うおおおおかけた!
会話メインですが、七千文字で長くなって申し訳ない。
きゃっきゃうふふなキマシタワー会話と、挟まってる邪魔者をお楽しみください。
今回のお話は丸々漫画には収録されていません、当たり前ですね?
ヨン様よりドロシーとエンジェルハイロウのFAを頂きました!
ドロシーは可愛いですねね!
でも多分それただの素引きなんですよ、君の。
【挿絵表示】
朽木様より可愛いユウキちゃんを頂きました。
ぷんすこ、出番が少なくてごめんね?
【挿絵表示】
困ったな。
受け取ったらさっさと去るつもりだったんだけど。
「何でも聞いてください!」
むんっ、なんて可愛い気合をいれられたのでそれが出来ない。
ドロシーちゃん本当に素直だなあ。
「ありがとう。ともかく、ちょっと見させてくれるかな?」
「どうぞどうぞ」
ノートに書かれた文字は、見かけによらず少し丸っこい女性の文字。
そして、そこに書かれた研究対象の名前。
「フェムス・コンカレント」
ノートに記された名前を読み上げる。
……似てるな。
聞き覚えも見覚えもないが、ひっかかる名前だった。
――”
迷宮使い、女狐、天才ビルダー、コントロール愛好家、前科無しの潜在詐欺師、属性過多ゴスロリ、歩く姫サーコントロール。
通称【コン】さん、今でも思い出せる前世の知り合い。
フェムス・
それにカレント……確か現在って意味だよな、それで今。
……偶然か?
正直こじつけと言われたら否定出来ない。
名前が和名じゃないし、明らかに外国人だろう。だが俺だって僕の名前とは全然違う。
……もしかしたら、
「それが
僕の情報アンテナが低いだけかもしれないが。
「まあね。大体みんな女帝って言えば通じるからね」
「二つ名が有名過ぎるやつやなぁ、うちも名前言われてもパッと思いつかんわ」
「コン様って取り巻きの人たちから呼ばれてましたね~」
マリア様で、ウォッチメンで、シースルーな世界の話してる?
実在するんだ、そんな話。
驚愕しながらノートを読み進める。
そこには過去に女帝が使ったカードと、湊手嶋さんがその目で見たファイトでのカードの切った順番、タイミングなどがわかりやすく書いてあった。
……このカード、デッキレシピ。
「失礼。ちょっとテーブルの端っこ借りるよ」
腰に付けておいたデッキケース、金属の奴を取り出す。
「なんや。すぐにケース取り出せるようにしてるんか?」
「まあね。してないと戦えないでしょ、死ぬし」
「し……?」
ケースから取り出したデッキを分解し、ノートに書かれたものと同じカードを抜き出す。
1、4、9、13……大体六割ぐらいか、同じなのは。
くそ、必須カードレベルな奴をレアで揃えやがって。
とりあえず同じ奴だけ抜き出して、それ以外のカードは裏向きにしてまとめる。
そして、僕はノートを見ながらカードを順番に並べていく。
――色彩、ゴー。
……色彩、戴煌騎兵。エンド――<思考>、墓地に<還元>を……このあと
――色彩、ゴー。
……色彩、道具秘宝<戴煌すべき剣>、クリーチャーにセット――瞬間<還元>で破壊、コスト使い切りで動けない。バトル、ダメージで色彩2枚増やされた。
――色彩、ゴー。
「んー。湊手嶋さん、これ女帝さんのゴーって何秒ぐらいでした?」
「ゴー? ……ああ、ターンエンドか。そうだね、3秒もなかった。すぐにパパって終わらせるから」
「ファイト本当に早いんよな。相手が苦しんでるのばかり憶えてるわ」
「ありがとう」
となると、思考に迷いがない手札だった。
あるいは純粋に回転速度が早いか、少なくとも相手のカードだけみて判断出来るのは自分のデッキを熟知してる証拠だ。
最後の決着までに使った
いわゆるターンの巻き戻しによる手札の検討だ。
