「へぇ、ここが今回の会場か」
「えぇ。この規模の箱を押さえるなんて滅多に無いわ。それこそ私と翼だから割と簡単に押さえられだと言っても過言では無いわね」*1
「しっかし、星ギャラの演出を魔術任せにするってのは最初に聞いた時驚いた」
「でも貴方は天体の再現すら可能なんでしょう?」
「ソレを得意としてるのは俺じゃなくてキリシュタリアの方なんだけど*2な・・・俺はコピーできるだけ。アイツの理想魔術なんざ基本使い物になんねぇよ」*3
「そう。まぁ?今回の私達のオーダーはこなせるんでしょう?」
「だな。アレくらいなら余裕だけど・・・・・・」
「何よ」
「いや?まさかまたお前らのライブが観れるとはなぁって」
「観たいって言ったのは貴方でしょう?」
「それもそうだ!だがノってくれた事には感謝しておこう」
「そ。その感謝は受け取っておくわ」*4
「すまない、待たせただろうか?」*5
「いや、問題ない。想定内だ」
「ソレじゃあ始めるわよ、翼」
「んじゃ一時的に思考速度を4倍に引き上げる。その上で観客の動きを仮想シミュした奴を流すから気になった点は覚えておいてくれ。本番は今回ほどゆっくりは見えないだろうがこの細かい調整はやっておいて損はない」
「・・・ねぇ翼」
「なんだ?」
「こんな事を学園祭の時もやったのかしら?彼」
「そうだな。気を付けておけ、柳星はやるとなったら完璧を求めるぞ。それも120%とかの話じゃない。これまでの200%を求めて来るんだ・・・」
「しょうがないだろ。俺は俺でZwei Wingは尊敬してるんだからその顔に泥濡れないだろ。なら一切の文句を付けさせない完璧を組み上げるのが最低限なんだよ。んで、お前らも人を惹きつけるんだから演じる空間は完璧でなくちゃならんだろ」
「・・・そう、ね。ソレを言われて否定は出来ないわ。いいわ、やりましょう」
んじゃ最初はシンプルな光から入って・・・
「ここでそっちを開けて夕陽入れて・・・」
こっちに水飛沫、水面滑走の魔術仕込んで・・・
「んで夜にして・・・」
星座は向こうの参考にするか。乱反射の彗星からビックバンに持って行って・・・
「とりあえずこんなのでどうよ」
「・・・驚いた。魔術ってここまで出来るのね」
「そりゃ演出だけなら高度な魔術はいらない*6からな」
んー・・・
「もう一回。今度は観客席から見てみる。修正点どっかあるか?」
「そう・・・だな、サビで私達の周囲を駆ける星をもう・・・0.2か3秒程遅く出来ないか?」
ふむ・・・
「こんくらいか?」
「・・・・・・ああ。このくらいだ」
「マリアは?」
「そうね・・・水面を動いてる時の水の感触って調整出来るかしら?本番どのくらいの水温になるか分からないなら最初から冷たく感じるようにしたいのよ」
「ふむ・・・このくらいでどうだ?」
「えぇ、完璧ね。んじゃ二回目やるわよ」
今回のライブ、俺が全てをある程度用意する関係で事前準備無しの水の演出になってる。だからなのかどうにもそっちを目立たせるような振り付けになってんだよなぁ・・・
「へい緒川さん」
「なんでしょう?」
「振り付け、ガッツリ変えれる?」
「と言うと?」
「アイツらの良さが消えてる。アレだとせいぜい【よく居るトップアイドル】程度だ。だがアイツらはソレではダメなんだよ。QoMの時のような争える関係なんだからもっと本人が熱くならないと・・・!」*7
そう、なんか違うんだよなぁ・・・
「ですが時間の問題はどうするんですか?」
「そんなの今貸し切ってて・・・あと何時間くらいですかね?」
「後四時間ですね」
「なら問題ないな。・・・はい二人集合!」
「何かしら?」
「振り付けガッツリ変えます!」
「なっ!何が問題なんだ?」
「演出を目立たせる振り付けなんざクソなんだわ。*8お前らの良さを際立たせる為の演出なのにお前らが下がってどうする。てことで30分後からこの箱全体の時間の流れを外界と切り離すから今のうちに外の空気吸っておくこと。はい解散!」
さて、どうすっかねぇ・・・
「タイムアルター・・・クォンタムアクセル」
最初は・・・いや、違う。そもそもの動きの量が少ないんだよ。だからダメなんだ。でも動きすぎも今回の曲には合わない・・・30%くらい増やすか
