【書籍化】俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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十六話 ファイト中に続行が出来なくなったプレイヤーは敗北扱いになる(絶命など)

 

 

 

 

 頑張って侵入してみた先では。

 助けるはずの常連客ちゃんと不審者がファイトしてました。

 

 うん、なんで?

 

『私のターン。先行のためメインドローなし、ライフデッキから2ドロー、土地をセット。エンド』

 

「なにもしない? 私のターン! メインから1枚ドローし、ライフカードを2枚引くよ!」

 

 なんか普通にファイトがはじまった。

 

「私は手札から、1コスト<ブレイバー・鋼士>を召喚!」

 

 まずユウキちゃんの初手で出されたのが1/1の無能力のブレイバー。

 特に特徴はないが。

 

 ブレイバーである時点でアドがある。

 

「ターンエンド『エンドフェイズに、プレイ』 なっ」

 

 

『<衝撃>を発動、私に2点ダメージを与える』

 

 

 エンドで、()()()()か。

 

「え、なんで自分にダメージを……」

 

 バーンか?

 しかし、<衝撃>は1コス、クリーチャーかプレイヤーに2点の基礎バーン。

 

『ダメージ2により土地が2枚ステイ状態でセット。私のターンが始まる』

 

 もし3点の<雷撃>を握ってるとしても、ここで初速を上げるとするなら。

 

『メインドロー、ライフドロー、土地をセットし、2コストで秘宝<発火の秒針>をプレイ――起動して、鋼の戦士に1点ダメージ。沈め』

 

「鋼士が!」

 

 ステイして発動(起動)する、1点バーンを与え続ける置物秘宝。

 バーンデッキのおまけに2枚ぐらい採用される使い勝手のいいアンコモンカードだが。

 

『ターンエンド』

 

 2枚土地を残して、不審者はターンエンド。

 間違いなく、除去か妨害は握っている。ブレイバーの基本デザインは知っている動きだ。

 そして多分これで妨害を使うなら。

 

 ――ランプだな

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

『ターンエンド』

 

 まさか自分でダメージを受けてまでコストを増やすなんて!

 

「私のターン! メイン、ライフカードをドローするよ!」

 

 手札を見る。

 うん、悪くない引き。

 

「土地をセット!」

 

 いつもならこのままブレイバーを並べる、けど。

 息を吸いながら、精霊狩りさんの手札と盤面を見る。

 手札はまだあるし、未使用(レディ)な土地が2枚も残ってる。

 

 ――相手が何をされたら嫌なのか、困るのか。一つ一つのプレイで考えながら出すこと。

 

 ――相手の気持ちまで考えながらプレイをすればもっと強くなれる。

 

「私は1コストで<ブレイバー・装甲>を召喚! これはパワーが0で、タフネスも1だけど、場に出たあとは自分の効果でタフネスが1上昇する!」

 

 店長さんの言葉を思い出しながら、まずは囮を出す。

 

『ブレイバー全体のタフネスを強化する戦士か』

 

「さらに私は<ブレイバー・火閃>を召喚する! これはパワー2で、タフネスは1だけど、全てのブレイバーは速攻を持つ!」

 

 なにかする?

 これは出したら厄介だろうからきっと動くはず……だけど。

 

『ふむ、来い』

 

 反応なし。

 なら。

 

「バトル! 火閃で攻撃する!」

 

『ライフで受ける』

 

 燃え盛るブレイバーの炎が、精霊狩りさんのライフデッキを直撃し、2枚弾き飛ばす。

 どちらも土地だったのかステイ状態でセットされて、呪言の発動はない。

 

「ターンエンド!」

 

 タフネス2のクリーチャーを並べられた。

 立ち上がりとしては悪くないはず。

 

 

 

『これで土地は6枚――現実を教えてやろう』

 

 

 

 ゾワと、鳥肌が立った。

 

≪マスター! 構えて、なにか……来るっ!≫

 

『アップキープ……レディ……メインドロー、ライフドロー……』

 

 ? 土地をセット、しない?

 今までの盤面を思い出す。

 まだ精霊狩りさんは手札に一枚土地のライフカードがあるはず。

 魔石(コア)呪言(カース)でも引いた。

 

『メインフェイズ。<帝王の槍持ち>を召喚する』

 

 鋭い手刀のような動きと共に、カードが精霊狩りさんのボードに叩きつけられる。

 

『準備は整った』

 

 白い光を割いて現れたのはパワーとタフネスが1/2の槍を構えた騎士。

 

『私は手札から魔法(スペル)天狼の強襲(ヴァイス・アサルト)>を発動する――来い!』

 

「ッッ!?」

 

 足元が震えた。

 いや、室内が震えた。

 

「なにっ!?」

 

 真っ白な光が、精霊狩りさんのボードを中心に広がっていく。

 まるで白い絵の具で塗り潰していくような、冷たい結界……!

