【書籍化】俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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 おまたせしました!
 今回は会話ですがかなり眺めの9000文字弱です
 気軽に楽しんでくださいませ

 新キャラたちの顔出しです



【挿絵表示】


【挿絵表示】

 真機楼様よりFAを頂きました!
 穏やかなスカーと二人のタッグマッチです! かっこいい!



【挿絵表示】

 朽木様より十二位のFA(?)を頂きました!!
 挿絵になっております、いいぞぉ



【挿絵表示】

 前回の爽やかなスカーのFAを頂きました
 ヨン様、いつもありがとうございます!



八十話 7枚を越えた手札はターン終了時に捨てなければならない

 

 

「――と、こういう顛末になったわけじゃ」

 

 パタン、と常盤(トキワ)火戸(カド)は随分と分厚くなった報告書を閉じた。

 

「なにか質問は?」

 

 紅葉柄に彩られた和風ドレスのいつもの衣装にて、グルリと室内を見渡す。

 それは広い室内。

 白く、清潔で、整えられた室内。

 シンプルで面白みもない長机に、実用的なプロジェクター。

 

 

十二聖座(ラスール)たちよ」

 

 

 そこに【11名】の人間がいた。

 

「本当に”101人目”はくたばったのかよ?」

 

 そう尋ねるのは片足を長机の上に乗せたコートの男。

 空調の効いた室内で迷彩色の外套、風塵除けの分厚いゴーグルを首元に、焦げた草色の髪と鳶色の瞳。

 三白眼の目つきを鋭く歪めて、無造作に指を鳴らした。

 

「あれは、散々俺と【アイツ】でぶちのめしたのに殺しきれなかったカスだぞ? また死んだふりじゃねえのか?」

 

「ちゃんと殺してくれなーい?」

 

 灰色の男に言葉を重ねるのは、長机の末端に座る少女。

 両手を組んで、前のめりにて座り、その胸をテーブルの上に乗せていた。

 大きな胸だった。

 真珠色の髪をテールになびかせて、けらけらと笑っている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「【四位】なんだからさぁ、お前は死ねってやるもんじゃないのぉ?」

 

 年齢にして十代半ばだろう。

 学生服の重みを自分以外に預けて、ぶらぶらと見えないところで椅子の下で爪先を振っている。

 そんな生意気な糞餓鬼(メスガキ)の仕草に。

 

「チッ」

 

 舌打ちだけをして、四位と呼ばれた男は足を踏み変えた。

 

「好きにいえ」

 

「あれれー? 怒らないのぉ?」

 

「ミスはミスだ。アイツがリンチ決めてる間に、ループを組み終えなかった俺が悪い。準備不足は言い訳にならねえ」

 

「チンピラ風味なのに真面目なの困るんだけどぉ」

 

 二人の会話。

 それが少し途切れたところで、真ん中に座る1人が手を上げた。

 

 

「――”塵塚王(がいづかおう)”の懸念は妥当です。滅ぼしたという裏付けはありませんか?」

 

 

「うむ。先ほど見せた”闇狩り”からの処分画像もそうじゃが、世界各地で視力及び機能回復の報告が上がっておる」

 

「”祟り”あるいは”呪い”ってやつか」

 

 そう、呟くのは男の反対側に座るライダースーツの女。

 青く色づいた髪に、メッシュのように赤い色が入り混じったストレートの髪を首に巻き付けた女性。

 

「うむ。調査は引き続き必要だが、”101人目”のアンティ……それで奪われたものは逐次解除されつつある、そう考えるべきじゃろう」

 

「ふぅふー、オカルトの何割かが減っちゃいそう?」

 

 ねーと猫撫声で呟くのは、目立たないように背を丸めたツインテールの少女。

 真ん中から分かれた黒と白の長い髪を床に垂らし、ふわふわと膨らんだフリルまみれのゴシック。

 手には囚人服を着たようなデザインの縞々猫のぬいぐるみを抱えていて。

 

