未来を変える鬼狩り達   作:yuki_06090570

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【注意事項】
複数のキャラがオリジナル技を使用します。
苦手な方はお気を付けください。


因縁絡まる鬼と鬼狩り

琵琶の音と共に足元の地面が消え、同時に奇妙な空間へと引き込まれる。建物が上下左右に伸び、今自分が何処に居るのかも分からない。

 

「これが……無限に広がる鬼の城…!」

 

「甘露寺!!」

 

落下していく中、蜜璃は付近から聞こえた声の方を向く。声の主は小芭内だ。

小芭内は互いが離れ離れにならないよう、蜜璃に手を伸ばす。蜜璃もそれに応え、小芭内の手を掴む。

 

「俺たちは作戦通りに動くぞ!」

 

作戦とは、二人で上弦の肆・鳴女を足止めすること。

琵琶の音一つで地形を大きく変化させられてしまうと、その分仲間たちは単独で上弦と戦う時間が多くなってしまう。

この戦いは、小芭内と蜜璃が如何に素早く琵琶鬼の地形操作を無力化できるかに掛かっている。

 

「"目"を付け、姿を消しながら近付こう」

 

何とか付近の足場に着地し、漸くまともに動ける状態になる。そこで小芭内と蜜璃は懐から"目"を取り出し、自身の額に付ける。

 

「これ……この(もや)が大きいのが上弦ってことかな…?」

 

「…恐らくな」

 

そこら中に沢山の靄が点在し、一際(ひときわ)大きな靄が四つ存在している。その四つにも大きさに差異があり、二人が狙う鬼は上弦の肆。つまり狙うべきは四つの中で一番小さいもの。

 

「こっちだ。急ごう」

 


 

"此方においで"と呼ばれているかのように、しのぶの落下する道は一直線に伸びている。落ちる最中に見えるのは大量の鬼。そして落下直前に見えた景色は、何処までも無限に広がる空間。

 

「無限城……言い得て妙ね……」

 

建物は上下左右に伸び、鬼の立つ角度も上下左右が目茶苦茶。どの方向に立てば良いのかも分からない。

 

「姉さん!」「しのぶ!」

 

暫く落下していると、しのぶは上から二人の声に呼ばれる。どうやらカナヲと伊之助が遅れて落下しているようだ。

 

そうこうしてる間に底へと辿り着き、しのぶたちは落下の衝撃を抑えながら何とか着地に成功する。

 

「ああ……嫌な匂いと気配がする……」

 

端的にいえば血の匂い。そして氷のような冷たい気配。

 

"無限城で待ってるよ"

 

あの言葉も含めて、最初から此処へ来るよう仕向けられていたとしか考えられない。

しのぶは気を引き締め、二人が後ろからついて来ていることを確認しながら血の匂いがする方へと歩を進める。

そのとき、またもや琵琶の音が幾度も響き渡る。と同時に地面が揺れ始める。

 

「何だこの揺れは!!」

 

「二人とも! 気を付け――」

 

しのぶが振り返ったとき、直前に声がしていた伊之助の姿も、真後ろに居たカナヲの姿もなかった。あるのは畳や襖、天井らしきものが乱雑に組み合わさった壁。

逃げ道も閉ざされ、進む道は一本のみ。仮に此処で二人を待ったところで、この先に居る鬼はいずれ痺れを切らして此方に向かって来るだろう。

 

「……本当最悪……」

 

姉を殺した鬼に付き纏われる己の運の無さに溜め息を零しながら、しのぶは無駄に仰々しく(そび)える木の引き戸を開ける。

 

-蟲の呼吸 蜂牙ノ舞 真靡き-

 

そして開けたと同時に強烈な先制攻撃を仕掛ける。呑気に女人の血肉を喰らっていた童磨は不意の一撃に対応できるはずもなく、頸に刃が貫通する。

 

「がはっ! ……随分…刺激的な挨拶……だね…。しのぶちゃん……」

 

前回よりも更に強力となった毒を受け、童磨は刀が突き刺さった頸周辺が紫色に爛れる。しのぶは素早く刀を引き抜き、即座に二撃目への体勢に入る。

 

連続で受けるのは危険と判断した童磨は素早く対の扇を取り出す。そして片方はしのぶへと振り下ろし、もう片方は頸を守るように広げる。

だがしのぶは瞬時に痣を発現させ、童磨の攻撃を最小限の動作で回避する。そして流れるように攻撃へと転じる。

 

-蟲の呼吸 蜻蛉ノ舞 複眼六角-

 

刃は童磨の守りの隙間を縫うように進み、強烈な六連続の突きが頸へと集中的に放たれる。刀を毒の分解もまだ終えておらず、少しずつ位置をずらして刀を貫通させたことにより頸は四割程度斬れている。

すかさず刀を乱雑に引き抜き、爛れて柔らかくなっているであろう頸へと刃を振るう。

毒に苦しむ童磨は痣を出したしのぶの動きに対応できず、頸に勢い良く刃がぶつかる。

 

「ああもう……! ムカつく…!!」

 

折角刃が頸に届いているというのに、その場でガタガタと震えるだけで微塵も斬り進めることができない。

 

「残念……。刀を変えても頸は斬れないみたいだねぇ……」

 

