機動戦艦ナデシコ Lily of the valley   作:勿忘草

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六話 「選択」は決めている

火星宙域にたどり着いたナデシコは敵の待ち伏せに合い敵の攻撃を受けた為迎撃戦に入る

 

ナデシコブリッジにて

 

「敵の数を減らします、続けて敵が固まっている方向にグラビティブラスト発射」

 

「了解、チャージ完了、効力射算出、左舷方向の敵に向けてグラビティブラスト発射します」

 

ナデシコからのグラビティブラストにより敵集団の左方向に居た戦艦が撃沈されていく

 

「敵艦から無人機が出てきました、エステバリス隊はナデシコに近づく無人機を迎撃してください」

 

「再チャージ開始します、チャージ完了まであと1分、ミナトさん射角の修正お願いします、データ送ります」

 

「はいはーい、右方向に移動するわよ」

 

それから発進したエステバリスを避けるように移動したナデシコは次の主砲の発射に備える、一方エステバリス隊ではナデシコから発艦後に敵の無人機に対応していた

 

「出てきた出てきた、行くぜぇーヒカル」

 

「行くよー」

 

「生かせて頂きます」

 

三機のエステバリスによるディストーションフィールドを展開した体当たりで敵の無数の無人機が粉砕されていく

 

「ほーら、お花畑」

 

「花火だねぇ」

 

「かぎや~、錠だけに冗談言えない・・・勝負なのでお先に失礼」

 

通信でやり取りしていたイズミ機が先行して無人機を薙ぎ払っていく

 

「なんだ、何時ものギャグを言うんじゃないのかよ変な奴、変な奴」

 

「花火はお気に召さなかったようだねぇ、あっグラビティブラストが来るから右方向に注意だって」

 

ウィンドウが開き警告が表示されると今度は右方向に固まっていた敵艦がナデシコからの攻撃で薙ぎ払われていく、そして今度は敵の射程に入ったのかナデシコに向かって一斉にレーザーや敵のグラビティブラストが放たれる

 

「敵、攻撃来ますフィールド出力最大」

 

波状攻撃を受けて流石のナデシコの強力なディストーションフィールドと言えど衝撃から艦が揺れて振動を起こす、その様子を見てアドバイザーであるフクベ提督が慌てて艦長であるユリカに助言を行う

 

「か、艦長この攻撃ではエステバリスでは危険だ、直ぐに艦に戻したまえ!」

 

「必要ありませんわ、アキト頑張れー」

 

「いや、しかしこの攻撃の中では…」

 

それでも艦長を説得しようとしたフクベにネルガルの社員であるプロスペクターが語りかける

 

「なるほど、敵はグラビティブラストを搭載した戦艦と仰りたいのですねぇ、大丈夫ですそのための相転移エンジン、そのためのディストーションフィールド、そしてグラビティブラスト、第一次火星会戦の時とは違いますぞ、お気楽にお気楽に」

 

その言葉にその火星会戦で惨敗し、残存艦隊を纏め上げて地球へと逃げ帰ったが士気を上げるプロパガンダとして利用され敵の移動母艦を一隻墜としたと英雄として祭り上げられた身としては言葉に詰まるしかなかった、例えそれが北極に落ちる予定の敵空母で特攻を仕掛けて守るべき人々が住む火星のコロニーに落下したのだとしても

 

グラビティブラストの連射により敵の艦隊はほぼ壊滅状態となり戦闘は終盤を迎え

 

「敵戦艦フィールド増大」

 

残った数隻の艦隊にエステバリス隊が仕掛けるが出力が上がった敵のフィールドに阻まれるが一機だけその後方から全力で加速していた

 

「いよっしゃあー、道を開けな!行くぜぇ、必殺ぁぁぁつゲキガンフレアァァァァァー」

 

大声を出しながら敵艦に突っ込んで行ったエステバリスの拳が敵艦の装甲に接触した瞬間エステバリスのディストーションフィールドと敵ヤンマ級戦艦のディストーションフィールドが反発し合い山田機がゴムボールのように勢いよく弾き飛ばされてしまった

 

「なぁにぃ!俺のゲキガンフレアがぁ!?」

 

そう言いながらもガイは弾かれたエステバリスの各部スラスターを制御して回転する機体を立て直していた、アキト機が近づいて体制が崩れている山田機を抑えて止める

 

「ガイ落ち着けって、小型艦はともかくこの大型艦は二隻連結してあるからその分フィールドが強力になっているんだ、全速で突っ込んでもエステバリスのフィールドじゃ出力が違いすぎて弾かれるだけだぞ」

 

「だがこのデカ物を倒さないと火星に降りれないぜ?」

 

「またナデシコにグラビティブラストを撃ってもらう?」

 

「敵の艦隊がほぼ消滅して隊列が広がってるわ、今撃っても精々2~3隻くらいしか巻き込めないけどそれしかないようね」

 

ナデシコに通信を行おうとした時、テンカワが唸りながらも打開案が思い浮かんだようで通信ウィンドウが開く

 

「まあ出来なくも無いが…ガイやってみるか?」

 

「何か作戦があるのか?」

 

エステバリスの操縦席でお互いに確認し合った後で敵艦の撃破行動に移る

 

「先ずは装甲を切る!」

 

そのままガイと同じように重力波推進を全開にして敵大型艦に突撃していくが今回は腰に収納されている折り畳み式のナイフを取り出すと機関部を守っている装甲の表面を弾かれそうになりながらも切り裂いていく

