【書籍化】俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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 大変おまたせしました!

 本編再開です
 そして、一万文字強になりましたがゆるして、ゆるして!


 
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 ヨン様よりFAを頂きました!
 世の真理を悟ってしまったユウキちゃんです!

 
【挿絵表示】

 もう1点、ヨン様より天都ダムさんによるスピンオフ「災禍に祈りは届かない」の
 加藤リオちゃんこと後の聖座12位のFAを頂きました!
 うお、小学生だー!!
 うおおおおおお やめて、紐を引っ張るのは! 鳴らしちゃダメです!

 
【挿絵表示】


 最後に BBBBBBBBb バストではないよ!
 ヨン様ありがとうございます!! 


 
【挿絵表示】

 朽木様よりFAをたくさんいただいてました!
 これはドロシー! うお、でっか!

 
【挿絵表示】

 加藤リオちゃんのFAです!
 同人でも口絵でいただいております! すご、でっか!
 これで小中学生なんですよね、ゴクリ



第2.5期 漫画版2(1~2クール中間)
八十二話 カードはショップで購入する


 

 

 シャッフルする。

 オートシャッフルにかける。

 上から5枚引いて、テーブルに並べる。

 上から1枚引く、テーブルに並べる。

 上から1枚引く、テーブルに並べる。

 上から1枚引く、テーブルに並べる。

 シャーペンでノートに記入する。

 

「んー」

 

 並べたカードを片付けて、シャッフルする。

 オートシャッフルにかける。

 上から5枚引いて、テーブルに並べる。

 上から1枚引く、テーブルに並べる。

 上から1枚引く、テーブルに並べる。

 シャーペンでノートに記入する。

 

「……あと0.5枚欲しいです」

 

 プレイングでカバーするしかないでしょうか。

 まあせっかくなので長期の動きを想定して捲っていると、視界の端から近づいてくる人影が見えた。

 

「すみません、ドロシーさん。今大丈夫ですか?」

 

「はい、ドアに何の用でしょうか?」

 

 確かLife部に最近入った娘だったはず。

 私が名前で挨拶すると嬉しそうに笑顔を浮かべてくれました。

 

「……あの、なにをしてるんですか?」

 

「? ああ、デッキの動きをチェックしてたんです」

 

「チェック?」

 

 テーブルの上に並べた5枚――メインデッキから引いた初期手札の想定。

 そして1枚ずつ別で並べたカード――ドローで引いた想定。

 さらに表向きで重ねてあるライフデッキと、横においてある十面ダイス。

 仮想ファイト、というほどでもない確認作業。

 

「ええと、これどういう?」

 

 ピンとこなかったのだろう。

 首を傾げる彼女に、ああ私もそうだったなと懐かしい気持ちになる。

 

「Lifeって最初に5枚引きますよね」

 

「そうです」

 

 何を当たり前っていう顔をしている。

 

「だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……?」

 

「そのあと1枚ずつ引いて、その動きがちゃんと出来るか出来たか確認してるんですよ。あ、ダイスはダメージが入るかどうかの変数ですね、どれだけ入ったかランダムで決めるのには便利なので」

 

 とはいえまずはダメージがなくても動けるのが前提だ。

 最初の初手でライフカードは2枚引けるが、1ターンにおける色彩は1枚だけ。

 1コストずつ増えてくるコストと1枚ずつ補充出来る手札で、どうやって動いていくか、どれだけ耐え凌げるかのシミュレーションをする。

 ダメージを受けて増える色彩を前提としていたら安定性がない。

 でも受けずにいたらコストが少なくて、使い所が難しい。

 悩ましいこの作業が私は好きだ。

 やればやるだけ自分の組んだデッキの動かし方がわかるし、回すことに手が馴染んでいく気がする。

 水泳で泳ぐ時にタイムが縮まった時よりも、一?きごとに掴んだ手の感触、流れに手応えを感じた時のほうが嬉しくなる。

 なによりもテーブルでの作業の時は、1枚しか入れてない”天界龍”が普通にこないので助かる。

 ファイトの時は無駄に早めにくるせいで本当に邪魔くさいし、なくても勝てるプラン立ってることのほうが多いんだからデッキの奥底に沈んでいて欲しい。

 あいつがいるっていう情報を掴んで対策させられるだけでアドなのだから、出てこなくていいんだから。

 とまあ、これもフツさんから教わったことです。

 