「個人的になんですけど。次からはかけたターンの時間とかもメモったほうがいいかもです」
「うん?」
「そのほうがどんな手札か結構分かるから」
「あーわかります。ダメージ与えたり、クリーチャーを出すだけのアグロってあまり悩まないんですよね」
「コスト加速のとか、手札の
「わかりやすく端にまとめたり、手札整理もしてるのいるからね」
ノートで書かれている通りに、カードを切っていく。
考えるべきは使ったフェイズと順番。
ケアは……しているな。
相手の【
新しいものを出すには除去されるか、墓地送り処理前提で新しいのを出して入れ替え――”戴冠”と名付けられた専用ギミックもある。
この入れ替えられた事もケアしながら動いてるか。
「質問。憶えていたらでいいんですが、この4ターン目の戴冠で入れ替えたクリーチャー出した時、時相手ファイターは迷ってました? それとも迷いなくでしたか?」
「ああ。この打ち消しされた奴だね、スッと出して叩き落とされてたかな」
「ありがとうございます……考えなしだと踏んだか」
対戦相手の思考を想像する。
おそらく、女帝の判断がさっさと早かったのとそこまで2体目の戴冠まで打ち消しされなかったから、3体目も素通しになると踏んだな。
手札から推測するに4体目には、<
そのための繋ぎの3体目で切って捨てられた。
秘宝<茨の道>での継続ダメージによる切腹加速で、色彩は増やしてたけど殴ってもらえずに伸び悩んでる。魔石も1枚墓地に落ちたし。
魔法の<ダモクレスの剣>による入れ替えも妨害されてる、かなり苦しい。
ゲームプランがかなりか細い。
これでしかもう勝てないというのは、もうそれしか警戒しなくていいというやつだ。
思考レベルを深める。
会場での試合は見れないが、想像は出来る。
相手のフィニッシュから
「なんか黙ったで」
墓地は上から重ねられたものを見ていく。
それから何があるかないかをデッキから読み取れる。
女帝から見て間違いなくキラダクは未知のデッキではない。未知のデッキなら一回ケアを間違えていた切り方があった。
相手のレベルに応じてカードの切り方は加減が利くものだ。
ならば、この彼女は対戦相手まで熟知していたか?
おそらくしていなかった。
「これは、検討してるのかな」
「見覚えがあるカードですけど」
だから相手のレベルは2ターンの
相手の手札は結構頻繁に出ていたが、握ってたのは常に2枚。
妨害を握ってるかただの切り札を握ってるか、その二択を割るついでにそこで妨害を切るかどうかで判断した。
そのあとのエンド<とんぼ返り>で何も出来ずに戻された辺り、相手の
立て直しが出来ていないあたり、数を出してのリソース勝負と孤絶による押し潰しで勝つつもりで構築を組んでたんだろう。
女帝のレベルは、かなり高い。
切り方でもわかるが、構築でもうわかる。
問題は――
ちょっと言い方は悪いが、このファイトは相手のレベルが低すぎて測りきれない。空中戦になっていない。
他のファイトなら…………
「そのデッキ、もしかして女帝のコピーデッキか?」
ページをめくろうとして、
「僕のデッキのこと?」
「せや」
「よくわかりましたね」
正確には
「そりゃわかるで。結構よくある話やからな」
「よくある話?」
「……エレウシス無敗の女帝。夏も冬も連覇を続ける最強のデッキともなればあやかって、
あ、この世界でもそういうのはあるんだ。
大会で結果残したやつのコピーなんて普通だったけど、リストの公開ないし、共鳴出来ないからしないもんだと思ってたけど。
「まあ
「……出来なかった? レアカードで揃えられなかったとか?」
「いや、あの
「杖?」
「
レガシーか。
エレウシスのチャンピオンともなればそういうレアなカードもいれてると。
……多分これか?
