かつて凡人だった男の成り上がり生活   作:飢堕天

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まずは、アンケートに答えてくださった方、ありがとうございます!

それと、すんません!

今回のヘスティアヒロインの件は、アンケートに関係なく、俺の意思でオリ主のヒロインにすることにしました。

というのも、改めて自分で読んでみた際に、ヘスティアのこの状態で、ベルルートに行くのは少し無理があるなと感じました。

せっかくアンケートにお答えいただいたのに、無碍にしてしまってすみません。
何分初めてなもので、あまり深く考えずに思い付きでアンケートをしてしまいました。

次からは、しっかりと考えた上でアンケートを実施します。

読者の皆さん、こんな至らない身ではありますが、これからもどうか応援よろしくお願いします!


5話

——現在、俺はギルドに赴いている。

理由は、冒険者登録をしてダンジョンに潜るためだ。

 

ダンジョンに入るには冒険者登録を行う必要がある。

そして、登録にはファミリアへの入団と【神の恩恵(ファルナ)】を授かっていることが絶対条件となっている。

つまり、ヘスティアから【神の恩恵】を授かり、ヘスティアを主神とするヘスティアファミリアに入団した俺は冒険者となる資格を有しているということだ。

 

——今、俺は改めて異世界に来たことを実感している。

 

——腰に権を携えた者。杖を片手に携える者。まるでコスプレのような装束をまとい歩く者。

 

そして――

 

——非常に整った顔立ちにヒューマン以上に長い耳を持つエルフ。

——まるで感情と連動しているかのように規則的に揺れる獣耳と尻尾を持つ獣人。

——明らかに見た目は小学生低学年だが、顔つきは大人びた小人族。

 

地球ではお目にかかれない種族が目の前をすり抜け、その光景に瞳を輝かせながら実感する——ここが間違いなく異世界なのだと。

 

そうして、見慣れない光景に興奮しながらも、何とか目的地であるギルドに到着する。

 

ギルド内に入ると、そこには装備を身に着けた冒険者が数多くいた。

——さすがはギルド。そんな感想を抱きながら、俺は受付に並ぶ。

 

「次の方どうぞ」

 

少しの間待っていると、ついに俺に順番が回ってきた。

 

「おはようございます。本日はどうされましたか。」

 

俺は、声を掛けてくる受付嬢に目を向ける。

 

セミロングのブラウンの髪とエメラルド色の瞳。

顔立ちは整っており、髪の隙間から覗かせる尖った耳。

 

——間違いない。彼女は、エイナ・チュールだ。

 

「あの、どうかされましたか?」

 

用件を告げずに黙る俺に、彼女は再び声を掛けてくる。

俺はハッと我に返る。

——しまった。ヘスティア以外の原作キャラだったため、つい見入ってしまっていた。

声を掛けられたにもかかわらず、返事もせずに顔を凝視するとかどう見ても変態だな。

現に、彼女は俺に対し訝し気な目を向けてきている。

 

これは——第一印象は終わったな。

俺は、少しばかり後悔を覚えながら、気持ちを切り替えて話を進めるために彼女との会話に意識を向ける。

 

「すみません。何でもありません」

 

「そうですか。わかりました」

「それで、本日はどういった用件でしょうか」

 

納得はしていないものの、今ここで追及するほどのことでもないと思ったのか、彼女もまた姿勢を正して再び用件を聞いてくる。

 

「冒険者登録をしに来ました」

 

「冒険者登録ですね。かしこまりました」

「それでは、こちらの用紙に必要事項をご記入ください」

 

用件を伝えると、彼女は紙を1枚、引き出しから取り出して俺に差し出してくる。

そこには、冒険者登録用紙と書かれており、いくつか回答する項目が書かれていた。

 

俺は、1つ1つの項目を埋めていき、全部埋めると彼女に渡す。

 

「——ヘスティアファミリアですか」

「もしかして、新興ファミリアでしょうか」

 

「はい」

 

「では、こちらの用紙もご記入いただけますか」

 

彼女の質問に対して頷き答え、新規ファミリアであることを伝える。

すると、彼女はもう1枚、今度は新規ファミリア登録用紙と書かれた紙を差し出してきた。

 

俺は、手渡された新規ファミリア登録用紙の空欄にも文字を埋めいき、全て回答を終えるとこちらも彼女に手渡す。

 

「ありがとうございます。これであなたも今日から冒険者です」

 

——今日から冒険者。

彼女のその言葉に心が躍る。

 

