かつて凡人だった男の成り上がり生活   作:飢堕天

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3話

「ん…」

 

——意識が覚醒する。

薄っすらと開いた瞼の隙間から陽の光が照らし込む。

眩しい光に目を細めながらも徐々に意識が鮮明になってくる。

そうして、同時に思考もはっきりしていき、直近の記憶が呼び覚まされる。

その瞬間、寝起き特有の朧げな意識が完全に覚醒し、それに併せて身体が跳ね上がる。

 

「かみなりっ!」

 

俺は、直近の記憶である、俺を襲ったであろう雷を思い出し、その単語を口にすると同時に自信の身体に目を向ける。

そこには、数多の古傷と微かな火傷痕が見受けられるが、少なくともそれらでは雷に打たれたと断定することはできない程度であった。

 

「…古傷に火傷痕が少し、だけか?」

 

——どういうことだ?

俺はあの時雷に打たれたはずだ。

・・・まさか、俺の勘違い?

いや、それはない。あの時、確かに俺の頭上に雷が落ちた。そして、俺は意識を失ったはず。

だが、もし本当に雷に打たれたのなら、この程度の火傷痕では済まないし、直撃していたならば確実に死に至るだろう。

ということは、俺は直撃は免れたということか…?

 

俺は、自分の身体の状態から落雷時の状況について考察する。

そうして考えていると、ふと思い出したことがある。

 

——そういえば、あの時、薄れていく意識の中で誰かの声を聴いたような…

俺は、あの時のことを思い出しながら周囲に目を向けた。

 

「…どこだ?ここ…」

 

目を向けた先は、見知らぬ場所であった。

 

——なんだこのおんぼろな場所は…

 

そう思いながら辺りを見渡すと・・・

 

「ん…」

 

近くで女の声が聞こえた。

 

俺は咄嗟に声がした方へ目を向ける。

すると、そこには・・・

 

——胸元が開いたホルターネックの白いワンピースを着た黒髪ロングの女の子がベッドで眠っていた。

 

「…誰だ?」

 

少なくとも俺の知り合いにこんな露出狂はいない。

 

おそらくは、この部屋の持ち主なのだろうが…

 

そう思いながら、ぐっすりと気持ちよさそうに眠る女の子を観察する。

——字ずらだけ見たらただの変態である。

 

「…んー、知り合いにこんな女の子はいない。それは確実だ」

「…だが、どこかで見たことがあるような気がする」

 

そう1人ぼやきながら、俺は女の子から周囲へと視線を切り替える。

 

「…この部屋も何か既視感を覚える」

 

石造りの部屋。

色褪せ、ほつれた糸が無数に顔を出している緑、赤茶、橙の三色の縞模様のソファ。

隙間から日差しが差し込む天井。

 

——このどれもに既視感を覚える。

俺は、この部屋を知っている。

だが、訪れたことはない。つまり、見たのは直接ではなく間接的。

となれば、見たのは静止画か、動画か…

 

——動画…

 

「っっ!…まさかっ」

 

俺は、行きついた結論に驚愕すると同時に、あまりにも荒唐無稽な想像に思わず否定の言葉を発する。

 

「いやいやいやっ、それはあり得ないっ」

 

——そう、あり得ない。

こんなことが起こり得るのはフィクションの世界だけだ。

ここは現実。

だから…あり得ないはずだ…

——だが、

 

・・・そうして、俺が思考の渦に耽っていると、

 

「ん…ん~、ふぁ~よく寝た」

 

先ほどまでベッドで眠っていた女の子が暢気に欠伸をしながら、背筋を伸ばして起き上がる。

 

——胸でかっ

 

背筋を伸ばした際に強調された、身長に似合わない双丘を見て、俺は思わずそんな感想を心の中で呟いた。

 

思考が停止してしまった俺が彼女に視線を固定していると、あちらも俺に気づいたのか視線を向けてくる。

 

「あっ!きみ、目が覚めたんだねっ!」

 

