「……もはやこれまで…か…」

ここまで長いようで短かった。総統の演説を聞き、誰よりも早く党に入党し、黄金ナチ党員バッジを授与され、国防軍に移籍。ミュンヘン一揆にも、長いナイフの夜事件にも、総統に付き従ったがもはやここまで。

「っ…ハイルヒt」

言い終える間もなく弾薬庫が爆散。乗機は擱座した


1944年
ドイツ第三帝国軍は東部戦線各地で撤退を続けていた。
絶対的な実力で敵を粉砕し、不可能と思われた戦いを勝利に変え、圧倒的豪運により敵の砲弾を跳ね返す。そのことから「装甲のジャンヌダルク」と呼ばれた彼女もまた、赤い波に抗うことは出来なかった。

バグラチオン作戦にて、彼女は撤退する友軍部隊の殿を担当。最初に試作型のティーガー2を受領し、戦い続けた。正面の赤い波に砲弾を撃ち込み、生温い傾斜装甲のT-34を砕く中、周りの友軍ティーガーが1両また1両とやられる。確かに恐怖はあった。まるでエンジントラブルで急に止まる車両の様に、今すぐにでも両手を高らかに掲げて波に体を任せたかった。しかし、それ以上に祖国を護らねばという使命感という名の燃料が勇気を湧かせるエンジンを動かしつづけていた。

まあ結局のところ、使命感だけで戦争に勝てるなら死人は誰も出ないはずだが。

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