SCP-001-KV 作:SCP-001-KV
その世界は、崩壊した事実がなくなり崩壊した。
私たちは地下を通り、そこに来ていました。
薄暗く地上の光という光から見放された場所。
電子の光さえも届かぬほどの深層。
「ここがアリウス分校の治める、アリウス自治区だよ」
「……アリウス、分校……」
原作で聞いたことがあるような、ないような名前です。
私の原作知識は数十年ほど前に仕入れたものなので、どうしても記憶があやふやになってしまいますね。
ミカさんから聞いた話によれば、アリウスというのはトリニティの分派の一つだったようです。
ですが、全体がトリニティ総合学園として統合される際、一校だけ統合を阻み地底に潜りました。
それがアリウス分校です。
「でも……なんか、前に来た時よりも騒がしいかも?
何かあったのかな」
先程から銃撃戦の音が絶えず聞こえてきています。
キヴォトスは銃社会なので聞き慣れた音ではありますが、それは徐々に大きくなっているようにも聞こえます。
「行ってみましょうか」
「うん、そうだね☆」
私たちは騒ぎの中心へ行ってみることとしました。
そこでは、黒いローブを羽織った人物とアリウスの生徒と思われる者たちが戦闘していました。
「外から来たやつだ!!」
「はやく殺せ!!
マダムに叱られるぞ!」
なんだか、殺伐とした言葉も出てきていますが……。
というか、マダムとは誰なんでしょうか?
「ねぇ、何が起きてるの?」
「誰だ……って、アンタは聖園ミカ……!
……不法侵入者が現れたんだ」
と、その時、黒ローブが攻撃を受けてこちらに吹っ飛んできます。
見たところ、戦闘があまり得意じゃないタイプのようですね……。
念のため、私はミカさんを庇うように立ち、黒ローブを見ました。
黒ローブはゆっくりと起き上がると、こちらに視線を向けました。
その時、風が吹いてフードが剥がれ、視線が合います。
「「……私?」」
そこにいたのは、
「え、ええぇっ!!?
ムガミちゃんが二人!? なんで!!?」
「わ、私にも何がなんだか……っ」
「ミカさん、ご無事で……いや、まさか……」
私はまったく現状が呑み込めないでいましたが、あちらの私は何か心当たりがあるようでした。
と、固まっていた私たち三人でしたが、そこにアリウス生たちからの砲弾の雨が降り注ぎました。
「ひとまず、ついてきてください!!
状況の説明はその後で!」
訳もわからず、私たちはもう一人の私についていくのでした。
追っ手を撒いた私たちは、どこの誰のものかもわからない廃屋にいました。
そして、ミカさんはじっと私たちを見ています。
「えっと……どっちが本物なの?」
「それは……」
ミカさんの問いに私は言葉を詰まらせることしかできませんでした。
「……おそらく、私の方が偽物でしょう」
偽物と名乗り出たのはあちらの私でした。
しかし、まだ事実を呑み込めていないのか、情報を整理できていないのか。
あちらの私は混乱の最中のようでしたが、それでも何か結論を出したようでした。
「……私、耳を貸してください。
ミカさんには聞かせられない話です」
「あっ、それなら、私は部屋から出ておくね!」
ミカさんはそう言って廃屋から出ていきます。
ミカさんに聞かせられない話……というと、心当たりが多くて逆にわかりません。
いえ、ミカさんだけに聞かせられないというより、
色々とあるわけですが。
「……ここからの話は、いくつかの憶測も含みます。
まず、私の正体は……【
予想は当たり、それ関係の話でした。
【
それは、不定期に姿を変える生物です。
そして、それは必ず、最も近い距離にいる人間が思い浮かべたウサギの姿になります。
例えば、野生のウサギだったり。
ウサギのキャラクターだったり。
うさ耳をつけたバニーガールだったり。
ともかく、当人がウサギで思い浮かべるものであれば何にでもなります。
「誕生日でもお祝いに来たんですか?」