「……あの」

 

 といった用途を説明したところ、何故か申し訳なさそうな、納得してない顔をされてしまいました。

 どうしたのだろう。

 

「――それってファイトすればいいんじゃないですか?」

 

 ……ああ。

 

「デッキの調子とか強さってファイトしたほうがいいのでは? 練習は練習ですし、やっぱり本番(ファイト)とは違うみたいな」

 

「んー正論ですけど、問題が一つあります」

 

 私は自分の表情が変わっていないかどうか気をつけました。

 

「問題?」

 

「ファイトには時間がかかりますから。特にボードは、気軽にやるには手間ですし」

 

 ボードファイト1回やる時間で、テーブルでのファイトなら2回、慣れれば3回以上は出来る。

 短い期間で集中してやるなら圧倒的にテーブルファイトのほうが圧縮出来る。

 もちろんボードでのファイトで本番慣れするのも大事だし、そこでしか見て取れない情報、相手の動きの挙動や呼吸のタイミングなどの観察力も大事だけど。

 まずはテーブルで強くなること、これが前提です。

 

「あと何よりも」

 

「よりも?」

 

「相手がいないとファイトは出来ませんから」

 

「あー……」

 

 といっても私は家でも練習するために、組んでもらったデッキを相手にファイトしてますけど。

 私のようなカウンター使い――パーミッション使いは、何よりも相手のデッキ、その動きを掴まないといけない。

 なにされても大丈夫なのか、なにをされたら困るのか、相手がなにをしたくて、相手がどうやって勝つつもりなのかを掴む。

 そのためには色んなデッキの動きを戦う側だけじゃなくて、使()()()()()()()()()()()()()()

 だからこそリナさんやジグ部長のデッキはもちろん、エレウシスで戦ったファイターたちのデッキは大体記録している。

 ジグ部長がやってくれた。

 部長は特別な記憶能力があって見聞きしたことは何度でも間違いなく思い出せるらしく、それを応用して出されたカードやその説明を思い出してデッキ内容……いわゆるレシピといえるものを大まかに確保出来ている。

 もちろん実物がないし、あってもそのデッキとの共鳴が出来るかどうかは別問題だから同じプレイの再現は出来ない。

 だけど。

 

 ――カードはそこにあるんだし、一枚ずつ捲って、どう使っていくか確認することは出来るでしょ?

 

 カードを捲って出していくだけなら誰にだって出来る

 

 だからどんな風に使うべきか、この手札ならどう考えるのかを疑似体験して学ぶ事は出来る。

 エレウシスに参加している時は必死になって相手のデッキ、過去の戦術やビデオから対策をしていてなんとか勝ち上がっていったけれど、それから反復作業のつもりで行っていたこの修練で今の私は、エレウシスの時よりもずっと強くなったという確信がある。

 はっきりいって夏のエレウシスは運がよかっただけだ。

 有力とされていたファイターたちが何人も欠場していたこと。

 あの女帝が連覇のし過ぎて退屈をしていたこと。

 そんな吊り橋めいた奇跡の連続でなんとか勝てた、それが私たちの結論です。

 

「と、そういえば何か用があったのでは?」

 

 考え事からふと気を取り直して確認する。

 何か用事があって彼女は話しかけてきたような。

 

「ああそうでした。ちょっとドロシーさんに相談があって」

 

「なんでしょう?」

 

「その……あたしのデッキ、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「それは……相性が悪いという意味でしょうか、それとも使い勝手が悪いということでしょうか」

 

「? 相性が悪い以外あるんですか?」

 

 不思議そうに首を傾げる彼女に、笑って誤魔化しました。

 

