死んだ装甲兵は忘れし神々の夢を見るか   作:てきだんへー

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早朝……

「今日はエデン条約調印の日か……」

結局あの後、一切の和解も話もを することなく数日が過ぎてエデン条約調印式当日となった。

この機会だ。せっかくなら電話をかけてみるかと思い立ち、電話を掛けた……が、どうやら誰かと電話中のようで通信が切られる。

「……呼び出して話すか」

レト達にある場所に来るよう連絡した。既読が4個着く。

来るかは分からないが、待機しておくことにする。

_______________
3時間後……
レトside

「大隊長出ないな……」

「今日は調印式だし、流石に不仲のままなのは印象的にも……」

レトとヨナタが話す。
トウカは依然黙りこくったままだが、ずっと携帯を確認して、どこか焦りを隠しているようにも見えた

「…トウカ、大隊長から連絡だ」

指定された場所はとある裏路地だった。
話せるなら何でもいいやとも思いつつ、裏路地ということで最大限の警戒とできる準備をしてから指定場所に赴く。

戦車のキャタピラ音とエンジン音が純白なイメージを持つトリニティに相容れぬ黒へ響く。

「………ここってさ」

着いた後、トウカが口を開く。
奇しくも彼女達の戦車はチハルが乗ってきた戦車で、立場は前回と酷く逆だった。

「はは……元気か……?」

そこにはボロボロになったチハルがゴミ箱から足を外に出す感じで嵌まって抜け出せなくなっていた

「どうしたのチハルさん」

「ちょっと不良に絡まれちゃってね……」

「助けて欲しいから呼んだって訳?」

「いいや、不良に絡まれたのは予想外の出来事。」

そこまで言うとチハルは辺りを見回せと言わんばかりの表情でトウカ達を見つめる

「覚えてる?ここってさ、トウカ達が初めて第七戦車小隊に入った所だよ。今はスケバン共の巣窟になってるとは思わなかったけど…ここは私にとって思い入れの深い場所なんだ」

「……とりあえず助けるから」

トウカがチハルをお姫様抱っこし、ゴミ箱から外に出す

「チハル大隊長、なんで呼んだの?」

「言いたいことがあったからだよ。」

「?」

レトやエル トウカにヨナタの頭に?が浮かぶ

「申し訳なかった。スケバンからここまで誇れる人間にしたのは私だとか、事前に調べることもせずに早とちりでカイザーの傘下に参加しようだとか」

「……その言葉が聞けてよかった。あの後、いつもの依頼をこなすために兵を率いようとしても統率力はあるけど的確な指示を出せないから無駄に被害を被ったりとかで、私らがどれだけチハルさんに支えられてるか知った。」

「……」

トウカが話す間、辺りが静寂に包まれる。

「大隊長……ごめん……」

レトがチハルを抱擁しながら話す。
皆で互いを抱擁しあった。チハルが居なくて困ったこと みんなが居なくて困ったこと。
全てを吐き出しながら互いを抱き合った。

「今日はエデン条約調印の日だ。終われば私がなんとかする。だから……皆の力私に貸してほしい!」

いっぱい抱きしめ合った後、チハルは頭を下げて全員に頼んだ。が、帰ってきたのは思いもよらない言葉だった。

「力を貸すも何も、私らは仲間で、先生はキヴォトスの未来でしょ?私らがどれだけの不利益を被るかは分からないけど、先生の身に万一のことがあることも考えて皆で必ず成功させるんだ。エデン条約。」

ヨナタのその言葉で、全員の意志は固まった。
トウカが操る戦車にキヴォトス有数の精鋭戦車兵が乗り込む。

「「大隊長、指揮を!」」

エルとレトの一言と共にチハルは作戦を軽く練り始める。

「とりあえず部隊を結集させて、対空砲とレーダーを展開するんだ。ヘリからの攻撃に備えつつ、式典会場に近ければ友軍が展開してるから、戦車はある程度式典場から離れて機動的な攻撃ができるようにする」