双巨丘女は、俺に向かってそんな言葉を投げかけると、こちらに向かってくる。

そして、俺の周りをぐるぐる回りながら俺の身体を見たり、触ったりを繰り返すと、

 

「一応ミアハに診てもらったんだけど、身体は大丈夫かい?」

 

そう俺に問いかけてきた。

 

なるほど。

今のは俺の身体に異常がないかのチェックか。

 

「あぁ、問題ない。君が介抱してくれたのか?」

 

俺は問題ないことを伝え、俺をここまで運んで診てくれたのがこの女の子なのかどうかを尋ねる。

 

「あぁ、そうだともっ!」

「といっても、ボクがしたのはあくまで外で倒れていたきみをそこのベッドまで運んだだけで、きみの身体に異常がないかを診てくれたのは僕の神友のミアハだけどねっ」

 

彼女は、頬を少しだけ赤らめて、苦笑交じりにそう言ってくる。

 

——なるほど。

おそらく、彼女は、自分がしたことと親友のミアハなる人物がしたことの貢献度の大小を比較して、自分の方が劣っていると感じたのだろう。

さきほどの苦笑いの意味はそういうことだ。

——まったく、くだらんな。

 

「そうか。なら、君に最も感謝を伝えなきゃな」

「ありがとう」

 

そう言って、俺は彼女に頭を下げる。

 

「えぇっ!?何を言っているんだいっ?!君を診てくれたのはミアハだっ。もし、ミアハ

が診てくれなかったら、君の状態は今よりも危なかったかもしれないんだ。だから、最も感謝すべきなのはミアハに対してであってボクじゃないよっ!」

 

頭を下げる俺に対し、彼女は慌ててそんなことを言ってくる。

 

「たしかに、ミアハって人が診てくれなかったら俺は危なかったかもしれない。だが、それを言うなら、そもそも君が俺を見つけてくれなければ、君がミアハって人を呼んできてくれなければ、危なかったかもしれない」

「つまり、君の行動によって俺は今助かっているということだ」

「だから、君に最も感謝を」

 

俺は、そう言いながら彼女に微笑む。

 

すると、彼女は再び頬を赤らめさせて下を向くと、手を身体の前で絡めながら体をもじもじさせ始めた。

 

——照れてるのか?

 

彼女の態度に対してそんな感想を持つ。

——もしかしたら、褒められ慣れていないのかもしれないな。

そう思った俺は、小動物のような可愛らしさが垣間見える彼女に対して柔和な表情を向けて、問いかける。

 

「もしかして、褒められ慣れてないのか?」

 

すると、彼女はこちらに顔を向けたかと思うと、瞬きを繰り返し、少しぎこちない様子で返答してくる。

 

「えっ?あ、あー!そ、そうなんだっ!実はあんまり褒められた経験がなくってねっ。

あ、あはは~!」

 

——どうみても、別の理由があるように思えるが…

まぁ、いいか。

 

俺は、とりあえず話をここで一区切りさせようと思い、新たな話題を出す。

 

「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺は月影(つきかげ) 天(そら)。よろしく」

 

そういって左手を差し出す。

それに対して彼女も左手を差し出し、俺と握手を交わすと自身の名を告げる。

 

「そういえば、お互いまだ名乗っていなかったね」

「ボクの名はヘスティアっ!こう見えてボクは竈の炎を司る炉の女神なんだぜっ!」

 

そう高々に宣言しながら、右手でグッドサインを出してくる。

 

——やはりか。

俺は、彼女の名を聞き、ようやく自分が置かれた現状を現実だと受け入れる。

 

——どうやら俺は、転生に次いで転移まで経験してしまったらしい。

それも異世界転生。

それも漫画の世界への転生。

それも・・・俺の大好きな『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』という作品である。

 

 

唆るぜっ、これはっ!

 




どうしよう。
ヘスティアは、ベルのヒロインにしようと思っているんだが、今話、どう見てもオリ主のヒロインルートに突入してるくね?

ということで、アンケート取ります。
回答お願いします。
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