「つまり適性ですね。デッキを見せてもらってもいいですか?」

 

「はい。戦旗傭兵団(バナー・ナイツ)です」

 

 ……戦旗傭兵団。

 覚えがある、確か少し前に出てきた新しいテーマだ。

 朱と白のカードで、指揮官になるクリーチャーを中心に、トークン類を並べて戦うビートバーンデッキ。

 専用の秘宝もあって強化を行い、大型クリーチャーの攻撃も集団でブロックしたり、浸透戦術って言ってた複数クリーチャーによる攻撃で相手のライフを奪い去る制圧のデッキ。

 上級クリーチャーには貫通もあって高い打点があるけど、何よりの特徴がクリーチャーの数。

 なによりも経過するべきなのは、その連続攻撃で間一髪を始めとする呪言の無駄打ちを誘発させること。

 有効な打点の数が強み……だったはず。

 

「いいテーマですね、それで相性が悪いと思ったのは?」

 

「その、ファイトをする時上手く手札に集まらないんです。これってわたしに才能がないんでしょうか」

 

 手札に集まらない。

 なるほど、自覚はしていると。

 

「わかりました。確かめてみましょう」

 

「確かめる?」

 

「簡単なテストです。ちょっとそこのストレージボックスを取ってもらっていいですか?」

 

「は、はい」

 

 部員の皆が普段使わない、予備カードいれになっているストレージを取ってきてもらう間に、テーブルの上を片付けておく。

 

「まず40枚、適当にカードを取ってもらっていいですか?」

 

「40枚ですね」

 

 彼女がカードを集めている間に、オートシャッフルマシンのセッティングを行う。

 

「40枚です」

 

「ではそれから1枚抜いて、このカードを入れてください」

 

 私が差し出したのは、今さっき預かった彼女のデッキ。

 戦旗傭兵団のクリーチャーカードを1枚だけ。

 

「入れましたね。じゃあこれをシャッフルさせます」

 

 40枚のカードセット――デッキをセットして、シャッフルマシンの起動スイッチをいれる。

 機械の力で自動的にシャッフルされたのを取り出し、彼女に渡す。

 

「上から5枚引いてください」

 

「はい……あ」

 

「――戦旗傭兵団はありますか?」

 

「入ってます」

 

 なるほど。

 まあこれだけなら確率は40分の1。2.5%だ。

 運よく引けない確率ではない。

 

「じゃあ次、この1枚をストレージのカードと交換してまたシャッフルします」

 

 取り替えたカードを1枚から2枚に増やし、先ほどと同じ手順を繰り返す。

 それを3回ほど繰り返し、結果は――2枚、2枚、2枚。

 

「じゃあ次は3枚でやります」

 

 同じ手順を繰り返す。

 次は4回――3枚、2枚、3枚、3枚。 

 

 これを4枚、5枚と増やしていき……

 

「大体()()()()()()()()()()

 

「……あのやっぱり才能ないんでしょうか、私」

 

 泣きそうな顔を浮かべる彼女に、慌てて手を横に振る。

 

「いえ、十分です。キープ数はここから馴染んでいけば伸びていきますよ」

 

「ほ、本当ですか?」

 

「はい。ファイターが成長するのもありますが、デッキも使い込めば使い込むほど伸びますから」

 

 これは事実だ。

 一般的なファイターはそのデッキを使い込めば使い込むほどデッキが応えてくれるようになる。

 リナさん曰く、手に【馴染む】

 ジグ部長曰く、ファイターに【最適化】する。

 私でも初手で数枚キープしておきたくなる<反応解呪>や<沈黙>が大体引ける。

 

「戦旗傭兵団をこれから使っていくというなら大丈夫だと思いますよ」

 

 大事なのはそこからコストや効果、枚数の調整などのデッキ構築に、使うカードとかの効果憶えや、切るべきカードに対する習熟(プレイング)

 そしてなにより――

 

 引きたいカードを引けるかどうか

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

「うーん、やっぱりブレイバーとの共鳴がすごいねえ」

 

