故、とは?』

「もう妾が払えるものは少ないからじゃ。あるとすれば其方が渡した黄金くらい。しかし、それなら自分で用意すればよいじゃろう?」

 

 自虐して項垂れる。

 この世界で悪魔とは良くも悪くも契約すれば問題が解決する連中だ。

 その対価に多少の奇行が出てきたり、命を奪う事も少なくないが……それでも、今の俺にはそれすら払える物がない。

 特に、この黄金で払おうなんて論外だろう。だってこれ悪魔から貰ったんだぜ?悪魔からしたら自分の金で飯を奢られるようなものだ。

 

『キキキ…それは違うな。俺がお前に与えた力はその者の未来を黄金に変える力だ。その者の可能性を削り黄金として産み出すもの…それは、俺にとっては唯の黄金よりも価値がある……!』

「未来や才能…?……一体どう言う事なのじゃ」

 

 悪魔は言う。その認識は間違いだと。

 ルシファーの出す黄金は、今も尚価値が宿っているのだと。

 尤もその言葉は、俺にとっても嫌な想像も掻き立てる類いの物だったが。

 

『文字通りだとも。そもそも黄金とは価値の象徴…無から価値ある物を取り出すのではなく、価値ある物を対価に手に入れる物だ。それこそ無形の物だとしても、黄金に出来る』

「……つまりお主が与えたこの力は、妾の無形の価値ある物……"出来る事"を、才能を黄金として変換したのか?」

『否! それでは面白みがないだろう! 確かに才能は極めれば無限の富を産み出すが、それはそれ以外の要因も全て揃ってこそだ。だから俺は、もっと価値があり、王ならば誰しもが数多の如く持つ物を黄金に変えさせることにした!』

「…ならば答えよ。それはなんじゃ」

 

 勿体ぶらずに教えろと、悪魔をせっつく。

 俺に与えられた猶予は少ないのだから、早く答えろと迫った。

 それは最近不自然に減ったこの世界の時間か? それとも幸運か? はたまた未来なのか…?

 お前が勝手に与えた力は、一体何を黄金に変えやがったんだ?

 

『‭─‬‭─‬信用、他者からの評価だ』

 

「……は? それを可能性や未来と言っておるのか?」

 

『しかしそうだろう? 才能も可能性も未来も、誰かより評価を得てこそより価値を高める。より輝く。しかしそれが悪くなれば、良くない方へ傾けば……どうなると思う? 妨害され、蹴落とされ、邪険にされ、無視され、騙され、除け者にされ、見捨てられるのだ。しかし、良い方向に行けばどうなると思う? 手助けされ、協力され、受け入れられ、仲間となり、信用され、救済される。これを可能性や未来、価値とせずに‭─‬‭─‬何と言いたいんだ?』

 

 怒涛の如く、悪魔は饒舌に語る。

 俺が失っていたものを語る。

 俺が垂れ流していた黄金がどんな類いの物だったのか、それ以外にあるのかと、問いかけてくる。

 

『よく言うだろう? 黄金の絆、掛け替えのない日々と。それは時間と信用を合わせたからこそ、それだけの価値を築けたのだ。しかし……どうだろう、片方が欠けてしまえば? 当然、掛け合わさる事なく、その価値を落とす』

 

「‭─‬‭─‬ッもうよい! なんてことをしてくれたのじゃ!!! こんな力、何を貰っても要らぬ! 今すぐ妾から取り出せ!!」

(もう良い! お前がとんでもない外道で、嘲笑いに来ただけなのがよぉく分かった! もう死ね! この力を取り出してから死ね!)

