私の大好きな東方ボーカルを、あの強火ファンにもしも聞かせたらって話。
あと、誰もレイカの推しを当てられなかったから、正解を発表します。
レイカ「い…言わなきゃダメ? ………隠岐奈。すべての黒幕、フィクサーっての、かっこよくない?」
モモイ「……………………中二病?」
レイカ「お前を殺す」
モモイ「ちょおおおおおおおおおおおっ!!?」
「失礼しまーす。誰かいますか?」
「ミッ!!!? み、みみみみみみみみみ巫女さまァァァッ!!?」
「コタマ先輩、うるさいです」
ヴェリタスの部室に足を踏み入れた途端、鼓膜を震わせる絶叫が響いた。
私は、椅子から転げ落ちんばかりに震え上がるコタマ先輩以外に、誰もいないことに気付く。
せっかく次のライブの曲を聞かせたかったんだけどね。当てが外れちゃったかな。
「他の人はいないんですか?」
「チヒロは先生と仕事です。ハレとマキはセミナーからの急ぎの依頼に対応中で……今は私一人で留守番を…」
「仕事なら仕方ないですね」
「それで…巫女…じゃなかった、レイカさんはどうしてここに? ゲーム開発部は?」
「まだゲーム開発中よ。今まさに修羅場の真っ最中。BGMの納品はとうに終わったから、最終調整までヒマなんですよ」
その間で、次のライブで奏でたい曲を聞かせたくて来た。
ゲーム開発部の4人に聞かせれば?と思うかもしれないが、今の彼女達に聞かせたら作業妨害用BGMになりかねない。
故に、時間の空いた時に気心知れた人に聞かせたかった。
「実は、次のライブで新しく披露しようと思っている曲があるんです。誰かに聞かせたいと思ったんですが…」
「えっ」
「モモイ達はまだ忙しいし、C&Cも任務で全員出ているそうで……信頼できて、私の音を理解してくれそうな人がここにしかいなかったんですよね」
消去法、と言ったら失礼ですけどね。
私がそう告げると、コタマ先輩は「ひぇっ」と短く悲鳴を上げ、顔を真っ赤にして固まってしまった。
……まあ、この反応にはもう慣れっこだけど。
「そういうわけですので、一番に……先輩に、意見を聞きたくて」
「い、い、いいいい良いんですか!!?私のような盗聴……いえ、情報収集専門の、影から見守るだけのストーカー気質なファンが、先行試聴なんて特権を賜ってしまって良いのですか!!?」
「良いって言ってるじゃないですか。それ、自分で言ってて悲しくなりません?」
「わ、わわわ、私の耳に触れた神曲が汚れます!恐れ多いです!でも聞きたいです! 録音してもいいですか!? 体内に直接マイクを仕込んでもいいですか!?」
「何を言ってるんですか。とにかく、一回だけですよ?」
私は背負っていたギターケースから愛機を取り出し、アンプに繋ぐ。 ヴェリタスの部室は遮音性が完璧だから、多少音を鳴らしても迷惑はかからない。
「タイトルは……『Starlight Dance Floor』」
コタマ先輩が、新調したばかりの眼鏡を何度も指で直し、息を止めるようにして唾を呑み込むのがわかった。 私はピックを握り直し、ヘイローから漏れ出す「力」を指先に、そして弦に、優しく込めていく。
――ジャンッ!!
