ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第434話『レイ・ザ・バレル。報告をしろ』

 オーブ連合首長国首都オロファトの人気ハンバーガーショップで起ころうとしていたテロを最小限の被害で抑える事に偶然成功したシン達は、状況を報告する為に、彼らの母艦であるミネルバへと向かっていた。

 本心を言うのであれば、オーブ軍本部に情報連携だけして、自分達は無関係という顔をしていたかった。

 何故なら。

 

「既にオーブ軍より、首都で発生したテロ事件に関する概要は聞いている」

「というワケだから。報告をお願いできるかしら?」

 

 世界平和監視機構コンパス 統合作戦室所属 現地作戦指揮担当 航宙戦闘艦ミネルバ副官 ナタル・バジルール

 世界平和監視機構コンパス 第一艦隊旗艦 航宙戦闘艦ミネルバ艦長 タリア・グラディス

 

 コンパスにおける最も怖いとされる二人の女傑にシン達は圧をかけられ、背中にダクダクと汗を流しながら、彼女たちから見えない様に足で「お前が報告しろよ」「なんで私が! アンタが言えば良いでしょ! 山猿!」

 等と、言葉のない言い争いをしていたが。

 その様な様子にナタルが黙っている事はなく、額に青筋を浮かべながら問題児たちに向かって口を開いた。

 

「貴様ら! いい加減にしろ!」

「は、ハッ! も、申し訳ございませんっ!!」

「レイ・ザ・バレル。報告をしろ」

「ハッ! 我々は空港にてザラ隊長と共に、プラント最高評議会議長ワルター・ド・ラメント氏の護衛任務へと向かいました。その後、ラメント議長をホテルへと送り届け、ザラ隊長とラメント議長の会話から、オーブ内部にテロリストが入り込む可能性を考え、見回りをしつつミネルバへと帰投する途中。テロリストを発見。これを制圧しました!」

 

 事実と嘘を交え、後から追及されても何とか言い逃れ出来そう、かつ現状最も被害が抑えられるであろう言い訳を一瞬で用意したレイにシンは、親友への評価をローエングリンで大気圏を突破してゆくアークエンジェルよりも早く高く上げた。

 そして、ルナマリアとアグネスもこれで説教時間が限りなく減らす事が出来ると安堵する。

 

 しかし……世界はそれほど甘くはないのだ。

 

「そうか。ちなみに、オーブ軍より該当のハンバーガーショップ店頭を移した監視カメラの映像が転送されてきているんだが……貴様の報告は、本当にソレで良いんだな? レイ・ザ・バレル」

「……!」

 

 レイは自分がハメられた事に気づき、焦りを顔に浮かべる。

 兄であるラウ・ル・クルーゼなら、この様な事態に追い込まれようとも詭弁に詭弁を重ね、容易く切り抜けるだろうが……レイは未だ未熟であり、どこまでも真っすぐであった。

 故に。

 ナタルと、タリアの視線に、言葉を失って、迷い、立ち止まってしまう。

 

 だが……レイは一人ではない。

 レイが暗闇で立ち止まろうとも、手を差し伸べて共に戦ってくれる心強い親友が居る。

 

「申し訳ございません!! 自分が! レイを食事に誘った為! ハンバーガーショップで昼食を取ろうと並んでおりました!!! 彼は、自分を庇おうとこの様な報告をしただけでありまぁす!!」

「……シン」

「なるほどな。艦長?」

 

「まぁ、結果が良ければ全て良し。というワケでは無いけれど。結果としてテロ事件を防いだのだから、そこまで重く罰するつもりは元よりありません」

「……艦長」

「私もバジルール副長も鬼ではありませんから。ミレニアムがオーブに到着するまでの一週間。オロファトの見回りをする事を罰としましょう」

「えぇええ!?」

「見回り!? で、ありますかぁ!?」

「あなた達は自主的にそれをやろうとしたんでしょう? ならば何も文句は無いわよね?」

 

 ニコリと微笑むタリアにシン達は一度そういう言い訳を使ってしまった為、何も言うコトは出来ず、黙って頷くのだった。

 そして、タリアの言葉を聞き、ナタルは小さく頷いてからシン達に言葉を続ける。

 

「当然だが、通常の任務もある。既定の訓練もな。忘れるなよ」

「は……はぃ」

 

 もはや何も反論する気力は無く、シン達は項垂れながらナタルとタリアに頷いた。

 そんな四人に、タリアは苦笑し、ナタルはため息と共に頭を抱える。

 

 そして、シン達は落ち込みながらもタリアとナタル。そして通信を繋いだオーブ軍本部のソガ一佐。オーブ連合首長国代表首長カガリ・ユラ・アスハに状況の報告をするのだった。

 

 

 シン達に報告をさせてから、タリアとナタルは、ソガ一佐やカガリと通信で今回の件について話をしていた。

 

「しかし。まさか……オーブでテロ事件が起きるとは。オーブはキラやセナの故郷でしょう?」

『だからさ。グラディス艦長。連中は私達がセナに銃口を向けたのが許せんのだ。機会が無かっただけで、チャンスがあればいくらでも爆破したかっただろうよ』

「ですが! あのまま放置すれば、セナ様の命は無かった! それはあの戦いを見た全ての者が理解できた事です!」

『そうだな。バジルール二佐。貴君の言うコトは正しい。正しいが……その様な正しさは彼らにとってあまり意味がない』

「意味がない?」

『連中はブルーコスモスと同じなんだよ。大事な事は思想であり、正しさや他人の言葉などどうでも良いんだ。さしずめ、コーディネイター版のブルーコスモスという所かな』

「……では、やはり」

 