「半ばオカルトなのはそっちだと思うんですけどぉ」

 

 横に座る少女は、テーブルに身体を預けながら()()()()()()()()

 そこにはフリルの女性の抱えるぬいぐるみがあり、女性の顔があった。

 つまり、大きかった。

 その背丈は文字通り見上げるほど大きかった。

 

 誰が信じるだろうか。

 大人と子供ぐらいに感じる二人の少女はさほど差もない同年代だということに。

 

「なぁにぃ?」

 

「べつにー」

 

「?」

 

 小首を傾げる少女に、少女が諦めたように首を横に振る。

 

「”101人目”は死んだ」

 

 そんな間にも会議は進む。

 

「故に、上盤市(じょうばんし)にはこれ以上の介入は必要ないじゃろう」

 

 そう告げるカドの目線は1人の女性に向けられていた。

 

 灰色の女だった。

 

 焼いて焼いて焼いて焦がし尽くして黒一つ残らなかったような灰白色(グレイッシュホワイト)

 平凡な蛍光灯で照らされているのが場違いなほどに美しい灰色の髪を金の宝冠から垂らし、穢れ一つ存在しない純白の祭服はゆったりと膨らんだ起伏に沿って、美しい女の形をなしていた。

 

()()()よ」

 

 カドの呼びかけに、ゆっくりと目を開く。

 

「――介入、ですか」

 

 その瞳は淡い翡翠色をしていた。

 

「……いいでしょう。今派遣している聖伐者(イレイザー)たちには戻るように指示を出しましょう」

 

「うむ」

 

「ですが、本当に”101人目”が滅んだかどうか影響の確認はさせます」

 

「それはまあしょうがあるまい。吾から出した証拠だけでは信じられないだろうからな」

 

「あの魔女は、我々も長く手を焼かされていた忌むべき者。それを”闇狩り”……同じ闇のファイターが滅ぼしたというのも信じがたいものです」

 

 淡々と、規則正しく揺れる拍子計(メトロノーム)めいた声音。

 

「そうです」「そうです」

 

 彼女の言葉に、左右に佇むものたちが声を発した。

 

「あの魔女を滅ぼした”闇狩り”」「あの魔女を殺した闇のカード使い」

 

 それは仮面を付けた少女たち。

 

「信用出来るのですか?」「信頼出来るのですか?」

 

 右に、泣き顔を模した澄んだ青色(シアン)の仮面を。

 

生命秘札(レガシー)でもなく」「レガシーの力も使わずに」

 

 左に、怒り顔を模した鮮やかな赤色(マゼンダ)の仮面を。

 

「「人が、”忌み者”を滅ぼせるなど」」

 

 左と右、それぞれの顔の半分ずつを覆う仮面。

 その覆われていない目と口を閉じたままの少女たち。

 緑髪の、十代も半ばだろう背丈も顔もそっくりの二人。

 

「「ありえない」」

 

 双子の少女たちの輪唱。

 

「”永久蛇(ツァラトゥストラ)”の言葉デスよ」

 

 それに声を上げたのもまた仮面を付けた者だった。

 礼儀正しく背筋を伸ばして椅子に座っている。

 身に纏うのは仕立てのいい紳士用のスーツに、乱れ一つのないネクタイに、両手を覆う白い手袋。

 肩上で切りそろえた丁寧な黒髪に、聞き取りやすくも特徴のない声に、性別も年齢も捉えきれない、その中でもっとも特徴的だったのは顔。

 

 鏡の顔。

 

 顔を覆う鏡の仮面がそこにあった。

 

「証拠も信用出来る証言もある、まずはそうであると受け止めるべきだと思いマスが?」

 

「「【八位】」」

 

「なんデスか、【九位】ト【十一位】」

 

 険悪な双子の言葉に、ゆったりと大仰な動きで膝を組む鏡の仮面。

 

「やめなさい」

 

「「導き手(ノア)」」

 