「冒険者になられた方には担当アドバイザーをつけることができますが、どうされますか?」

 

彼女の言葉に俺は一考する。

担当アドバイザー——それは簡単にいえば冒険者である俺たち1人に対して1人ずつ担当を受け持ってサポートしてくれるギルド職員のことだ。

担当アドバイザーは、担当となった冒険者に対してあらゆる面でサポートを行う。

——そう、右も左も分からない俺にとってはまさに必須と言える存在だ。

故に、俺は彼女に願い出る。

 

「お願いします」

 

「かしこまりました。それでは、貴方の担当は私、エイナ・チュールが務めさせていただいてもよろしいでしょうか」

 

俺の願い出に対し、彼女は自身が担当となってよいかを聞いてくる。

 

——まさかのエイナさんが俺の担当か。

まぁ、今俺の対応をしているのは彼女だから、そうなるのは当然か?

いや、彼女はギルド職員の中でも人気だろうし、結構な数の担当冒険者を抱えているんじゃないか?

そう疑問に思った俺は、彼女に訊ねてみる。

 

「俺は問題ありません。ですが、見たところ貴女は冒険者に人気なようですが、俺以外にも結構な数の冒険者を担当していらっしゃるんじゃないですか?もしそうなら、俺まで担当すれば貴女の負担になると思うんですけど」

 

思ったことを伝えると、俺の言葉を聞いた彼女は驚きの表情で瞠目し、固まった。

 

——どうした?

俺、今何か変なこと言ったか?

彼女の様子を見て、俺は先ほど言った言葉を振り返ってみるが、特におかしなことは言ってないはず。

いや——もしかして、俺が彼女を気にかけたことに驚いているのか?

まぁ、たしかにこういう場面で自分に気をかけてくれる人などまずいないだろうけど...

とはいえ、俺が彼女に気をかけたのは彼女が人気受付嬢であり、多くの冒険者を担当しているだろうことをアニメ等を見て推測しただけなんだがな。

 

数秒間固まっていた彼女は、ようやく反応を取り戻す。

そして、自身の失態を咳払いで誤魔化すと、俺が心の中で疑問に思ったことに対する答え合わせとなる回答をする。

 

「申し訳ありません。そのようなことを言われたことがなかったので驚いてしまいました」

 

どうやら、俺の推測は合っていたようだ。

 

「そうなんですか。まぁ、冒険者は自分勝手な人間が多いとは聞きますしね」

 

俺は、自分で作った少し気まずい空気を和ますために、おちゃらけながらそれっぽいことを口にする。

 

「ふふっ、たしかに冒険者の方々には主体性の強い方が多いですね」

 

彼女は、俺が口にした冒険者像を綺麗な冒険者像へと言葉替えを行いながら同意を示す。

 

「さてと、それではそろそろ話を戻しますが、ツキカゲさんの担当アドバイザーは私でよろしいですか?」

 

彼女は、逸れはじめていた話を軌道修正し、再び確認してくる。

それに対し、俺は今一度思考を再開する。

 

——エイナ・チュール、彼女は非常に優秀なギルド職員だ。

だが、そんな彼女にも少しばかりの欠点がある——それは、彼女の性格が少し面倒だということだ。

——いや、面倒だという言葉は誤解を生むかもしない。

彼女——エイナ・チュールは人一倍心配性である。それは、おそらくは、彼女がギルド職員として働いてきた過去の経験に起因するのだろうが、アニメでは彼女が自身の担当冒険者であるベル・クラネルを心配している描写がよく描かれていた。

そして、彼女が口癖のようにいつも言っていたセリフがある。

 

——冒険者は冒険してはいけない

 

一見矛盾しているように思えるセリフだが、このセリフの意味するところは『1つしかない命を大事にしなさい』ということだろう。

 

——あぁ、確かにその通りだ。

命は1つしかない。

本来、人生とは一度きりだ。

だからこそ、俺は——

 

思考が深く沈みゆく最中、俺は意識を思考の渦から引き上げる。

 

——ふぅ、落ち着け俺。

今考えるべきはエイナ・チュールに担当してもらうかどうかだ。

 

先にも述べたが、エイナ・チュールは優秀な人物だ。そんな彼女に担当してもらえるなら安心できる。

とはいえ、彼女を担当に就けるということは、これから先、危険を冒すたびに小言を言われることになる。

正直、それはかなり面倒だ。

だが、そもそもダンジョンで起きた出来事を外部の人間が知る方法はその出来事を見ていた者からの露呈によるものしかない。

つまり、ソロでダンジョンに挑む俺にとっては問題ない。

——まぁ、ダンジョンにソロで挑む、という時点で色々言われそうだが、その程度は甘んじるとしよう。

 