『ソガ一佐』

『はい。カガリ様。調査の結果。逮捕された少女はコーディネイターである事が判明しました。そして、彼女の家を捜査した所、孤児と思われるコーディネイターの子供を数人確保しております。彼らもまた、テロの準備をしておりました』

「……そうでしたか」

「コーディネイターの孤児。前大戦や、先の戦争の被害者でしょうか」

『その可能性が高いだろうな。両親を殺され、地獄の様な世界をさ迷っている中でセナに救われたのだろう。そして、信仰はセナが失われる事で世界への憎しみとなった』

 

 カガリの言葉に、ナタルもタリアも言葉を失くす。

 そうなってしまった状況に同情は出来る。

 しかし、だからと言ってテロを容認する事も、人殺しを許す事も出来るワケが無かった。

 

『そして、こいつらが暴れる事で、ブルーコスモスもまた力を付けてきている様でな。各地でテロを起こして、コーディネイターの排斥を叫んでいるよ。まったく。どこもかしこも憎しみばかりだな』

「あの光……」

『うん?』

 

「セナ様とデミスシルエットが放った暖かな光。私はアレをメサイア攻防戦で見ました。距離は遠くとも、確かに私は見ました。そして、人の可能性。平和な未来への可能性を見ました。彼らはそれを見て、何故憎しみばかりを育てるのでしょうか?」

『分からん』

 

 カガリはナタルの言葉を一言で流してから、少し考えて……また口を開いた。

 

『結局人類は希望よりも憎しみを選ぶのか。平和よりも戦争を選ぶのか。それは、今の私にはまだ分からん。だが……あの光を見て、平和への道を選んだ者も居る筈だ。私はそう信じている。例え歩みは遅くとも、人は変わってゆけるのだと』

「代表……!」

『そして、その歩みを消さない為に必要なのが、今は力だ。後々、歴史家に愚か者だと罵られようが、現状はコレが最善だ。ようやく灯った平和への灯火だ。消さぬ様に護らねばならん』

「そうですわね」

「ハッ!」

 

『ひとまずは推進式だ。どうもきな臭い状況ではあるが、ここで中止になどしたら、それこそ連中の思う壺だ。絶対に成功させるぞ』

『「「ハッ!」」』

『諸君らの活躍に期待する。すまないが、協力してくれ』

 

 カガリはオーブ式の敬礼をして、ミネルバとの通信を切った。

 暗くなったモニターを見ながら、タリアは小さくため息を吐く。

 

「お疲れの様ですね。艦長。式典まではまだ時間もあります。息抜きに街へ行くのも良いかと思いますが」

「シン達にお説教した後で?」

 

 クスリと笑ってタリアは小さく笑みを浮かべているナタルに問うた。

 しかし、ナタルは特に表情を変えぬまま言葉を続ける。

 

「シン・アスカ達は気を抜きすぎているので、引き締める必要がありますが、グラディス艦長は逆に気を張り過ぎている。それではイザという時に動けませんよ。私の尊敬する艦長は、気を抜くのが上手かった。故にあらゆる想定外な事態に対処出来たのだと思います」

「……マリュー・ラミアス艦長のこと?」

「えぇ。少々気を抜きすぎる所もありましたが、そこは私が居ますから。引き締める役はお任せを」

「それでは……貴女ばかり悪く言われてしまうと思うのだけれど」

「規律を遵守する上では必要な事です。それに、嫌われるにしても艦長よりも副長が嫌われている方が、クーデーターは起こりにくいですから」

 

 クスリと冗談を言いながら笑うナタルに、タリアは「そうね」と返しながら笑みを浮かべて頷いた。

 何となく気が合うのは気持ちの方向性が似ているからか。

 もしくは、キラに助けられ、ラミアス艦長を目標としているかもしれないとタリアは笑う。

 

「分かりました。では夜にでもお休みをいただくとしましょう」

「承知いたしました」

「ただし。それは貴女も一緒にね」

「は……? しかし、ミネルバに……」

 

「大丈夫よ。ミネルバのクルーも優秀だもの。私達が戻るまでの間艦を護る事くらい何の問題も無いわ。ね? バート。アビー」

「えぇ。お任せください」

「副長も。仕事仕事と、最近は働いてばかりですからね。艦長と共に休んでください」

 

「と、そういうワケだから。どこかのお店で美味しい物でも食べに行きましょう」

「……まったく。貴女もだんだんとラミアス艦長に似て来ましたね」

「それは喜ぶべきかしら。悲しむべきかしら?」

 

「自分には分かりません。ですが、誇る事は出来ると思います」

「そうね……確かに。そうかもしれないわね」

 

 タリアは宇宙の果てに向けて旅立った親友を思い、言葉を落とした。

 そして、ナタルはそうと決まればと一つの資料を取り出す。

 

「では良い機会ですし。ついでに一つ仕事を片付けるとしましょうか」

「仕事?」

「えぇ。代表より依頼されていた仕事がありまして。フラガ一佐が経費として落とした店。果たして新人歓迎会の場として相応しかったのか。調査して欲しいという依頼を受けております」

「あら。それは重大な任務ね」

「はい。ですから。現地の調査をついでに行おうかと」

「それは良いわ。じゃあ、私達の夕食は?」

「無論。経費で」

 

「それは良かった。じゃあついでにみんなの分の夜食も買ってくるとしましょう。期待しててね」

 

 タリアは自分たちの代わりに夜番をしてくれるクルーへと言葉を向け、ブリッジは歓喜の声に包まれるのだった。

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