捻じれた鏡(メビウス)のほうが座位は高いのです。異議を掲げるならば奪取戦にて上回りなさい」

 

「「はい」」

 

「はい、ではないわ。十二星座にそういう規則はないぞ」

 

 はぁとため息を吐き出すのはカド。

 

「ともかく、まだ話は終わっておらん」

 

「終わってないってなに? お祝いのパーティーでもするとか?」

 

「あのカスが滅んだのは、そのうち企業も嗅ぎつけるだろう。さっき言った結果、回復の報告を見れば明らかだからな」

 

「”傾国蜘蛛”のように、どこかで祝日になるかもですねぇ」

 

 

「実はな――()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 その言葉に空気が張り詰め、長机の隅でアイマスクを着けて黙っていた男の首が傾いた。

 

「だれぇ?」

 

 椅子に座った爪先が床に掠れる程度の背丈の少女――【十二位】が、半眼になって口元に手を当てる。

 

「前世代のぉ十二位でしたっけ」

 

 ぬいぐるみを抱きしめたままの長身少女が、天井を見上げて思い出すように呟く。

 

「ごぉー」

 

 アイマスクの男は寝息を立てた。

 

「アイツが、か」

 

「”蒼鎖の乙女(アンドロメダ)”……彼女が?」

 

 コートの男(第四位)に、鏡の仮面(第八位)が言う。

 

「地柩セト」

 

 そして、ノアと呼ばれた灰の女性が静かに名前を呟いた。

 

「彼女はレガシーが破損していたと聞いてましたが」

 

 それぞれの反応を見渡し、カドは告げる。

 

「うむ。照文のやつがやってくれての、アルマーは復活した。報告書に記載した現地での一回目の反撃者というのは、あやつのことじゃ」

 

「まちなさい」「それはありえない」

 

「ふむ?」

 

「「無知なる乙女アルマーは、修復不可能だったはず」」

 

「それは、お前さんらの力札修復者(カード・コンサバター)が準備不足じゃったんじゃろう」

 

 双子の言葉に、ひらひらとカドは手を振った。

 

「照文……Mr.テロップでしたか。特級力札修復者(カード・コンサバター)と名を聞きますが、噂通りのようですね」

 

「確保するべきでは?」「保護するべきでは?」

 

「あやつはフリーランスの宣言をしておる。ついでにいえば、さっさと次の仕事に出かけてしもうたわい」

 

 今は何処にいったんじゃろうなぁ、とわざとらしく肩をすくめるカド。

 

「……」

 

 それをノアと呼ばれる女性は静かに見つめていた。

 

「セトの小娘が復帰したのはいいが、ババア」

 

「誰がババアじゃ、シグル小僧」

 

 事実だろうが、と前置きをして。

 

「そんでどうするつもりだ? まさか、復活したから十二聖座(ラスール)に戻すなんて言うんじゃねえだろうな」

 

 シグルと呼ばれたコートの男は深々とため息を吐き出した。

 

「アイツが戻ってきたら、()()()()()()()()()

 

 彼の言葉に、室内が震えた。

 

「はぁ?」

 

 真っ先に反応したのは小柄で豊かな少女であり。

 

「ありえない」「訂正を」

 

 双子の少女が嫌悪するように、自らの仮面を人差し指で叩いて。

 

「うちが負けるとかいってますぅ?」

 

 ぎゅぅっとぬいぐるみを抱き潰すように、長身の少女が笑みを浮かべ。

 

「マア、あのデッキは嫌デスね」

 

 鏡の仮面が、肩をすくめて。

 

「……ん? 会議終わった??」

 

 Goodとプリントされたアイマスクを着けたラフなジャケット姿の男がびくんと起き上がった。

 

「終わってねえよ」

 

「終わったら起こして」

 

「寝るな」

 

「朝から抽選並んでて寝不足なんだよ、おやすみい」

 

 グーとわざとらしく寝息を上げて、腕を組んで座り直すアイマスク男に、誰かがため息。否、誰もがため息。

 

