本編の更新は土日 週明け前後になると思います
ゲーミング野郎は、間抜けな口を開いてしばし間が空けていた。
なので繰り返して告げてやる。
「ファイトしろよ」
「あ、ん? てめえが、オレに? どこのどいつだが知らねえ奴が……ん? お前どこかで見たような……」
「ファイトしろよ」
「どけよ、
「怖いのか?」
「あ゛」
「クソダサ勘違いゲーミング野郎。なんだそのジャケット、全自動全肯定無課金AIにでも選んで貰ったのかよ? 下品な色過ぎてダンスも踊れねえぜ」
中指を立てる。
「ファイトしろよ、てめえが腰抜けじゃなけりゃあな」
「ブチ殺す」
互いに左手を振る。
金属音を響かせながら、展開するバトルボードに。
「だっさ」
素直な感想が出た。
なにそのゲーミングカラー。
高校デビューでもしないんだけど、撮れ高でも目指してんの?
「フ゛ァ゛イ゛ト゛だ!!」
なんかブチギレちゃった。
「だ、駄目だ!! そいつは普通じゃない!」
「お前の先行でいいぞ」
先程まで調整していたデッキを手に持ち、俺はシャッフルする。
「殺す、後悔してもおせえぞ!!」
ゲーミングボーイくんはデッキを装填したままらしく、自動シャッフルを開始している。
チッ、枚数ぐらいは確認しておきたかったな。
「まだ間に合う! ボクがや、る」
「そこに座ってろ。まだろくに立てないだろ」
生まれたての仔馬みたいじゃねえか。
「で、でも……」
「まあ、俺が負けたら全速力で逃げろ。それまで休んでな」
再現性は殆どねえはずだが、先行ワンキルみたいなデッキだったらさすがに負けるし。
「もうおせえ!! てめえもそこのカマセ主人公もここで地べたを這いずるんだからよ」
主人公?
「ゲームはやってないとわからないぜ」
気になる単語があったが、これ以上待たせるとファイトじゃなくて何らかのカードパワーが飛び出しかねない。
シャッフルを終えたデッキをセットし、自動シャッフルが開始される。
あちらもとっくに終えて、殺意の籠もった息を吐き出しながらデッキに指をかけていた。
「「ファイト!」」
……イグニッションはしてこない!
「オレのターン! ライフをドロー! 色彩セット!」
色は、黒か。
「1オドで呪言<土台の構築>を発動! ライフデッキから色彩を1枚
あん?
「さあこいよ! てめえのみすぼらしいデッキを見せてみな!」
「俺のターン。レディ、アップ、ドロー」
色彩は黒と変容色彩が一枚ずつ。
しかしどちらも
「色彩をセット。瞬間魔法<侮蔑>を発動。通りますか?」
見るか。
「あ?」
「これは1コスト支払えば打ち消せる、出来なければお前の手札を確認し、クリーチャー1枚墓地へと捨てさせる」
「ピーピングかよ。くそが」
舌打ちするも、効果は適応される。
こちらのボードに、ゲーミング野郎の手札が表示される。
そして、見たのは――
「?」
なんで、こいつが、このテーマを。
一瞬口に出そうとして、こらえる。
「……なるほどな」
手札を確認、やろうするだろう動きを想定。
とりあえず、変なコンボとかギミックのパーツもなし。
「
「なにっ」
後ろのプレアちゃんの制服といい、このテーマといい、あるとしたらエレウシスだ。
そう思って言ったが、当たりか。
あと最低でも五年、七年ぐらいはしないと出て来ないと思ってたがマジで早いな。
むしろこんなのを数ヶ月前のドロシーちゃんたちが倒したのどうなってんだ。
「クリーチャー<
「てめッ」
ともあれ展開の基軸を叩き落とす。
そいつが生きてるとマジで勝ち目ねえから!
「ターンエンドです」
「ハッ、はぁ! 馬鹿が、そんな重いやつを落としてもなぁ!」
笑い声。
不敵そうに見せた顔で、ゲーミング野郎はデッキにてをかけて。
「俺のターンはもう止まらねえぞ! ドロー!!」
クロックを数えておこう。
魔石の枚数は何枚だ。
「色彩をセット! 2オド<
初期ステータスは3/1。
「これが場に出た時、記録カウンターを自分の上に2つ重ねる!」
「マズイ! その鳥は!!」
叫び声を上げる後ろの声に、右手を上げて静止する。
火力は”8”点だろう。
「こいつは乗った記録カウンターの数だけ+1ずつステータスが上昇する! つまり、+2/+2だ!」
3/1→5/3まで上昇。
「1オド、<
1オド1/2の人間クリーチャーで使いやすいやつだ。
【封陣】は、それを対象に魔法や能力を発動する時”指定された”コストを支払わなければ打ち消される能力だ。
個人的にはこいつが残ってるほうがめんどくさいんだが。
「能力発動! 場に出た時、指定したオブジェクトに記録カウンターを付与することが出来る! オレは、<
記録カウンターが+1されて、5/3→6/4の大型にまで強化される。
封陣もちクリーチャーが多いそのテーマだとこの付与には星描く翼相手が定番だ。あとは魔石に使う。
魔石引き込みと回収のカードは握ってなかったが。
「<星詩す人>の能力を起動するぜ!」
「!? 出したばかりで、起動能力を?!」
プレアちゃんが驚く声。
つまり――エレウシスでも最新のテーマか。あるいは表向きには出ていない奴か?