頸が斬れないと分かるや否や、童磨は毒の分解を進めながら対の扇を何度も振るう。

しのぶは苛立ちながらも頸の切断を諦め、童磨の間合いから素早く距離を取る。

それと同時に童磨は毒の分解を終え、何事もなかったかのように立ち上がっていた。

 

「ねえ、しのぶちゃん。毒の効果がまた強くなってるね。もしかして俺のために作ってくれたのかなあ。そうだったら嬉しいなあ!!」

 

-血鬼術 結晶ノ御子-

 

童磨はしのぶを模した氷の人形を一体作り出し、頭を優しく撫でる。

 

「見てこれ! しのぶちゃんそっくりでしょ? 元が可愛いから、肌が氷でできてても十分可愛いよね!」

 

しのぶを模した氷の人形は童磨に愛想を振りまき、童磨もそれに応えるように抱きしめて再度頭を撫で始める。

 

「気持ち悪……」

 

あまりに熱烈な恋情を見せられ、しのぶは悪寒を通り越して吐き気を覚える。もはや姉の仇などという次元ではない。只々関わりたくない、声を聞きたくない、視界に入れたくない。しのぶにとっての童磨は、既にその域にまで達していた。

 

-蟲の呼吸 蜂牙ノ舞 真靡き-

 

気持ち悪さに耐えきれず、しのぶは童磨本体を無視して自身を模した氷の人形へと突きを放つ。

先制で放った攻撃と違い、今度は痣を発現させた状態での攻撃。当然比較にならないほどに速く、氷の人形は衝撃により一瞬で砕け落ちる。

 

「もう……。幾らしのぶちゃんでも、しのぶちゃんを傷付けるのは感心しないな」

 

「私を殺した張本人がそれを言いますか」

 

しのぶが大きな溜め息と共に吐き捨てると、童磨は何度も瞬きを繰り返す。

 

「……もしかして、知ってるの?」

 

「態々答えてやる義理なんてありません」

 

「釣れないなあ……。折角感動の再会なんだから、少しくらいお喋りしてくれても良いのに」

 

依然として邪険に扱って来るしのぶに対し、童磨は悲し気な表情を浮かべる。それが本心から来るものなのか、将又(はたまた)上っ面だけのものなのか、しのぶには分からない。

 

-血鬼術 蓮葉氷-

 

童磨は自身を中心として、蓮の花状の氷を大量に生み出す。その内幾つかは即座に霧状と化し、部屋全体には"粉凍り"が舞い始める。

 

「あれから戦い方を変えてみたんだ。こうやって氷を事前に生成しておいて、"粉凍り"が薄くなってきたら逐一霧状にしていく。力の意識は分散するけど、こうすれば"粉凍り"を定期的に散布し直す手間が少し省けるでしょ?

ああでも、勿論それだけじゃないよ。霧状じゃなくて、粒状にすることだってできる。例えば……」

 

何十と生成された内二つの歪な蓮葉氷は突然砕け、細かな粒状へと変化する。そして氷粒は次第に一粒一粒が異様な動きで舞い始め……

 

「……不意打ちのお返し」

 

-血鬼術 樹氷(じゅひょう)芽吹(めぶ)き-

 

不思議な軌道を描きながら、容赦なくしのぶへと襲い掛かる。

しのぶは氷粒が飛んできた瞬間回避を行うが、唐突な攻撃だったことにより反応が遅れ、僅かに掠ってしまった。

幸い掠っただけで体に異常は見られないが、間合いの外へと飛んで地面に着弾した氷粒の一つが"苗木"のような何かを芽吹かせている。

カナヲたちの情報には無かったものだ。童磨が何か企んでいるのは間違いないが、それを呑気に確認しているような余裕はない。

しのぶは呼吸をし易くするため刀を振り回し、周囲の"粉凍り"を鍔の照射光で消滅させていく。

 

「改めて見ると変な刀……いや、鍔だね。ほんの少し光ってるし、その光で俺の"粉凍り"が消滅した。まるで陽の光みたいだ」

 

「自慢の"粉凍り"が完封されて、さぞ気が滅入るでしょう。……いえ、お前はそんな感情を持ち合わせていませんでしたね」

 

「いや? しのぶちゃんがそこまで俺のことを考えてくれたんだと思うと、寧ろ心が躍っているよ! もっと君と遊びたいなあ!!!」

 

煽ったつもりが全く効いていない。それどころか恋情のようなナニカをより全面的に出し始めてきて、しのぶは思わず眉間に皺を寄せる。

 

「……吐きそう」

 


 

しのぶが童磨と戦闘に入る少し前

 

 

琵琶の音が幾度も響き渡り、地面が揺れ始める。

 

「何だこの揺れは!!」

 

「二人とも! 気を付け――」

 

直後、しのぶの忠告も途中で聞こえなくなるくらいに凄まじい速度で、地面が迫り上がり始めた。

 

「これは……!」

 

伊之助とカナヲは素早く反応し、迫り上がる地面や塞がれた壁を斬り壊しながら進もうとする。しかし地面も壁も分厚く重ねられているらしく、刀で道を作るのは不可能だ。

 

「何とかして戻らないと……姉さんが」

 

何処かに道はないかと探り始めたそのとき、またもや琵琶の音が大きく鳴り響く。

その音と同時に、今度は壁が正面から迫り始めた。但し、迫り始めたのは伊之助が居た場所のみ。

 

「なんだこの壁!! 動けねぇ!!