 

 沸点に到達し、声を荒げる。

 それでも、悪魔は語る。

 

『キキキ!! その顔が見たかった! だがこれが底ではない! この力、初めから嫌われては一粒の金も取り出せまい!だから俺は己の身体が自壊してゆく中で能力の仕組みに一計案じた! 借金や負債という形で先に金を取り出し、後から信用を払う仕組みだ! そして、この払う時刻が昨日と今日の境目だったのだ!』

 

「黙れ!!」

 

『お前が最高の王である程、この力は数多の黄金を産み出す! 産み出すほど、最悪の王となる! そうなる程‭─‬‭─‬嫌われ者たる悪魔の俺相手でも、頼らざるを得ないだろう?』

 

「何を言っても‭─‬‭─‬!」

 

 振り払おうとする俺の手を、悪魔が強引に掴んだ。

 途端に、ニヤつく笑顔を引っ込め真剣味を帯びた顔になる。

 

『契約だ。俺とこの舞台([黄金の愚王])から脱出しよう。対価は、これまで出した黄金(築き上げた信用)と、この王国(裏切り者達)だ』

 

「‭─‬‭─‬ッ!?」

 

 思わず怒りが引っ込み、目を白黒とさせた。

 この物語の舞台装置である悪魔から、出るとは思わなかった言葉だったから。

 

『俺は悪魔だ。誰からも嫌われ、事実この舞台の悪意ある存在として生を迎えた。天使にして悪魔という、歪な身体を待ってだ』

「……だからなんじゃ? 妾が其方に騙された事実は変わらんぞ!」

『必要なら謝罪でも憎い相手として殴られもしよう。だが、俺はこの契約を残念だと諦めるつもりは毛頭ないぞ? 何故なら、これは俺が生き残る唯一の手段でもあるからだ』

「……事情じゃ。その過去と理由を語れ。判断は、それからじゃ」

 

 寓話の世界に生まれ、演じる者達がこの舞台の仕組みに気付くきっかけは様々だ。

 ある者は転生者の持つ知識に、ある者はそれを聞いた結果、またある者は現実から来訪したが故に、そしてある者は‭─‬‭─‬自身の歪な身体と王の呟いた言葉から。

 

『俺は初め、自分にある筈のない天使性に疑問を抱いた。そして、お前の独り言を聞いてこの世界の真実と、俺の歪な身体への答えを得た』

 

「………」

 

『俺は必死に考えたとも。悪魔である俺は嫌われ者で、ただ共に逃げる様願い出ても殺される運命にある。何故なら俺はお前にとってはどう在っても悪であり、仮に仲間になろうと、出来る事は黄金の契約と自ら自壊することだけ。存在悪其の物だ』

 

「……然り、仮に協力したいと願い出ても、契約する前の妾でも問答無用で殺しておったのじゃ。何故なら、物語で妾を陥れた元凶で在るが故に」

(実際、普通に殺しただろうな。仲間になっても不安材料にしかならないし、悪魔だから罪悪感も湧かないだろうし)

 

『だろう? どうやってか知らんが、お前は俺たちの元となる話を知った。そして、誰よりも真剣にこの難題と向き合った。僅かな時間の中、夢からの誘いに抗い続けて来た。……あのままだと、あの飛行船に乗って数多の民と共に一時の平穏な日々を手にしただろう』

 

「その通りじゃ。じゃから、妾はそれを邪魔した其方を許さん。このまま妾を破滅に陥れた其方を許さん」

(ぜってぇ許さんぞお前、なんて事してくれたんだよ本当)

 

『……それでは俺が困るのだ。確実に俺は助からないし、許さなくとも良いから此処から俺も逃げ出したい。しかし、逃げるだけではこの身体が自壊して死んでしまう。‭─‬‭─‬だから俺は、お前に与えた能力に更なる一計を案じた』

 

 悪魔はそう言うと、一枚の契約書を取り出してみせた。

 黄金の力を渡した時とは違う、ちゃんとした契約だ。

 

「契約書か……」

 

『今こそ、お前とこれから結ぼうとする契約の中身を全て明かそう。

 

 0、この契約は口頭説明と契約書の説明が一致した物のみを有効とする。

 1、悪魔は「信用を黄金に変える力」を契約者に先払いで与え、契約者と正式に契約を交わした時に、更に天使性を契約者に渡し、種族を悪魔族に変えた後、「契約者の生み出した黄金を対価にどんなものも願えば手に入る指輪」(以下「悪魔の指輪」と呼称)に変化する。