 

「よし、それじゃガイもう一度ゲキガンフレアだ」

 

「あん?また弾かれるだけじゃないのか?」

 

「大丈夫だ、今度は俺が押してやる」

 

半信半疑ながらもガイのエステバリスは同じようにディストーションフィールドアタックを繰り出すとアキトも同じように後ろからついていくと徐々にフィールドの反発によりスピードが落ちてきた

 

「それじゃガイ押すからな、ゲキガンキーック!」

 

そのまま突撃するガイのエステバリスの足の裏目掛けて飛び蹴りを行い機体の推力を叩き込むと逆に勢いが無くなったアキト機は敵の展開しているフィールドの斥力で弾かれていった

 

「どぉわぁぁぁぁっと加速した、行くぜぇ!必殺スーパーゲキガンフレアー」

 

そのまま敵艦の装甲の切れ目にガイがパンチを叩き込むと機関部が炎上して爆発が起こる

 

「見たか、正義は勝つ!わっはっはっは

 

「うわぁ、あいつら本当にやりやがったよ」

 

「もしかしてこのノリが続くの?」

 

「まあ敵を倒せるならいいんじゃない?」

 

「というかテンカワくんのお陰だよねー」

 

大型艦の爆発を背景にガイの高笑いが響いていた

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

敵の大型艦が消滅した爆発の光を確認したその後ナデシコは艦長の命令により火星降下を開始します

 

「前方の敵90%消失、火星降下軌道取れます、ミナトさんどうぞ」

 

オモイカネに入力された降下地点のデータから導き出された計算結果から降下軌道のナビゲーションが表示されたウィンドウを操舵士であるミナトさんに移動させる

 

「さんきゅ、ルリルリ」

 

「いえ、オペレーターなのでお気になさらずに、必要なデータがあれば何時でもどうぞ」

 

ミナトさんは私が反応したのが意外だったのか一瞬チラリとこちらを見られましたが直ぐに仕事に戻られました

 

「へぇ~、っさ、皆用意はいい?ちょっとサウナになるわよぉ」

 

「その前にエステバリスの回収作業を…」

 

「とっくにやってるわよ」

 

そう言えば今のナデシコは旧システムの模倣をオモイカネにやってもらって要るのでまだ用意して無かったですね

 

「ゴートさん、新しく出した左側にあるウィンドウに降下シーケンスの進行段階を表示させておきます、何か作業漏れがあればよろしくお願いします」

 

「ああ、助かる」

 

新造戦艦であり最新鋭の機動兵器を搭載する関係上ナデシコはシステムをゼロからとは言いませんが、既存の宇宙戦艦と比べてほとんどを作り直す形になりましたからね、逆に言えばこれがほぼ終わったのでナデシコ級の機動戦艦がこれから早い段階で量産されていくのですが…っとだいぶ降下してきましたね

 

「火星熱圏内に入りました、相転移エンジンの反応下がります」

 

ブリッジから火星を確認すると電離層付近にキラキラとした光が見えます、今回も同じようにメグミさんが疑問を投げかけてきました

 

「光ってる…、あれって何です?」

 

その質問にゴートさんが答えます

 

「ナノマシンの集合体だ」

 

「ナノ?」

 

メグミさんは一般的な環境で暮らしていたのでこの分野はあまり詳しくないようですね、軍では当たり前に使われているのですが

 

「ナノマシン、小さな自己増殖機械です、火星の大気組成を地球の環境に近づけるために使われています」

 

「ふ~ん」

 

その昔、火星にあるネルガルの会社に出向したことがあるプロスペクターさんが更に詳しく補足されました

 

「そう、今でもああして大気の状態を一定に保ち更には有害な宇宙放射線を防いでいるのです、例えその恩恵を受けるも者が居なくなっても…」

 

ナデシコはそのまま火星の地表に向けて降下を続けていきます

 

「ナノマシン第一層通過中」

 

ナデシコに当たっている光るナノマシンが気になるのかメグミさんが更に質問を続けます

 

「そんなのがナデシコの中に入っても大丈夫なんですか?」

 

「問題ありません、IFS用のナノマシンとは違い体内に入ってもそのまま排出されます、そもそも艦内にも似たようなナノマシンは使われていますよ」

 

「えっ、そうなの?でもあんな光るのは見たこと無いけどなぁ」

 

「空気循環システムの事です、密閉された宇宙戦艦の中では酸素が減り二酸化炭素濃度が上がるため時間が経てば呼吸が困難な空気になります、その為に酸素濃度を一定に保つように開発された酸素濃度管理用ナノマシンです、連合軍の宇宙戦艦には長期航宙の為に昔から搭載されたいました。このシステムのおかげで料理に火が使えたり艦内の区画を広げることが出来るようになったので自由に使える空間が増えました、資料がありますので良かったらどうぞ」

 

そう言ってナデシコの空気循環システムの資料が表示されたウィンドウをメグミさんの方に移動させる

 

「へぇ~一応緊急用の酸素ボンベはあるんですね、でもナデシコはオートメーション化で乗組員が少ないお陰で空気循環システムが無くても一ヵ月は持つようですけど」

 

やはり一般人はナノマシンに忌避感があるようです、確かにナデシコなら酸素ボンベによる空調管理で数か月は持ちますし非常用として水の電気分解を行い酸素を確保する手段もある為わざわざナノマシンを使う必要性を感じないという事でしょう