カナヲ! お前はしのぶの所に急げ!! 俺もすぐに――」

 

あまりに速い建物の動きに、身動きが取れず騒いでいた伊之助の声も既に聞こえなくなってしまった。

折角離れずに落下できたというのに、結局状況は見た未来と同じ。寧ろあのときは琵琶鬼に邪魔すらされていなかったのを踏まえると、状況は悪化している。

 

「マズい……」

 

やはりというべきか、この大空間で一番厄介なのは琵琶鬼だ。これほど簡単に分断させられてしまっては、どう足掻いても単独で上弦と対峙せざるを得ない。

戦闘開始が落下直後ということもあって、恐らく小芭内と蜜璃が琵琶鬼と接触するまでまだ少し時間が掛かるだろう。

 

「姉さん……」

 

何方にしても、今は小芭内と蜜璃が手早く地形操作を無力化すると信じて進むしかない。

カナヲは琵琶鬼に妨害されると分かっていながらも、しのぶの元へと向かい始める。

 


 

「…………」

 

ここまで戦ってきて、幾つか分かったことがある。

 

一、どの技でも"粉凍り"は発生するが、一番効率的を散布させられるのは蓮葉氷を霧状にすること。

 

二、蓮葉氷は時間差で霧状、粒状にできる。霧は鍔の照射光で消滅させられるが、問題は粒だ。油断をすると、意識外から大量の氷粒が襲い掛かってくる。

 

三、氷はあくまで氷。砕けて形状変化することはあっても、"御子"のような複雑なものに変化させることはできない。

 

四、序盤で童磨が放った種子のような氷粒から芽吹いた不気味な"苗木"。既に木と呼べるくらいには成長している。成長する条件は未だ不明瞭だが、成熟させるべきではないのは考えずとも分かる。

 

「ん? 何か考え事? 俺も一緒に考えてあげるから、教えておくれよ」

 

「煩い黙れ」

 

相も変わらず刺々しい態度を貫く姿勢。それでこそ俺の好いた女の子だ。などと思いながら、童磨は笑顔でしのぶの顔を凝視する。但し周囲への警戒を怠ることはない。

 

「ん? …………ちょっと待ってね、しのぶちゃん」

 

途端に真顔になった童磨は一本の細長い氷柱を生み出し、後方の天井角に向かって投げ飛ばす。投げ飛ばされた氷柱は建物に深々と突き刺さり、霧状になると同時に砂塵の如く"粉凍り"が舞う。

 

「覗き見なんて悪趣味なことするね、君」

 

「……探知探索が不得手って情報だったはずだが、索敵だけは随分と上手いじゃねえの」

 

隣から声が聞こえて顔を向けると、其処には天元が刀を構えて立っていた。

 

「宇髄さん?! 貴方いつから……」

 

「お前が吐きそう……って嘆いてる辺りから。お陰で色々観察できたわ」

 

人が命のやり取りをしている様子を陰から観察するとは如何なものかと一瞬思ったものの、童磨の攻撃を無傷で回避したのを見るに、いつでも助太刀できるよう戦闘態勢を取った状態で観察していたのだろう。

 

「君……妓夫太郎と戦ってた鬼狩りだよね。折角俺が勧誘した可愛い後輩だったのに殺しちゃうなんて……。全く酷いことをしてくれたよ……」

 

あのとき視覚を通して観察していたのか、童磨は妓夫太郎討伐に大きく関わった天元を見て涙を流す。

 

「おお……。栗花落の噂通り、泣き真似が上手い奴だな」

 

「ツユリ? 誰それ。いやそんなことより、俺の涙が偽物だって言いたいのかい?」

 

天元の言葉を否定してはいるが、童磨の瞳からは既に涙など出ていない。感情を手に入れたとはいえ、それは部分的なものに過ぎないのだろう。

……そんな認識だった所為か、童磨の表情が先刻よりほんの僅かに強張ったことを二人は見逃す。

 

「俺はお前みたいな心の無い奴を嫌と言うほど見てきたもんでな。本物か偽物かは(つら)を見れば一発で分かる。

お前の面は目ン玉以外地味も地味。ド派手に地味な面をしてやがる」

 

「ド派手に地味……? 一体どっちなんだろうね」

 

「……宇髄さん……」

 

童磨と天元が話をしている最中、しのぶは童磨への警戒を怠らずに天元に小声で話し掛ける。

 

「ああ……分かってる。あいつらにとっては僥倖だな」

 

カナヲは無限城での戦いで童磨に"栗花落カナヲ"と名乗った。しかし先刻の反応からして、此処に居る童磨はカナヲの存在を知らない。仮に知っていたとしても、しのぶが吸収される瞬間と、頸を斬られる瞬間くらいだろう。

つまり、伊之助とカナヲは技の情報が全く抜き取られていない状態。負け筋が一つ消え去ったということになる。

 

「だがずっとあったあの木はなんだ。情報にはなかったはずだが」

 

今は童磨の後ろに見える氷の木。よくよく見ればまた少し成長している。

 

「あれは多分粉――」

 

「二人して仲良くヒソヒソ話なんて、何だか嫉妬しちゃうなあ」

 

-血鬼術 結晶ノ御子-

 