「分かってたけど、なんかこわいよぉ」

 

 私の前に広げられたのは何枚ものブレイバーのカード。

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()

 一番下……ひっくり返したから実際には一番上(デッキトップ)から15枚が私のデッキ(ブレイバー)で、残り全部がストレージからの有り合わせのカード。

 

「……20回やったけど全部上から15枚がブレイバーで残り全部違うカードだったね」

 

 うーん寵愛クラスだなぁとセトさんが言ってるけど、私は頭を抱えるしかなかった。

 

「おかしい、おかしいよ……私、数学で確率とか習い始めましたけど、こんなことないよね?」

 

「さんすうじゃないからまちがってるんじゃないのぉ?」

 

「算数なら私も習ったよ~」

 

 バニラの意見に、首を横に振って否定する。

 どうなってるんだろうか、これ。

 私おかしいんじゃないの、これ? いやもう色々今更だけどおかしいよ。

 

「アリーシャは普通にバラけてるのに」

 

≪私もなんかバラバラの位置よねぇ≫

 

 途中で一枚だけ刺したアリーシャは普通だ。

 1回デッキボトムになってた以外は上だったり下だったり、そう思ったら真ん中ぐらいに3回あったりランダムだった。

 ブレイバーたちと違う。

 

「……でも、私今までたくさんファイトしてたけどこんな変な偏りしてなかったよ?」

 

 使ってるクリーチャーは統一したほうが強いからブレイバーだけど、それ以外の魔法や秘宝とかは専用のもあるけど、モブさんやサレンさんから貰ったりした汎用もいれてる。

 

「大体初手でブレイバー3~4ぐらいで、魔法とか汎用で2枚ぐらいだし」

 

「うん、それじゃユウキちゃん。確かめてみようか」

 

 そういってセトさんが、今度は裏向きに戻したデッキをマシンでシャッフルする。

 

「それじゃユウキちゃん、これ5枚。引いてみて」

 

「またブレイバーになるんじゃ?」

 

 言われたとおりに引いてみて、5枚引けたのでひっくり返す。

 <ブレイバー・跳躍>、<ブレイバー・灼刃>、<ブレイバー・閃光>、<解火>、<ブレイバー・鉄肌>

 ん?

 

「1枚だけ魔法入ってる」

 

「あー予想通り予想通り。誤差だからいいよ、それじゃまたシャッフルかけるね」

 

「?」

 

 セトさんが私の手札を含めてデッキに戻して、手でシャッフルする。

 モブさんのにも負けないぐらい滑らかなファローシャッフルを2回。そしてまたマシンにセットする。

 

「次はこれからファイトするっていう意気込みで引いてみて」

 

 意気込み?

 

「こういう手札から始めたいなーっていうのを考えながら引くの、はい、どうぞ」

 

 ファイトする時のような気持ち、手札。

 なんとなく息を吸って、渡されたデッキからドローする。

 

 ――<ブレイバー・閃光>

 ――<衝撃>

 ――<発火の秒針>

 ――<ブレイバー・鉄肌>

 ――<鉄の結界>

 

「あれ?」

 

 ちょっとクリーチャーが少ないけど、悪くない手札だ。

 メインデッキだけのお試しだから色はバラバラだけど、赤白にすれば普通に動ける。

 

「次引いてみて」

 

「はい……あ、ブレイバーだ」

 

 どういうことだろう。今までとぜんぜん違う?

 

「これがね、()()()()()()()()()()

 

「ファイターの力?」

 

「”支配率”。ファイター自身が自分のデッキをどれだけ掌握してるか、自分の望むカードを()()()()()()

 

「えらんでひく……?」

 

 それって共鳴率と違うのだろうか。

 私とバニラが首を傾げてるのを見て、セトさんは苦笑した。

 

「えっとね、厳密に話すと難しいし長くなるからざっくばらんに説明します。共鳴率と支配力は相互に左右してるけど、別のものなの」

 

「別のもの」

 

「そう。共鳴率っていうなればね、カード――デッキからファイターに【どれだけお膳立てしてくれるか】っていう目安なの」

 

 お、お膳立て……??

