宇宙って自由ですか?
キシリア様には退場していただき、ギレン閣下には神となっていただく。

そして赤い人も緑の人もポメラニアンズもアマテもニャアンもどっかの奥様も黒い三連星もソドンに乗って果てしない宇宙探検よ! なんとでもなるはずさ! 
そういうものがはじまるまえのはなし。


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ジークジオン! 神聖ジオン帝国、神聖皇帝ギレン陛下による宇宙開拓がはじまった(はじまらない)

宇宙世紀0080年

シャロンの薔薇の出現やシャア・アズナブルによるガンダム強奪からゼクノバによって一年戦争に勝利したジオン公国はザビ家による内紛の危機に陥った。大量虐殺者であり、父殺しであるギレン・ザビと親殺しの仇を討ちたいキシリア・ザビとの勢力争いである。

連邦との冷戦に加え、勢力争い……ジオン公国は亡国の危機にあった。

ここでギレン・ザビに閃きがもたらされる。もたらされた景色はイオマグヌッソなるSAN値が減りそうな転送装置に赴きキシリアに暗殺されるもの……。元からSAN値が無さそうなギレン・ザビはこの時、最後の人間性を失った。大量虐殺者としての良心の呵責、独裁者としての部下の裏切りや孤独を気にする人間性を失った。暗殺はされないだろうという安易な計算……もしくはわずかに残っていた家族を信じる心も。

 

このままいけば自身は疑心暗鬼の末。愛人の専横を許し、ジオン公国はMAビグザムによる砲艦外交に徹した軟弱な国家へと腐敗し、ギレン自身はキシリアに暗殺される。

 

それを回避する手立ては見えていた。IQ240は伊達ではない。あるいは謎の閃きがギレンを変えた。無敵()のビグザムなんかを量産している場合ではない。

 

キシリアを排除し、シャロンの薔薇やニュータイプ技術の脅威のパワーを手に入れたギレンザビはザビ家の名を捨てた。向こう側のニュータイプが時間や空間を操る力、サイコパワーと呼ばれる時や空間を操る人の思念の力を得たギレンはそのサイコパワーによって神に等しい力を得た。

 

神となったギレンは神聖皇帝ギレンを名乗り、神聖ジオン帝国の樹立を宣言、連邦を制圧し、地球圏を支配し、人類は宇宙へと進出するのだった。

 

宇宙への進出、地球圏から人類の生存圏は大きく広がるはずだった。

サイコパワーによって星間航法さえ可能となって広がった人類の世界。

新たな、そして人類に残された最後のフロンティア……しかしそこは地獄だった。 

神話上の生物が跳梁跋扈、人類を餌としか思わないような世界だったのだ。宇宙船やパワードスーツを操るゴブリンとかオークとか悪魔とかがいるような世界。どこぞの転生ファンタジーやSF物の小説もびっくりな世界だった。どこかのララァは流石にこんな世界ではシャアも政治なんか捨てて一般人となるしかないだろうと一瞬にやりとしたが、そう簡単ではなかった。

 

 

 

そして宇宙世紀0085年

 

神聖ジオン帝国領サイド6イズマコロニーではあるお嬢様が心の渇きを覚えていた。

 

「なにこれ? ジオンの新手の広告? イズマコロニーで英語なんてセンスないね。日本語、使いなよ」

 

let'sget the beginning

 

そう呟きながら表示されたスマホのチャット欄をみるのはごく普通のお嬢様、アマテ・ユズリハ。彼女は両親共にイズマコロニーの高官という超エリート家庭のお嬢様である。生きていくのに不足はなく愛されて育った。だからこその孤独。ありきたりな日常ではない非日常、特別な自分になりたいと願う。そんなごく普通の勝気な少女だった。

 

ちなみにメールの送り主は神聖ジオン帝国宇宙遠征団広報部、unknownではないし、アマテにとってはありふれた日常の1ページだった。宇宙開拓をはじめたジオン帝国は戦力を欲していた。あの手この手で勧誘しており、このような広告は日常だった。アマテのクラスメイトの何人かはこのコロニーを離れて今頃宇宙の最果てに旅立っているのだ。

 

ちなみにジオン帝国占領下のコロニーに難民は存在しない。下層市民はいるけれど、彼らは刑務所のようなコロニーよりも閉じた世界で日夜帝国の為の業務に追われている。遠征団の最前線送りにされている者もいる。クラバなる興行に参加している者もいる。

 

「窮屈なコロニーにいる私も下層市民もそう変わらないよね」

 

世間知らずのお嬢様は平気でそんなことを宣うのだった。下層市民への階級差別意識はない点は評価したいが、その与えられた境遇が同等と思っているのは世間知らずと言わざるおえなかった。