二人が小声で話している姿に痺れを切らし、童磨は"御子"を二体生み出す。

 

-血鬼術 凍て曇-

 

一体が天元としのぶを分断させるように、体が凍り付くほどに冷たい煙を放つ。目論見通り二人は分断させられ、

 

「しのぶちゃんは俺と踊るんだ。君は外野から眺めててよ」

 

二体の"御子"は天元に、童磨本人はしのぶへと向かう。

 

「またですか…!」

 

刀鍛冶の里と全く同じ状況。強いて言えば実弥が天元に変わったくらいだろう。

しのぶは童磨の攻撃を捌きしつつ、木が成熟しないよう心掛ける。

そして天元は"御子"の攻撃を防ぎつつ、勝ち筋となる譜面作りに専念する。

しかしそれを易々とできるほど、童磨は甘くない。

 

「しのぶちゃん。俺は是非とも君に鬼になってほしいんだよね。それで一緒に永遠を生きるんだ。どう? 名案だと思わない?」

 

戦闘の最中でも呑気に会話できるほど余裕のある童磨。

今も尚成長し続ける木に意識を割かれているしのぶは、童磨の提案に肯定することも否定することもできないくらいには余裕がない。

 

「そんなにあの木が育つのが気になるかい? 多分君の推察通りだと思うけど。試しに言ってみなよ」

 

「"粉凍り"を……吸収して……!」

 

喋る余裕を敢えて作り出されたしのぶは、答え合わせのために何とか声を出し絞る。

 

「そう、その通りさ。あれは"粉凍り"を吸うことで成長する。そして成長しきったら……」

 

氷の木は今や天元の身長の倍くらいにまで大きく成長している。それに樹冠の部分には実がなっている。

 

「そろそろかな」

 

瞬間、氷の木が奇妙な動きを見せ始める。何かを飛ばしてきそうな……

 

「木から離れて!! 宇髄さん!!」

 

しのぶが大きな声で警告したのとほぼ同時で、氷の木は樹冠にある全てのものを全方位へと凄まじい速度で飛ばし始めた。

天元は二体の"御子"と氷の木から素早く距離を取り、

 

-音の呼吸 肆ノ型 響斬無間-

 

天元は自身に飛んでくる氷の実と葉、そして"御子"からの攻撃を片っ端から叩き割って何とか攻撃をやり過ごす。

一瞬攻撃の嵐が止んだのを見計らい、天元としのぶは横並びで刀を構える。

腕や頬には薄い切り傷が大量に出ているが、幸い致命傷には至っていなさそうだ。

 

「危ねえ……。助かったわ」

 

「いえ、それより……最悪ですよ……これ……」

 

飛び散った葉と叩き割った氷の実は粉々に砕け散ったため、何も起きはしない。問題は叩き割らなかった氷の実。そして葉を全て飛ばした裸木だ。

氷の実が着弾した地面からは、先程不気味に感じた氷の"苗木"が芽吹いている。裸木は"粉凍り"を周囲に撒き散らしながら枯れ始めていた。

 

「面白い技だろう? 最近編み出した血鬼術なんだ」

 

最初に種を蒔き、芽吹いた"苗木"を"粉凍り"で成熟させる。すると成熟した木は攻撃も兼ねて葉と実を周囲に飛ばし、新たな"苗木"を芽吹かせる。そして枯れながら"粉凍り"を撒き散らすことで、芽吹いた"苗木"たちを成熟させる。

そうしてそれを繰り返せば繰り返すほど、木の数は異常な速度で増加していくことになる。

 

「……何も面白くありませんよ…………」

 

軽く見渡しただけでも、今ある"苗木"の数は二十を超えている。これが全て成熟し、同時に実を飛ばすとしたら……。

 

「どうすりゃ良いんだこれ……」

 

「手っ取り早いのは、"苗木"を破壊してしまうことですが――」

 

「勿論、俺とこの"御子()"たちが居ることも忘れないでおくれよ」

 

-血鬼術 蔓蓮華-

-血鬼術 冬ざれ氷柱-

-血鬼術 散り蓮華-

 

先程とは違って、童磨と"御子"は二人にまとめて攻撃を仕掛ける。

前方、左右、上から間髪入れずに襲い掛かる攻撃に、天元としのぶは回避に専念する外なくなる。しかし悠長にしていると、貯め込まれた蓮葉氷が霧化して"粉凍り"を部屋全体に散布してしまう。照射光で多少は消滅させられても、二十以上の"苗木"全てを成長させないようにするのは不可能だ。

 

「胡蝶! 俺が相殺させる! お前は木を!!」

 

譜面が完成しつつある今、二体程度の攻撃を捌くことは不可能ではない。

天元は多少の負傷も覚悟の上で、猛攻に隙を作ろうとする。

 

「なら単純に、それができないようにするだけだよね」

 

-血鬼術 結晶ノ御子-

 

童磨は二体の"御子"を新たに作り出す。

五体の"御子"たちは天元としのぶをその場から動かさないよう、息つく暇なく技を放ち続ける。

 

「(四体同時は流石にもう無理か……!)