 

「そう、お膳立て。引きやすいように最初に共鳴するテーマを初手に集めて、デッキの一番上にかき集めてくる。これを使っていいよ、これを使え、これしか使わせない、そういうのが共鳴するデッキの意思」

 

「……なんか余計なお世話みたいに感じるんですけど」

 

「何事もやりすぎはよくないっていう話。喉がカラカラだから冷たいコップ一杯の水をくれるだけで十分なのに、バケツ一杯の氷水を投げ込まれたら嫌でしょ?」

 

「それは誰だって嫌だよ!」

 

「人によっては共鳴が強すぎて、そういうデッキに押し潰されて自分のやりたいように動けないファイターがいる。いわゆる【寵愛】っていわれるクラスがそれ」

 

 あ、さっき言ってた奴だ。

 もしかして私ってすごい共鳴率が高いの?

 

「で、でも、私そんなことになったことないですよ? ブレイバーデッキで! デッキからそんな悪意みたいなの感じたこともないですし」

 

「うん、基本的にデッキには善意も悪意もないよ。ただ応えてくれる、使ってくれるファイターに応えたいっていう反応があるだけ、それが重いか軽いかは人それぞれなんだけど……そこに出てくるのが支配率」

 

 ピッと立てられたのが人差し指。

 

「――ファイターからデッキに対して要求を通す力だよ。どれだけファイターがデッキを使いこなしてるか、掌握……支配出来ているかを示すという意味で支配率って言われてるんだ」

 

「支配出来てるか……?」

 

「そう。殆どのファイターはね、共鳴率――それだけでデッキを選んでるんだけど、それは【デッキに使われてる】の。デッキから配られた手札、自分で引いたわけじゃないカード、どれだけ組んでもデッキが認めたカードしか上を占有して、()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()

 

「そんな……」

 

「そういうこともあるの」

 

「そんなのって……ただのデッキの奴隷じゃないの?」

 

「――昔はね。デッキが主で、ファイターはあくまでもそれを使うための手足。札闘士(ファイター)と言われてたこともあるぐらい」

 

 なにそれ。

 

「だから忘れないでユウキちゃん、ファイターとデッキは対等なの。どっちが上とか、下とかはないの。それぞれにデッキにどう扱うか思っているかは人それぞれであっても、カードがなければそれを使うことは出来ない。逆に、カードは人がいなければ力を発揮出来ない。どちらも一緒にあってこその関係で、共に戦う相棒であり、半身であるもの」

 

 そう重く言えるのはセトさんが精霊だからなのか、それとも歴戦のファイターだからなのか。

 いや、多分両方。

 両方があるからこそこれが正しいんだってわかった。

 

「だから、ファイターはデッキに対して従うだけじゃ駄目。自分の理想を、より勝てる先への展開を意識しないといけない」

 

「展開を意識する……?」

 

「デッキの中にいるカードはね、自分とデッキの中のことしか見えないの」

 

 セトさんはバレッタで出した両目を指差して、それから私の手を指差して。

 

「知ることが出来るのはこの手と」

 

 そして、私のおでこを優しく突いた。

 

ファイター(貴方)が想像した未来だけ。ファイターはね、カードたちよりも広い世界を見て、連れて行ってくれる灯火なんだ」

 

「灯火……」

 

 うん、そう、とセトさんは優しく笑って、私の両手を握った。

 温かい手だった。

 

私たち(カード)も知らなかった力を、その可能性の先を引き出してくれる。それがカードたちが求めるファイター、希望なんだ」

 

 そんな温かい手を私は握り直す。

 

「うん、わかった。私、頑張る!」

 

「うん、頑張れ。これからだよ、ユウキ少女(ガール)♪」

 

「わらわ、わらわ、わらわもこれからじゃないのー?」

 

「はいはい、バニラもね。これから強くなっていこうねー」

 

「とりあえずデッキが欲しいー、モブが作ってくれたデッキとかー」

 

