マクロスΔ 自由の翼ーFREEDOMー   作:ロマンティクス

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覚悟のオーディションⅢ

 ───戦場を甘く見るなっ!

 

 シャハルシティで発生したヴァール騒動が収束した後、その言葉と共に頬殴り飛ばされた。軍用機、VF-171を仕方がなかったとは言え、無断で乗り回したからだ。もしあの時、VF-171に乗り込まなければ自分も、一緒に逃げていたフレイアも今頃戦火の炎に飲まれて死んでいたと思う。

 

 だから、後悔は微塵もしていない。

 

「戦場を甘く見るな、か……」

 

 だけど、それはそうとしてこちらの事情を聞かずに殴ってきたデルタ小隊の人間、ミラージュはいけ好かない奴だとハヤテは思った。殴る前にもう少しどうしてそんな状況になったのか、聞いてくれたって良いだろうにと心の中で不満を漏らしながら、手元の電子端末から船に乗る為の手続きを進める。

 

 行先は惑星ラグナ。昨日シャハルシティの近くにある宇宙港で会って以降、ずっと行動を共にしている少女、フレイア・ヴィオンを送り届ける為なのだが、元々密航犯として惑星アル・シャハルに来た彼女には惑星を移動する船に乗る為の手段がなく、更に言えばこのまま放っておく訳にもいかないので身元の確認が甘い格安便の船を探して今その乗船手続きをしているのだが……。

 

「私、ワルキューレと、美雲さんと歌ったんよね……」

 

「それ何度目だよ……」

 

 戦闘が終わってからと言うもの、ずっと憧れのワルキューレと、美雲・ギンヌメールと一緒に歌ったということが余程嬉しかったのだろう。女性にあるまじき目をとろんとさせ、何ともだらしない表情を浮かべて「ニヒヒ」と

小さく笑い、まるで子供みたいにはにかんだような声で笑っている。

 

 その様子を朝からずっと延々に見せられれば飽きれてしまうのだが、実際彼女の歌に救われた身としては感謝をしている。VF-171に乗り込み、訳も分からずがむしゃらに操縦していた時、彼女の歌はなぜかスッと自分の胸の中に染み渡った。

 

 初めての操縦でも、バトロイド形態のファイター形態の変形など、やったこともないのに最適な選択を取ることだって出来た。火事場の馬鹿力と言うのもあるだろうが、彼女の歌が響いている時、あの瞬間だけは戦場に満ちている風を感じ、そして自分自身の思考がクリアになった。

 

 結局は撃ち落されて、地面に衝突するところを蒼天使に救われたのだが。

 

(やっぱ、すげぇよな……)

 

 言葉に出すことはしなかったが、ハヤテは戦場を駆け抜け、単機で多数のヴァールや謎の敵と戦う蒼天使の戦う姿を思い出す。後ろに目がついているかのような反応を見せたり、乱戦状態の中で的確に敵の武装や翼だけを狙って瞬時に撃墜する。そして何より、戦場の空を縦横無尽に舞い上がり、単機で戦局を左右してしまうほどの強大な風を、確かに感じたのだ。

 

「なぁなぁハヤテ、ラグナ行きの船は取れそうかね?」

 

 つい数時間前のことを思い出し、考えに耽っていると端末を操作する手が止まっていることが気になったのか、フレイアが惑星ラグナ行きの船の席を確保できたか、心配そうに尋ねてくる。何せ、彼女は数年に一度しか行われないワルキューレのオーディションを受ける為に惑星ラグナへ向かうのだ。

 

 この機会を逃せば次はいつになるのか分からない。それに行動に移すなら今しかないと故郷を飛び出してきたのだ。もし惑星ラグナに行けなければ気が気じゃないだろう。そんな彼女を安心させるように手に持つ端末の画面を見せ、予約を無事に取ることが出来たことを伝える。

 

「あぁ、今無事に二人分を確保できたぜ」

 

「あんがとハヤテ!! って二人分?」

 

「おう、俺も惑星ラグナにちょっと行ってみたいんだ」

 

 ハヤテが惑星ラグナに行きたいと思う理由は二つあった。ミラージュが最後にシャハルシティを立ち去る時、赤毛の隊長らしき人間が自分を見て面白そうなものを見るような目で見ていた。普通なら切って捨てるんだろうが、直接なんで笑ったのかを聞いてみたいのが一つ。