胡蝶! 五秒寄越せ!!」

 

天元の短い言葉でしのぶは意味を即座に理解し、二人は五体の"御子"から大きく距離を取る。

 

-血鬼術 冬ざれ氷柱-

-血鬼術 蔓蓮華-

-血鬼術 寒烈の白姫-

-血鬼術 散り蓮華-

 

童磨も天元の言葉の意味を理解したらしく、それを阻止するために"御子"たちに同時攻撃をさせる。

上からは大量の氷柱、左右からは氷の蔓、正面からは吹雪と無数の氷粒。

 

(たった五秒……止めれば!)

 

"御子"たちの攻撃を防ぐべく、しのぶは意識を研ぎ澄ませる。

 

一秒……

左右から襲い掛かる氷の蔓と落下してくる氷柱を、天元が当たらない最小限の範囲だけ破壊。

 

二秒……

 

-蟲の呼吸 蝗旱(こうかん)ノ舞 飛翔(ひしょう)唄声(うたごえ) -

 

空気を斬り裂くほどに高速の斬撃を吹雪と氷粒へ放つ。氷粒は刃のような風により全て砕けるが、吹雪だけは勢いが止まらない。

 

三秒……

 

次第に吹雪は激しさを増し、しのぶは攻撃を捌き切れなくなる。

 

(あと少しなのに……!)

 

もう駄目かも。そう感じたとき、

 

-花の呼吸 肆ノ型 紅花衣-

 

「ぎりぎり間に合った…!」

 

「カナヲ……!」

 

後方からカナヲがやって来て、しのぶに合わせて技を放つ。

寸前で何とか攻撃を防いで時間を稼ぐと、背後にあった天元の気配が完全に消え去る。それと同時に、放たれ続けていた吹雪が途切れる。

 

「わあ……。しのぶちゃんが一番速いと思ってたのに……。君凄いね……」

 

頸を半分斬られて驚く童磨の正面には、花火のようなド派手な形の痣を右頬に浮かび上がらせた天元が立っていた。

反応遅れてしのぶとカナヲが周囲を見渡すと、"御子"は一体残らず姿を消している。恐らくあの一瞬で五体の"御子"を壊したのだろう。

 

「人形の前に本体を始末すべきだったか……」

 

恐らく"御子"を無視して童磨本体を狙っていれば頸を切断できていた。

天元は選択を間違えたかと思ったものの、本体は"御子"とは比べ物にならないほど急所への攻撃対策をされていると考えれば、選択肢は一つしかなかった。

 

「あーあ。多少の損害を被ってでも俺の頸を狙うべきだったのに、安定を取っちゃうから勝機を逃す。

『二兎追うものは一兎も得ず』とはよく言ったものだよね」

 

声高に嘲る童磨。しかし天元にその煽りが効くはずもなく、彼もまた愉快そうに嘲る。

 

「いいや! 一兎追えば百兎の群れに辿り着けるわ! 何せ俺らは鬼殺隊の中でもド派手だからな!! とっとと全部伐採してやらあ!」

 

天元が大きな声で周囲に情報伝達(・・・・)すると、同時に天井窓が乱雑に突き破られる。

 

「散々走り回らせられたが、漸くここで!! 山の神・嘴平伊之助様のご登場だぁあ!!」

 

戻って来た伊之助は素早い動きで大広間を縦横無尽に走り回り、天元と共に氷の木を全て砕き割っていく。

 

「わあ……。確かに派手な登場だ……。まあ……ただ派手なだけで、何もないんだけど」

 

-血鬼術 結晶ノ御子-

 

懲りずに童磨は"御子"を三体素早く生成する。だが今度はこれで終わりではなかった。

 

-血鬼術 結晶ノ御子-

-血鬼術 結晶ノ御子-

-血鬼術 結晶ノ御子-

 

…………………

 

"御子"たちは同じ技を使い、更に一回り小さな"御子"を生み出していく。そうしてそれが二度三度と繰り返され、やがて"御子"は二十体前後にまで分裂した。

 

「うわキッショ!! 全部同じ顔面じゃねえか!!」

 

「失礼な猪くんだなあ。言っとくけど、小さい"御子()"も俺と同じくらいの強さだからね。そこの派手な柱の動きも先刻(さっき)ので見切ったし」

 

"御子"が一体でも残っていれば、大半の鬼狩りは一掃できる。追加で二人増援に来たが、柱以外の情報は取らずとも大した問題はないはず。

頸を斬られた瞬間は記憶している童磨はそう考え、"御子"たちは止めを刺すべく一斉に術を発動する。

 

「それに……今はしのぶちゃんにしか興味ないからさ。三人は無駄な頑張りに心血を注いでておくれ。

しのぶちゃんはこっちにおいで」

 

天元、伊之助、カナヲが二十体程の"御子"に苦戦しているのを良いことに童磨は大元の"御子"を操り、前後左右から氷の蔓をしのぶへと伸ばす。数十本の蔓を瞬時に叩き割っても間に合わないほどに向かってくる蔓に、しのぶは上半身を雁字搦めにされる。

しのぶは何もできずに引っ張られ、童磨の片腕に抱き上げられる。

 

「待て下衆!! 姉さんを返せ!!」

 

「大丈夫。しのぶちゃんは殺さないし喰わないから。全部が終わったあとで、あの方に鬼にしてもらうんだ。

それじゃあね。生きてたら後で喰べてあげるから。

……これだけ縛っておけば、手足を切る必要もないかな?」

 