 

 同時になにか手が冷たく感じる。

 

 《まるでデッキが凍りついたみたいに》。

 

≪……ター! ……れ……≫

 

「アリーシャ!?」

 

 

この<孤絶結界>は全ての精霊との対話を断ち切る、信じるは己が力のみ』

 

 

 精霊との対話を断ち切る!?

 

『全てを孤独に、生き残るのは一人でいい――吼えろ! <孤高の天狼・ヴァイスファング>!!』

 

 白い世界から輪郭を、その場で組み上げられたかのように、巨大な白狼が精霊狩りさんの目の前に着地した。

 

 パワーとタフネスは……7/7!?

 

『<天狼の強襲(ヴァイス・アサルト)>の使用効果! これは”ヴァイスファング”と名のつくクリーチャーを手札からコストを支払わずに召喚することが出来る!』

 

「そんな!?」

 

『さらに2枚ドローする!』 

 

「嘘ぉ!?」

 

 5コストで、大型クリーチャーを出してさらに2ドロー!?

 

『<帝王の槍持ち>の誘発効果! コスト5以上のクリーチャーが、同じコントローラーの支配下から召喚に成功した時、相手の場のカード1枚(パーマネント)を破壊することが出来る! ヴァイスファングの召喚コストは7のため発動する! 私は<ブレイバー・装甲>を破壊! 道を退けろ』

 

「!? 装甲が!」

 

 ブロック可能(レディ)クリーチャーを除去された?

 でも、火閃がいれば展開はまだ維持できる……!

 

『手札1枚を捨てて、ヴァイスファングの効果発動! ヴァイスファングは速攻とこのターン、魔法・能力の対象にならない特性を得る!』

 

「なっ」

 

『バトル! ヴァイスファングで攻撃する』

 

「ライフで……受ける!」

 

『白狼絶刀牙!』

 

「きゃあああああああああああ!!?」

 

 映像とは思えない白狼の衝撃に、私は吹き飛ばされた。

 床に叩きつけられ、ゴロゴロと転がりながらも手札だけは手放さないように耐える。

 

 ダメージは7点、大きかったけどこれで……!

 

「ライフデッキは……え?」

 

 受けたダメージ。

 その枚数分のライフカードが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『ヴァイスファングは【魂葬】能力を持つ。ヴァイスファングによって与えられたダメージでは、ライフデッキの土地カードはセットされずに墓地へと送られる』

 

「こん、そう?!」

 

 ダメージを受けたデッキをそのまま墓地に送り込む効果!?

 そんなの、今までのLifeが成り立たない!

 強い、強すぎる。

 

『この効果は、墓地に1枚でも同名カードでもあった場合失われるのだがな』

 

「同名カードって」

 

 じゃあ、この人のデッキはまさか。

 

『そう、私のデッキは生き残るのは一人のみ(ハイランダー)

 

「!!」

 

 聞いたことがある。

 たった一枚だけのカードだけをもって、組み合わされるデッキ。

 Lifeのメインデッキは40枚、その全部が別々のカードだったらどんなデッキでも作れる、圧倒的な自由を得られる。

 けど、そんな構築はあくまでも夢のまた夢。

 40枚全てが同じテーマ、噛み合うように出来ることなんて出来るわけがない。

 

 だから理論上最強の、誰も使えないはずのデッキ!

 

 それをこの人は使っているっていうの?!

 

『勝てないと思うのならばさっさとサレンダーするのだな、私はバトルを終了する』

 

「まだだ! 今のダメージで呪言<覚醒(イグニッション)!!>が発動する! これは受けたダメージ以下のコストを持つブレイバーを、コストを支払わずに手札から呼び出す事が出来る! 私はコスト7の<勇者王(ブレイブ)(GO)>を召喚!」

 

『ほぉ』

 

「ブレイブGOは、手札・場にいる時”ブレイバー”として扱うため、火閃の効果で速攻を持つ! ……そちらのバトルだから意味がないけどね」

 

『うっかり焼いたら痛い目を見るということだな。面白い、私は改めてバトルを終了し、そのままターンエンド』

 

 なんとか場は抑え込めた。

 

 私のライフが削りきられる前になんとかあのヴァイスファングを倒さないと……

 

 私に勝ち目はない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ? 1体だけ?