 2、契約者の力は黄金の代わりに信用の負債を負う。

 3、契約者の力は規定日に自動で負債を完済させるが、信用が足りなかった場合、負債は悪魔があらゆる物を対価にする事で補われる。

 4、「悪魔の指輪」になった悪魔は契約者へ誠心誠意をもって永久に完全服従し、契約者へ嘘や言葉足らずの騙し行為を禁ずる。

 5、「悪魔の指輪」は一日に15分のみ、悪魔と契約者の合意で悪魔の姿を取り戻せる。その際も「4、」の項目は有効である。

 6、「悪魔の指輪」になっている間、悪魔は契約者の感覚を共有し、念じる事で会話を行える。この会話と感覚の共有は悪魔が有利になる条件ではなく、契約者へより貢献する為に使わなければならない。

 7、正式に契約した後、「信用を黄金に変える力」は「生物を除く所有物を同価値の黄金に変える力」に変化する。この力のあらゆる判断基準は、最もローコストな手法を用いて定められる。

 8、この契約を結ぶのに不足したリソースは悪魔側が不利になる形で補われ、契約後はそれを確認出来ない。

 666、ただし、ルシファー側の対価が過剰ならば、全ては悪魔側に有利な条件、具体的には別記載の契約書の通りに実行され、未払い分は悪魔の物となり、この事に関した事のみ上記の制限を受け付けない。

 以上が、俺がお前持ちかける契約だ。疑わしいなら、幾らでも質問や再度の朗読をさせても構わない』

 

 そう言って、悪魔が契約書を手渡した。

 俺はそれを乱暴に取り、中身を検分する。

 そして、先ほどの朗読と差異がない事をしっかりと確認する。

 

「……どうやら、違う事が書かれておることは無さそうじゃが…」

 

 余りにも俺に都合が良い契約だったが……当たり前だが、疑わしいことこの上無い。

 確かに契約すれば、悪魔の指輪の力で全ての喪失を取り戻せるだろう。

 指輪を使えば失った信用は黄金を全て使えば取り戻せるだろうし、今後悪魔は最も信用できる相手になる。

 「エラッタ」でも悪魔は契約に誠実だったし……この契約を交わせば、悪魔は今後俺の道具として生きていくことになるだろう。

 

 勘違いや思い違いがあってはいけない。

 これは今後を左右する契約だ。疑問はしっかり無くすべきだろう。

 

「最初の質問なのじゃ。何故この様な迂回なやり方をした?」

『悪魔がそれだけ信用されないからだ』

「次じゃ、何故妾に契約を持ちかけた?」

『この世界で最も賢い王であり、一番信用される者であり、俺の疑問の答えも持ち合わせていたからだ』

「最後の質問じゃ。この契約には余りにも其方の我欲が無いのは?」

『この契約に対する俺の力不足を補う為、そしてお前が俺に褒美を与えることを期待し、信用しているからだ』

「はっ傑作じゃな。そんな事をしなくてもよい契約を持ちかけたのに、すると思うか?」

『知らんのか?価値のある信用とはお互いが歩み寄ってこそ完成する。なら、先ずは俺から歩み寄るべきだ』

 

「そうか‭─‬‭─‬なら、妾の答えは一つなのじゃ」

(‭─‬‭─‬なら、俺の答えは)

 

 

運命点(チェックポイント)

更新(クリア)

 

 

「‭─‬‭─臣民に見放された愚かな王と、生涯共に踊る覚悟はあるな?」

(一度は許すから、俺に信用させてみせろ)

 

『当然、最初から。‭─‬‭─‬コレで契約は成された』

 

 青い炎が契約書を燃やし、悪魔から光り輝く物が飛び出して俺の中に入った。

 翼が金色(金色)に輝く3対の、6枚の物へと変化し、力が溢れてくる。

 それに対して悪魔はその身をホワイトゴールドの指輪に変化し、俺の左手の薬指に収まった。

 

「……何故、よりによって薬指なのじゃ?」

[生涯を共にする契約だ。なら、最も繋がりの良い指輪は自然と薬指になる]

「おおコレが念話……ふぅむ……そういう物なのじゃなぁ…」

 

 この契約の何を信用したのか?答えとしては、信用はしていない。

 では何を理由に契約をしたのか?先に言っておくと、「エラッタ」の知識と契約内容が主な理由では無い。もっとチンケな、しょうもない事だ。

 