呑気に考え事をしながら、童磨は四、五体の"御子"を連れて部屋から出て行ってしまった。

 

「やべぇぞ! 人形が逃げやがった!!」

 

伊之助は多数の"御子"に悪戦苦闘を強いられながら叫ぶ。

"御子"が周囲に散ってしまえば、柱未満の隊士は蹂躙されるしかなくなる。だからこそ逃さずに倒さなければならなかった。

 

「でも流石に数が……!」

 

出ていった分を含めなくても十体以上。元々一体でも苦戦していたのだから、童磨本体を追いかける余地など当然ありはしない。

 

-血鬼術

 凍て曇-

 蔓蓮華-

 寒烈の白姫-

 冬ざれ氷柱-

 枯園垂り-

 蓮葉氷-

 散り蓮華-

 

「だああ! クソっ! 結局こうなんのか!!」

 

多数の"御子"からやって来る猛攻。彼らの動きは天元が破壊したときより明らかに速い。痣を発現させた状態でも倒すのが困難なほどに。

 

「そういうことか……!」

 

童磨は『見切った』、そして『"御子"は自身と同等の強さ』だと言った。つまりは今の天元では眼前に佇む"御子"を一体足りとも倒すことができない。彼の動きよりも遅いカナヲと伊之助などは最早論外と言っても良い。

 

……ただしそれは情報が抜かれていた上で、単独で相手取った場合。

 

「お前ら!! 抜かれてねえぞ!!」

 

天元の合言葉を聞いたカナヲと伊之助はほんの一瞬目を合わせ、柱稽古で培った阿吽の呼吸を用いて"御子"へと斬り掛かっていく

 

獣の呼吸 捌ノ型 爆裂猛進-

 

……とはいっても伊之助の守りを捨てた狂気の突進にカナヲと天元が必死で喰らいついているだけなのだが。

 

「片っ端から粉々に砕いてやる!!」

 

天元とカナヲに守られながら突進を繰り返し、一体ずつ丁寧に"御子"を叩き割っていく。他者には真似できない型破りな剣技だからこそ、伊之助の攻撃は"御子"へと届く。だがそれが通用するのも最初の方だけだ。

情報が抜き取られているのか、次第に"御子"たちの動きに変化が出始める。

 

「クソっ! 段々当たんねえようになってやがる!!」

 

刀の軌道や体の動きに差異を加えて斬撃を放っても、"御子"はそれまでも読んで回避してしまう。

流石に深追いは無謀と判断し、三人は一旦一塊になる。

三人が一塊になったのを見た"御子"たちは

 

-血鬼術 結晶ノ御子-

…………

 

次から次へと新たな"御子"を生み出し、軍隊の如く無駄のない動きで取り囲む。次第に"御子"は小さくなっているが、強さに違いはないし、それどころか小さくなるせいで純粋に攻撃が当たり(づら)くなっていく。

 

「倒しても倒しても増え続けるぞ……此奴(コイツ)……!」

 

「……こうなったら私が――」

 

「いや駄目だ。お前の刀と"眼"は本体に取っとかなきゃならん」

 

"御子"が情報収集していることは伊之助の攻撃が通じなくなってきたことで確定した。次に懸念すべき可能性は毒への耐性。万一毒の情報までも共有可能だとしたら、カナヲの攻撃は本体に取っておかなければならない。何より"終ノ型"でなければ攻撃は届かない可能性が高く、視力を失えば本体を斬る道筋に亀裂が生じかねない。

 

("音"は全く同じで、それが幾つも重なってるって感じか……。これなら……)

 

「一分だ。一分だけ何とか耐え凌いでくれ」

 


 

「しのぶちゃん。無限城はどう? 綺麗でしょ?」

 

半ば強制的に見せられる無限の城。遠くには雑魚鬼を着実に討伐していく隊士たちが見える。

だが"御子"は行く先々で悍ましい"苗木"を芽生えさせては多量の"粉凍り"を撒き散らしている。しかも隊士たちの死角になる位置で。

しのぶは何とか体を動かそうと藻掻くが、何重にも巻かれた蔓でまともに身動きが取れない。

 

「あはは! 無理無理君の小さい体じゃ! でも鬼になれば、そんなことに悩む必要もなくなるんだ。鬼になりたくなってきたでしょ?」

 

「誰がなるか……!」

 

「残念だけど、しのぶちゃんには選択肢なんてないんだよ。俺があの方から許可もらって血を飲ませればあら不思議。絶世の美少女鬼の完成さ」

 

童磨は蔓に巻かれたしのぶを片腕で抱き寄せたまま城を当てもなく飛び回り、やがて周囲が見渡せる眺めの良い場所を見つける。

 

「ほら、折角だから一緒に見ようか!」

 

「…………」

 

そこら中に植えられた"苗木"は既に樹木と呼べるまでに成熟しており、今にも爆発してしまいそうな状態だ。

しのぶはこの後起きる惨状が容易く想像できてしまい、焦りで呼吸が荒くなる。

 

「おっと。さっきみたいに叫んで教えちゃ駄目だからね」

 

大声を出そうとした瞬間、身体に巻かれていた蔓の一部が口周りを塞いでくる。そして声が出ないほど完全に塞がれた瞬間……

 

「んん!!!んん!!!!!」

 