「こやつ自分が七位の自覚はないのか」

 

「あるわけねえだろ、パチンカスだぞ」

 

「……はぁぁ」

 

 カドとシグル、そしてもう1人の女がため息を吐き出す。

 

「んで、推薦でもするつもりか? 聖座の門番(シリウス)さんよ」

 

「頑張って話を戻そうとするおじさん、まっじめ~」

 

「黙れやメスガキ」

 

「なにそれー? そのなんたらちゃんってのはどこにいんの? あたし、顔見に行ってあげよっかな?」

 

「やめとけ」

 

「なんでさ。元十二位でしょー? それならあたしが確かめて」

 

 

()()()()()()()()()

 

 

 シグルは顔の前に手を上げながら言った。

 

「あの小娘は天才だった。【アイツ】もそうだが、二位の小僧に撥ねられても折れなかったからな」

 

 掲げた手の指を一つ、二つ、三つ、四つと曲げて。

 

「順調に研鑽してたなら、おそらく……五位か六位。まあ俺は勝つから、その辺りになるだろうな」

 

「”骸塚王”。それは(ワタクシ)への侮辱ととらえるべきですか」

 

 灰の女が喉を震わせる。

 

現在五位(ノア)が、地柩セトと同じ評価を受けていると」

 

「そう言ってるんだが?」

 

「訂正を推奨します」

 

 カツンと椅子に腰掛けたまま、手に握っていた導師杖が床を叩いた。

 赤と青、白と黒の宝飾が入り混じった斑の宝石を付けた杖が、僅かに光を灯す。

 

「それは侮辱になります」

 

「ハッ、純粋な戦力評価で馬鹿にされてるってか? 色眼鏡が過ぎるだろ、お嬢ちゃん」

 

 シグルはテーブルから足を降ろし、椅子を半かけにまで下げる。

 ノアは椅子から立ち上がり、左右に立つ少女たちの手を借りて立ち上がる。

 

「次の強奪戦を先に行いますか?」

 

「やめとけよ。俺が勝っても渡せるものはなにもないじゃねえか」

 

 互いに左手を掲げる。

 付けていた籠手が、腕輪が甲高く軋みを上げた瞬間だった。

 

 

()めよ

 

 

 凛とした音が響いた。

 黒い波。

 黒く、光を吸い込むような黒髪は長く、生きたように波打っている。

 波打つ髪は、それと正反対に真っ白く、透けるような肌に絡みつき、豊かな肢体を覆っていた。

 美しい女だった。

 執念と情念に狂わされた芸術家が磨き上げた彫像のように美しい。

 彼女が纏う黒を基調とした染色のタイトドレスは、腕輪のように、首飾りのように、腰巻のように、足枷のように、金糸で装飾されている。

 その豊満な身体は大きく胸元の上半分を剥き出しに、首には黒いチョーカーに純銀の鎖めいた輪が飾られていた。

 

「ここは闘争の場ではない」

 

 深く、腰元まで切れ込みの入ったスリットの足を組み直す。

 

「それとも我が()ろうか。【第四位】、【第五位】」

 

 紅く瑞々しい唇を歪め、金属製の扇子を広げて美しい女は笑った。

 

「……”祓魔紙(ふつまし)”」

 

 十二聖座のトップ3。世界最強の三人の一角。三英傑(トライスター)

 世界最強のデッキ所持者にして【運命の決定者】

 

「やめとく。お前(三位)とやり合うのはもっとデカい舞台がいい」

 

「その挑む気概はよし。我も負けるつもりはないがな」

 

「歴史上初めての野郎トップスリーってのも楽しそうだろう」

 

 犬歯も剥き出しに笑うシグルに、扇子で口元を隠しながらクスクスと笑い声を上げる。

 パチンと鋼鉄の扇子が閉じた。

 

「地柩セトの復活は喜ばしいが、常盤カド。聖座の門番(シリウス)として彼女を聖座に推薦すると?」

 