「了解」

エルが無線通信を始める。
それの傍ら部隊結集ポイントを式典会場近くの広場に指定し、全軍をそこに運ぶ。
全ての車両をそこに停め、大隊長である私と参謀であるトウカ(今決めた)を式典会場に派遣し、レトとエルに指揮権限を委託、参謀はヨナタに任せて先生及びトリニティのティーパーティとゲヘナの風紀委員会に挨拶しに向かう


和解

「トウカ、1両だけ持っていく。あとは新隊員を連れていく」

 

「いいんですか?」

 

「あぁ、新隊員だし、ある程度は経験を積ませて置いた方がいい」

 

「分かりました。おい!ナツメ、サダミ、ココロ! !着いてこい!」

 

拡声器を通して3人を呼ぶと、全員を戦車に載せて調印会場である"通功の古聖堂"に向かっていた。

 

「だ、大隊長!参謀殿!目の前にゲヘナの検問が!」

 

ナツメがそう私達に伝える。その額には汗が浮かんでおり、残り2人もまるで緊張の度合いを表すかのように顔持ちは険しくなっていた。

 

「トウカ、揉め事は起こしたくないが、万一の場合は……わかってるな?」

 

「えぇ、勿論。」

 

ハッチから顔を出しながら検問所へと近づく。

近づけば近づくほど警告射撃や拡声器による帰還命令を下されるが、そんなものは意に介さない。

 

「我々は第7機甲大隊だ!先生専属の部隊として周辺に展開する故、その際の挨拶に来ただけだ!」

 

「こんな所に機甲大隊?来るわけが無いだろう!そもそも奴らはカイザーハントで忙しいはずだ!」

 

「はぁ…」

 

どうやら説得は失敗したようだ。情報も古く、頭の固い連中だこと。

 

「トウカ、アクセルを思い切り踏め、ココロ、砲弾を片手に。ナツメ、機関銃の用意を。サダミ、装填手の援護を。」

 

「「「りょ、了解!」」」

 

戦車の速度が一気に跳ね上がる。

風紀委員も一向に止まる気配のない戦車にとうとう8.8cmを取り出して射撃準備を整える

 

「小賢しい!撃て!」

 

その掛け声と共にチハルは発射ボタンを押し込んで虎をその鉄に噛みつかせる。

 

「う、撃ってきたぞ!」

 

「委員長は!?一体どこに!?」

 

「い、イオリ先輩でもいい!早く!」

 

風紀委員が混乱する。

訓練されているのでは?と車内に疑問が浮かんだが、誰1人口にすることなく敵中突破を計る

 

「た、退避!退避!」

 

「きゃぁぁぁぁ!!」

 

垂直装甲を輝かせた猛虎が風紀委員会のバリケードをベキバキと粉砕しながら直進する

 

「ふぅぅぅ!!!トウカ最高だぜあんた!」

 

「最高っすねチハルさん!」

 

その後も3個程の防衛ラインが出来ていたが、全て突破した。

 

________________

 

「あれが調印会場か……」

 

砲塔後方に第七機甲大隊を表す鉤十字の端を鷲が咥えたような旗を掲げる。

そんな時だった

 

「きぇぇぇぇえええええ!!!!」

 

「今日は忙しいの。手早く終わらせるわよ」

 

まさかのトリニティの戦略兵器とゲヘナの最強が姿を同時に表す。

 

「出迎えと信じたいですが……」

 

「な訳ないだろう……あんな敵意丸出しで私らの旗が見えてないような連中なんだから」

 

「それ以上進むなら痛い目を見ることになる。今すぐに止まりなさい」

 

戦車は徐々に……なんて言葉では形容できない程の速度でスピードを落とす。

 

「ここから入れる保険ってあるのかな?」

 

「はは、おい新人共。下車しろ」

 

トウカの言葉に乾いた笑いを飛ばしながら絶望する。

 

「………確かにそうですね」

 

ナツメ達も同調して全員がハッチから出ようとする。

 

そして運転席からトウカ達が降りて、天板ハッチからココロが降りると同時に動きを止めながら叫ぶ。

 

「大隊長、なんで旗を掲げてるのに私達が狙われているのか見当がつきませんか?」

 