空気を全て切り替えるような一音目が、静かな部室を星の海へと変えた。
鋭いカッティングがヴェリタスの静謐を切り裂き、部室の空気が一気に「夜」の色に染まった。
脳内で鳴り響くのは、きらびやかで都会的な、どこか妖艶なダンスナンバー。私は目を閉じ、指先から溢れ出す旋律に身を委ねる。
「……っ!」
コタマ先輩の息を呑む音が聞こえる。
この曲は、これまでの私が奏でたものとは一味違う。
隣にいる誰かを、あるいは眼の前にいる「君」を、逃がしようのない夜の熱狂へと誘うための招待状だ。
「Turn it up, Turn it up…」
ボリュームを上げて、もっと近くにおいで。
君の愛が必要だ、だから、もっとちょうだい。
歌詞に込めたメッセージをなぞるように、私の声はいつになく熱を帯びていた。
ヘイローから漏れる黄金の光が、部室の明かりを塗り潰し、星屑のような粒子を散らす。
視界の端で、金髪が揺れた。
きっと、コタマ先輩の見る私の姿が、変わっていっているのだろう。
原曲は『恋色マスタースパーク』から取ってるから……魔理沙の姿でも見えているのかな。
まぁそんなことはどうでもいい。
日の出のことなんて考えなくていい。明日また会えるかさえも、今はどうでもいい。
ただ、この音楽の中に沈んでいこう。いつか奏でるこの曲を……魔法のように、今はコタマ先輩にだけかけてあげよう。
サビに差し掛かった瞬間、演奏のギアが一段上がる。
ギターの弦を弾くたびに、星明かりの空がダンスフロアへと広がっていくような高揚感。
コタマ先輩の視線が、私の指先や唇に吸い寄せられ、釘付けになっているのがわかる。拒絶なんてさせない。今は二人きり。貴方を寝させやしないよ、と言うように――。
支配するような、それでいて甘く蕩けるようなフレーズを叩きつける。
―――欲望でどうにかなっちゃいそうよ
―――今夜は遊び尽くそう 星に満ちた夜空の下で踊りあかそう
―――貴女を強く抱きしめるよ イヤとは言わせないわ
———貴女は私のもの。今宵、私は貴女のもの…
コタマ先輩は、新調した眼鏡の奥の瞳を大きく見開き、呼吸を忘れたように私を見つめていた。まるで、私の構築した音楽の宇宙に、魂ごと攫われたかのようだ。
きらびやかな電子音を想起させるギターの旋律が、コタマ先輩の理性を一枚ずつ剥ぎ取っていく。
彼女の瞳は潤み、焦点が定まらないまま、ただ私の指先と唇の動きに、魂ごと釘付けにされていた。
拒絶なんて許さない。この夜の刺激を味わい尽くすまで、瞳を逸らさせたりしない。
私はギターをかき鳴らし、最後の一音を、心臓を直接震わせるような重低音と共に解き放った。
……しん、と。
ヴェリタスの部室に、暴力的なまでの静寂が戻る。
私は汗ばんだ前髪を払い、少しだけ火照った体温を感じながら、ギターのネックを握りしめた。
「……どう、ですか。先輩」
声をかけると、コタマ先輩はまるで魔法が解けたかのように、肩を大きく震わせた。
彼女の頬は火がつくほど赤く染まり、ヘッドホンがずり落ちていることにも気づかない様子で、呆然と私を見上げている。
「……………罪、です……………」
「え?」
「レイカさん……これは……何というか、その…………ホントに『いけない』音がしました…………耳から直接、脳を支配されて…………私、今……自分がどこにいるのか分からなくなって…………」
コタマ先輩は、震える手で自身の胸元を掴んだ。鼓動が激しく波打っているのが、遠目からでもわかる。大げさな人ねぇ。
「こんな……
「? そうですよ。どうです?」
「こんな曲を聞いたら………ミレニアム中の、いや…キヴォトス中の生徒が、レイカさんの『虜』になってしまいます…………ああぁ、でも、録音したかった…………USBか、CDか、SDカードに刻み込んで…私だけのものにしたいです…………」
先輩はなにやらブツブツと呟きながら、そのまま床にへなへなと座り込んでしまった。
……どうやら、私が選んだこの曲のビートは、この熱烈なファンに届きすぎたらしいわね。
「ふふ……なら、合格ね」
私は、まだ痺れている指先を眺め、満足げに微笑んだ。
「これ、本番では
「ほ、
挑発するようにそう告げると、コタマ先輩は「ひぇぇぇっ」と今日一番の悲鳴を上げ、幸せそうに机に突っ伏した。
「相変わらずオーバーリアクションな先輩だなぁ…」
達成感と、少しの気恥ずかしさ。私はアンプの電源を落とし、静まり返った部室で独り言ちた。机に突っ伏して「あうぅ……」とうなされているコタマ先輩を見ていると、自分の演奏が正しく届いたことが分かって少し安心する。
………ちょっと、過剰だったんじゃないかって、不安になるけど。