 

「心配要りません、火星では皆その空気を吸って生きていたんですから基本的に無害です、私が証拠ですので保証します」

 

その言葉でプロスペクターさんが思い出したように語りだします

 

「そうでした、艦長の生まれは火星でしたな」

 

「私も長いこと連合軍の戦艦に乗っていたがこの年まで何事もなく過ごしているよ」

 

「そうなんだ…」

 

フクベ提督がメグミさんが不安になっている様子からか追加で保障されましたね、まあメグミさんが気になっているのは別の事のようですが

 

「地上に第二陣が居るはずです包囲される前に撃破します、グラビティブラストスタンバイ!」

 

「いいけど…宇宙で使えば良かったのに」

 

宇宙では連射出来ますが地上だと再チャージに時間がかかるため連発出来ないですからね、これも相転移エンジンとグラビティブラストという新技術をまだ戦術に組み込めていないため従来の戦艦の延長上で作戦を考えてしまっているので仕方ありません

 

「地上にて活動するチューリップ及びその周辺に無人機を確認」

 

「艦首敵へ向けてください」

 

「はいはーい、ってあら」

 

艦の操作に不自然な感覚を覚えたのかミナトさんが声を上げました、宇宙からの砲撃は問題無いのですが火星という他の惑星による重力を受けながら機体を地上へ向けて砲撃する事を考えてなかったのでこの時はまだ重力制御のプログラムが不完全なのです。

そもそも相転移エンジンの莫大なエネルギーのおかげでナデシコは全区画の重力制御が出来るため大気圏内で戦艦によるバレルロールすら出来てしまいますが連合軍の宇宙戦艦は核融合炉のためエネルギー問題がありブリッジとその他重要区画しか重力制御を行っていませんでした、そのためナデシコはノウハウが無い中で初めての試みが多く、先に各種自動制御プログラムを作ってしまうと不自然な事になるので全てを一気にアップデート出来ないのがもどかしいですね

 

「大気圏内での急傾斜による地表への射撃は想定していませんでしたので重力制御の自動修正プログラムがありません、ブリッジを最優先に各区画手動にて重力制御の調整をかけます…すみませんエステバリス格納庫は独立した重力制御を行っているので調整が間に合いそうにありません、メグミさん至急格納庫へ安全確保の通知をお願いします、このままでは床が滑り台になってしまいますので」

 

それを聞いた通信士であるメグミは急ぎエステバリス格納庫へ通信を繋ぎ大画面のウィンドウを開き大急ぎで通告を行う

 

「格納庫の皆さーん、これから地表の目標へ射角を取るため傾斜します、急いで近くの物に捕まって下さーい!」

 

エステバリス格納庫はエステバリスの整備の関係上で向こう側で手動にて重力制御のオンオフや運搬を楽にするために出力制御が出来るようになっているんですよね、こちらから強制的にアクセス出来るようにしてしまうと無重力で運搬中に重力制御をONにしてしまうと事故の原因になってしまうので格納庫に関しては自動制御のプログラムをアップデートするしかありません

 

一方連絡を受けたエステバリスの格納庫にてその不完全な重力制御を受けて床ではなく壁方向に重力が傾いていた、艦内は戦闘により激しく振動することも想定されているためエステバリスや棚などは固定されているが普段から重力制御の恩恵を受けて固定していない物が全て艦の傾きに合わせて滑り出していた

 

「言うのが遅いぞー!、ってリョーコちゃん大丈夫!?」

 

「きゃぁぁぁ、嫌だ…掴まる場所が」

 

「ぬぉぉ、テンカワ俺は今大事なものを持っていて手が放せん、後は頼んだぜ」

 

隣で同じように支柱に捕まっているガイは片手で体制を整えるのに必死で助けるのは無理そうだった、前回同じ事が起きた時は固定されている自販機にリョーコちゃん達としがみ付いていたが今回は位置が悪かったのか傾斜する床に合わせてリョーコちゃんが滑り落ちて来たので片手を伸ばして助けに入る

 

「いよっと、大丈夫?」

 

落ちてきた途中で受け止め片手で引き寄せる

 

「あっ、ああ、・・・ありがとう、テンカワって意外とムキムキで筋肉質なんだな」

 

「毎日食堂で重い中華鍋を振ってるからね、厨房の人員が女の子な事もあってチキンライスやチャーハンなんかの炒め物は全部俺が作ってるんだ、最近は特に注文が多くて一日中鍋を振ってるせいで腕の筋肉が余計に付いてきててね」

 

これは食堂のホウメイガールズと呼ばれる女の子達に囲まれれるアキトにクルーの一部が嫉妬しての事であったが当の本人は気づいていなかった、逆に筋肉が付いた事で頼りになる力持ちということで更に囲まれる事になっているのは皮肉である

 

暫くして射角が取れたのか軽く振動して傾斜が止まったが、その瞬間今は壁と言っていいほど傾いた床からまた悲鳴が二つ響いた、上を見上げると今度はヒカルとイズミさんが滑り落ちてきた

 

「なにぃ!?…ぐっ」

 

進行上に片手でリョーコちゃんを抱えたままの俺が居るため必然的に掴まれてしまう

 

「ふぅ、止まった、ごめんねぇ~自販機を掴んでたんだけど不安定な姿勢だったから振動で手が滑っちゃって」

 

「って流石に三人は支えられないだろ、テンカワ大丈夫か!?」

 