「こっちからこうして・・・」
演出は問題ない。アレは曲に完璧に合わせた。と言うことは振付師が外れだったな。
「というかせっかく水の上滑れんだから回れや。それくらい動かんと分かりづらいだろ。身体全体使えん振り付けはカスやって習わんかったのか?でも使いすぎはそれはそれでクソだけどな!」
「・・・よし、こんな感じか。原案」
「・・・何よ、今の動き」*9
「通常の5倍の速度で動いてただけだ。と言っても常人の5倍だから俺の本気よりかは遅いがアレは細かい動きできんからこう言う時はこっちの方が合ってる」
「しかし、動く量が全体的に増えているな。どう言う意図だ?」
「2年半・・・そろそろ3年か?Zwei Wingの時とかQoMの時とかは身体全体で魅せていた。それが今回無くなってたんだわ。小手先の技で魅せようとしてたのが気に食わなかった。そんな事しなくてもお前らは充分に完璧を魅せれるっつーの」
『ま、貴方達に少しばかり脳が焼かれた人の妄言ではあるんですけどね。それでも今回のライブは確かにこれまでと比べて魅力度が落ちてるのも事実ですし』
「ちなみに確かあと約三時間だと思うのだがそこは何時間にまで伸びている?」
「軽く四日分にはしてある。ただなんか魔術の複雑な部分のせいで説明し辛いが肉体の疲労は三時間程度で抑えているから空腹とか睡眠は気にしなくていい」*10
「なんとも都合のいい魔術なのね」
「まぁこれくらい俺はできなくちゃあならんのだけどな」
てことでレッツダンシング。
「ちょっと、これ動き辛くないかしら?特にここのターンとスピン」
「あー・・・これならどうだ?滑りやすくなったと思うが」
「んーと・・・これならさっきよりかはいけそうね」
「柳星、いいか?」
「はいはい。どこでしょ?」
「どうにもこの滑る感覚に慣れないのだが・・・」
「あれ?でもさっきは滑れてたよな?」
「さっきはまだ速度が遅かった故にスケートの感覚だったんだ。しかし今は使う範囲が広い上にほぼ変わらない時間・・・つまりは相対的に速くなってる。その感覚が掴み辛いんだ」
「ならアレは?アメノハバキリの足噴射。アレの移動の要領なら行けると思う」
「ふむ・・・なるほど、これなら行ける、か?」
「ちょっとやってみ?」
っと、まだ少しばかり遅いがそこは修正範囲だ。
「オケオケ。修正は必要だがその速度が出せるなら後は小手先込みで魅せれる」
多少遅いこの部分は魔術の使い方で幾らでも隠せるから問題はないな
てことで内部時間大体四日。なんだかんだ満足のいく内容になった。
「・・・んじゃ結界解除してラスト一回通して見るぞ」
「ええ」
「ああ」
さてさて・・・
・・・
・・・・・・
うん。観客の盛り上がり込みで完璧だな。
「どう見えた?」
「うん。これなら完璧に魅せれる。テレビ中継とかのカメラ映りとかも考慮して完璧だと言えるな・・・元々の振付師には悪い事したがまぁいいだろ。両方観客の立場から見てもかなり良くなってるのが分かるし。最悪どうにでもできるし」
「それなら今後のライブは貴方が振付やればいいんじゃないかしら?」
「いや、俺はこう言うの0→1は出来ないんだよ。だからベースになる振付は必要なんだよなぁ」
芸術系は俺悉く0→1ができない。1→2は得意なんだけど・・・
「んじゃ・・・あれ、今後の予定ってどうなってんだっけ」
「えーと、この後レーベルの方に行ってライブの特典映像用インタビューですね。その後はホテルに向かって、後は特に予定はありません」
「だってさ。んじゃさっさと移動すんぞ。・・・と言ってもイギリスはメシマズだからインタビューの間に一旦日本に戻ってコンビニ飯買って来るけどな」
「良いわよね、貴方はそのテレポートの魔術があるんですもの」
「覚える難易度は魔術の中では特段に高いんだぞ、これ。俺だから簡単に扱えるだけで一般魔術師にはこんな楽な運用は出来ない*11んだから。感謝してコンビニ飯で欲しいやつのリクエストを出しやがれ」
てことでいざ鎌倉(鎌倉じゃない)
と言ってもコンビニで適当に弁当とか飲み物買う程度なんだけど。あとは翌日に向けてきっちり休めば本番でトチる事は無いだろ。・・・襲撃さえされなければ。
なおマリアと柳星は同じ部屋だった模様。緒川さんと翼は別の部屋なのに・・・