鎌倉。風鳴邸。蝋燭が並び、掛け軸があり、畳のみで構成された部屋。そんな寂しい部屋に座布団が二つ。一つには風鳴家当主、風鳴訃堂が座っている。対面するように置かれた座布団は未だ空席。しかし、その時はまだである。時間5分前。客人が襖を開ける。
「やぁ、久しぶりだね。訃堂さん」*1
「来たか。座るがいい」
「あぁそうさせてもらうさ」
そうして客人───無疆柳星は座る・・・正座ではなく胡座で。
「正すつもりはないか」
「そりゃあね。俺とアンタは対等なんだ。俺の気持ち一つで変わる座り方に意味はあるかい?」*2
「愚問だったか」
蝋燭の火が一つ消える。丸見えの庭から吹いて来た風だろう。
「んで、本題に入ろうか。何故呼んだ?」
「知らぬ訳では無かろう?」
「縛りを破ったことかい?*3それは間違いだと先に回答しておいだはずだが読んでないのか忘れたのか・・・」
「なればその証拠を見せるといい。現に夷狄は生きているではないか」
「そりゃあな。一度死んで、蘇生した。アンタは蘇生を禁じてはいなかったからな」《/font》
魔術を一つ起動する。簡単なもの、ちょっと火を灯す程度である。これで消えたはずの蝋燭に火が灯された。それを訃堂は見届けると
「・・・偽りは無し、か。*4縛りをゆるくしすぎたな」
「なに、アンタに落ち度はない。生憎俺は大々的に死者蘇生を使ったことはないんだ。アンタが知らないのも無理はない。俺が一枚手札を多く持ってたにすぎないさ」
「しかし、なれば奴はどうする予定だ」
「俺が飼う。霊基・・・魂は俺と繋いだから問題ない。まぁ、オートスコアラーどもには繋がってないから今後暴れるだろうがな」
「なれば殺せ。殺し尽くし、蘇生も許さぬ。縛れるな?」
家主はその視線に殺意を明確に込めた。しかし客人はどこ吹く風である。これは単に気付いてないのか、気付いた上で全くの無視をしているのか、意に介してないのか・・・恐らく後者だろう
「いや?俺に利がない。
その二つの単語に家主は心当たりがある。しかし、それを知る術は基本無いはずだ。だが知られている。だが、その動揺が顔に出ることはなく、会話も澱みのないもののままだった。
「知られていたか」
「まぁ止める理由もないけど。その時が来るまではな」
「なればこそ、疑問だ。何故貴様は護国を為さぬ」
「これだけの力があれば護国出来るだろうって?それは正解。俺なら出来る。でもさ。ここは俺の国じゃない。俺がかつて住んでた本当の日本とは違う。なら俺が先導して護る理由はないよね。核の炎を知っているアンタと、星の光を知っている俺。立場は似てるが最後の最後に違いが透けたな」
脳裏に思い出すのは1945年。この島に二つの核が落ちた大戦争。あの頃にはすでに成人していた家主だが、あの惨劇はあれから100年の時が経つ今でさえ忘れることはなかった。
「そうか・・・残念だ」
(おっと、斬撃?いつのまに魔術なんざ覚えてたのさ)
「妖術だと思ったか?これもまた理の一つ」
(あーなるほどなんか俺の知らないナニカか・・・それは厄介だな)
「武器を持ち込まなかった貴様の落ち度よ」
「残念」
居合にて放たれた家主の一撃は飛び跳ねた客人の機転によって避けられた。直後、客人の背後には黄金のサークルが幾つも並んでいた。その中の一つから武器を取り出す。紫と赤の螺旋状の槍・・・ゲイボルグ・シバルバーであった。
「生憎、武器の貯蔵は充分でね。さて、まだやるかい?」
「・・・いや、やめておこう。儂にもまだ野望がある故な」
「いい判断だ・・・オートスコアラーの処遇は気まぐれだ。どうなるからは分からん。それだけ覚えておけ」
「そうか・・・」
てことで風鳴邸を去ったのは実は深夜の出来事。*5
「見てたか?BB」
『見てましたよぉ。なんなんですかあの人。本当に人間なんですか?』
「魂は人間だった。バケモノでも、英霊でもない」
『魔眼じみた事やって来た時は驚きましたねぇ』
「俺だから魔眼の類いと結論付けれたが・・・多分違うな。修験道の類いだ。
『あぁ確かにそうですね・・・それで、今後はどうするんですか?』
「とりあえず休暇。そこでオートスコアラーを誘いだす。あとはダインスレイブの調整と・・・
『専用・・・あぁ、確かゲイボルグには付けれないんでしたっけ?』
「あぁ。だからグリッチコールの応用で投影魔術を使いダインスレイブを持ち出す。それで無理矢理イグナイトモジュールを起動させるって寸法だな。かなりの力技だが問題ないだろう」
『精神汚染はどうしますか?』
「避けれないだろうが無力化出来んだろ。なら問題ない」
『そうですか・・・』
さて、こっからどうすっかなぁ・・・LiNKERの調整、アガートラームのイグナイトモジュール増築、他にも諸々の課題があるぞ・・・