【書籍化】俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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【注意事項】
 商業TCGあるまじきパワーカード
 ちゃんとチェックしておけよ
 お前正気で刷ってんのか?
 コモンだからとかアンコモンだからチェックが甘かったなんてゆるされねえぞ
 というパワーカードがでてきますが、全て承知の上でごらんください






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 ヨン様より円導ちゃんのFAをいただきました!
 うわああああ早いよぉ!
 ダブダブの制服がとてもかわいらしいですね

 こんな可愛い子に、なんて目を向けるんだ!


【挿絵表示】

 朽木様より素晴らしいFAを頂きました!
 円導ちゃん、きみはわるくない、ないが  カードが悪いんだよ


【挿絵表示】

 ありがとうございます!!!!!
 耐えた、耐えたぞぉ!



八十七話 キャラスリーブはホビーショップで購入し、その上にスリーブを被せる

 

 

 大メタボ時代。

 

 そう呼ばれる地獄の時代、いや環境があった。

 期間にして6ヶ月と12日。

 1度目の緊急制限と二度目の制限改定による禁断じゃない緊急の二度殺し(打ち)によって終焉した忌まわしき時代。

 それがたった4枚のコモンとアンコモンのカードで始まったと言われたら信じられるだろうか。

 

 ドナドーナツ。

 たった5種類しか紙で誕生しなかったテーマ。

 元はアニオリ……俺の見ていなかったアニメで出てきたらしいオリジナルテーマ、その下(・)級(・)4(・)体(・)と(・)上(・)級(・)1(・)体(・)だ(・)け(・)の(・)カ(・)ー(・)ド(・)の(・)実(・)録(・)化(・)。

 

 

 白の<ドナドーナツ シュガーリング>

 (白)の1コス、1/1。誰も出すことなんざない砂糖まみれのドーナツ。

 レアリティはコモン。

 クリーチャーの召喚時に手札から捨てることによって、カラーアイコンの(白)を削減。

 +1/+1の永続強化を行い、【不屈】を付与する不眠不休の栄養剤。

 いやおかしくない?

 

 

 赤の<ドナドーナツ ファイアツイスト>

 (赤)と(1)の2コス、2/1。誰か出すことがあったらいいな、激辛味のツイストリング。

 レアリティはコモン。

 クリーチャーの召喚時に手札から捨てることによって、カラーアイコンの(赤)を削減。正気で言ってるのか?

 パワーを+1し、【速攻】を付与する思わず走り出す元気いっぱい、困惑いっぱいのおやつ。

 なんでこんなの出したの?

 

 

 黒の<ドナドーナツ チョコレートジェリー>

 (黒)と(1)の2コス、2/1。こんなの血迷わないと壁に出さねえよ、チョコレートコーティングの再生持ちドーナツ。

 レアリティはアンコモン。

 クリーチャーの召喚時手札から捨てて、決めた数のライフを支払う。

 そしたら召喚コストから払った分の(黒)が消えて、払った分だけのパワーとタフネスが上がるやつ。

 どうして払えるライフ数を制限しなかった! 再生できなくなるなんてどうでもいいだろ!

 鼻血どころか七孔噴血するわ。

 

 

 青の<ドナドーナツ スカイジョン>

 (青)(2)の3コスでぇ、2/3ねえ。ふーん、飛行ありねえ。

 レアリティはなんで神格レアじゃないんですか、このアンコモン。

 クリーチャーの召喚時に手札から捨てることによって、カラーアイコンの(青)を削減します。

 さらに飛行を失わせるから穴が開いてないから空力性能が死ぬっていうんですか?

 タフネスが+1に永続修整されてぇ、そんでなに?

 【このクリーチャーが戦闘でクリーチャーを破壊したら、1ドローする】の能力が付与されるか。

 そっかそっか、君はそういうことをするんだな。

 なんでこんなのを生み出してしまったんですか。

 

 

 残り1つの上位ドーナツは誰も見向きもしなかった。

 だって普通だったんだもん。

 

 誰もが暴言と共に存在を憎み、誰もが暴言を浴びながらもドーナツを握る。

 使わなければ勝てないが、使えば勝てる、アホみたいな環境の流行。

 握らないやつは少数派のノンクリーチャーのバーン使いやコンボデッキ使い。

 だがやがて誰もがクリーチャーを投入し、ドーナツを握って、ドーナツに支配された。

 脅威のドーナツ使用率97%!(全盛期調べ)

 まさに環境破壊じゃなくて侵略。

 

 その肥え太る悪夢のカードを見て、俺は――

 

 

「コロ」

 

 

 ――とっさに口を塞いだ。

 

「あ、あの大丈夫ですか?」

 

「は、はぁ、はぁ……ダイジョブダヨー」

 