 

 もう一つは、もう一度蒼天使を見てみたいと思った。ニュースや噂では無所属と聞いていたが、今回の戦闘の後、蒼天使はデルタ小隊に連行される形で戦場を後にした。であれば惑星ラグナにあるはずだと考えたからだ。今まで生きてきた中で、空の風を感じた時、ここが自分の生きる場所だと思った。

 

 何より、戦場で一際強大な風を感じさせるあの姿を見て、純粋に凄いと感じたのだ。蒼天使だけじゃない。シャハルシティの空を駆け抜けるデルタ小隊の黒い機体。機体に死神のシンボルを乗せた機体を一瞬見かけただけだが、真っ直ぐに空を飛ぶ姿に魅せられた。

 

「ハヤテもなんか用事があるん?」

 

「そんな感じ。あと用事ついでにお前の落ちるところ見ていようかなって」

 

「はぁ!? 絶対に落ちん!! 合格すっからねぇ!!」

 

 頬赤く染めて頭の触覚、“ルン”を桃色に点滅させてそう叫ぶフレイアを見て、ハヤテは面白そうに笑う。これまで無気力に過ごしてきた時間が嘘のように、会って間もない彼女と一緒に居ると充実しているように感じる。

 

「ま、精々頑張れよ」

 

 本当に退屈しない。今、ようやく自分の人生が動き始めたような気がする。大きな風に背中を押されているように、ハヤテとフレイアの二人は歩み始める。ハヤテが軽い冗談を言ってフレイアがムキになって言い返す。その姿は仲の良い兄妹がじゃれ合うような、そんな光景だった。

 

 そんな二人の後ろ姿は少しずつ人混みの中に溶けていき、今はラグナ発の船がある乗船場へと移動を開始した。

 

 

 

 ■

 

 

 ───マクロス・エリシオン

 

 ケイオス・ラグナ支部の拠点であるマクロス級戦艦。その艦隊の規模は第一世代型マクロス級とマクロス・クォーター級の中間である、全長800メートル級のサイズを誇る。因みに第一世代が1200メートルで、クォーターが約400メートルと言われている。

 

 デルタ小隊とワルキューレが旗艦としているアイテールは、このマクロス・エリシオンの左腕部にあたり、惑星ラグナに帰還すると宇宙空母からマクロスの腕に形態を変化させ、ドッキングという形で着艦をした。

 

 そしてアイテールが惑星ラグナに到着したと言うことは、俺のこれからが決まる時が近づいていること。アイテールの艦内ではアラドの尋問だけで、他には美雲の来訪以外に変わったことはない。案内された部屋の中で、今後の不安について考えていただけだった。

 

(結局休めなかった……)

 

 戦闘の後だったと言うのに気が休まることはなく、連行されて直後に比べたら落ち着いてはいるが内心では不安が募っており、今すぐにでも開放してほしい。身の振り方を間違えないように、より一層気を引き締めなければと思っていると、部屋の扉のロックが開錠され、開いた。

 

「おっ、早速着替えてくれていたか」

 

「あ、はい。美雲さんからパイロットスーツだと目立つからと言われて……」

 

「美雲さんが? カナメさんではなく?」

 

 扉を開いたのは俺の尋問を担当したアラドだった。ケイオスの制服に着替えた姿を見て、どこか満足気な表情を浮かべているが、少し嫌な予感がする。あとはアラドもこの制服を届けるのはワルキューレのリーダー、カナメだと思っていたようだが、まさかの美雲が持ってきたということに少し驚いた様子を見せている。

 

 そんなに意外だったのだろうか。まぁ、失礼だけど少し分かる気がする。ちょっと話しただけだけど、集団行動をするようなタイプではないと感じたから。そんな彼女がきっかけで俺はフリーダム共々捕獲され、今現在に至るのだが、アラドが来たと言うことは移動の時間なのだろう。

 

「これからマクロス・エリシオンの艦長に会ってもらう。そこで今後の方針について話をしたいと思う。アル・シャハルから疲れているところ申し訳ないが、こちらも急ぎでな」

 

「いえ、大丈夫です」

 

 惑星アル・シャハルの戦闘から三日ほど経過している。惑星ラグナまではフォールド断層で遮られていない関係上、移動にそう時間はかかっていない。アラドも戦闘の後に尋問の報告書を短時間で仕上げて提出したりと、隊長の業務は多忙だと言うことが見てとれる。