 

改札で立ち止まることもなく学校にたどり着いたアマテは学校の授業を受ける。学校の校庭には神聖皇帝ギレンの銅像が置かれている。

ムキムキで後光が差し、天使の後輪や羽根のようなものまであった。

ギレン親衛隊は神聖皇帝を崇める教会へと形を変えた。

ジオン帝国は皇帝の名の下、教会が指導する歪な宗教国家だ。

 

ギレンはもはや、酔っ払ったサラリーマンのような格好で椅子から転がり落ちて暗殺されるような軟弱な独裁者ではなかった。

 

サイコパワーを手にした皇帝はこんな感じらしい。叛逆者キシリア・ザビとの戦闘の際には敵のモビルスーツは時が戻ったように分解されたとか……そんな武勇伝も存在する。

 

一見するとどこぞの世界線の茨の園にいたジオン残党がもっていたようなただの銅像が豪華になっただけのようにも思えるが、これは神聖ジオン帝国における強力な支配装置である。

 

生徒の中にはこの像に熱心に祈りを捧げる者もいる。この装置によってその信仰、思念が力に変換され、ギレン皇帝の糧になる。信仰を捧げたものには神となったギレン皇帝から力を与えられる。

 

それは学生からはキラキラと呼ばれるもので力を与えられると超能力や魔法のようなことが行えるようになる。そんなWINWINの強固なシステムがギレンによって作られていた。アマテの通うお嬢様学校は悪い見方をすれば中世の過激な宗教学校のような国家の強力な洗脳装置と化していた。

 

「ジークジオン! 今日も神聖皇帝陛下に祈りを捧げましょう。……さて、みなさん、おはようございます。今日の日直はユズリハさんにお願いしますね」

 

「ジークジオン! はい、先生」

 

数年前、一年戦争の頃から世界はおかしくなってしまったらしいと両親や一部の大人からそういう話を聞いたことはアマテはあった。

しかし、元から人類の総人口が半分になる戦争をやっていた時代のなか戦果を逃れてぬくぬくと育ったアマテにとっては他人事のままだった。遠くの戦火を眺めて戦争を日常のように感じ、つまらないとさえ思ったこともある。流石に今は、多くの人が亡くなっていることは知っている。

ただそういう思春期の無理解、軽薄さを持った少女だった。

 

名前を変えてジオン帝国とかおかしなオカルトパワーとかが日常になってもアマテはただ退屈だった。特に変わり映えしない授業、状況に流される大人や同級生、心が渇いていた。ギレン皇帝なんていうよくわからない存在にたいして信仰心もない少女はキラキラからオカルトパワーを与えられることもなく日常を過ごしていた。友人たちは魔法を使って遊んでいたけれど何か現実感のない感覚がアマテに渇きを与えていた。

 

窮屈なコロニーで見たこともないギレン皇帝に忠誠を誓う授業……家に帰れば勉強や進路を真面目に考えろと親に詰められる、そんなつまらない日常。アマテ・ユズリハは非日常を求めていた。

その中に眠る才能が目覚めるまであと少し。

この世界はおかしい、まやかしだと叫ぶ渇いた心、その直感はアマテの隠された才能の片鱗だった

 

 

 

イズマコロニー宙域にミノフスキー粒子の反転現象が起こる。

ピンク色の丸い光は拡大し、シャボン玉のように弾けると、艦艇が現れる。

ジオン帝国強襲揚陸艦 ソドンである。

ジークアクス本来の世界において赤い彗星探しにやってきたメンバーであるが、この世界においてはわずかながら変化があった。そこには転生者が1人混じっていたのだ。

 

ソドンのブリッジでは最近施された改造、転移装置による短距離ジャンプの成功にクルー達が感想を述べていた。

 

「短距離ゼクノバ成功、現在地はイズマコロニー近傍宙域!」

 

「ジャンプ警報解除! 改装様様だな! ようやくソドンもジャンプできたか。皇帝陛下とナビゲーターのシャリア・ブル中佐に感謝を」

 

ソドン艦長ラシット中佐が言うと、近くにいたコモリ少尉が思わず言う。

 

「もっと前からこれが使えればシャア大佐探しも捗ったと思うんですけどね……神父さんはどう思いますか」

 

艦橋にはジークアクスのメンバー以外にもう1人、十字架の代わりにジオンマークの刻まれた紫の神父服、そんなものを着て微笑む男が立っていた。めちゃくちゃ怪しい男だった。柔和で普通の日本人顔、ただ微笑むと糸目になる。糸目キャラってめちゃくちゃ怪しいものである。

