ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第256話『そう緊張するな。スウェン』

 人類が未だ到達した事のない外宇宙にて、暗黒の宇宙に浮かぶ一つの戦艦は、カタパルトを開きながら2機のモビルスーツを外に排出した。

 漆黒のモビルスーツである『ストライクノワール』と濃いグレーに染まっている『プロヴィデンス』である。

 2機は調査の為に核動力モビルスーツへと換装しており。どの様な状況になっても活動は可能となっていた。

 

 コックピット内の酸素については、どの様な状態になってもいい様にワザワザ酸素タンクを多く装備して、様々な事態に備えている。

 改修費用はかなり高くついたが、オーブ連合首長国が予算と工員を用意してくれた為、何も問題なく正規品だけで全てを賄う事が出来た形である。

 

「しかし……ここまで用意してもなお、不安は消えぬ物だ。スウェン・カル・バヤン中尉」

『ハッ』

「我らの機体は目視が難しい機体であるが、レーダーから消えているワケではない。注意しろよ」

『承知いたしました』

「通信も……あまり行わない方が良いだろう。これも我らを発見する事が出来る行動の一つだ。直接ワイヤーで機体を繋げて、有線を通し話す方が良いだろうな」

『……ハッ』

 

 プロヴィデンスに搭乗したクルーゼが淡々と状況を説明していると、やや緊張した様な返答がノワールのスウェンより届けられた。

 僅かに震えるその声に、クルーゼは小さく息を吐いて、努めて明るい声を出す。

 

「そう緊張するな。スウェン」

『自分は! 緊張などはしておりません!』

「そうか? 声は震えているな」

『そ、それは……!』

「緊張していないという事であればそれでも良い。ただ、そろそろミラージュコロイドを展開しろ。私はマントを装着する」

『ハ、ハッ!』

 

 クルーゼは支持を出しながら用意しておいたマントで機体を包み、スウェンもまた、ミラージュコロイドを展開して機体を覆い隠してゆく。

 これで、彼らの機体は元々闇に包まれた宇宙の中で見えづらくなっていたというのに、余計に見えなくなってしまった。

 有視界の中で、彼らを発見する事は難しいだろう。

 

 また、ミラージュコロイドやミラージュコロイドマントの性能によりレーダーからも姿が消されている。

 あくまでもこれは、現代の地球文明では。という話にはなるのだが。

 

『クルーゼ隊長は』

「うん?」

『クルーゼ隊長は、この任務が恐ろしくは無いのでしょうか』

「恐ろしいよ。私は」

『は……は?』

 

 意外そうな声を上げるスウェンにクルーゼはフッと笑った。

 確かに、怖がっている様な素振りは見せていないが、平然としていると思われるのも困るな、と。

 

「私はな。スウェン。この任務も、セナが言っていた外宇宙の生物も、全て怖いのだ。しかし、怖いからと言って逃げ出してしまえば、私の大切な物がそれによって奪われてしまうかもしれない」

『大切な物……ですか』

「あぁ。そうだ。これから向かう暗黒宙域には何者か、生物か人類か分からぬが、何かがいる。そして、その何かが地球に向かう可能性もあるのだ。そうなれば、私の大切な存在はソレによって失われてしまうかもしれない。それが怖いのさ。こんな所に来ることよりも……ずっとな」

『……分かる様な、気がします』

「ほう?」

『自分は両親をテロで失って、先の戦争を戦友と共に駆け抜けて来ました。夢を見せてくれた人も居る。俺は……彼女たちを護りたい。その気持ちは、どんな物よりも強い気持ちです』

「そうか。であれば、同じ気持ちだな」

 

 クルーゼはフッと笑って、更に機体を加速させた。

 そして、暗黒宙域へと近づいてゆく。

 

「であれば、少しでも情報を持ち帰りたい物だな」

『はい……!』

 

 スウェンとクルーゼは暗闇を見に纏ったまま宇宙を進み、問題となる暗黒宙域へと向かった。

 

 

 二人が暗黒宙域の問題に気づいたのは、かなり暗黒宙域に近づいてきた時の事だった。

 暗黒宙域にて何かが動いたのだ。

 

『これは!?』

「気を付けろよ! スウェン!!」

 

 クルーゼは一気に機体を動かして、戦闘が出来る様に数値を整えてから、暗黒宙域の様子をビデオ録画してゆく。

 イザとなれば、これを戦艦に射出して情報だけでも渡す作戦である。

 

『ミラージュコロイドが剥がれていく……! 向こうにいるのは……! 銀色の……? 機体?』

「生物という可能性はある。いや、アレは……」

『集合体か!!』

 

 スウェンの声を皮切りにして、暗黒宙域にて蠢いていた銀色の何かはうねる様に体を動かしてから一気に体の一部から触手を伸ばして、スウェンの方へと向かって行った。

 戦闘態勢はとっているが、まだ攻撃はしていない。

 だというのに、敵は真っすぐにストライクノワールを目標としており、自分が狙われているという事に気づいたスウェンは戦場から逃れる様に後方に一気に移動しようとした。

 しかし。

 

『敵の方が、早い!!』

「スウェン!」

『隊長はまだ、動かないで下さい! こいつ等!』

「あぁ。ミラージュコロイドが効いていない」

 

 銀色の触手から逃れる様にスウェンは近くにある小惑星の欠片の裏側に回り込んで、ビームライフルショーティーという主武装を構えるが、小惑星の影にいるストライクノワールに向かって、隕石を邪魔ともしないまま水の様に回り込んで、ストライクノワールへと向かう。