と、そんな事を考えていた時。
「――素晴らしい演奏だったわね。今の、新曲?」
「ひゃいっ!?!?」
聞き慣れた、冷静で理知的な声。
振り返ると、そこにはいつの間にか戻ってきていたチヒロ先輩が、ドアにもたれかかって腕を組んでいた。
「チ、チヒロ先輩!? いつからそこに……!」
「サビに入る直前くらいかな。あまりに熱のこもったライブだったから、邪魔しちゃ悪いと思って終わるまで待っていたんだ」
チヒロ先輩は眼鏡を指で押し上げながら、ニヤリと……そう、例えるなら「明らかに何かを分かっている」ような意地悪な笑みを浮かべて歩み寄ってきた。
「いい曲だね、レイカ。……でも、一つだけ指摘させてもらってもいいかな?」
「し、指摘……? コードミスでもありましたか?」
音楽的なアドバイスなら大歓迎だ。私は少し身構えて聞き返したけれど、返ってきた言葉は予想だにしない角度からのものだった。
「いいえ。私がしたいのは歌詞についての話」
「歌詞、ですか……?」
「レイカ、あなた『
「えっ……ちょっ、ちょっ…と、待ってください………えっ?」
「残念だけどそれは、ミレニアムの生徒を……いえ、キヴォトスの生徒を甘く見すぎだよ」
凄まじく嫌な予感がした。
チヒロ先輩は、私の目の前で人差し指を立てる。
「キヴォトスの教育課程において、英語は必須科目。今の歌詞だと――ミレニアムの生徒の半数くらいなら、
「………………は?」
時間が止まった。
脳内で、さっき自分が歌い上げた歌詞が、完璧な「日本語」に翻訳されてリピートされる。
『今夜は二人きり』
『貴方を寝させやしないよ』
『愛が欲しいの』
『私は貴女のもの』
「………………っっっ!!!」
あの歌詞が……リアルタイムで翻訳される?
アレが、即座に、バレる??
そこまで考えたところで―――ボッと音がしそうなほどの熱が、顔面に集まった。
理解した。
このままいったら———私は無自覚に、数千人の観客の前で、全裸で愛の告白をするよりも恥ずかしい内容を、大音量で叫ぶところだったということに。そして……コタマ先輩の前で、堂々とそういう事をやってしまった事に。
「あ、あ、あああああああ!!!」
「あれ、今さら気づいたの? あれだけ堂々と、コタマを誘惑するように歌っていたから、てっきり確信犯だと思っていたけれど」
「違っ……違います! 確かに、そういう歌詞ですけど!そんな、即座に理解する人がたくさんいるなんて……思うわけないじゃないですか!! うわあああ、恥ずかしい! 恥ずかしすぎる……!!」
私はギターを抱えたまま、その場にうずくまった。
顔が熱い。耳の先まで燃えるように熱い。
そんな私を追い込むように、机に突っ伏していたコタマ先輩が、ふらふらと幽霊のように起き上がった。しかも、鼻からは血を垂れ流して。
「……はい……完璧に……聞き取れました…………レイカさんの…みこさまの…愛の独占宣言…………。録音、やっぱり……一秒たりとも……逃すべきでは、なかった…………」
「コタマ先輩は黙っててください!! もう、もうこの曲お蔵入りです! 封印します!!」
「もったいないよ、名曲なのに。……まあ、ライブ当日、ミレニアムの生徒たちがどんな顔をしてあなたの歌を聞くことになるか、今から楽しみだね」
「嫌です!!!絶対歌いませんからね!!!」
クスクスと笑うチヒロ先輩と、悦びに浸るコタマ先輩。
私は真っ赤になった顔を両手で覆い、しばらくの間、ヴェリタスの部室で悶え続ける羽目になった。
白峰レイカ
無自覚で自分を救ってくれたファン1号の前で告白してしまったことに気付いて恥ずか死した。
「」チーン
レイカ(霧雨のすがた)
本来は魔理沙のコスプレをしてからなる姿。レイカの黒いショートヘアが金髪のロングになるが、紫のすがたや摩多羅神のすがたと見分けが付きにくい。見分けのつくレイカ曰く見分け方は「愛」らしいので余計分からない。
音瀬コタマ
唐突に最推しの少女から先行試聴という名の愛の告白を受けて嬉しさと恐れ多さと尊さで死んだ。
「」チーン
各務チヒロ
レイカの歌を聞き英語の歌詞について指摘した。結果レイカが死んだが、これがマキやハレだった場合ライブやるまで指摘しなかった可能性もあるので、ある意味親切。
「ちょっとこの子の常識どこかズレてるのよね…」
天童アリス
この後、チヒロの連絡を受けレイカの回収に来た。
「ああっ!レイカが力尽きています!蘇生アイテムはちょうど切らしてしまったので……これは教会で生き返らせて貰わないといけませんね!」
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