「……レンタルデッキでも普通に強いのに、フツオくんのデッキ渡したらどんだけ強くなるのか怖いんだけど」

 

 私も怖い。

 バニラ、記憶ないはずなのにあの日本支部社長の時のプレイングとか引き取り戻したらどうなっちゃうんだろう。

 サレンさんと二人がかりでなんとかだったのに。

 ……もしかして店長より強くなっちゃう? いやいやいや。

 

「――そういえば」

 

「うん?」

 

「私と相性の良いテーマ探してたんじゃなかったっけ?」

 

 なんか途中からブレイバーとの適正高いねぇって話題にズレてたような。

 

「あー、そうだねえ。他に適正探すなら、バラバラのテーマのを5枚ずつ集めて100枚のデッキにして、ドローチェック。それで集まるテーマの比率ごとにチェックを繰り返していくっていうテスト方法もあるけどやる?」

 

「それ、どれぐらいかかるの?」

 

「うーん、すぐに用意できるテーマだけでも2日ぐらいかかるかな。魔法とか、クリーチャーとか、秘宝とかごとの比率分かれてることもあるから、精密なチェックなら一週間ぐらいかかるよ」

 

 長い、長くない??

 

「教会とか、ファイターの専門機関なら計測用の機械も使ってだから一月ぐらい検査入院することもあるし短いほうだよ。Lifeのカードの種類なんて万単位あるんだから」

 

「いやいやいや、そんなのやってたら死んじゃう! もっと効率よくいこうよ、効率よく!」

 

「それじゃあ相性がいいカード類をリストアップして、それを入れたりしてチューニングしていくしかないね。新デッキを新しく組むならまた別だけど、そのつもりはないんだよね?」

 

「うん、まだ私のデッキは強くなれると思うから」

 

 サイドボードを含めて、組み直すレシピは作ってる。

 けどもっと違う動き、パワーを上げるには新しいカードが必要だと感じてる。

 

「フツオくんから一人回しの方法は教わってる?」

 

「あの、初期手札とドローで動きの練習だよね? 教わってるよー」

 

 あれのおかげで家でもササッとデッキの動きが見直せて助かる。

 借りたレンタルデッキと仮想敵にしてるゴブリンヒーローデッキを相手に、私のブレイバーデッキをよく戦わせてる。

 未だに勝率が八割を切れないのが悔しい。

 もう見切ったと思ったら、モブさんが使うと4割ぐらいで負けるし。

 ファイターの腕の差だって? わかってるよ、ちくしょー。

 

「あとはそうだなぁ、あ、ブレイバーだよね? それなら、他のブレイバー探したほうがいいかも」

 

「? ……他のブレイバー?」

 

「そうそう。今のユウキちゃん使ってるブレイバーなんだけど、わりと最近のほうでね」

 

 

 

「――昔、違うブレイバーがあったんだよ

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

「ありがとうございます、ドロシーさん!」

 

「またなにか困ったらドアだけじゃなくて、ジグ部長にも相談してください。ドアはまだ一年生ですから」

 

「はい、あたし頑張ります!」

 

 一通りのアドバイスをして、丁寧に頭を下げていった彼女を手を振って見送ります。

 

「ふぅ」

 

 緊張しました。

 なんでまだ一年なのに、私が指導者みたいなことをしてるんでしょうか。

 

「おつかれ、ドロシー」

 

「おつやでー」

 

「あ。部長、レナさん」

 

 2つの声に振り返ると、見慣れた二人が立っていた。

 

「リナさん、10本ファイト終わったんですか?」

 

「終わった終わった、もう脳回らんから少し休憩やわ」

 

 そういって持ってきていたパイプ椅子を広げてドスンと座るリナさん。

 ジグ部長は苦笑しながら、床に置いてあったクーラーボックスからスポーツドリンクを取り出していた。

 

「ジグ~~。うちの分はー?」

 

「無糖ミルクティーでいいかい?」

 

「アホぉ! 糖分寄越せ! 脳が悲鳴上げてるんやぁ!」

 

「はいはい、アフティー。角砂糖も上げるね」

 

「うめ、うめ……なんでラムネにせんの? 角砂糖だけってイタズラか!」

 

「いやそれがラムネ派と角砂糖派で意見が分かれていてね」

 

「なんでやねん」

 

「あと角砂糖でも白と黒で譲れない意見が出てるんだ」

 

「せめてチョコレートも買えや!」

 

「ブドウ糖が取れるラムネが最強なのに」

 

「ドロシー……? 嘘やろ?」

 

 嘘じゃないですが、なにか?