「こいつは速攻も持ってるんでなぁ!!」
「無茶苦茶だろ! 速攻、1オドで1/2で能力まで複数あるなんて!?」
わぁ、懐かしい動き~~
もうカードごとにテキスト長すぎて説明するのめんどくせえんだよなぁ、ていうか封陣の説明省きやがったな。
「<星詩す人>を生贄に捧げて、”スタロ”に記録カウンターを2つ追加する! これで合計5個のカウンターが乗った、つぅまり!」
スター・ロードな。わかるけどさ。
「8/6?!?」
記録回収セットしなくて大丈夫?
「バトルだ!! こいつは翼、つまり飛行を持つ! まあてめえにガードするクリーチャーはいねえがな!」
「ライフで受ける」
鳥混合ラインか、それとも魔石メインか。
「攻撃!!」
デッキパワーの差がキツイ、が。
衝撃。
懐かしい絵面を見つめながら、突っ込んできた翼に合わせて体軸を合わせて受ける。
激痛。
吹き飛ばされながらも衝撃波に転がって、鈍痛に耐えながらすぐに立ち上がる。
「リアルダメージか」
唾を吐いて、受けた身体のダメージを確認する。
痛みはあるし、服も避けたが、精神ダメージはなし。
闇のカードじゃない?
……イグニッション宣言してないのに、オドを使ってやがるが。
「怖気づいたかよ! ダメージは8! 次でもう消し飛ぶぜぇ!」
「ダメージチェック」
散らばったライフデッキを順次確認する。
変容色彩、色彩、色彩、色彩、変容色彩、焼畑、色彩、色彩。
うへ、なんで2枚も出てるかなぁ。
「呪言<焼畑>は使用しない。色彩を5枚セット」
「エンドフェイズ! スタロから記録カウンターが3つ外れて、5/3に弱体化するが、次のターンも使える。エンドだ、きははは! そんだけ色彩があればなんか動けるかぁ? もうすぐ死ぬけどよ!」
ゲラゲラと笑われる。
「回復したほうがよかったんじゃねえのか」
馬鹿を言え。
てめえのデッキ、そのテーマを相手にたかだか3点程度の回復をしたところで焼け石に水どころか帰り道にパンくずだ。
「いいや」
自分の手札を見る。
相手の盤面と確認した手札を思い出す。
「これでいい」
お前のテーマを、相手に攻め手を緩めることはない。
お前のテーマを、俺は知っている。
何故なら。
「ただ手を伸ばして掴めるほど、その星は近くない」
◆
先行の2ターン目で、たった2枚のクリーチャーで8点。
なんてカードパワー。
めちゃくちゃだろ!
あのオレンジ男とはエレウシスで一度戦ったが、やはりおかしい。
払ったコストに見合わないステータスに、デメリットのない能力構成、そして当たり前のように複数搭載。
速攻、飛行、貫通、あと封陣?
2コスト程度のクリーチャーに搭載されていい性能じゃない。
……まさかレアカード?
だけど、感じる気配はそこまでじゃない。
1コスはコモン、あのスタロというのも精々アンコモン。
ありえない矛盾でチグハグだ。
”
「俺のターン」
考える、考える。
手を何度も開けて開いて、握力を確かめる。
身体に残ってるオドは少しは回復したけど心もとない、あと1戦やりきれるかどうか。
「レディ」
もう彼とオレンジ男のファイトは始まってしまった。
それを中断することは騎士として出来ない。
「アップ」
だけど、彼は勝てないだろう。
当たり前だ。
あんな常識じゃありえないカード相手に初見で勝てるものか。
「ドロー」
戦い方を考えないといけない。
ドクと相談は出来ない、予備のカード……サイドデッキは手元にない。
それでも戦い方を、カードの切り方で工夫は出来る。
少しでも勝率の高い動き方を。
「――
「あ゛」
「殴るわ。4コスト支払う」
淡々と目の前の彼は告げて、なんでもないようにカードをボードに置いた。
「天は堕落し、律は狂い、全ては膿に
瞬間、肌が泡立った。
「召喚」
空間が震えた。
足元が沈んでいく、いや、なんか浮かび上がってくる。
それは……
「雲?」
真っ白な、泡のような、雲のようななにかで。
「――<永夜・崩れ行く狂界クラット>」
触れた爪先が生暖かい心地よさに――反射的に飛び退いた。
彼の背後から浮かび上がる、白さを貫く波。
とぐろを巻くような白い、いや、どんどん黒く
「通りますか?」
「そ、そいつは……なんだ!?」
「来い」
青年の、名前も知らない彼の指先が十字を切る。
それと同時だった。
爆発するかのように、白いナニカを弾き飛ばして、それが現れたのは。
漆黒の、液体のような鱗を滴らせた【龍】だった。
紅い瞳を宿した、腐る
「永夜……? そ、そいつは!」
「能力を説明する――<永夜・崩れ行く狂界クラット>はパワー8・タフネス8の飛行持ちにして、魔法・能力の対象にされず、破壊されず」
「これの相対者は敗北しない」
詩を残そう。
1文字でも多く、少しでも残るように。
星の光のように、いつか誰かに届きますように。
――星詩す人