しのぶの声にならない呻きも虚しく、辺り一帯にあった氷の木は一斉に爆発した。

東西南北、汎ゆる場所から痛みで泣き叫ぶ人の声が聞こえてくる。辛うじて見える場所に居た隊士は五人。内一人は片腕欠損。内二人は片脚欠損。内一人は片手欠損。内一人は全身から血が流れるような重体。見える範囲だけでもこれほどの被害なら、他の場所にも最悪な情景が広がっているだろうことは想像に難くない。

 

「うんうん。ぎりぎり誰も死んでなさそうだ。

あの方も今は薬の分解でかなり体力を消耗してるみたいだし、鮮度の高い食糧を沢山持っていけばしのぶちゃんの鬼化も認めてもらえるよね」

 

「…………」

 

爆発した木は"粉凍り"を噴き出し始め、飛び散った千にも上る"種子"は全て"苗木"を芽吹かせる。それもすぐに"粉凍り"によって急激に成長していく。

 

「おや? 流石に諦めちゃったか」

 

強烈な惨状を目の前に、何もできず眺めることしかできなかったしのぶ。怒りで我を忘れてしまうかも…などと思っていたが、案外感情の起伏は無かった。いや、怒りが限界を超えてしまったのかもしれない。

そんなしのぶが童磨には諦めたように見えたのだろう。口を塞いでいた蔓を緩めると、しのぶは静かに声を出し始める。

 

「もう良い……。頸が斬れないのなら」

 

蔓は口を塞ぐために使った分、体に巻き付いていた方は少し緩んでいる。

しのぶは一度大きく深呼吸した後、草履に隠してあった小刀を取り出し、思い切り背中側へと蹴り上げて蔓を砕く。

 

「再生できなくなるまで串刺しにすれば良い」

 

ようやっと蔓から抜け出したしのぶは静かに抜刀し、一呼吸で痣を発現させる。

 

-蟲の呼吸 蜈蚣ノ舞 百足蛇腹-

 

足に凄まじい力を込め、しのぶは橋どころか地面までも割くほどの踏み込みで童磨へと距離を詰める。

 

「わっ…速……」

 

思わず声に出た童磨は"御子"をその場に放置して、追い掛けて来るしのぶから全速力で逃げる。だが逃げて続けていると少しずつ焦りが落ち着き始め、放置した"御子"たちを一体ずつ己の下へと戻らせていく。

 

(やっぱり片脚くらいは切っちゃった方が良かったのかな……?)

 

童磨は逃げながら当初の計画を思い出し、後方から"御子"を向かわせてしのぶを挟み撃ちにしていく。

速度を落とせば後方から"御子"の攻撃で致命傷は不可避。必然的にしのぶは足を止められなくなる。

 

(焦るな……。蹴った傍から脚に力を溜めて……)

 

"御子"の数は刻一刻と増加していき、数十数百の小さき軍隊が追いかけて来る。殺す気も喰う気も無いと言っていたが、再起不能にしないとは言っていなかった。

 

("無駄"を削ぎ落として……)

 

同じ動作を延々と繰り返せば、どういう風に体を動かせば最適な動作となるかが感覚で分かり始めてくる。

次第にしのぶの速度は上昇していき、童磨は逃げに徹し始める。

人間はいつか必ず限界が来る。その瞬間を待てば良い。そんな考えで逃げ続けるが、童磨は誘い込まれているような違和感を覚える。

 

("御子"が通った道を通らされている……?)

 

ほんの一瞬見えたしのぶの動き。

彼女は追い掛けながら、周囲に芽吹く"氷の木"を余すことなく砕いていた。千にも及ぶ膨大な量が、逃げる度に砕かれる。

だが当然ながらどれだけ速く破壊したとしても、千以上を短時間で処理できるはずもない。

百数十の樹木を粉々に砕いたところで、樹冠から殺気が滲み出始める。

 

「無理か……!」

 

全てが炸裂して今度こそ死人が出る……。諦めかけた瞬間、遥か遠くの方から背筋が凍り付く程に異質な衝撃波が、音を置き去りにしながらしのぶの横をすり抜けていく。そして床や壁を跡形も無く破壊しながら進み、"氷の木"を全て砕き割った。

衝撃波の数は百や二百を優に超えており、被弾しなかったのは奇跡としか言いようがない。

 

「何今の…!?」

 

思わず足を止めてしまったしのぶ。だがいつまで経っても"御子"の大群は襲い掛かって来ない。不思議に思い後ろを振り返ると、"御子"は先刻の衝撃波で全て姿を消していた。

 

「ええ…? 何で俺の邪魔をするんだ……猗窩座殿……」

 

状況がまるで理解できない一人と一体。しかし思わぬ事態により、童磨の有利が瓦解したのは間違いない。

しのぶは好機と見て、逃亡する童磨へと再び詰め寄る。

逃げ続ける童磨には"御子"を再生成する暇はなく、全滅させられた"御子"は当然新たに"御子"を生み出すことはできない。

 

-蟲の呼吸 蝶ノ舞 戯れ-

 

猗窩座の理由不明な妨害により調子が完全に崩れた童磨の脚へと刃を突き刺し、毒により動きをほんの一瞬鈍らせる。

 

-蟲の呼吸 蜻蛉ノ舞 複眼六角-

 