 私が小首をかしげると何故かリナさんは目をそらしてしまいました。

 

「ま、ええわ。次、ドロシーな。デッキの調整は終わったん?」

 

「はい、後は実戦で微調整すればいいかと。まあ明日もまた違うレシピを試しますが」

 

「すまないね、ドロシー。ぼくたちも調整の相談に乗れればいいんだが……」

 

 

カウンター(パーミッション)には共鳴が乗らない。ぼくたちの構築経験だと役に立たないんだ」

 

 

 夏の時から悔しそうな顔をするジグ部長。

 

「大丈夫です。ファイト相手になってくれるだけで十分助かってますし、構築に関してはフツさん()から色々アドバイス貰ってますから」

 

 カバンに入れてある携帯電話を取り出し、メール画面を見せる。

 画面に写ってるのはフツオさんに送った私のデッキレシピ、その改善案。

 それも3種類もパターンを変えたもので、その一つ一つの使い勝手を確かめていたところでした。

 

「モブかぁ……」

 

「モブくん、本当にこー戻ってきて欲しいなぁ、いや無理なのは重々承知なんだが、うーん」

 

 ジグ部長とリナさんがいうモブ。

 それは当然茂札フツオさんのことです。

 現在進行系で色々あったLife部で彼の名前を直接出すのはあまりいい顔をされないので、代わりのあだ名。

 MeeKing(お店)で呼ばれているあだ名で呼んでいいかとお二人がフツオさんに相談したところ、快諾された名前でした。

 私はあだ名で呼ぶなんて恥ずかしいので、あくまでも彼とか、あの人とか、名前で呼ばせて貰ってますけど。

 

「いや無理なんだよなあ、今だけでも十分過ぎるし」

 

「……やっぱり厳しい感じですか」

 

「ああ。新しい子たちも入ってきてるし、基礎は固まっていくだろうが即戦力が欲しいんだ」

 

「即戦力……」

 

 顧問がいないことによって指導などに割り振られる私たちが自己練習出来ない問題。

 だけど、それにも増して緊急性が高い問題。

 

 

「――エレウシス杯の四人目が要る

 

 

「うちらは前回ノーマークやった。拗ねてドロップアウトしてた奴に、病欠してた奴に、無名のド素人。こんな三人を警戒するやつなんてだーれもおらんかった」

 

「リナの言い方はちょっと自虐的だけど、まあ間違ってはいないね」

 

「せやけど、今度は違う! 完全ガチガチでうちらはチェックされるし、メタも張られてとーぜんや! 一度県予選を突破した学校が、次回はギタギタに一・二回戦落ち~なんてのは珍しくもない話やで」

 

「まあそんな中で何度も連覇、それも個人戦では未だに負け知らずの”女帝”が規格外過ぎるんだが」

 

「あんな例外と一緒にするんやない。ドロシーと同じ枠や」

 

「あの、ドアも一緒にされても困るんですけど」

 

 そんな私の当たり前の抗議を、リナさんたちは聞いてくれなかった。

 

「ともかく一度優勝した以上、出来る限りの努力はする! 少なくともエレウシス本戦で一回戦負けーなんて恥晒したら、手の平がくるっくるされるやろ」

 

「今は潤沢な部活の予算も、次も良い結果を出すだろうという前提での投資だからね。頑張らないといけないよ」

 

「まあドアも負けるつもりで挑むつもりはないですけど……」

 