 ストライクノワールは咄嗟に隕石から離れて、手に持っていたハンドガンで銀色の生物を打つが、小爆発が起こっても、何ら動きが鈍る事なく一気に迫ってくるのだった。

 しかも、迫って来た銀色の何かはすぐにストライクノワールの手に握られていた二丁のビームライフルショーティーに絡みついて、咄嗟にストライクノワールが手放した先で爆発する。

 

 このままではいけないと、手に取り付けられたアンカーを銀色の何かに向かって撃つが効果は薄かった。

 それらは全てのみ込まれて、銀色の何かの中で爆発が起こる。

 モニターにはアンカーが失われた事が示されており、スウェンは後方に移動しながら肩のレールガンを撃ち続けた。

 しかし、それも銀色の何かに食われ、咄嗟にスウェンはストライカーパックごとそれを切り離すが、やはり今まで通り、少し離れた場所で爆発してしまうのだった。

 

 何をしても効いていない。

 しかも敵は真っすぐにストライクノワールに向かって進んでくる。

 終わったか! とスウェンが焦った顔のまま目を見開いていると、上部から緑色のビームがいくつも降り注ぎ、銀色の何かはスウェンからビームが撃たれた方へ向かって突き進んでゆく。

 それを、銀色の何かの攻撃で、アラートが鳴り響いているコックピットでスウェンは目撃した。

 

 先ほどまでは、一切敵に狙われていなかったというのに、銀色の何かはドラグーンシステムを展開したプロヴィデンスに虫の様に群がっていた。

 しかし、機動力は他の機体よりも劣っている為、プロヴィデンスはすぐに周りを囲まれてしまった。

 このままでは! と、スウェンはコックピットの中から叫ぶ。

 

『逃げて下さい! クルーゼ隊長!!』

「いや」

『え』

 

 不意に、プロヴィデンスの周囲に居た銀色の何かはは目標を失ったように宙域の真ん中で動くを止めた。

 何かを探す様に周囲を動いているが、特に何かをするという事もない。

 

『なんだ、なにが』

「動力だよ」

『動力……?』

「あぁ、君が襲われているのを見ていた所、連中は君の機体が出す動力に反応している様に見えた。そして、今は攻撃により動けない。システムも随分と出力が落ちているだろう?」

 

 クルーゼの言葉に、スウェンはメインモニターを見て、アラートを発している画面を見た。

 確かに、武装やパックを失う事で本来の出力にはまるで届いていない事が分かる。

 

「念のためだ。生命維持装置を残し、システムを切るんだ」

『は、はい!』

 

 スウェンは急いで、生命維持装置以外の全てをカットし、カメラアイからも光が失われる。

 そして、それをクルーゼに告げてから、彼は腰から一つの機器を動かし、それを勢いよく正面に投擲する。

 

「起動」

『うっ……!』

 

 クルーゼが呟いた瞬間に、クルーゼが投げたそれには銀色の何かが無数にとりついて、今まで以上の大爆発を引き起こした。

 それで、銀色の何かを殲滅する事は出来なかったが、全てを破壊したとでも思ったのか銀色の何かは元の宙域へと戻っていくのだった。

 

「……どうやら、今の我々ではどうする事も出来ない者の様だな」

『はい……そう思われます』

「では情報を持ち帰る必要もある。ひとまずは帰還するぞ」

『了解しました』

 

 クルーゼとスウェンは機体を動かさぬまま、こういう時の為にと用意しておいたワイヤーを隕石に打ち込み、それを巻き取りながら反動でその先へと移動してゆく。

 まだまだストライクノワールも動く事は出来る。

 今はとにかく情報を持ち帰るのが優先と動き始めた。

 

 

 2機が戦闘を行っている頃。

 戦いを含めて戦場をモニターしていた黒色の戦艦『ガーティ・ルー』のブリッジでは、2機の反応が消えた事で悲鳴があがった。

 

「シグナルロスト!」

「艦長……! これは」

「ミラージュコロイドだって観測できる新型のレーダーだぞ」

「まさか、撃墜されたのか?」

 

「落ち着いて。焦っていても何も生まれないわ」

 

 ざわざわと騒ぎが広がるブリッジの中で、マリューは冷静な顔をしたままジッと2機が消えたモニターを睨みつける。

 突然消えたが何かのトラブルだろうか?

 しかし、戦闘も行われている気配はなかったし。トラブルとは考えにくい。

 

「……二人はこの場所を知っているのよね?」

「はい。出撃前に連絡済みです」

「分かったわ。では機関停止。必要最低限の装置以外は全てを停止して」

「重力発生装置も、ですか? ここが無重力となりますが」

「えぇ。切れる物は全てよ。電源も全てね。状況が分かるまで本艦は静寂の中に沈みます」

「ハッ!」

「機関停止!」

「艦が流されない様に底部のアンカーを隕石にぶつけろ!」

 

 マリューが指示を出してからそれほどしないでブリッジのライトも非常用ライトを除き消え、宇宙と同じ暗闇の中に包まれる。

 ブリッジクルーは流石潜入のプロと言うべきか。動揺している者達は居ないのだった。

 

「マリュー! どうしたんだコレは」

「先に送り込んだ2機の反応が消失しました。戦闘が行われた物と考えられます」

「……! 戦闘か!」

「詳細は分からないですが、今は本艦の存在を悟られる事は出来ません」

「連中は戻るのか?」

「えぇ。無理だったとしても、動画は来ますから」

「……そうだな」

 

 ムウは、それからクルーゼたちが帰還するまでマリューの隣で険しい顔をしたまま宇宙を睨んでいるのだった。

 

 そして、クルーゼとスウェンが帰還してから未知の存在の情報が伝えられ、レーダーに映らない謎の敵として彼らに連携されるのだった。

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