‭─‬‭─‬ただ、生きるのに必死な悪魔の姿を見て、チャンスを与えたいと思ったから。

 

「……最後の最後が合理ではなく、感情の選択か。妾もまだまだなのじゃ」

(前世じゃやり直す機会とか貰えなかったからなぁ…迂闊なのは分かってるんだけど…)

 

 前世じゃ人間関係の失敗ばかりでフリーターのその日暮らしだったからな。

 だからまぁ、こういうのには弱いし見捨てたくは無いんだ。

 見捨てると前世の俺と重なっちゃうからな。

 例えその為に俺を陥れたとしても、生きるのに必死だったなら一考し、最終的に俺も助けようとしていたなら様子を見る価値はある。

 

「悪魔よ、お主は自身の身体を調べてるっぽいし天使に詳しそうじゃ。故に願う前に一つ聞こう。天使が100年まで生きるだけでよいならば、何処まで削れるのじゃ?」

[俺が調べた限りだと翼一つに200年は生きられそうではあるが…頭上の輪っか、ヘイローだけ残ってれば150年は生きれる。それも無いと欠け過ぎて5年しか無理だろう。…聞いてどうするんだ?]

 

 少しでも足しになれば良いかなって……だって価値の判断基準が契約を成立させる為にローコストな手法なんて、めっちゃ曖昧な文面になってたからな。

 誰の価値基準か分からない以上、リソースはあって困ることはない。

 

「そこまで長生きするつもりが無いから使うのじゃよ」

[なんだそれ……謙虚だなお前]

「そうかのう?人間からみたら大往生じゃよ?50年も余裕があるし」

[元ネタの話はそうかもだが、俺は悪魔でお前は天使だろう?]

「妾はあくまでも人間のつもりじゃよ、その日を生きられるだけで満足できるタイプなのじゃ」

[……キキキ、ある意味途轍もなく傲慢だな、それは。どうやらお前は誰よりも天使らしい天使のようだ]

「それはないのじゃ。妾は普通の範疇じゃよ?」

 

 そうか? 俺は「エラッタ」の原作に興味はないし、その日を生きて、その上で親しい奴らが幸せに生きてたら満足だぞ? 前世じゃそれすらも困難だったからな。

 後はゲームとかあれば万々歳なんだが、そこは絵や小説や漫画に挑戦する良い機会だと思えば良い。サイコロがあれば尚良いな。俺は自給自足出来る方のオタクなんだよ。

 

 まあ、それは今はいいか。頭が寝不足で思考が変になってそうだし。

 取らぬ狸の皮算用、鬼が笑いそうだしこれ以上は控えるとしよう。

 

「では、願うとするか。……どれだけ黄金に出来るかも色々試してみての?─‬‭─‬"悪魔の指輪に天使ルシファーが命ず。妾のヘイローと肉体を除く全ての天使性と妾の持つ国家の全てと天の寓話世界での[黄金の愚王]の全ての再現猶予、ならび今までと今後の他者からの正しい評価を黄金に変え、その対価に、妾を始めにこの地に居る出来る限りの者を、創造した「箱庭」へ集めよ"」

 

[‭─‬‭─‬対価は全て受諾出来た。総量76tで、転移は俺らを含んでこの地に居る全ての民、総勢18万8601人。創造する箱庭の規模は102万人がこれまで通りの生活が可能な、動植物が沢山居る豊かな土地に川と湖や地下水もあるドデカい「箱庭」だ]

「事前の確認が可能か……サイクルはどうなのじゃ?水や空気が虚空に落ちるとかは?」

[問題はない。人口が10万を下回らない限り、そこに生きる人々の自然放出した魔力で永久に保持し続ける]

「結構分かることが多いのじゃな」

[どうやら随分と遠い未来の価値基準……交換相手みたいだな。金の価値がかなり高いし、俺も予想外だった]

 

 なにやら胡乱な言葉が出てきた。

 未来の人と交換? 契約書に書かれた指輪の性能とは無縁の言葉だな。

 