「?」

 

「あの、いいからこれを見てください。」

 

天板からの脱出後、掲げた旗を指さすココロ。

 

「至って普通………」

 

チハルも言葉を失う。トウカ達も振り返ると言葉を失う。

 

「あのさ……」

 

「?」

 

空崎ヒナが困惑して固まり、トウカが口を開けたまま呆然とし、チハルは絶句する

 

「ぁっ………」

 

チハルが見たのは風に翻る赤旗。

決して第7戦車大隊の旗などでは無い。ただの赤旗。鉤十字も、鷲もどこにもなく、あるのは一面のアカ。

 

「赤〜い……」

 

そう言いながらそそくさと車内から本当の第七機甲大隊の旗を取り出し、差し替える。

 

「チハルさん。1回降りてきてよ」

 

申し訳なさげに降りると突如としてトウカに顔面を殴られる。その勢いで地面に倒れ、そのまま蹴飛ばされる。

 

"トウカ!?何してるの!?"

 

駆けつけてきた先生が私のことを介抱する。

 

「あ…先生……」

 

トウカがやらかしたという表情をする。

 

「と…トウカ洒落にならない……」

 

「はぁ…」

 

先生が駆けつけ、チハルが呻き声をあげる隣で空崎ヒナが溜息をつく。

 

ムクリとチハルが起き上がると目的の2人と会えたのでうやうやしく礼をする。

 

「剣先委員長は初めまして。空崎委員長は久しぶり。第七機甲大隊の大隊長 山本チハルだよ。こっちは参謀兼操縦士のトウカ。残りの3人は新兵。」

 

チハルがそう言う。まとめられた3人は少し不服そうだったが、それは無視してはなしをつづける。

 

"よろしく"

 

「よろしく頼むわね。」

 

「……」

 

一瞬の静寂のあと、空崎ヒナが口を開く

 

「私は聖堂に戻るから。時間には遅れないでね」

 

さっさと空崎ヒナはその場を立ち去る。

残されたのは第七機甲大隊と先生 そして兵器。

 

「……えーと…先生、噂では聞いたことがありますが、そちらの方は?」

 

「この子は剣先ツルギだよ。」

 

「よ……よろしく…」

 

「よろしく。私は第七機甲大隊の大隊長 山本チハル……ってさっきも話したね。」

 

「………」

 

一言も話さない剣先ツルギに恐怖心を覚えつつも何とかコミュニケーションを取ろうとするが、どれも空回りに終わる。

 

(気まずい〜〜〜!!!)

 

「ま、まぁ!とりあえず会場の周辺と上空は私らも見張るから、何かあれば先生のデバイスで知らせるよ。」

 

"分かった。頼りにしてるよ"

 

「えぇ。精強無比 最高の戦車部隊にお任せあれ。」

 

先生とそう話し、私達は戦車を動かして去る。

携帯で聖堂周辺を調べているとニュースで私達のことが説明されていた。

 

_________________

 

「調印会場の近くに止まる大量のクルセイダー巡航戦車やティーガー戦車、布に包まれた謎の物体!これらは一体何が目的なのか!」

 

布に包まれたのはティーガー2だ。

クルセイダー巡航戦車は有志()のスケバンや巨大ヘルメット団の力を借りて14両 ティーガー戦車は第七機甲大隊だけで6両 しかしティーガー2は4両の計24両。対空砲は2門 8.8cmはトラック積載が1両 レーダー車が1両だ。

 

このうちティーガー2とレーダー車以外はほとんど鹵獲なので実は殆どお金はかかってない。カイザーPMCよ、永遠に感謝する。

 

「あと2時間で調印式開幕か……」

 

「1時間後に部隊を移動させよう。そうすれば不測の事態にも備えられる。」

 

「そうだな…無線士!レトに伝達!これより1時間後に部隊を移動!対空部隊は調印式付近へ、戦車隊の内新鋭は外郭へ、ティーガーは調印会場付近、クルセイダーはその間に展開しておけ。」

 

「了解しました!」

 

広場駐屯隊に伝達が送られる。

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