「いいや、そのつもりはない」

 

 カドはフルフルと首を横に振る。

 

「あの子はもはや教会を脱し、聖座からも降りた在野の者だ。戻る気があるならともかく、そういうつもりもいまのところなさそうじゃ」

 

「強いのにか?」

 

 ライダースーツの女が、腕を組みながら椅子に背を預ける。

 

「十二聖座は誰よりも強くあらねばならないのではなかったのか?」

 

「だーよねー。あたしらに蹴り落とされた”黄昏”さんとか、”煙の塔”が可哀想じゃ~ん?」

 

「じゃかましいわ」

 

 むんずと平べったい胸の前で腕を組み、カドは告げた。

 

「強さは史上、だが必要最低限の人間性はいる――これは社会人として当然のことじゃ。今の時代は強さがあれば問題なしとはいかんん」

 

「やっだっー。カドちゃん、あたしのこと超絶いい子だって?」

 

「通りすがりの人間を射的の的にはせんじゃろ?」

 

「――どこの野蛮人?」

 

 ちょっと真面目に引いた少女を横目に、”祓魔紙”は手を叩いた。

 

「で、地柩セトに戻る意思はないと」

 

「そうじゃ」

 

「よろしい。気概もないものが加わる席はなし、こちらから動くことはない」

 

 パチンと音を鳴らして、”祓魔紙”の扇子が閉じた。

 それが決定。

 

「これは十二聖座(ラスール)の選択だ。問題は?」

 

 十二聖座の盟主としての言葉である。

 

「……」「……」

 

 それに椅子に座らぬ二人の少女は静かに仮面の位置を直し。

 

「ありません」

 

 ”導き手(ノア)”は短く返事を返す。

 そして、沈黙。

 1人椅子を漕いでいる背の低い少女以外は、誰も答えなかった。

 それに、ふぅっとカドは静かに息を漏らした。

 

「カドよ、他に報告は?」

 

「ないぞ」

 

「よろしい。では本題に入る」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 その言葉に誰もが――驚かなかった。

 

「まあ、逃げ回ってた”101人目”が動いてたってことはそういうことか」

 

「教会でも既に予測されています」

 

「マジでくるんだ。あの変態さんみたいなの出てくるの? やだぁ」

 

 ライダースーツの女、ノア、小柄な少女の反応。

 

「本格化はまだこれからだろうが、忙しくなるな」

 

 ゴキリと首を慣らして、シグルは嫌そうに顔をしかめた。

 

顔差し(ネームド)のカス共が調子に乗る時期だ、めんどくせえな」

 

「ワタシも苦労する時期であります。闇のカードもそうデスが」

 

 鏡の仮面がフルフルと首を横に振り、肩をすくめた。

 

「世界が荒れます。()()()()()()()()()()()()()()

 

「ぅぅー平和にファイトがしてたいよぉ」

 

「ぐがー」

 

「というか一位と二位はまだこないの? あたし、一位の人の顔見たことないんですけどぉ」

 

「”魔王”の奴なら嫁さんと旅行中で欠席。”覇手”のボケなら連絡が取れねえし、この間フランスからの絵葉書がきたぞ」

 

『……』

 

 ”祓魔紙”と”導き手”は同時に天井を見上げた。

 

「……ま…………まあなにかあれば勝手につっこんでいくじゃろ、うむ」

 

 カドは自分のお腹に手を当てながら、そう呟いた。

 

「ふぅう……まあよい」

 

 パンっと、”祓魔紙”が手を叩く。

 

永久蛇(ツァラトゥストラ)

 

「うむ」

 

 白い髪をなびかせた和風ドレスの少女体躯――第十三位【常磐(ときわ)火戸(カド)

 

死笑の息吹(ブレスキス)

 

「あいあい」

 

 八重歯も初々しく、愉しげに笑う雌童(メスガキ)――第十二位【加藤(かとう)リオ】

 

怒陽輪(サンライト)