「……こう言ってはなんですが、本当に私なんですね」
「これが通じるということは、そのセリフをこちらが言いたい気分ですが……」
この
脱走した先で紙やペンを手に入れて、やったことは……職員にバースデーカードを渡すことでした。
そんな感じで、なんだかんだ憎めないやつなのです。
「にしても、どうして自分が
「……本題に入りましょう。
──ここの実験場で、
「……」
その言葉を聞いた瞬間、私は久しぶりに心の底から
対処をしなければいけません。
可及的速やかに。冷酷であろうと確実に。
それが、
「おそらく、開発や研究を行っていたものと思われます。
それと……これも伝えておきますが……」
要注意団体とはその名の通り、SCP財団と敵対する、または目的を相反する組織のことです。
そのなかで、ニッソを一言でまとめるなら『倫理を捨てた研究者集団』でしょうか。
彼らの理念は、
彼らの思考を示す例として、こんな文章があります。
『ヒツジのクローンを製作できるのに、ヒトのクローンが作れないふりをすることになんの価値があるでしょうか』、と。
「その実験場で素材として使用されていたのは、アリウスの生徒だった者たちでした」
彼らは、それを現実として、何の躊躇いもなく行える人種なのです。
それから、十数分後。
私たちは廃屋を出て、ミカさんと合流しました。
「えーっと……話はまとまった感じ?」
「はい。
彼女は
【
ニッソの問題点は、その倫理観のなさもありますが、開発した異常存在を管理せず放逐する点にもあります。
「わかりづらいと思うので、私のことは……そうですね、ニセガミと呼んでください」
「わかった、ニセガミちゃんとムガミちゃんだね☆」
もう一人の私、改めニセガミはそう言いました。
私って……自分で言うのもあれですが、ネーミングセンスが安直ですよね。
色彩と関係があるからシキとか。
ちなみに、ニセガミの影のなかにはシキがいません。
そのこともあって、ニセガミは自分が偽物だとすぐに判断できたのでしょう。
「ミカさん。
どうやら、アリウスの実験場では
放置していれば世界が滅ぶ可能性があるので、私たちはそれを止める必要があります」
「この自治区はベアトリーチェという外部の者が運営しているので、ひとまずはそいつの排除が目標ですね」
「そ、そんな簡単に言っていいやつなの……!!?」
ダメだと思います。
だけど、これは簡単だろうと、難しかろうと、速やかに行わなければいけないのです。
それに……。
「このままだと、アリウスの生徒はみんないなくなってしまうでしょうから」
……なんだか、既視感を覚えました。
たまの件といい、セイアさんの件といい、放置しているとバッドエンド系があまりにも世のなかに蔓延っています。
だというのに、まだ世界が滅んでいないのは、
生まれた瞬間に
そんな感じで、発生するタイミングはバラバラなのです。
……でなければ、増殖する系の特性を持った
「ですが、民衆の支持を得ていないなか反乱を起こしたところで抵抗されて終わりです。
なので、まずは情報を……」
「そのことなんですが、私に一つ考えがありまして……」
そうニセガミは言いました。
ちなみに、ニセガミが持っている記憶はミカさんとアリウスへ向かう地下道を歩いていたところまで私と同じでした。
そこで突然、体ごとアリウスの実験場に転移させられたと思っていたようです。
その実験場でいったい彼女が何を見たのか、詳しくは聞きませんでした。
必要ならニセガミから話すでしょうし、話さない選択を取ったのなら私はそれを尊重します。
というわけで、今回の一件に関して、私たちは同一人物でありながらいくつか異なっている点があります。
視点や考え。そして、最終目標も。
だからこそ、私は彼女の作戦に興味がありました。
「──ムガミ、ちょっと神になってもらえませんか?」
「……はい???」
ニセガミが訳の分からないことを言い出しました。