 初対面の女子に向かって吐いていい言葉じゃない殺意を、少し酸っぱい唾と共に飲み下す。

 落ち着け。

 円導さんの顔を注目する。

 あの少し戸惑った顔と出した時の表情。

 

 ――ほうば(ドヤッ)った顔じゃない。

 

 胃もたれするほど見てきたドーナツ使いの甘さを感じる顔じゃない。

 滲んでた額の脂汗を拭って、判断する。

 彼女が抱き合わせセットで出したのは、<戦旗傭兵団(バナーナイツ)・ひた歩む少女スヴェルス>

 つまり<戦旗傭兵団>だ。

 記憶を探るが、ドナドーナツと戦旗傭兵団を合わせたデッキレシピは思い当たらない。

 

 ”グロウアップドラゴン”と青ドーナツを組み合わせた【バルクアップドラゴン】

 同じように決闘能力で目をつけられた<THE・武死道>が定番の相刀だった<大嵐刀>を捨て去り、ドーナツを両手にした【ザ・菓子道】

 ”喰手(ハンドグール)”の基軸クリーチャーが、黒縛りのデザイン――((・)黒(・))(・)の(・)み(・)で(・)召(・)喚(・)コ(・)ス(・)ト(・)が(・)指(・)定(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)た(・)め(・)実(・)質(・)0(・)コ(・)ス(・)ト(・)で(・)呼(・)び(・)出(・)し(・)て(・)、(・)速(・)攻(・)と(・)バ(・)ン(・)プ(・)ア(・)ッ(・)プ(・)で(・)殴(・)る(・)【チョコハンド】を始めとしたハンドグール派生の【ハンドーナツ】

 だって女の子は甘いものが好きだもんとでも言いたげな姉妹契約を持つ<Si☆STAR>と<Re★Lyrrc>のダイレクト強化。

 20円のカスレアから瞬く間にトップメタのエースの座を奪い取ったドーナツバブルの【メタボドラゴン】

 思い出すだけで滲む脂汗がラードめいたねばつきに感じる記憶を検討しても……やはりない。

 この組み合わせはなかった。

 

「それじゃあ、ファイトを続けます!」

 

「どうぞ!」

 

「えと……スヴェルスを召喚しました! シュガー2つの捨て(食べ)た効果によりパワー・タフネスが+2され、5(3+2)/5(3+2)に!」

 

 ノーコストで永続強化されたわ。

 

「そして元々持っていた【速攻】に加えて【不屈】を得ますぅ!」

 

 おいおい、不屈まで生えたわ。

 

「スヴェルスが場に出たことにより、あたしの場に1/1の兵士トークンを2体生み出します! これは【麾下(きか)】……”指揮官”を持つクリーチャーが、あたしのコントロールにある間限り、指揮官の数だけ+1/+1修整されるから……2/2の兵士が2体になる!」

 

 ”戦旗傭兵団《バナーナイツ》”お得意の動きだ。

 大体3ターン目、あるいは赤のマナ加速を使って1ターン目に手勢を並べてくる。

 

 そこに5/5の速攻・不屈持ちの指揮官がいるなんていう定石はなかったんだが。

 

「バトル! スヴェルスで攻撃します!」

 

「ライフで受ける」

 

 それしか出来ない。

 いくぞー! といわんばかりにキラキラした少女指揮官(スヴェルス)が、右手に槍を、左手にドーナツをおいまて。なんか咥えながら突っ込んできた。

 少女漫画の開始導入か!

 そして、振るわれた槍がぶつかって。

 

 パコーンという丸めた新聞紙で叩かれたような軽い衝撃と共にライフデッキのロックが外れた。

 

「あ、最低レベルだとそうなるんだぁ」

 

「だねえ。じゃ、ダメージ……チェック。色彩、色彩、色彩……おし、全部色彩!」

 

 20分の5、決して少なくない捲る枚数。

 それに2(・)枚(・)だ(・)け(・)入(・)れ(・)て(・)る(・)呪(・)言(・)を(・)引(・)か(・)ず(・)に(・)済(・)ん(・)だ(・)。

 

「ターンエンドですぅ」

 

「僕のターンだ。レディ、アップ、メインドロー、ライフ2ドロー」

 

 げ。

 引くかなーって思ってたけど、引いてしまったか。

 

「これで僕のライフは”13”だ」

 

 手札に入った呪言<防波堤>の位置をわかりやすい位置にさりげなくずらして、もう一枚の色彩を掴みだす。

 

「色彩をセット」

 

 これで色彩は6枚。相手のライフは18。

 盤面は5/5(スヴェルス)、2/2(兵士トークン)が2体。

 

 ここからは、いや、もうすでに。

 

「さあ、”火遊び”を始めるぜ」

 

 ライフ管理の時間だ。

 