 Life部の廃部は免れた。

 フツさんとも仲直りが出来た。

 だけど、まだまだ解決するべき問題が先に立ちはだかってくる。

 

 ――次回は最初から本気で吾輩と殺し合え

 

 と、女帝との再戦も約束してしまった。

 そこに辿り着くために努力は精一杯する。

 

「それで有力な四人目って誰か見つかったんですか?」

 

 部員たちの中からいい人がいればよかったのだけど、今のところ並外れて強い人は思いつかない。

 せめて私たち三人を三タテしてくれるような人でもいればなぁ。

 

「うむ、幾つか候補を見繕ってたんだが1人有力なファイターがいた」

 

「部員ですか?」

 

「いや、外の人間だ。冬のエレウシスで協力をしてもらえるよう臨時で頼むつもりだ」

 

「助っ人参加ってやつやなー」

 

「どんな人なんですか?」

 

 

 

 

 

【銀弾使い】って言われとる

 

昨年冬のエレウシス本戦参加者だ

 

 

 





 火を灯せ。
 燃やして温めることも、燃やして終わらせることも。
 火から始まるのだ。

                  ――発火の秒針
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【一巻8月20日発売予定】裏切りや絶望が溢れるゲーム世界で、鬱展開全てぶっ壊す(作者:棘棘生命)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

(旧題:裏切り・絶望がテーマの同人ゲー世界で、全てぶっ壊す)▼ニッチな需要のあるゲーム世界で、鬱展開を破壊する話▼鬱を破壊した分、様々な種類の闇は主人公に降りかかるものとする▼オーバーラップノベルス様から、8月20日に第一巻が発売予定です!▼皆様のおかげです。ありがとうございます!▼書影が公開されました!▼【挿絵表示】▼書籍のページはこちらになります!▼ht…


総合評価:16318/評価:8.88/連載:127話/更新日時:2026年07月30日(木) 17:19 小説情報

おつかれ勇者とつるぎの魔女(作者:調味のみりん)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

▼『伝説の調律者となり、世界の英雄と共に魔王を討て!』▼
——そんなキャッチコピーで人気を集めたソシャゲ『ハールドファンタジア』。▼ガチャからは星6レアが排出され、プレイヤーは英雄たちと絆を結び、壮大な物語を描いていく……はずだった。▼だが、星5キャラ『王国の勇者ルーク』は違った。
性能は平凡、メインストーリーにはほとんど登場せず、誰からも忘れられた存在。▼…


総合評価:26604/評価:9.47/連載:109話/更新日時:2026年07月31日(金) 06:28 小説情報

魔法や異能が存在しても、主人公になれるかどうかは別の話(作者:考える人)(オリジナルファンタジー/コメディ)

 中学三年の夏、ごくごく一般的な少年である渡谷(わたがや) 雪春(ゆきはる)は、怪しい男の勧誘を受け、まるでフィクションのような世界――魔法や異能が存在する世界へと飛び込むことになる。異能を学ぶ学園に入学した雪春が望むのは、もちろん漫画やラノベの主人公のような存在になること。夢にまで見た世界が実在していたことで、浮かれ切った雪春はそうなれると信じて疑わなかっ…


総合評価:36359/評価:9.08/連載:108話/更新日時:2026年07月26日(日) 17:02 小説情報

OVA:共鳴を使わない男を、共鳴最強の世界三位にぶつけてみた(作者:檻@102768)(原作:俺の切り札は光らない)

 共鳴最強の世界三位。▼ 対するは、エニグマを握るモブ。▼ 望むカードを引き寄せる者。▼ 望むカードを引かずとも、勝ち筋へ辿り着く者。▼ 共鳴という奇跡が実在する世界で。▼ その頂に立つ共鳴使いへ、共鳴を使わない男が挑む。▼ これは、奇跡に祈らない男のエキシビションマッチ。▼※フツオくんのエニグマで、共鳴最強の世界三位に挑む番外編です。▼※一話は導入。▼※二…


総合評価:15395/評価:9.18/連載:20話/更新日時:2026年08月03日(月) 18:00 小説情報


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