鈍ったところに追撃で、六連続の突きを頸へと叩き込む。

グズグズに腐り、殆ど千切れ掛かっている頸。それでも先程は斬ることは叶わなかった。

 

-蟲の呼吸 蜂牙ノ舞 真靡き-

 

今度は刃を振るうことなど微塵も考えず、思い切り突き刺しに掛かる。

あと数回突き刺せば頸を千切り飛ばせる。そんなとき、

 

-血鬼術 霧氷・睡蓮菩薩-

 

あまりにも大きく、そして殺意に満ち溢れた"仏"が姿を現す。

 

「ああ…………怒りって……こういう感情のことを言うのかなぁ……」

 

今まで聞いたことのない程に低く冷たい声色。屈託なく笑う姿は最初から無かったかのように強張らせている表情。

 

「俺はずっと好きだと思っていた子には頸を狙われ続け、大切な仲間だと思っていた友人からは恋路を邪魔される。

誰も彼も俺を居ないような扱いをしておきながら、都合の良いときだけ俺を否定する。

今……腹の底が溶岩みたいに煮え滾ってるような感覚なんだ。血鬼術は氷なのに変だよね。

しのぶちゃん。教えておくれ。これは"怒り"なのかな」

 

今この瞬間"仏"で潰しに掛かれば、しのぶを仕留められる。だがそれをしないのは答えが知りたいからなのだろう。

しのぶは息を整える絶好の機会だと考え、動きを一度止める。

 

「どうでしょう。怒りというのは個々人で違うものですからね。

平静を保てず言葉や力で相手を傷付けることもありますし、反対に自分の中で諫めて冷静な判断ができるようになることもあります。

頭の良いお前なら、私が向けてきた"感情(モノ)"と同質なのかは分かるのではないですか」

 

あれだけ殺意しか沸かなかった相手に、自分でも驚く程落ち着いた声色で話せたしのぶ。寧ろ姉の仇であるはずの童磨が哀れに思えてならない。

 

(こんなところで姉さんや炭治郎くんの気持ちが分かったなんて……皮肉にもならないわね……)

 

此奴は"感情"というものが無いのではなく、知らないんだ。物心もついていない赤子でも本能で理解できるような簡単なことを、この鬼は何百年生きていても分からないんだ。何て可哀想な生き物なのだろう。

 

しのぶが心の中で憐れんでいる間、童磨は己の感情が一体何なのかを思考し、やがて理解する。

 

「ああ……じゃあ、これが怒りってやつなのか。教えてくれてありがとう」

 

-血鬼術 結晶ノ御子-

 

「しのぶちゃんのことは大好きだった。でももう……どうでも良い」

 

-血鬼術 霧氷・睡蓮菩薩-

 

童磨が生成した"御子"は四体。その四体の"御子"其々が大きな"仏"を生み出し始めた。大きさで言えば本体が生み出したものより一回りは小さいが、カナヲから聞き及んでいたものと同じくらいに見える。

 

「鬼狩りも鬼も関係ない。俺を否定した奴全員、この手で皆殺しにしてやる」




【あとがき】

またまたお待たせいたしました。
お読みいただきありがとうございます。

オリジナル技が味方サイドだけだと味気なかったので適当に作っていたら、とんでもないクソ技が完成してしまいました。詳しいことは下記のオリジナル技説明に載せておりますので、興味がおありでしたらお読みください。

ということで今回は童磨戦前半のお話でした。
恋の次は怒りや憎しみの感情を手に入れた童磨。毒による弱体化のない状態で力の全てを出し切るような行動を取り始めましたが、果たしてしのぶたちは勝つことができるのでしょうか…?

童磨は感情こそ無いですが、ストレスは知らず知らずに溜め込んでたりするのかな……という想像からこういった流れになりました。要は溜まった百年分以上の怒りが爆発したという理由ですね。

次回は童磨戦後半……ではなく猗窩座戦を挟む予定です。
猗窩座が童磨を妨害した理由については大方察しがつくかと思いますが、詳しいことは次回に開示予定です。とはいっても、大して構想は練られてないんですがね。


誤字脱字があれば報告していただけると幸いです。


下記に今回登場したオリジナルの技の詳細を載せておきます。


蟲の呼吸
蝗旱(こうかん)ノ舞 飛翔(ひしょう)唄声(うたごえ)

バッタ、イナゴ

風を切り裂くほどに素早い斬撃を広範囲に放つ。
攻防一体の技。

霞の呼吸 伍ノ型 霞雲の海がモチーフ

名前と技の由来
刃が風を斬り裂く音は、まるでバッタやイナゴといった蝗害が飛び立つ際の異様な羽音を彷彿とさせる。
周囲の農作物を食い尽くす蝗害の様子を、広範囲攻撃で表現。


血鬼術
樹氷(じゅひょう)芽吹(めぶ)

種子のような氷を飛ばし、着弾地点から氷の苗木を芽吹かせる。
苗木は"粉凍り"を吸うことで成長していき、成熟すると種子と葉を周囲に高速で飛ばす。
葉は異様なまでに鋭く、人体を容易く切断できる。
種子は殺傷力こそないものの、着弾地点に新たな苗木を芽吹かせる。
種子を撒き終えた木は"粉凍り"を散布しながら少しずつ枯れて消滅していく。

一般隊士たちの四肢欠損は技の凶悪性を表現するための犠牲です……
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