※今作はVtuber白兎ねむりのネタを多用しております
用語解説
しらと耳:白兎ねむり様の兎耳
シラート:白兎ねむり様の脂です、そう、脂
仕事帰り、すきっ腹を抱えて定食屋へ。
夜になっても暑さが残る夏のある日、帰路の途中に新しくできた定食屋『ユメノキッチン』とやら、何度か足を運んで店の味はリサーチ済み。
しかし、それはあくまで王道のメニュー、から揚げ定食だとか、サバの味噌煮定食だとか、生姜焼き定食だとか、ザ下町と言うべきメニューばかりを注文してきた。
今回は打って変わって変わり種を注文する腹積もりだった。
メニュー表の中にあったが、王道から外れていてあえて避けていたメニューがある。
「ユメノ沖縄定食をひとつ」
彼は意を決して注文した。
今時にしては中々不親切なことにメニュー表には写真が載っていない。そのせいで名前からでは全く想像ができない。
他の飾り気のないメニュー名からすれば、おそらく自信があるのだろうが、その中身はまさにブラックボックス、沖縄料理というのだから、ジャンルは絞られているのだが、わざわざ沖縄定食などと言ってざっくり一括りにする必要はないのだろう。
有名どころと言えば、ゴーヤチャンプル、ソーキそば、タコライスあたりだろうか。
タコライスと言えば、タコスの具材をご飯の上に乗せた腕白な料理だ。確かに、タコライスも悪くないのだろうが、正直言えば、わざわざ具材があるのならタコスとして食したいというのが本音だ。
運否天賦なこの選択、幸いなことに明日は休日ということもあり、自分が思ってもみない悪い結果となったとしても、土日でリカバーはできるだろう。これが月曜日なら立ち直ることができず、ズルズルと残り4日間引きずったに違いない。
そう、今日は勝負を仕掛けてもいい日なのだ。
金曜日の夜というのは至高の時間だ。まさにゴールデンタイム、1週間頑張った自分にという言い訳だけで多少の浪費も許容されるチートデイだ。普通ならちょっと豪華に、だとか、せっかくだから好きなものをたくさん、そんな選択肢もあるだろう。だが、時には冒険へ足を踏み出してもいいじゃないか。
最悪、家に帰って酒をしこたま飲んで全てを洗い流すという大人にのみ許された魂の選択方法も存在する現在、この貴重なひと時をベットするぐらいできるのだ。
「お待たせしました。ユメノ沖縄定食です」
運ばれてきたのは定食はと言えば、身構えていた割に意外と普通だった。
スパムおにぎり、ゴーヤチャンプル、わかめスープ、そして海ブドウ、なるほどと頷かせるだけの沖縄感だ。汁物はこの店の定食に大体付いてくる定番のスープだが、それを除けば沖縄の空気が漂っている。
しかも、このゴーヤチャンプル、一般的には豚肉が使用されているが、しっかりとスパムが使用されているあたり、特別感がある。
スパムがあれば何でもいいんじゃないかと思われるが、実は沖縄県、スパムの消費量が世界三位だ。日本の、ではなく、沖縄県の消費量が、である。
驚きこそなかったが、運否天賦に思えた賭けは一先ず大外れということはなかったようだ。
まずはスパムおむすびを一口。
ご飯で卵焼きとスパムを挟み、さらに海苔で包んだ一品だ。
しかし、違和感、想像していた塩味のあるザ肉ともいうべきスパムとは印象が違い、意外とあっさり、スパムの主張が激しいイメージがあっただけに、おむすびとしての一体感がある。独特な脂の甘味が塩味と相まって食べれば食べるほど食欲を掻き立てる美味しい一品に仕上がっている。
ならばと思い、今度はゴーヤチャンプルに箸を伸ばす。
ゴーヤの苦み、豆腐の淡白な味わい、卵は味が絡んでいて、スパムはと言えば、やはり塩味こそあるが、そこまで主張してこない。脂が溶け出し、旨味を周囲に振りまいていて、食べ応え抜群なのだが、意外にあっさりとしている。
豚肉を使っていると思ったが、別の肉を使っているのだろうか。
加工肉を使うとどうしても味を主張しがちになるという印象があるのだが、それを思わせない協調性というのは、中々に面白い。もしかすると、バリエーション商品なのかもしれない。
汁に浸った海ブドウもプチプチとした触感で美味しい。ちなみに、海ブドウは海藻の一種で、塩味とプチプチとした触感が特徴で、そのままタレなんかにつけて食べるのが王道だ。
スープを啜り、スパムおにぎり、ゴーヤチャンプル、箸休めに海ブドウと、食べ終わるまで抜け出せないサイクルに陥ってしまい、気が付けば完食していた。腹が減っていることもあり、空腹というなのスパイスも利いて孤独なグルメは大成功と言えた。
なお、謎に包まれていたスパムだが、会計時にレジに積まれていた物が目に入り、謎が解けた。
株式会社夢の国特製ランチョンミートらしい。
気になって思わず買ってしまったが、どうやらシラートという物が入っていて、規格外のしらと耳という食材を使ってランチョンミートにしているようだ。どうやら、食べていたのはスパムではなかったらしい。