「交換相手?」

[どうやら望む物を未来の誰かから買う手法になったらしい。お前の望む物が謙虚なのが功を奏したな、「どんなものも願えば」の文面から、契約者が今後も望まない物を排除し、最適化した様だ]

「不便にならず、その上で契約を成立させる……随分と融通が利く契約書なのじゃな」

[そういう文面と対価にしたからな。悪魔が本気で相手に寄り添う契約は、どれだけ力の弱い悪魔でも凄まじい物になる。相手が誰か分からないのが難点だし、毎回取引相手が変わるかも未知数だが……]

「よい。妾の欲しい物が手に入るなら気にせんのじゃ」

 

 なんか、思ったより規模がデカいな。結局誰の価値基準か分からないけどお得だわ。

 

「因みに黄金の変換はどうじゃ?」

[此方も未来の何処かの相場だな。まだまだ未知数だ]

「ほう……天使性とか再現の時間とか正しい評価とかあったが?」

[それは天使になる魔道具、時間を貯めた魔道具、誤解を解く魔道具として判定された。……誤解されたままで良いのか?]

「よい、人間関係は誤解されっぱなしになるものじゃからな。昔からそうじゃし慣れておるのじゃ」

[……例えばどんなのだ?]

「年老いた親に我が子だと思われなかったこと、後は恋人を奪った相手だと思われて刺されたこと、刺した奴が指名手配の殺人鬼で、其奴と間違われて牢屋で3ヶ月暮らした事じゃな」

[ほう! お前の元ネタのルーシーは随分と壮絶な人生を歩んだみたいだな! 今度詳しく話してくれ! 愉快な話になりそうだ!]

「……また今度にするのじゃ」

 

 黄金は俺が要らないか今後は余り必要なさそうな物を詰め込んでみたが、結構融通が利くらしい。

 これはお得な契約だったな。「未来の誰かと取引できる指輪」か…うん、超便利だな。

 誤解を解けた事なんて、前世の両親相手でも出来なかったし……流石にそれで囚われたり殺されたそうになったらキレるけど、そうじゃなきゃそれに合わせてあげりゃ済む話だしな。慣れたもんだよ。

 

「では、飛行船に乗った奴らが気付ける範疇に「箱庭」を置くのは?」

[確実にやるなら箱庭の規模を10万人分相当減らす必要がある。その要望は天の寓話世界の近場に置きたいって願いと同義だからな]

「……あれか、駅近は家賃の上がる現象じゃな? ならそうするとしよう。先ほど裏切られてカッとしたが、あれが悪魔のせいなら許す余地もあるのじゃ。余裕もあるし機会を与えてやるとしよう」

[対価を減らしたりはしないのか?]

「そうじゃのう……要らん物の詰め合わせじゃしな。それに箱庭に行けば妾が王になる必要もあるまい? あくまでも[黄金の愚王]として役割を得たに過ぎんからの、後はユダ辺りがなんとかするじゃろう」

[……悪魔から見たら信じられない程無欲だなお前は]

「妾は初めから(転生してから)ずっと1人でひっそりと暮らす規模を目指しておったのじゃ。誰か1人生き残れば、特に妾が生きてれば御の字とな……全員救えそうなのは妾も想定外なのじゃよ」

 

 なにより、ゆとりはあればある程良いからな。俺がこうして誰かを気にかけられるのもそれが理由だし。

 特に人はギリギリだと安心出来ない物だし、暴動を起こされた王が平然と席に座るのも違うだろう。生きてれば万々歳だ。

 ……うん、良いんじゃ無いか?文句の付け所のない条件だろ。

 

「では悪魔よ、実行せよ。其方の、或いは妾の望み通りに全て用立てよ。未来へと黄金を送り、品を貰い受けるのじゃ。後、転移後の妾の居場所は他の者が近付かないような場所にせい。誤解で処刑される恐れがあるからの」

[‭─‬‭─‬完了した。30分待て、それで全て済む]

 

 という訳で、俺はその後王の間でゆっくりして、最後に口である伝令に今から起きることを話しておいた。コイツと兵士は信用が払われても特に変わらない辺り、多分余剰分なのだろう。