 

 他にもやるべきことがある関係でスケジュールも押している部分があるんだろう。俺個人としてはもう少し考える時間が欲しい、と言うのもあるが、いつまでもこの部屋でこの先の不安に駆られるのも精神的にキツイ。どうなるのか分からないにせよ、自分の処遇がどうなるのか早く知れることはありがたいと感じる。

 

 悲しいことにフリーダムがない俺はあまりにも無力なので、何を言われても従うしかないのだが……。こういった状況になると自分があまりにも無力だと言う事実に気落ちしてしまう。

 

「助かる。こっちもワルキューレのオーディションが近かったりと色々と忙しくてな」

 

「ワルキューレのオーディション、ですか?」

 

 確か、ワルキューレのオーディションと言えばフレイアがハヤテと一緒に惑星ラグナに来て、ワルキューレになる為の試験に飛び入り参加する話だっただろうか。それと並行して主人公ことハヤテもアラドに勧誘され、デルタ小隊に入隊する、という流れは少し記憶にはある。

 

「あぁ、ヴァール騒動は銀河各地で発生しているのは言うまでもないが、根本的な治療方法が確立されていない以上、歌の力で抑えるしかないが、銀河はあまりにも広い。四人だけで全ての銀河をカバーするって訳にもいかないだろう?」

 

「え、えぇ。確かにそうですね……」

 

 確かに、ヴァールシンドロームはブリージンガル球状星団だけでなく、発症例が少ないだけで銀河系の各地で発生している。発生頻度が多いのがこの星団と言うだけで、その全てをワルキューレが戦術ライブで鎮静化するのは物理的に不可能なのも分かる。

 

 もうすぐ新しいメンバーが増えますよと言いたいところだが、意味不明な発言をここですると更に自分の身が危うくなるので言わず、アラドの発言に当たり障りのない返事することに留める。口は災いの元とも言うし、後普通に緊張で上手く話せないので言葉選びには慎重になる。

 

「ワルキューレだけじゃない。彼女達を守り、ヴァールを無力化する人員も不足していてな。下手なパイロットを選ぶ訳にもいかず、かと言って優秀なパイロットは殆どが軍属だ」

 

「は、はぁ……」

 

 その優秀なパイロットこと主人公君ももうすぐ来るので少しは解消されるかと思います、と言いたくなったがアラドがこちらを見る表情があれだ、笑顔で保険とか進めてくる営業スマイルだ。猛烈に嫌な予感がする。何が言いたいのか何となく察しはついてきた。

 

「そこでだ、お前さんに相談があってな」

 

「相談、ですか……」

 

 意味深にそう告げるアラドに、俺は緊張のあまり、唾の飲み込む。話している内にマクロス・エリシオンのブリッジデッキに到着していたようで、アラドは親指を指令室に繋がる扉をさす。こちらが緊張しないようにと気を使って気楽に接してくれているのだろうが、何を言いたいのか大体察して来たので逆に緊張する。

 

「そう、相談だ。その様子だと大体察しているだろうし、手短に艦長交えて話といこうか」

 

 流石はプロだ。俺の表情などから何を考えているのか大体見抜いている。と言うことは、俺の考えていることも大体は合っているとの裏返しにもなるんだろう。最悪を想像していた身としてはまだ大丈夫な方だろう。だが、どの道戦うことからは逃げられそうになかった。

 

 

 

 ■

 

 

 

 エリシオンのブリッジに足を踏み入れた瞬間、空気がぴたりと動きを止め、全身に冷えた重みをまとわせた。複数の視線が一斉に突き刺さり、背筋を凍らせる。この場にいる俺は身元不明の存在であり、様々なコンタクトを拒んできた蒼天使、ストライクフリーダムのパイロットであることも、この場に居る人間の視線を嫌でも浴びる原因になっているのだろう。

 

 何より、二メートルを悠々と超える巨体と緑色の肌。服越しからでも分かるその圧倒的な体躯は、一見して普通の人間ではく、ゼントラーディであることが示している。彼らゼントラーディは戦闘種族で、通常時は約十五メートルほどの巨人なのだが、地球人との共存や細かい作業が難しいことから、非戦闘時はマイクローン化することによって1.5メートルサイズに縮小されるはずなのだが……。

 

(で、でかいっ!?)