「転んでしまって口論、転ぶだけに…ククク」

 

リョーコちゃんが心配してくれてるけどこのくらいなら全然問題無い、でも何で近くに居るガイの方に行かなかったんだろ

 

「いや、大丈夫だけどせめてどっちか一人はガイを掴んでほしかったな」

 

「山田さんはねぇ、持ってるゲキガンガーを離してまで受け止めてくれそうに無かったし」

 

「受け止めたらウケを取れる…ウケを取れないなら止められない、ククク」

 

「いや、それは流石に…」

 

そう言って隣を見ると大切にゲキガンガーの人形を抱きしめて滑り落ちないよう必死に捕まっているガイの姿を見て、大きなため息が出たのは仕方がないと思う

 

一方ブリッジでは地上に設置されていた敵移動母艦であるチューリップにグラビティブラストを撃ちその周囲に展開していた敵の小型無人機ごと纏めて消し飛ばしたのを確認していた

 

「敵影殲滅、周囲30km圏内木星トカゲの反応無し」

 

地上の第二陣を消滅させたナデシコは通常運行に戻り遂に目的地である火星へと降り立った

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

火星に到着したナデシコではスキャパレリプロジェクトの目的である火星に取り残された人と資源の探索の為に作戦会議が行われた

 

会議室にてブリーフィングが始まり経験があり軍人でもあるフクベ提督を中心として会議が進行していく

 

「それではこれより地上班を編成し、揚陸艇ヒナギクで地上に降りる」

 

「しかし何処へ向かいますか?軌道上から確認した限り無事なコロニーは見当たりませんが」

 

ジュンがそう言って軌道上から撮られた各コロニーを表示させると何処のコロニーも襲撃を受けており一目で見ても壊滅状態であった、特に大気圏から落ちたチューリップが直撃したユートピアコロニーは地表にあった施設は壊滅どころかほぼ消滅しており絶望的に見える、しかしこんな状態でも地下施設は一部無事であり生き延びた人々が生活していたのだ。だが、いや…だからこそ今回は…

 

色々な思いが駆け巡る中で会議は進んでいく

 

「先ずはオリンポス山にあるわが社の研究所へ向かいます、あそこは一種のシェルターにもなっておりましてこの状況下では一番生存確率が高いものですから」

 

「それでは地上班メンバーを決める、研究所の探索班として私とプロスペクター、スバル・リョーコ、アマノ・ヒカル念のため護衛としてテンカワのエステバリスを重機動フレームにて随行、またナデシコの直掩として山田二郎、マキ・イズミ両名は艦内で警戒態勢で待機」

 

「だから俺の名はダイゴウジ・ガイだ」

 

何時も恒例のやり取りになりつつあるガイの叫びを聞きながら

 

(アキトさん、良かったのですか?)

 

(ああ、いいんだこれで…先に決めていた事だ、俺が無理をして行かなければ彼らも無事なはずだ…だからこれでいいんだ)

 

(分かりました、ただアキトさんの思ったような事にはならないと思います)

 

(ああ、未来が変わってしまうけど、それでも…)

 

(いえ、そういう意味ではないのですが…会われてからの方が分かりやすいかもしれません、それではお気をつけて)

 

ナデシコの底面に搭載されている揚陸艇ヒナギクのドッキングが解除され研究所へ向かう、そして装甲が強化され大型のミサイルポッドによる大量の誘導ミサイルと大口径のカノン砲を装備させ砲撃戦に特化させた地上用の重機動フレームに換装されたテンカワ機が射出され脚部に装備されているローラーを回転させてヒナギクを追いかけて行った

 

「さて、敵に襲撃され各所破壊された形跡はありますが電力は残っているようですな」

 

ネルガルの研究所へたどり着きプロスペクターさんの社員IDを入り口の扉にかざすと自動扉が動き開いた、前に出たゴートの後に続きリョーコとヒカルが付いていき最後尾に武器を持ったアキトが居た

 

「俺はコックなのに何で捜索に連れて来られてるんですか?」

 

「レーダーに敵の反応は無かった、考えられるのは待機状態で停止している状態からこちらを確認して起動してからの奇襲だ、例え銃が撃てなかったとしても捜索に人手は多い方がいい」

 

「一応訓練でやってたけどテンカワもそこそこ的に当ててたから大丈夫だろ、それにしても人気が無いな」

 

「あちこち埃が被ってるねぇ」

 

「もう逃げ出したんじゃないの?見た感じ上層は損傷が激しかったし、壊されていない部分がこの様子ならまだ近くのコロニーの地下シェルターの方が可能性は高いと思うぜ」

 

一階にあるオフィスルームのような場所で捜索を続けるがそこには急いで書類等を持ち去った形跡があり必要な物以外は散乱していた

 

「そもそもネルガルはこんなところで何を研究していたんですか?、コロニーからだいぶ離れていますけど」

 

「ナデシコです」

 

「「「はい!?」」」

 

その声にゴート以外の全員が驚き振り向くと笑顔のプロスペクターが居た

 

「ご覧になりますか?、ナデシコの始まりを」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

それから案内されたのは秘密区画にある昇降エレベーターだった

 

「結構下がるな」

 

「こんな秘密区画があるなんて」

 

「何でナデシコが火星で研究を、地球で開発された訳じゃないんですか?」

 

「説明するにも現物を見て頂いた方が早いですからね、さっ、着きましたよ」

 