そこまで考えた俺は、思考を一旦やめて、彼女の問いへと答える。

 

「それじゃ、お願いします」

 

「はいっ、それではツキカゲさんの担当アドバイザーは、私——エイナ・チュールが担当させていただきます。これからよろしくお願いしますね」

 

俺の答えを聞いた彼女は表情を綻ばせると、誰もを魅了するであろう綺麗な笑顔で返事を返してきた。

 

 

 

 

場所は変わり——

現在、俺はギルドにある一室に彼女——エイナさんと2人きりでいる。

エイナさん——そう呼んでいるのは、彼女にそう呼ぶように言いつけられたからだ。

 

「それじゃ、天くん。今度はこの問題を解いてみてくれる?」

 

俺は、彼女から問題が書かれた紙を渡される。

その紙には、モンスターの特性を問う問題が数問書かれていた。

俺は、迷う素振りを見せずに1つずつ埋めていき、全て回答し終えると回答用紙をエイナさんに返す。

 

「すごい!また全問正解っ!」

「天くんってほんとに頭いいんだね!」

 

この数時間で、色々な問題をすべて間違えることなく回答した俺に対して、エイナさんは素直に称賛の声を掛けてくる。

 

「まぁ、出された問題はさっきエイナさんから教わった範囲からしか出てきませんでしたしね」

 

誰かから褒められた経験が乏しい俺は、エイナさんからの純粋な誉め言葉に対して恥ずかし気に視線を逸らしながらなんとか返答する。

 

「たしかに、これまで出した問題はすべてさっき私が教えた範囲からしか出してないけど。それでも1問も間違えずに正確に答えられる人ほとんどいないよ」

 

「そうなんですか。それじゃ、まぁ、素直に称賛を受け取っときます」

 

「うんっ、そうしてくださいっ」

 

これ以上は何を言っても無駄だと思った俺は、素直に称賛を受け取った。

 

 

——その後も問題を解き続けること1時間、ようやく確認テストが終了した。

 

「よしっ、これで確認テストは終了だね。お疲れさま、天くん」

 

「お疲れ様でした」

 

彼女の労いの言葉に、俺も挨拶を返す。

 

「さて、これで一応新人研修は終了したわけだけど、最後に何か聞きたいこととかはある?」

 

エイナさんのその言葉に対して、俺は考える。

 

ダンジョン等に関する知識は、アニメ等で大まかなことは知っていた。それに加えて、今回の研修で詳細な部分まで知ることができたから少なくとも一般的に知っておかなければならないことに関して聞きたいことはない。

となると——

 

「それじゃ、魔法に関して教えていただけますか」

 

魔法——それは、誰もが一度は興味をもつモノだ。特に、俺みたいなファンタジー作品を愛する人種ならば、魔法に関する理解を深めたいと思うのは必然と言える。

 

「魔法?天くんは魔法に興味があるの?」

 

「ええ、まぁ、魔法は男のロマンですから」

 

「男のロマン……ふふっ、天くんもそんなことを言うのね」

 

俺の口から男のロマンなんて単語が出てくるとは思わなかったのか、彼女は微笑みを浮かべると、こちらに優しげな眼を向けてくる。

 

何だ、その子どもに向けるような微笑まし気な表情は……

 

「んんっ、それで、魔法に関して教えてくれるんですか」

 

エイナさんから向けられるあたたかな視線に耐えかねた俺は、咳払いをして話を進める。

 

「そうだね、いいよ。けど、私自身は魔法を使えないし、話せるのは一般的に知られている程度のものくらいだけど、それでもいいかな」

 

「えぇ、それで大丈夫です」

 

「りょうかい。それじゃあ、まずはそうね。一般的に魔法というのは先天的系と後天的系の2つに大きく分類されているの」

 

「......先天的系と後天的系」

 

「うん、まずは先天的系に関してだけど、これは対象の素質や種族の根底に関わるものを指していて、例えば、エルフや狐人(ルナール)といった、いわゆる『魔法種(マジックユーザー)』と呼ばれる種族なんかが該当するわね。彼らは総じて魔法適正が高く、中には自力で魔法を発現させる人もいるそうよ」

 