 

男は微笑む。

 

「私も教会上層部に再三改装を進言していたので今回の成功を嬉しく思いますよ。シャア大佐がみつかれば……この艦も遂に遠征を行うわけですから、ドキドキしますね」

 

そんなブリッジにシャリア・ブルが入ってくる。

汗だくで少し息が上がっている様子だった。

 

「なんとか到着しましたか……なかなかにこの船を転移させるのはハードでしたよ。発狂して死ぬかと思いました。これはエグザベ少尉達に任せるべきでしたかね。時代遅れのニュータイプにはキラキラを乗りこなすのは厳しいものです」

 

コモリ少尉がまた思わず呟くようにシャリアに返事をする。

 

「まったくご謙遜を……お疲れ様です。あなたでなければ今頃我々は地獄に行っていたでしょうに、通常は複数の能力者が協力して行うものを単独で成功させるとは……流石です。それにそのエグザベ少尉はあの新しいMSにつきっきりですよ。あー、本当に帝国海兵隊の出番もなくてよかったです。あ、いえ、もし神父様の気に触ったなら申し訳ありません」

 

ゼクノバによる転移にはリスクがあった。

キラキラの向こう、並行世界から怪物が現れる、通称ディアブロと呼ばれる存在の魔の手が艦内に伸びるリスクが。他にもソドンが潰れて爆散したり乗員が全員廃人化したり発狂して殺し合いをし始めたり……並のニュータイプ程度ではそんなことが起こってしまうリスクがあった。艦内への精神的なあるいは物理的侵入に備えて教会が持つ武力である帝国海兵隊が存在していた。SMS、スモールMS、つまりただのパワードスーツであるが、それで武装した強力な機械化歩兵部隊である。熱心な皇帝信者で構成されたエリートな武装親衛隊である。発狂した者もろとも皇帝の敵を討つ海兵隊は味方からも恐れられていた。それを率いる神父もまた恐れられていた。それに糸目で怪しい感じだし。

 

しかし、今回は海兵隊のお世話になることなく無事転移を成功させることができた。

 

「ふむ、神父様もこちらにおられましたか。コモリ少尉、もしもの時はきっと皇帝陛下の守りがありましたよ。そうでしょう神父様?」

 

コモリと話すシャリアに神父と呼ばれた男はただ微笑み、頷いた。

シャリアはそのまま話し始めた。

 

「さて、優秀な人材を拾いに行きましょう。もちろん赤いガンダム探しもですがね……確かコロニーでは皇帝陛下主導のクランバトルが行われていましたね。優秀な方がいれば連れていきたい所です。皇帝の許可は出ていましたよね。神父?」

 

こうしてイズマコロニーに役者が揃った。

ここからソドンの遥かなる宇宙への冒険がはじまるのだった。

 

そんなところでシャリアからの問いに怪しく微笑む糸目の神父は内心こう思っていた。

 

(ワァワァ……やっぱり俺の知ってるジークアクスじゃないんだが……なんだかんだこうしてコロニーにきて原作スタートってコト? 世界の強制力ってコト!? ワァァ……なんだかすごいことなのだ! ただガンダム世界っぽいけどなんか宇宙進出して大変なことになってるこの世界でこの木馬で宇宙探検したいだけだったのに……これからどうなってしまうのだ!? ギレン皇帝への信心によるキラキラによって得たサイコパワーで緑の人からとかの読心は防げてるけど! 俺のそんな力はこの宇宙では雀の涙、人類は滅亡なのだ! 緑の人みたいに単独でソドンのジャンプを成功させられない。助けてギレン皇帝! この世界のあんたならきっとどうとでもなるはずさ! 殺伐とした戦乱の宇宙でも身構えている時に死神はやってこないものだ。きっとエグザベ君を乗せたエンデュミオンユニットも今頃エグザベ君にそういってるのだ。知らんけどなのだ。しかしねぇ、まだ接触してないし、そもそも接触して仲良くできるのかね? 宇宙探検が始まったら艦内が不仲の殺伐としたギスギスになるんじゃないのかね。……よく喋る! ワァワァ……こんなの混乱して頭ちいかわからのずんだもんからのハサウェイなのだ〜!カボチャの踊り)

 

そんな内心を隠して糸目の怪しい転生者はシャリアに答えた。

 

「シャリア・ブル中佐、あなたには此度の遠征に関する徴用権に関してほぼ全権が委任されています。もちろん私が監視していますが、帝国の常識の範囲内であればどんな人物も帝国の名の下に、本艦へスカウトすることが許されるでしょう。宇宙遠征には優秀な人材は不可欠ですからね」

 

 


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