エステバリスでも余裕で入れそうな巨大な扉が開きプロスペクターさんに案内される

 

「そうですねぇ、火星に入植して10年ということですから今から30年くらい前になりますか、これが発見されたのは」

 

そこには木星トカゲが使っているボロボロになった古い無人艦があった、よく見ると相転移エンジンのブロックが取り外されている、この発見された無人艦にリバースエンジニアリングを行い得られた技術からナデシコは作られたんだ

 

「まさかナデシコは木星トカゲの技術を使って作られていたのか…」

 

「敵の技術を使う話は良くあるけど30年も前からあったなんて、私まだ生まれてないよぅ」

 

そうだ、だからこそナデシコ単機では奴らに勝つことは出来ない、そもそもこの時まだ俺たちは勘違いしていたんだ敵との戦力差を…

 

「説明しましょう!」

 

「うわぁぁぁぁ」「ひえぇぇぇ」

 

突然響いた声に叫び声を上げながら俺にしがみ付くリョーコちゃんとヒカルちゃん、だが俺はこの声を知っていた、でも何でここに

 

「皆さん銃を下してください、大丈夫です彼女は我が社の社員です、どうもお久しぶりですイネスさん、こちらにおられたのですね」

 

「ええ、襲撃された時にここの地下にある機密区画をシェルターにしていたの、あちこちのコロニーから生き延びた人が避難して来ているわよ」

 

奥を見ると無人艦を解析する施設を居住区にして生活している様子が見て取れた、積まれている物資も恐らく近くのコロニーから搔き集めたのだろう

 

「それじゃあ名乗らせて貰うわ、ネルガル技術部門に勤めているイネス・フレサンジュよ、相転移エンジンの解析及びディストーションフィールド等を研究していた技術者の一人で『私が』あなた達が乗っているナデシコの基本設計を作り地球に送りました」

 

「という事です、はい、それでは皆様ナデシコに避難を…」

 

「ちょっと待って、プロスペクター貴方この後どうするつもりなの?それによってこちらの対応も変わってくるわ」

 

「この後はこのまま火星に残った資源の奪還を予定しております」

 

「無理よ、戦力が違いすぎるわ、最新鋭の戦艦とは言えナデシコ一艦で何が出来るというの、このまま地球への帰還すら難しい状況なのに奪還なんて不可能よ、そんな認識なら私達はこのままシェルターに残らせて貰うわ」

 

今までは無茶を押し通してこれたがその事が逆効果になるなんてあの時は分からなかったんだ、敵の正体もその戦力すら知らずに俺たちは戦いの中に飛び込んでしまった

 

「お言葉だがレディ、我々は木星トカゲとの戦闘には常に勝利してきた」

 

「そうだよ、私達はナデシコで衛星軌道の艦隊を撃破してやってきたんだよ、プンプン」

 

その様子に火星で現実を見てきたイネスはため息を吐きながら説明を始める

 

「はぁ~、いいこと、あなた達に木星トカゲの何が分かるの!?、あれだけ高度な無人兵器がどうして作られたか、目的は?、火星を占拠した理由は?」

 

険悪な雰囲気になりかけていたその時プロスペクターさんが指針を示した

 

「まあまあ、ここで議論していても詮無き事ですので、地球へ帰還するにしても艦長の意見も聞かねばなりませんしひとまずナデシコへ乗船していただけると助かるのですが…」

 

「一応ネルガルとしての言質を取っておきたいわね、もし木星トカゲに敵わないと分かったら即座に地球へ撤退するように・・・っと」

 

「どの道資源の回収が困難となりましたら地球へ帰還する以外ないのでよろしいかと、ハイ」

 

「その言葉忘れないでよ?、『みんな避難したい人は荷物を纏めて彼らが乗ってきた揚陸艇に乗船して、どの道このままじゃ物資が枯渇するから判断は各自に任せるわ』、それじゃ行きましょうか」

 

それを聞いた人々が避難する為に動き始める、ネルガルの社員はともかくコロニーの住民も一緒で一年以上という長く続く避難生活は彼らのメンタルを削っており脱出が難しいと聞いてもなおナデシコに乗ることを選んだようだ、最悪強引にチューリップへ突入してナデシコを地球へボソンジャンプさせることを考えないといけないか…

 

「さて、じゃあ私は約束があるから彼のエステバリスに乗せてもらうわよ」

 

「約束?火星でテンカワさんと会われていたのですか?」

 

「ええ、デートの約束をしていたのよ」

 

「「「デートぉ!?」」」

 

なんだって!?!?!?いやあれは確か小さい時に話した事のはず、という事は今のイネスさんは記憶喪失では無く記憶がある?思考の渦に飲まれそうになった時にリョーコちゃんに襟首を掴まれ揺さぶられた

 

「おい、デートってどういう事だ、そもそも火星は木星トカゲに占領されてるだろ」

 

「おや?、イネスさんはわが社の社員ですのでテンカワさんとは面識が無いはずですが・・・」

 

周りから言われて考える、もしかして本当に記憶が?