確かに沈黙連打するなら使うよな、女狐も使ってたなぁ。
「んで、話は戻すんやけど……それで、まあ使えなかったんや」
「使えない?」
「二年前だったかな? 女帝が一年の時に、冬の女王って言われてたファイターがいたんだ。極めて高いカード捌きに、潤沢な資金力……八十八星座でも上位の家の後継者で。特徴として夏のエレウシスに出てきた【優勝者】のデッキをコピーして、その夏の優勝者をそれで叩き潰すっていう……まあ趣味が悪い人がいたんだよ」
「おったなあ、夏に出てこないで冬だけ出てイキるケバい奴やったじゃん」
「……なんかオチが見えた気がしますが、それでどうなったんです?」
「うん、個人戦の決勝でね。完全コピーして、あの
おいおいフラグ立ってんぞ。
「で」
「ものの見事に女帝に叩き潰されたんだよ。同じデッキだったのにね」
あー。腕の差が出たか。
「それから優勝していって連覇していく女帝のデッキを真似しようとした人は何人も出た」
「けれど、誰も使いこなせなかった。彼女専用のデッキってのは有名な話さ」
ふむ。
「……それってただの腕の差じゃないのか? デッキを使い込んでないとか、まあ差が出るだろうけど」
「あー」
僕の質問に、何故か三人が顔を見合わせてしまった。
なんだろうか。
「…………モブくん、共鳴率って信じるタイプ?」
「……まあ一応? 実在してるのは知ってますけど」
そう言ったら何故かホッと息を吐かれてしまった。
「じゃあ種明かしするとね、その女帝のデッキは特殊なんだ」
「特殊?」
「そう」
「――
ん?
「できない?」
「そうや。見ればわかると思うけど、女帝のデッキおかしいやろ?」
おかしい?
……いや別にコストカーブとか歪んでないよな、妨害の採用枚数とかが底意地悪いですねとか、趣味悪いですねってのはロックデッキには褒め言葉でしょ。
性癖きっしょとかはちょっと喧嘩になるが、いや
「採用されているカードがね、テーマもバラバラで一貫性がないんだ」
「継ぎ接ぎの死体人形のようだ、とかドアも言われましたね……」
「それだと共鳴って出来ないの?」
統一したテーマとか、それ以外の不純物入れると共鳴率下がるとかはよく言われるけど。
「難しくなるで。ほら、ドリンクバーってあるやろ」
「あるね」
「コーヒーにミルクを数滴いれるだけならコーヒーや。でも1・1・1・1とかで、烏龍茶とかジュースとか炭酸水とかコーヒーを混ぜたら何かって言えへんやろ?」
「リナはミルクたくさんいれないとコーヒー飲めないよね」
「それ関係ないやろ!?」
「ハッハッハ。ま、デッキがあるべき動きがどういう風に動いたらいいのかわからなくなる……って感じかな」
「親和性がある同じテーマ同士じゃないと何を引いたらいいのかわからなくなる、みたいですね」
ふぅむ、なるほど。
感覚ではいまいちピンとこないが、理屈はわかった。
「それだとコンカレントのデッキはおかしいんだね」
「せやな。どんな奴が手にとってもどう引くのか、どう使っていくのかわからない。自分が使っても勝ち目が見えないし、相手に回してももちろん勝てない」
「まさに
「――
「ラビリンス……」
スカーから聞いた名前だった。
……これも偶然か?
「まあともかく有名なデッキだよ。誰にも扱えず、だからなにか特殊な共鳴とか適正があってそれで回してるとか、あるいは思い通りに引きたいカードを全て引いてるんじゃないかとか、色んな噂があったよ」
サレンの同類だろうか。
まあ狙ったやつを全部手が光って引けたらそりゃあ便利だろうが。
「ま、それを覆したのがドロシーなんやけどな」
「? ドロシーちゃんが?」
「あ、はい」
僕が目を向けると、何故か恥ずかしそうに片手を上げていた。
「ええと……フツさんならわかると思うんですが、ドアのデッキって元はフェムスさんのデッキの模倣から始まったんです」
「ぁー……あー、なるほど」
確かに挙動としてはかなり似てるな。
ロックデッキとパーミッション、毛色は違うが、採用されてるカードがかなり多い。
「よくそれから始めようと思ったね? 誰も使えないっていう話だったんでしょ」
「いえ、それが全然知らなかったんです。ドア、ほら初心者だったじゃないですか」
それが今では学生チャンピオンになってるんだから、すごい才能としか言いようがない。
「色々あってドア、すぐに強くならないといけなかったんです。最初はこれが入ってたデッキをそのまま使ってたんですけど」