 

 ヴァールとなったゼントラーディ軍とは何度も交戦したことはあるが、マイクローン化してもこれほど大きいゼントランに遭遇したことはなかった。何より、巨大な体躯からは凄まじい威圧を放っており、スケールの違いに圧倒されてしまう。更に言えば厳つい外見も相まって肩が強張り、呼吸が浅くなる。まるで体が小さく縮んでいく錯覚に襲われ、自然と身が硬直した。

 

「はじめましてだな、キラ・ヤマト君。俺はアーネスト・ジョンソン。見ての通りゼントラーディだ。このマクロス・エリシオンの艦長を務めている」

 

 張り詰めた空気の中、最初に切り出したのはキラを萎縮させる原因と言っても過言ではないアーネストからであった。厳つい外見とは裏腹に、どこか気さくで親しみを感じさせる話し方であった。

 

「アラド隊長からは話は聞いている。またフリーダムのパイロットである君の活躍は知っているつもりだ。この二年間、ヴァールが発生した戦場に武力介入し、被害を最小限に食い止めている実績は有名だからな」

 

「いえ、それは……」

 

「所属不明で目的を語らず、圧倒的な性能と技術でヴァールをねじ伏せ、時には非情な判断も厭わない。新統合軍も君を探すぐらいには有名人なんだがな……」

 

 決してこれは褒めたたえられているのではない。皮肉とも異なる、事実を淡々と突きつけられていく様はまるで罪人が司法に裁かれている瞬間のようだ。罪人が俺で裁判官はアーネスト。アラドをはじめとした周りに居る人達は裁判員と言ったところだろうか。

 

 そしてアーネストの言う非情な判断。これはデルタ小隊やワルキューレが現場に到着するまでの間、大勢の被害を食い止める為に生身のヴァールをビームなどで消し飛ばしたことを言っているのだろう。実際、暴徒になったとは言え、生身の人間にビームを浴びせる行為は人道に大きく反している。どれだけ犠牲者を減らす為だと正当性を訴えても人殺しの罪は消えない。

 

「勘違いしないでほしいんだが、俺は君を責めているんじゃない。さきほども言ったように、あらかたの事情もアラド隊長から聞いている。過去の記憶がないこと、フリーダムと君を所有していた謎の組織から逃げ出した身であるということもな……」

 

「そう、ですか……」

 

 忘れたことは一度たりともない。だけど、こうして他人から自分が行った行為を突きつけられた時、胸を締め付けるような痛みを感じる。そして脳裏に何度もフラッシュバックするのだ。仕方ないと判断し、殺してきた人達の最期の光景を。そしてその惨状を作り出す自分自身の姿を。

 

 そのせいか、アーネストの話があまり頭の中に入ってこない。今自分の中にあるのは仕方ないと言い訳をして殺しをした罪悪感と、自分は戦場から逃げて生きたい、この状況から逃げ出したいと自己保身に走る醜い自分への嫌悪感だけだった。

 

「君は自分が思っている以上に力を持っている。その自責の念と自覚は持ち合わせているようだ。それとアラド隊長との尋問で君の話したことに嘘はないと俺は思っている」

 

「えっ……」

 

「この二日間、君の身元をケイオスの諜報部があらゆる面で調査を行ったが、何も情報が無かった。まるで最初から存在しなかったようにな。現在も調査中だが、ある程度の情報はすんなり上がってくるものだと思ったが、ここまで何も出てこないと笑えるレベルだ」

 

 キラ・ヤマトと同じ容姿を持つこの肉体の出自。それは俺自身も知らない。何せ、自分と言う存在を自覚した時にはフリーダムのコックピットの中に居たから。その前後のことがまるで分からない。正直に話そうと思っても、後は自分は前世の記憶を持っている転生者ですぐらいの情報だ。

 

 アラドとの尋問で話したこと、その全ての裏を取る為に調査を開始したのだろうが、何も情報が出てこないことが返って突拍子もない話を信じてもらえるきっかけになると思わなかった。ケイオスは民間企業で、軍ではない。だが、軍事部門には元軍人の人間が多く在籍している。

 

 そんな中で証拠もない、身元も不明。個人の勝手な意思で戦場に介入する自分の言葉に多少の理解を示してくれている。もちろん、全てを信じてくれている訳ではないだろう。この場に居る人達はそんな甘い考えはない。前世では戦争とは無縁の生活を送っていた俺とは違う。