 

「ここに」

 

 紅く怒りの左面を付けたシスターは右手を胸に――第十一位【マゼンタ】

 

白黒(モノトーン)

 

「はぁい」

 

 ぬいぐるみを抱きしめた長身痩躯の少女はうつむく――第十位【灰星ジュセル】

 

悲月牙(ダークムーン)

 

「ここに」

 

 青く涙の右面を付けたシスターは左手に胸に――第九位【シアン】

 

捻じれた鏡(メビウス)

 

「ドモ」

 

 鏡の仮面を付けた怪人はただ頷く――第八位【御鏡(みかがみ) 音子(ねこ)

 

天意無縫(ラックラックラック)

 

「スゥー」

 

 アイマスクを付けたままの男はバッと手を上げた――第七位【キョー・ブライ】

 

灼ける氷河期(ヒートエイジ)

 

「おう」

 

 ライダースーツの女性は手を握り締める――第六位【都刻(ときざみ) アクロ】

 

導き手(ノア)

 

「世界の均衡のために微力を尽くします」

 

 灰色の聖女は両手を胸に当てて祈る――第五位【空葬イドラ】

 

”塵塚王”

 

「俺はやりたいようにやるだけだ」

 

 焦げた髪色の傭兵はくしゃりと頭を掻いた――第四位【土塚シグル】

 

「我、祓魔紙(ふつまし)の名において告げる」

 

 

「世界は変貌を始めている。闇は蠢き出し、今までにないカードの出現が確認され始めた」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「――【接触界戦(バブルマッチ)】が始まる」

 

 

「我らが星となり、夜闇を照らす導きの希望とならんことを」

 

 

『応!!!』

 

 

「……”覇手”と”魔王”は勝手になんとかするだろう」

 

「あいつらだからなぁ」

 

 そうして会議は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 テュルルル。

 テュルルル。

 

「はい」

 

『吾じゃ。ご苦労さまじゃったな』

 

「まったくですよ」

 

『すまんの、一芝居させてしまって』

 

「事前に頼まれた通りでしたが、あれでよかったのですか? 地柩セトの件は伏せておいたほうが都合が良かったと思いましたが」

 

『いずれ教会はあやつの復活を嗅ぎつける。”101人目”の件もあって無視などせん、力あるレガシーの、それも器だった者など放っておかんじゃろう』

 

「だから、ついでに報告したと」

 

『そうじゃ。トップである導き手(あやつ)と使徒二人が知っておりながら、下が勝手にやりました。知りませんでしたなど通らんからな』

 

十二聖座(我々)が証人でもありますからね。シグルさんにも根回しを?」

 

『いんや。軽く雑談はしたが、特に頼んではおらん。単純にあやつが気が利くだけじゃ、態度は雑じゃがいい奴じゃからな』

 

「数少ない古参ですからね、はぁ」

 

『なんじゃため息なんぞついて』

 

「いえ、代替わりしたばかりなのにもうこんな事態になるとは。胃が重くなりますよ、二位はまだ連絡がつきますけど一位はどこにいるか知りませんか?」

 

『吾が知ってたらとっくに呼んでおるわ。まあそのうち適当に敵に突っ込んで爆発四散させてくるじゃろ』

 

「ミサイルかなんかで?」

 

『変わらんじゃろ』

 

「まあ、はい」

 

『魔王のあやつも怒らせないといいんじゃが』

 

「怒ると怖いですからねえ」

 

『なんでこんな一時代にあんな頭おかしいやつが二人も揃ってるのか。おかしい、おかしくない? 頼もしいんじゃが、頭痛い、普通お主が一位でいいじゃろ』

 

「私も次に引き継ぎたいんですけど。いい年ですし」

 

『まだまだお主も小娘じゃろう』

 

「カド様と比べれば誰でも小娘ですよ」

 

『お主もそのうちそうなるんじゃよ、ホッホッホ』

 

「恐ろしいこと言わないでくれません???」

 