 

「待ってくれ!もしかしてそれって、これくらい小さい頃の話じゃないか?」

 

そう言って腰の高さに手を当てると正解というように頷き俺に微笑むと答え合わせをしてくれた

 

「ええそうよ、よく覚えて居たわね」

 

その言葉に何故か安心した表情のリョーコちゃん達が反応する

 

「なんだ、小さい頃の話か」

 

「なるほど昔の話でしたか」

 

疑問に思っていた二人が納得した様子で、その後避難する人々の誘導を始めた

 

「まあ真面目な話をするとナデシコは私が研究と実験を行い基礎設計したからある程度は分かるけどエステバリスは書類で見ただけ、一度は実際に乗って違いを確認しておきたいのよ、研究者の(さが)ね」

 

その言葉に納得したのかゴートが新しく指示を行う

 

「避難民の収容は2往復で完了する、それまでテンカワはヒナギクの護衛に当たれ、その間に敵が確認された場合はナデシコの直掩として待機している山田及びイズミを迎撃に出す」

 

「「「了解」」」

 

やる事が決まれば基本的には能力に関しては優秀と言われるナデシコクルーは行動に移る、プロスペクターとゴートさんは避難民に指示を出しリョーコちゃんは揚陸艇ヒナギクからナデシコに現状報告と受け入れの準備を連絡するために通信を行っている、その間ヒカルちゃんはヒナギクの背面にある貨物ハッチを開けて避難民の搭乗準備をしていた

 

皆が移送準備をその間俺はヒナギクの横に待機させていたエステバリスのコクピットを開けて乗り込み、シートに座って右手をIFSのコンソールに乗せると人影が飛び込んで来た

 

「イネスさん!?危ないですよ!」

 

「この方が無駄が無いでしょう?、さぁ行きましょう」

 

「相変わらずだなぁ、『テンカワ機準備完了、これよりヒナギクの直掩に入ります』」

 

報告の後、コクピットのハッチを閉めると突然イネスさんが抱き着いてきた

 

「お兄ちゃん!」

 

「え?イネスさん!?」

 

やっぱり記憶が残ってる!!この時期のイネスさんは一年ほど前の俺のボソンジャンプに巻き込まれた影響で記憶喪失になって火星の砂漠に取り残されていた所をネルガルに救助されていたハズなのに…

 

「ちゃんと覚えているわよ種も仕掛けもあるけど、これから私との出会いは貴方が知っている時よりも変わっていくでしょうね」

 

何故だか分からないが記憶が残っているなら伝えておかなければいけない

 

「アイちゃんあの時助けられなくてごめんね」

 

あの頃はゲキガンガーの主人公達のように助けたくて頑張ったけれど現実はそう甘くは無かった、それでも…

ヒナギクに乗り込む避難民を見ながら思い悩んでいるとウィンドウが開いた

 

「初めまして、ナデシコオペレーターのホシノ・ルリです、今は私がナデシコのシステムを全て掌握しているためこの通信も記録に残りません、ちなみにエステバリスのコクピットブロックであるアサルトピットは搭乗者に最適化されていく為、常にデータが取られているので私が居ない時の会話には注意して下さい。」

 

「あら、貴方がルリちゃんね、それにしても勝利の女神に対して随分な物言いね」

 

「「勝利の女神?」ですか?」

 

意味が分からずウィンドウに表示されているルリちゃんと一緒に聞き返す

 

「今の貴方は知らないと思うけど私は未来で『お姉ちゃんとお兄ちゃん』に会って話をした思い出があるのよ、つまり私をその時まで守る事が出来たらそこまでの事象は確定するわ」

 

何でもう未来が変わっているんだ!?、もしかして俺がユートピアコロニーに行かなかったから…いや、それなら避難民の人達がここに居る理由が変わってしまうはずでそもそもネルガルの施設に避難誘導したのはイネスさんのハズだからもし俺がそのままの選択を選んでしまっていたらユートピアコロニーに行っても誰にも会わなかったから・・・

 

「だからまた私を守ってね、お兄ちゃん」

 

悩んでいると立て続けにイネスさんから話を続けられたがその間に外ではヒナギクがナデシコまでたどり着き避難民の収容を始めている、話を聞きながらでもエステバリスは動かせるから問題無いがコクピットの中では新しい問題が起きていた

 

「イネスさん、貴方は本来、記憶喪失になるハズでしたから今回記憶が残っているからと言って未来が確定する事は無いですよ?、そもそも決まった未来なんてありません、コペンハーゲン解釈と同じように今を選び続けた先に未来があるのですから」

 

「あら、本当に『別の未来』の記憶があるのね、ただそれでも未来を収束はさせられる点は変わらないハズだから余計に私が大切になるのでは無くて?、流石に私にとっては昔の事で記憶が曖昧だけど貴方もちゃんと遺跡に居たわよ」

 

「いえ、そもそも今はかなり特殊な道を進んで居ますので未来は変えられます、今のイネスさんが私の事を覚えているなら恐らく近い確率で訪れる可能性がある別の未来の事です」

 

二人の会話に凄まじい圧力を感じて思わず逃げるように話題を変えて今後長い付き合いとなるナデシコクルーについての話をするが結局話は続いて俺は無言でエステバリスの操縦に集中することになりヒナギクの護衛を何事も無く終えた、重機動フレームはミサイル等の重武装が多く弾薬も使っておらず満載で重いためクレーンでナデシコに釣り上げられていく

 

「それでも私はナデシコの設計者よ、これから先の戦いでは必要では無くて?」

 

「話をずらさないで下さい、不確定性原理によりそもそも未来は決まってないと認めたのはイネスさんです、記憶を使って誘導しようとしているようにしか思えませんよ」

 