 

 比べるのも失礼な話だろう。

 

「まぁ、身元不明の人間という事実は変わらないが、君の身柄を我々が保護したいと考えている。こう言っちゃあれだが、下手に新統合軍や武器商人に君の身柄と、その機体が渡るようなことがあればモルモットにされる可能性が少なからずあるのでな」

 

「も、モルモット、ですか……」

 

 確かに、アーネストの言うことは否定しきれない。新統合軍も一枚岩じゃないし、マクロスFの段階で組織の黒い部分もかなり描写されていた。己の利権を求め、先住民の居る惑星に攻め入ったりと一部の者は平然と行う。もしそんな人間に捕まりでもしたら無事では済まないのは間違いないだろうとは自分でも思う。

 

 だけど、このケイオスだってその心配はないとは言い切れない。この場に居る人達は大丈夫でも、上層部の人間は全然大丈夫じゃないかもしれない。この辺りの知識は欠落していたり、そもそも知らなかったりするのだが、こうなると前世でもっとマクロスΔをしっかり観ておけば良かったとこの三年間で何度目になるか分からない、後悔の波が押し寄せる。

 

「無論、新統合軍なども我々ケイオスが君を保護した事実は早々に知るだろう。いや、大々的に戦闘を行った後の鹵獲だから既に知られていても可笑しくはない」

 

「そこで、だ。俺達から提案がある」

 

 アーネストの言う通り、フリーダムがケイオスに鹵獲された事実は既に新統合軍も知っている。何せ、多くの民間人の前で捕まったのだ。民間企業であるケイオスに惑星一つに緘口令を敷く権限など持っているはずがない。その中、アラドがアーネストの言葉に続けるように口を開いた。

 

「ケイオス、ラグナ支部が君の身柄とフリーダムを保護することを条件に、デルタ小隊への入隊及び、ヴァールとの戦闘、ワルキューレの護衛を君にお願いしたい」

 

 身柄の保護と引き換えにデルタ小隊への入隊、そして戦闘参加の依頼。戦力不足で悩まされているケイオスにとって、ヴァールと先の戦闘で介入したアンノウンとの戦闘に備え、戦力は欲しいはず。だけど下手な人選は出来ない。だけどこの依頼を断ることが出来ない俺は話が別、ということだろうか。

 

 この依頼に関して俺は、“はい”か“YES”以外の回答がない。つまり、拒否権などないのだ。もしここでこの提案にNOと突きつければ、機体だけ没収されて俺の身柄は先ほど彼らが言った通りのモルモットにされるか、どこかの惑星に放り出されるかのどちらかなのだろう。

 

 正直、俺の肉体に研究するほどの価値があるとは思えない、と思ったがそうでもなかった。キラ・ヤマト准将は肉体は全ての遺伝子をSEED世界において完璧に調整された“スーパーコーディネーター”である。マクロス世界から見れば、同じような遺伝子操作はあるだろうが、准将の場合はあらゆる分野において才能や素質を秘めており、やればやるほどそのスキルが常人を遥かに上回るペースで成長する。

 

 簡単に言うなら、やりたいことをなんでもできるスペックを有している。もちろん、その分野の鍛錬などをやらなければスキルツリーが伸びることはないが、やれば必ずその分野のスキルを会得する。そう考えたらこの肉体もある意味厄介なものを抱えているかもしれない……。

 

 なら出すべき答えは決まっている。

 

「分かりました。アラドさん、よろしくお願いします」

 

「交渉成立だな」

 

 最初から退路が存在しないのなら、進むしかない。俺にはじめから選択肢がない時点で交渉にもなっていないような気もするが、これしか道がない。もし戦場から離れられたとしてもヴァールを感知する能力は発動するだろうし、戦場で人を殺し続ける罪悪感も消えない。

 

 今度は無所属からケイオスという組織の傘下で戦うだけだ。戦場の舞台は変わらない。色々と制約が付くかもだけど、きっと前よりは良いはずだと信じて、アラドから差し出された手を取るのだった。




連日投稿できちゃいました。
お盆休みは書ける時間があって嬉しいですね。

次回も頑張りたいと思いますので、
感想や評価を頂けると励みになります。

今後ともよろしくお願いいたします。
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