 話している間、何やらずっと涙っぽいのを拝んでたが……眼がないから確信はない。

 まぁ、多分翼が増えてるのが理由だろう。翼がなくなったら酷い事されそうな価値観だな。俺だけ位置を離して正解だわこれは。俺の前世の経験がそう言っている。

 話したことは、俺は王を引退すること、転移した後に俺は居ないこと、ユダ達が来るだろうから迎えてやること、新しい王は皆んなで決めておくこと。

 

「‭─‬‭─‬それからこれはあくまでも妾の個人的な要望じゃが……学校をより小さく、知識広める物として、寺小屋という物を今後全ての村と街に作るのじゃ。なに、教えるのは四則計算と簡単な読み書きだけでよい。全ての民に、それこそ農民や奴隷にも受けさせよ」

 

「それは……やる意味はあるのですか?」

 

「ある。何故なら、間違いなくその者達の可能性を広げるからじゃ。それに文字が読めるなら王の御触れも広まり易かろう? 何より知識の継承が楽になる。なに、小屋とは言ったが最悪そんなものも必要ないぞ? 枝一つ、地面一つ、後は教わる者と教える者が最低限あればよい。どちらかと言えば制度なのじゃ」

 

「恐れ多くも進言します。それは、余りにも多くの余裕が必要で……あっ」

 

 伝令が何か気付いた様に驚く。

 その通り、確かに黄金は全て使ったが、その代わりに豊かな土地をこれから得るのだ。

 だから何も問題はない。確かに働く時間は限られているが、そこは天使の頑丈な身体が解決するだろ。無理ならそれでいいしな。こうなったらいいなって話だし。

 

「金なら‭─‬‭─‬あったのじゃ。じゃから、それを使って必要な物は全て用意した。後はもう大丈夫だと安心し、未来に目を向けられるかどうかじゃ。妾は居なくなるが‭─‬‭─‬まあ、其方らなら出来るじゃろう」

 

[時間だ、転移が始まるぞ。転移先は要望通り「箱庭」外れの小屋にしておいた。ベッドの上に出るから、もう寝てていいぞ]

 

 対価となった俺の翼が崩れ、転移が指先から始まった。

 世界丸ごと対価にしたせいか、王の間も崩れ初めていた。

 伝令も足先から転移しているが…気付いた様子はない。

 ……まあ混乱するよりはマシか。うん。

 

「女王様! 身体が!」

 

「安心せい、妾は其方らが出来ると信用しているのじゃ。なら、後はそれに応えるだけでよかろう? それとも、妾の期待に応えられない意気地なしであったか?」

 

「ですが…いえ…はい…はい! その期待、必ずやお応えしてみせます!!」

 

「そうか‭─‬‭─‬ならば、よい。大義である」

 

 最後にそう言って、俺は眼を閉じた。

 良かった、今からもう寝ていいんだな。

 ベッドの上に出るって言葉、信じるぞ。

 寝過ぎても世界が消えないって最高だな。

 もう疲れたし、今は兎に角ゆっくり寝たい。

 てか、寝る。惰眠を謳歌する。

 

 二日間のデスマーチ……お疲れ様でしたぁ……おやすみなさい……。

 

 ぐぅ……。

 

 






SSR「[黄金の愚王]黄金の大天使」
 ルシファーが一瞬だけ黄金の悪魔の天使性を貰って手にした姿(指輪無し)。
 直ぐに対価として黄金に変える為に未来に居る誰かに売り飛ばしたが、性能としては未来でも破格の一言に尽きる。
 瞬時に魔力で構築した金を大量に創り出し、それを飛ばしたり武器にして戦闘可能。横バフもあり、天使族としても一瞬でも大昔に実在した六翼の大天使なので、仮にストーリーで登場すれば一瞬であらゆる天の寓話世界の権力関係のゴタゴタを飛ばせるだろう。
 人格に関しては売り飛ばされてない為、存在としては力の塊、付け替え可能なスキルや肉人形の魔道具に近い。命令すればなんでも忠実にこなしてくれる…が、無口なのでどれだけ消耗したかはこちらが気にする必要がある。

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