っ…ここは…?」
何故総統が殺される夢をみたのか分からない。
吐き気がする。それは夢のせいなのか、はたまたどぎつい悪臭に包まれた牢屋にぶち込まれているからなのか。
「変な夢見たな…」
胸部を確認するが、勲章はそのままで特に何も奪われていないようだったが、抵抗できないように銃だけ持っていかれていた。
(まあ…捕虜になったにしては高待遇すぎるし良しとするか)
「あなた、所属学園は?」
突然、角の生えた白寄りの少し紫がかった髪を持つ少女が話しかけてくる
「私は学生じゃない。いや、強いて言うならバートデルツ親衛隊士官学校卒だ。」
特に隠す必要性も無さそうなので、正直に質問に答える。ここまでの好待遇を貰っておいて嘘をつくのは親衛隊としての恥だ。
「親衛隊士官学校……おかしいわね…」
「?」
顎に手を当てて何か考え事をしている。
少し気まずい雰囲気が流れる。
「士官…ってことは軍?」
「そうだよ。第1SS装甲師団 第7戦車中隊の中隊長…」
「ヒナ先輩!廃墟探検会が暴れてます!」
「はぁ…申し訳ないわ。また後で話しましょう?」
「あ、ここから出してはくれないの?」
ヒナと呼ばれた人は振り返りもせずに呼びに来た人に機関銃をもって着いて行った。
「MG42…!?」
とにかく情報が足りなさすぎる。
風紀委員というものしか知らない。これも夢なのか?それすらあやふやだった。
(とにかく近くから聞こえる話声を盗み聞きしよう)
耳を澄ませて、看守達の会話を盗み聞く。
「空崎先輩かっこいいよね!」
「ヒナ先輩のこと?わかる〜強くて頼り甲斐があるし、小さくて可愛いんだよね!」
「同級生とは思えない!」
(空崎ヒナ…日本か?)
同盟相手としてしばしば日本の人と会うことがあったので挨拶と基本的な文法は死ぬ気で覚えていたのでよく覚えている。二度としたくないランキング2位だ。
「それより、アコちゃんは頑張りすぎだと思わない?」
「天雨ちゃん…空崎さんの隣に立とうとずっと頑張ってるもん。」
(なるほど…どうやらここの世界は日本名が一般的なようだな)
何か疑われた時の日本名でも考えておこう。と、牢屋内で思考を巡らせ続ける。持てる日本語とその意味を照らし合わせながら、口に出したりして考え続けた
「田中アーデルハイト…山本アーデルハイト…吉田アーデルハイト…すごいどれも気持ち悪い…」
次は試しにアーデルハイトという名前を変えることにした。
「エーリッヒコゴロウ…エーリッヒチトセ…芸人の名前みたいだ…」
思い切ってもう全部日本名に変えることにした。
「山本チハル…とかか…」
うん、気に入った。これで行こう。アーデルハイトの名前は祖国に帰った時に思い出せばいいし。
「おい、お前ら。下校の時間だ。出ろ」
「え?」
「やったー…」
「やっと終わったー」
「帰ったらゲームしようよ!」
「いいねぇ!」
言えない家無いなんて。
正門から出て外をぶらぶらしていると、大通りに辿り着く。ボケーッとしていたが、遠くを見るとなにやら銃撃戦をしている空崎ヒナを見掛けた。
「えっと…ヒナさーん?」
「あぁ…えっと…名前は…」
「チハルでいいよー☺︎」
「ありがとう、チハル。それでどうしてここにいるの?」
「見掛けたから来てみたんだけど…迷惑だった?」
「いや、そんなことは無いけど…とりあえずもし良ければ一緒に戦ってくれる?」
「ん?」
戦えと。
銃も戦車も無しに。
しかし有無を言わせない表情でこちらを見てくる空崎ヒナに断るという選択肢は出てこなくて、問題の現場を眺める。
「えっと……今からあの大軍相手にするの?」
「手伝ってくれたら検査にかけた後そのままあの戦車をあげるわ」
「ほんと!?喜んでやるよ!」
しかし残念!
銃 が な い
「空崎さん、銃ってあったり……」
「敵から奪って」
「了解…」
パッと見60人以上はいるだろう。対してこちらは10数名。偵察情報によれば、どうやらブラックマーケットというところから流されたティーガー1戦車が暴れてるらしい。
………ティーガー戦車!?!?
「ティーゲル!!」
「待ってチハル!!」
狂ったようにティーガー戦車に駆け寄り、いつもの事のようにティーガーの天板に登り、ハッチをこじ開け中の操縦手達を引っ叩いて引っ張り出して強奪する。
「出てこいやクソガキ共!これは私のもんだ!(※違います)」
「これ私達が買ったものだぞ!やめろyがはっ…」
「ティーゲルゲット!これで私のもんだ!」
思い切り全速後退で問題児共から距離を取り、砲手席に移り装填しようとするが装填済みだったので普通にぶっぱなす
「反乱因子共が!一匹残らずあの世まで送り込んでやるから感謝してマリアの慈悲を受け入れろよ!」
3発程度撃つと引きずり出した連中は全員まとめて意識を失い倒れ込む
「空崎さん…廃墟探検会にそんなに手間取ったの?」
「いいえ…廃墟探索部の他にヘルメット団や温泉開発部が大量にいて時間がかかってるの!」
溜息をつきながら頭を抱える隣で久々の愛機と出会い、あまりの嬉しさに少し目頭に涙を浮かべる私が空崎ヒナの目に映った。
「そういえばあなた、ティーガー戦車の扱いに長けて…いや、そんな言葉じゃ形容できないほどに。」
「ありがと、だって2.3年間ずっとこいつで戦場を駆け巡ってたんだからね。」
「戦場…?」
「あぁいや、知らなくていいことだよ。」
「ふーん…そう。分かったわ。とりあえずまだまだ来るからよろしく頼むわ。」
「うん!」
空崎さんの圧倒的弾幕のお陰で殆ど撃たなかった。80発程弾薬が詰め込まれていて、12発位撃った。圧勝だった。空崎ヒナが強すぎる
「あ、そうそう。空崎さんこれ返しておくよ」
「?」
ティーガー戦車を返そうと運転席ハッチを開けて風紀委員会に渡そうとする。
「ゲヘナ学園の生徒でもない私が持ってたってあまり良いイメージを持たれないでしょ?」
「そう言って貰えるのは助かるけど、 今戦車を接収するとまた万魔殿から文句言われて予算が削られそうだから結局スクラップにするの。別にあなたが問題を起こせば倒して、その戦車をスクラップにすればいいだけだから大丈夫よ。」
「ありがと。後から「返せー!」なんて言われても返してやらないからね。……でもまあ、いつかこの恩は返すよ。」
戦車を動かし、風紀委員会達に別れを告げて宛もなくうろちょろ戦車を思う存分歩かせる。
「ティーゲル…可愛い…しこのティーゲル燃費最強過ぎないか!?今1時間走らせたのに全然燃料減ってないぞ!?」
神と総統と空崎さんへ感謝を述べながらゲヘナからヴァルキューレ自治区へと向かった