......自力で発現、か。現代にいるかは不明だが、少なくとも神々が下界に降臨する前の古代ならば、確実にいただろうな。

実際にこの目で見たことはなくとも、神の力に頼らずに自力で魔法を発現した者を歴史が観測している。

そして、そこから導かれる結論は——

 

「次は後天的系に関してだね」

 

——思考に耽っていた俺は、エイナさんの声によって現実へと引き戻される。

 

「後天的系は神の恩恵を媒介にして芽吹く可能性、自己実現のことを指しているの。天くんが魔法を発現させるとしたらこちらに分類されるわね」

「で、後天的系に関しては、先天的系のような規則性はなく、無限の可能性が秘められている、と言われているの。そして、魔法が発現するかどうかは【経験値】に依存する」

 

自己実現......。

なるほど。後天的系の場合は、総ては己次第ということか。

 

そして、魔法が発現するかどうかは【経験値】に依存する、か......。

「つまりはモンスターを倒したり、鍛錬を積んだりして経験値を稼ぐ必要があるってことですか?」

 

「そうだね。ダンジョンに潜ってモンスターを倒すか、もしくは自分より強い人に稽古をつけてもらうか。まぁ、天くんの場合は、ファミリアの団員が天くん1人だから必然的に取れる手段はモンスターを倒すことのみになるかな」

 

たしかに、エイナさんの言う通りだ。

原作では、ベル・クラネルはアイズ・ヴァレンシュタインに稽古をつけてもらっていたが、あれは例外も例外だろう。

とはいえ、稽古をつけてもらえそうな人に心当たりがないわけではないが......。

 

「そうですね。とりあえずは、ダンジョンに潜ってモンスターを倒すことに専念しようと思います」

 

「うん、それがいいと思うよ。だけど、分かっているとは思うけど......」

 

「——分かってますよ。冒険者は冒険してはいけない、でしょ?」

 

俺が彼女の言葉を引き継いで、彼女が言わんとしていることを言うと、彼女は笑みを浮かべて頷く。

 

「よろしい。それじゃ、研修はこれで終わりだね。天くんは、この後はダンジョンに潜るつもりかな?」

 

「そうですね。今から潜ろうと思っています」

 

研修が思ったよりも長かったため、既に時刻は昼を過ぎていたが、まだまだダンジョンに潜るだけの時間はある。

なので、俺はエイナさんにダンジョンに潜る意思を示す。

 

「そっか、わかった。けど、装備はどうするの?ホームにあるの?」

 

「いえ、装備は持ってません。ですので、ギルドで借りようと思っていたのですが、借りることってできますか?」

 

残念ながら、ヘスティアファミリアは無一文の俺と貧乏生活を送っているヘスティアの二人で運営されている。故に、装備を整えるだけの資金はないのだ。

 

「そうね。お金がないなら借金してもらうことになるけど......」

「ダンジョンに潜るなら装備は必須だし、仕方ないかな」

「ちなみに、どんな装備がいいか要望とかはある?」

 

「そうですね。防具は皮鎧で、武器は刀とかってあります?」

 

「んー、皮鎧はあるけど、刀はないかな。ロングソードならあるけど」

 

刀はないのか。できれば、武器は刀を使いたかったが、仕方ない。

 

「それならロングソードでお願いします。金額は合計でいくらですか」

 

「そうだね。皮鎧とロングソードで、合計10,000ヴァリスだね」

 

たしか、ダンまちのお金の単位は日本の金額の10分の1くらいだってどっかで聞いたことがある——つまり、日本円換算で10万円。

まぁ、10万円で命を守れるなら安いものか。

 

——とはいえ、今しがた支給された装備は明らかに安物......。

こんなもの、一瞬で使い潰れるぞ。

これは、金を貯めてなるべく早く武具店で買い替えた方がいいな。

 

エイナさんから受け取った装備一式を更衣室で装備し終えると、早速ダンジョンに潜るためにギルドの出口へと向かう——

 

「天くんっ!」

 

出口へ向かおうとしていたところで、エイナさんが俺の名前を呼んでくる。

呼び止められた俺はエイナさんへと振り返る。

 

「気を付けてね。絶対に無茶しちゃだめだからねっ。少しでも危ないと思ったら引き返すことっ!わかったっ?」

 

エイナさんは心配性である。

 

「わかりました。それじゃ、行ってきます」

 

エイナさんからの注意に軽く返事をすると、エイナさんへと向けた足を再びダンジョンへと向けて歩みだした。

 

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