『隠居するなら()()()がもっと強くなってくれなければのぉ』

 

「あの子なら相応しい強さになりますよ」

 

『お主の予知か?』

 

「いえ、ただの確信です」

 

『それも当たるじゃろうな……イズ、吾はしばらく忙しくなる』

 

「というと?」

 

『バニラが何故”101人目”に狙われたのかわかっておらん』

 

「企業からの情報では?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。投資することはあっても、基本は経済の邪魔じゃ。吾でさえ直接顔と報告書を見るまで存在も知らなかったようなものを、”101人目”がこの短期間で位置と存在を知るなど不可解じゃ』

 

「確かに」

 

『それに、上盤市での闇のカードの発生率が妙に高い』

 

「……結界に不備でも?」

 

『吾たちで張った結界は正常に作動しておる。()()()()()()()()()()()()()()、裏で動いているやつがおる。吾はしばらくそれを探ってみる』

 

「こちらからも部下を送りますか?」

 

『いや、教会の横槍の口実になる。しばらくはなしじゃ、それにこれが囮の可能性も捨てきれん。主は他を見張っておいてくれ』

 

 

『吾が死んだら、その時は頼むぞ』

 

 

「その時は後はお任せください、託された使命を果たすだけです」

 

『まあ心配するな。人刹もおるし、頼もしい次世代もおる。面白い小僧も見つけたしのう』

 

「?」

 

『……そろそろ傍受されかねんか。ではの』

 

「ご武運を。()()()()

 

『その呼び方は好きではないんじゃが』

 

 ブツン。

 

 切れた受話器を戻し、空いた右手で汗の滲んだ髪を掻き上げる。

 そして、重く感じる胃を、左手で撫でながら息を吐いた。

 

「……忙しくなりますね」

 

 左の薬指に嵌められた質素な指輪を、癖のように右手で撫でながら、背筋を伸ばす。

 

 十二聖座(ラスール)

 三英傑(トライスター)

 世界を背負う三強の一角。

 第三位”祓魔紙”。

 

 常環(ときわ) 依鶴(イズ)

 

 千年にも渡る守護者の末裔である。

 

 

 

 

 





「世界が砕けようとも、我らの意志は終わりはしない! そうだろう相棒!」


                ――狼騎士ガーロ・最後の叫び(崩壊の刻より)
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総合評価:24683/評価:9.45/連載:95話/更新日時:2026年06月06日(土) 09:50 小説情報

OVA:共鳴を使わない男を、共鳴最強の世界三位にぶつけてみた(作者:檻@102768)(原作:俺の切り札は光らない)

 共鳴最強の世界三位。▼ 対するは、エニグマを握るモブ。▼ 望むカードを引き寄せる者。▼ 望むカードを引かずとも、勝ち筋へ辿り着く者。▼ 共鳴という奇跡が実在する世界で。▼ その頂に立つ共鳴使いへ、共鳴を使わない男が挑む。▼ これは、奇跡に祈らない男のエキシビションマッチ。▼※フツオくんのエニグマで、共鳴最強の世界三位に挑む番外編です。▼※一話は導入。▼※二…


総合評価:11128/評価:9.17/完結:13話/更新日時:2026年06月07日(日) 18:00 小説情報

魔法や異能が存在しても、主人公になれるかどうかは別の話(作者:考える人)(オリジナルファンタジー/コメディ)

 中学三年の夏、ごくごく一般的な少年である渡谷(わたがや) 雪春(ゆきはる)は、怪しい男の勧誘を受け、まるでフィクションのような世界――魔法や異能が存在する世界へと飛び込むことになる。異能を学ぶ学園に入学した雪春が望むのは、もちろん漫画やラノベの主人公のような存在になること。夢にまで見た世界が実在していたことで、浮かれ切った雪春はそうなれると信じて疑わなかっ…


総合評価:33961/評価:9.04/連載:101話/更新日時:2026年06月05日(金) 18:02 小説情報


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