これというのはあのエンジェルハイロウのことだろう。
そう言えば最初は全然違うデッキだったな。
「そのデッキはどうしたの?」
「
≪クゥン≫
なんか幻聴が聞こえた気がするなぁ。
「それでどうしたらいいのか、色々と資料集めたんですけど。それでフェムスさんのことを知ったんです。この人が学生で一番強いんなら、この人を真似るのが一番確実じゃないかって」
「それで……ロックデッキを? 凄いね」
いやデッキ難易度高いよ、これ。
組むのもそうだけど、プレイングが特にきつい。
「本当に……本当に大変でした」
あ、目が死んでる。
「最初丸々似たようなカードいれたんですけど、どう使えばわからなくて。しょうがないから、バラしてたデッキに使えそうなカードを何種類かいれてみて、家にあるトロルオーケストラデッキ相手に何度か1人で回してみて、そしたらリナさんが襲ってきてそれで感覚掴めてきたなって練習してたら、ただの知恵熱なのにママが心配して病院でみてもらったほうがいいって大げさにして、そしたらジグ部長の気配に気づいて、しょうがないから見に行ったら呪われたカードとかで看護師さんとかが操られてたり、ジグ部長と闇のファイトするはめになりましたし、これから同じような刺客があるかもとかいわれたり、部活での嫌がらせだった黒幕の副部長ぶっ飛ばしたり、大会にでたらでたで変な変質者とか、チャラいだけでフツさんの半分も強くない雑魚に手握られるわ、もー、もぉー!」
「どうどう、落ち着け」
「ごめんねぇドロシー。ほら、パフェ食べる?」
「もらいます!」
パクっと湊手嶋さんから差し出されたスプーンを、口に加えるドロシーちゃん。
うーん、突然のキマシタワー過ぎる。
凄い気まずいんだが、これ僕場違いじゃない? いや最初からそうだったわ。
「大変だったんだね」
「大変でした」
断言された。
「まあそれでわかったんですよ。フェムスさんのデッキ、これは共鳴で回すんじゃないって」
「……共鳴じゃない?」
「はい。これは、手と」
ぺちっと、ドロシーちゃんが白くキラキラとした銀髪に隠れたおでこを手を当てる。
「――
すこしだけ息を吸った。
「フツさんのデッキもそうですよね?」
「……ぁ」
ぁあ。
「…………よくわかった、ね?」
「わかりますよ。だって全然共鳴出来ないじゃないですか。なら頭で考えて、手で使い込んで憶えるしかないです」
「うん。そうだよ。おれの、デッキはそういうもんだから」
「へ、変態や……」
「こわ」
羽島さんと湊手嶋さんが、ケラケラと笑って口だけで非難してる。
どうやら彼女たちの中ではもう答えが出てたらしい。
それが。
俺にはどうしょうもなく、本当にどうしょうもなく、嬉しかった。
「ドM御用達デッキやよな、うん」
「それはちょっと言い過ぎじゃない? 羽島さん」
「頭痛くなるで。ドロシーのデッキと女帝のデッキ、使ってみい。十回もファイトする前に知恵熱で焦げてまうわ」
「なにいってるんですか、フツさんなら余裕で回せますよ。そのコピーデッキが証明です」
「いやいやいや、これまだ組んではいるけど七割ぐらいしか出力出せてないからね? ドロシーちゃんのデッキも独自のものだし、せめて数十回ぐらい回させてほしい。感覚掴む時間が欲しいよ」
「時間があれば使いこなせるっていってるんだが怖い……怖くない?」
「なんでも憶えてられる記憶力があるほうが怖いと思うんですけど」
「記憶出来ても使いこなせるのとは別なんだよなぁ」
「そういうジグは学年一位やで、成績」
「テストの成績とファイトの強さは別だからね?」
わいわいと楽しい会話だ。
この三人が本当に仲良しで、Lifeと部活を楽しんでくれているようで嬉しい。
あくまでも僕は部外者であるが、それでも。
それでも僕が取り残してしまったドロシーちゃんが、幸せになれているようでよかった。
「ああ、そうや」
微笑ましい光景を繰り広げている中、羽島さんがなにか思い出したようにポンッと手を打った。
「女帝やったけど、モブ。アンタと似てたで?」
「? 似てた?」
そんな男みたいな外見なんだろうか。
「
「手袋とスリーブ?」
「そうや。女帝のやつ、デッキのカードにはスリーブ着けてるんやけど」
「それが結構分厚くて。ファイトには手袋を着けてたわ」
俺は、息を呑んだ。
浮かび、流れる葉はどこへ流れ着くのか、沈むのか。
それは誰にもわからない。
――潮流