これからユリカに火星からの退却を説得しないといけないのに二人の言い争いはまだ続いて気が重い、この時のユリカは最新鋭の戦艦なら何とかなると思っているが数が違いすぎてどうにもならないんだよなぁ

 

「はぁ~」

 

「あら、ちょっと脱線しちゃったわね、ごめんなさい」

「少し熱くなりました、すみません」

 

ついため息が出たら二人とも話を止めてしまった

 

「ああ、いや二人じゃ無くてこの後の事を考えてね」

 

「あら、ナデシコの艦長は融通が効かないタイプじゃなかったハズだけど・・・」

 

「いえ、現時点でのユリカさんはまだ負けを知らないので説得は難しいと思います」

 

「ああ、今のユリカは無敵の最新鋭戦艦だから何とかなると考えているから」

 

「それはそれは、説明しがいがあるわね、まあ最悪でも隠し玉があるから大丈夫よ、本来なら乗らない選択しか考えられないナデシコに乗ったのはその為だもの」

 

ウィンドウに表示されているルリが少し考える仕草をして答える

 

「イネスさん、やはり貴方はあの人に…」

 

「どうもルリちゃんとのズレがあるから私は子供だったし記憶が曖昧なのもあって全てを話してくれているわけでは無いでしょうけどね、まっそれは追々ね」

 

エステバリスを格納庫へ収容してコックピットから出るとウリバタケさんが待機していた

 

「おう、お疲れ…っておいおい金髪美人のねーちゃんが何でお前と一緒に乗ってるんだ!?なぜ貴様ばっかり!!」

 

アキトの胸倉を掴み揺さぶるウリバタケに答えが説明される

 

「それは私がネルガル重工の研究及び開発担当だからよ、直接関わって無かったエステバリスを直に見せて貰っていたけど貴方は腕の良いメカニックのようね数値上のスペックがちゃんと出ていたから初めての兵器なのに整備マニュアルをよく理解しているようね、まあ今ここで説明しても二度手間になるから詳しくは後で話すわ」

 

言いたいことを言ったイネスさんはそのままブリッジへ一人で向かっていった

 

「何者だぁ、あの女」

 

「ネルガル本社の人みたいです、ここでナデシコの設計をしていたって聞きました」

 

「ここって、火星でか?何でそんな…」

 

「昔に相転移エンジンが発見されたのが火星(ここ)だったからで、ネルガル支社でナデシコの設計をやっていたそうです」

 

「相転移エンジンが発見(・・)されただと!!、じゃあいきなり技術的特異点が出てきたのはそういう事か」

 

ウリバタケさんに火星で見つかった相転移エンジンの話をすると腕を組み納得顔で今までの謎が解けたかのように首を振っている、暫くすると思考が纏まったのか頭を搔きながら説明してくれた

 

「つまりどうやって動いてるか分からねぇ相転移エンジンは誰が作ったかも分からない拾い物だったってことか…どうりでMITのデータベースに基礎理論すら無いはずだぜ」

 

技術に関して常に最先端を追いかけ続けているウリバタケさんには、このナデシコの異常な性能について思うところがあったのだろう

 

「まあ、その辺はネルガル重工の秘密に関わってくる話だと思います」

 

「異星人の技術をリバースエンジニアリングしているってことか、やれやれ面倒な事になっちまったな」

 

大企業ではあるが民間企業であるはずのネルガルがどうして民間の戦艦という物を作り軍と対等に話せるのかの理由を導き出し珍しくウリバタケさんは天井を見つめ、ため息をついた

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その後ブリッジにてクルーの皆が集まりイネスさんとの話し合いが始まった

 

「さて、改めて自己紹介をさせてもらうわね、ネルガル重工所属のイネス・フレサンジュこの船の設計者であり相転移エンジンやディストーションフィールドの開発者の一人よ」

 

「私が艦長のミスマル・ユリカです、私達が来たからにはもう安心安全、火星から木星トカゲも追い返しちゃって万々歳ですよ!」

 

ユリカが和ませるつもりなのか指をVの形にしてイネスさんに見せつけていた、だがそんな雰囲気では無いイネスさんは眉をひそめて容赦なくユリカに詰め寄る

 

「呆れた艦長ね、敵はまだまだ沢山居るのよたった一隻の戦艦で何が出来るというの?今のうちにさっさと地球へ帰らないと火星圏からの離脱すらままならない事になるわ、いいこと?私たちはこの艦ごと一緒に沈められて火星の土になるつもりは無いの、土壌改良の仕事は自己増殖型ナノマシンで間に合っているわよ」

 

「ナデシコは最新鋭の戦艦で私達はこれまで何度も敵を退けてきました、奪われた火星資源奪還のために最善を尽くします」

 

「現実の敵はゲームのように動いてはくれないわよ、敵にやられそうになってから後悔しても遅いということが貴方には説明しても無駄のようね、ミスマル艦長、誰でも英雄になれるものじゃないのよ」

 

(少し私達が頑張り過ぎたようですね、ユリカさんが前より歯止めがかからなくなってしまいました)

 

話を聞いているとルリちゃんから量子通信による会話が入った、良くも悪くもナデシコは取り敢えずやってみようという心意気があるがそれが悪い方向に進んでしまっていた

 

(出来るだけサポートしていくしかないか、敵の戦力を把握出来れば流石にユリカも無茶はしなくなる…はずだ)

 

例え未来を知っていても断言が出来ない話をしているとナデシコに警報が鳴り響いたら各クルーに連絡が伝わる

 