「3コスト、通常魔法<焦土の愚策>をプレイ、対応(コール)は?」

 

「……愚策? 対応は、ないです」

 

 指を鳴らす。

 

「通るよ。全てのプレイヤーとクリーチャーに2点ダメージを与える」

 

 燃え上がる。

 発生した火によって兵士トークン(タフネス2)が燃え尽きて。

 

「2ダメージです! チェックは、色彩2つ!」

 

「チェック! 色彩、色彩!」

 

 ”防火扉”は現れなかった。

 これで僕の残りライフは”11”。

 

「ターンエンド」

 

「なら、あた」

 

「エンドフェイズに瞬間魔法<雷撃>をコール」

 

「なっ」

 

 円(・)導(・)さ(・)ん(・)の(・)目(・)線(・)と(・)手(・)札(・)を(・)見(・)る(・)。

 

「通るならスヴェルスに3点ダメージ、焼かせて貰う」

 

 僕の放った火力に、少女が雷に撃たれた炭になった。

 2+3の合計ダメージ5でキル。

 

「スヴェルス!」

 

 手札消費は2枚。

 あっちがドーナツこみで3枚、まあこれでトントンか。

 とはいえ手札から妨害を切ろうとする動きがなかった、防災(色彩3枚)を握ってなかったか、あるいは専用魔法と秘宝に依存していないデッキか。

 

「今度こそターンエンド」

 

 ”戦旗傭兵団”のクリーチャーが持つキーコード【指揮官】は軍術・軍備と分類される魔法と秘宝のコストを軽減する能力だ。

 そして、【麾下】は”指揮官”を持つクリーチャーが味方にいると、+1/+1の強化がされるバフ能力。

 指揮官が多ければ多いほど性能が上がっていくのは、より多彩な戦術や細やかな指揮が取れるという表現だ。

 

「あたしのターン……」

 

 この傭兵団を始めとした無数の騎士団、嵐の戦士団、そして神罰軍。

 それらの入り混じる戦乱の次元世界(ワールド)ブロック特有の能力。

 

「ドロー!」

 

 その中でも身軽さと手数が売りの”戦旗傭兵団(バナーナイツ)”に、ドーナツは――

 

「ライフいち、メインいち、です!」

 

 ミスマッチだろ。

 

「色彩をセット」

 

 円導さんの現ライフは15。

 色彩は1+1,ダメージの2で、4枚。

 

「3コスト、秘宝<増殖の仕組み>をセットしますぅ」

 

「ッ!」

 

 手札補充のための秘宝。

 コントロール・クリーチャーが場で死亡する度にドローする出来るからトークンを並べる指揮官に相性がいいやつだ

 ドーナツでの手札消費が激しいのも補う工夫は当然しているか。

 厄介な。

 どちらにも効果が使えるからこその設置コストの安さだが、今(・)回(・)の(・)僕(・)の(・)デ(・)ッ(・)キ(・)で(・)は(・)活(・)用(・)出(・)来(・)な(・)い(・)。

 

「ターンエンドです」

 

「そのエンドフェイズに、1コス、瞬間魔法<衝撃>を君にプレイ」

 

 エンドでバーンを顔面に投げ込む(ファイター直撃)。

 1色彩(カラー)残しだが、色は赤。

 多分これで妨害を切ることはないが。

 

「あぅあっ!?」

 

 パシーンとデコピンみたいな音で円導さんがよろける。

 

「ちょといたぁ……チェックです、色彩、あ」

 

 めくり、見せたのは黒い色彩と――呪言<間一髪>。

 

「ん、んんん」

 

「衝撃のダメージは2点です」

 

「うーん、1点得するので使います! 今引いたライフカードを戻して、シャッフルですぅ」

 

 <間一髪>を墓地2に、めくった色彩を戻してライフデッキが自動的にシャッフルされる。

 セーフティ(間一髪)は1枚削れた。

 あと多くて1枚だろうが、共鳴で操作が出来るならあと2枚か。

 

「では」

 

 ひりつくなぁ。

 

「僕のターン。レディ、アップ、メインドロー」

 

 このデッキは唇が乾く。

 

「色彩をセット」

 

 残りライフは10。

 手札(残弾)は5枚。色彩は9。

 

 

「――エンド」

 

 

 円導さんの手札は3。

 残りライフは14。色彩は4。

 

 指を鳴らす。

 

 カードの切り方を間違えるな。

 これはどう蝋燭を燃やし尽くすか、それともこちらが吹き散らされるかの勝負(ゲーム)。

 そうだろう。

 

 ――”ガンブルシュート”。

 

 どこかでマッチ箱をこするような懐かしい音が聞こえた気がした。

 

 

 





 両親を亡くした少女は己の正義を掲げるための力を求め、旗を掲げた。

             ――ひた歩む少女スヴェルス
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