「敵襲、レーダーに感あり、、大型戦艦5、小型戦艦30」

 

「撤退よ!、早く火星から離脱を!」

 

イネスさんが叫ぶように撤退するように促すがまだ敵の戦力を知らないユリカは迎撃行動に移った

 

「大丈夫です、グラビティブラストフルパワー、スタンバイ!」

 

「フルパワー了解」

 

「グラビティブラスト、エネルギーチャージ完了」

 

「敵艦隊に向けて、てー!!」

 

艦首より放たれたグラビティブラストの光が敵艦を纏めて巻き込んでいく、だが次の瞬間無傷の艦隊が姿を現した

 

「嘘ぉ!?、ちょっと効いていてないわよ!」

 

「グラビティブラストを持ちこたえた!?」

 

「当然よ!、敵もディストーションフィールドを使っているの、大型艦5隻を先鋒に密集して配置することで5隻分のフィールドエネルギーで持ちこたえたのね、これでお互い一撃必殺とはいかないわよ」

 

「大型艦を中心に敵艦展開、こちらの攻撃が無効化されました、更に40km前方のチューリップより敵艦が続々増加中」

 

戸惑っている間に事態は最悪の方向に進み続けていた

 

「ち、ちょっと何あれ、なんであんなに入ってるのぉ~!?」

 

ブリッジのモニターに映し出されたチューリップからその大きさからどう見ても不釣り合いな量の敵戦艦が出ていた、二隻、三隻とチューリップの裂け目から出てくる

 

「貴方たちはアレを敵の移動基地と思っていたようね、入ってるんじゃないの出てくるのよ、途切れることなく別の宇宙から送り込まれて来ている、だから言ったでしょ戦艦一隻で何が出来るのって」

 

パニックになりかけていたブリッジに元軍人であるゴートが行動を起こすように促す

 

「こちらがそうであるように敵のフィールドも無敵では無い、連続攻撃が有効だ」

 

「あっはい、続けてグラビティブラスト発射準備」

 

「連続はちょっと、無理よ」

 

「えっ?」

 

「グラビティブラスト再チャージまで12分かかります」

 

「ここは真空の宇宙じゃないのよ地上だと相転移エンジンの反応が悪すぎるの、チャージには時間がかかるわ、試作艦故の改善点ね、次の実戦用二号艦には空いているスペースに地上でも二射目が可能な大容量キャパシタを搭載しましょうか、最も生き残れたらの話だけど」

 

一方これだけの物量にエステバリス隊では

 

「かぁ~燃えてきたー!!俺様がエステバリスで時間を稼いでる間にナデシコが退却、そしてナデシコを守り華々しく散る求めていたシチュエーションだぁ!」

 

「私達が出てもひき肉にされちゃうよね」

 

「どうする、艦長!?」

 

いきなりの事態急変で最初は余裕があったユリカの顔に陰りが見え貴重な時間だけが過ぎていく

 

「先陣の敵艦隊が本艦の上方に回り込みつつあります、後方チューリップよりまだ敵艦が出現しつつあり」

 

「艦長には荷が重いようですなぁ、フクベ提督ここは」

 

「そうだな、ここは・・・」

 

「エステバリスでなるべく敵艦隊をかく乱しつつナデシコを逃がすしか…」

 

フクベ提督が作戦案を出す前に俺がそう言った途端、ユリカが大声で命令を下した

 

「エステバリス隊の発進は許可しません、ディストーションフィールド展開、そのまま全速で後退、距離を取りつつミサイルにて反撃を、その後山間部の谷に沿って後退、現空域より離脱します」

 

「ごめーん、避難民の収容で着陸したから離陸にはちょっと時間がかかるのよ」

 

「ティストーションフィールド展開を最優先で、ミナトさん離陸を急いで下さい」

 

「了解、超特急で急ぐわよ」

 

「ディストーションフィールド展開完了、敵大型艦から重力波反応確認、攻撃来ます」

 

敵艦から一斉にグラビティブラストによる砲撃がナデシコに当たり重力制御されているブリッジを振動が襲った

 

「ディストーションフィールド出力低下、左舷エンジンブロックに被弾を確認、相転移エンジン出力低下、補助スラスターで姿勢制御します」

 

「被害報告!、…メカニック班は現空域より離脱後に応急処置をお願いします」

 

ユリカが突然逃げ一辺倒になり艦長として指示を始めているが顔色は優れていなかった

 

(艦長はアキトさんが死ぬことを想像してしまったようですね、前回と同じようにこちらへの損傷を確認したことで無人艦の攻撃が乱雑になっています、彼らは遺跡への誘導を試みるでしょうがイネスさんからプランBを説明されたのでそちらに移行します)

 

ユリカの顔色を心配して見ていたら唐突に知らない話をされ、緊迫した状況にもかかわらず呟いてしまった

 

「プランB?」

 

「そんな都合がいいプランがあったらいいな」

 

リョーコちゃんにそう返され逃げる事しか出来ないナデシコでこれからどうするか悩む事になった




この話で普通に敵の主砲避けるアキトという、この後凄腕のパイロットになる片鱗が見えるんですよね、アキトはこの時点ですでにPTSDでメンタルボロボロなのに気合だけでパイロットをやっていたという

しかし原作での火星到着した時の話、今のご時世に放送されるとSNSで論争が勃発するだろうなぁ
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