 てっきりヴァイス3体並べて来るもんだと思ってたのに。

 手札でも事故ってたかな。

 

 しかし、やっぱりヴァイスデッキだったか。

 

 Lifeのルールからダメージで削っていけばいくほど逆転されやすくなるから不利だったアグロの救世主。

 ライフデッキへのダメージを直接墓地に送り込む能力【魂葬】の元祖にして、大型バーンへの搭載や、疑似魂葬能力の付与などの走りとなるクリーチャーだ。

 なんせ出してこれで殴るだけでめっちゃ相手が死ぬ。

 コスト7でパワーもタフネスも7のスリーセブンだから、縁起がよくてデザインもシンプルにかっこいいから幅広い層に人気があった。

 

 しかもめちゃくちゃ組みやすいんだよなぁ、ヴァイス。

 

 なんせ制限がシングルトン……同名カードを避けてヴァイスファングをいれるだけでなんでもヴァイスって呼べるぐらいのゆるさがある。

 基本はヴァイスのテーマカードである(ヴァイス)シリーズを多めにいれるもんだけど、切腹エンジンや自傷デメリット(エンチャントファイア)とコスト増加類を多く入れた”三色ヴァイス”に、ヴァイスファングを除去されないためのハンドピーピングと土地破壊(ゾーンデストラクション)の”ハンデスヴァイス”、”カルタゴヴァイス”に両方混ぜた”害悪ヴァイス”、ハイランダー特有のグッドスタッフを多くいれてサーチとルーターでぶん回す”白銀ファング”とか色々派生があった。

 

 その究極系が、膨大なカード資産と豊富なカード知識に的確なプレイングがなければただの紙束”レインボーヴァイス”。

 

 ヴァイス愛好者たちがそれぞれの七色ヴァイスを出す中で、どんなデッキ相手でも勝率五割以上まで持ち込むをコンセプトにした”レインボーヴァイス(Ver八千矛(ヤチホコ))”。

 僕が死ぬ少し前の世界大会で上位入賞してレシピを公開されてたけど、細かいシナジーとかなんでこれを出すのか解説いれてもよくわかんないプレイヤーへの要求難易度からして、『これはヤチ専用』『俺たちはヤチじゃないことを思い知らされる』『わいらは人間、ヤチはヤチっていう種族』『あいつこそリアル握るもの(マスター)だろ』『なんで回るのか、それは地球が回るのと同じぐらい不思議さ』などと褒められている(?)著名なプレイヤー兼デッキビルダーで有名なヴァイスファング。

 

 当然僕も回らなかった。

 いやちょっとどう動かせば強いのか理解できなくて……

 

 とかまあそんな変わり種もあるんだが、一番の魅力は握っていてめっちゃ楽しいことだ。

 なんせハイランダーだからファイトする度に全然動きが違うし、出てくるカードが違う。

 

 『百回対戦したら百回ちがうゲームになる』『十回二十回ぐらいじゃあ全然使いこなした気になれない』『一人回しだと頭が死ぬ、ミラーだと脳汁が出すぎて死ぬ』『これが負けたのはヴァイスのせいじゃない、俺が弱かったんだ……』『ヴァイス限定大会をやってみたら全員リストが違ってたわ』『ヴァイスくんをね、どんな色に染め上げてるかデッキで調教してるかなんて性癖の発露みたいだよ、ドキドキするよね。◯◯くんは絶対ベットヤクザだよ、ぼかぁには伝わってくるよ』 とまあそんな風に言われる。最後辺りはやべえやつの発言だけど。白濁とか言うな。

 つまるところ使いこなせなければただの紙束だが、使いこなせる人間が握るととても最も楽しいデッキといわれるテーマ。

 それが”ヴァイス・ハイランダー”だ。

 

 それに対して、ユウキちゃんのはわかりやすい”ブレイバー”。

 それも前期ブレイバーデッキだ。

 

 デザインテーマは数の力、数は力、連携と集合による袋叩きだ。

 前期ブレイバーは共通してブレイバー同士の力を高めるバフ効果を持っていた。

 パワーやタフネスがそれぞれ歪なのを、噛み合わせて強化して、パワーやタフネスを上げたり、速攻や空を飛ばさせたり、潜伏や火力にしたりと豊富な能力があった。

 ひたすら並べるだけで強いのが出来上がっていくし、豊富な専用サポートカードもあって初心者から中級者まで人気があったテーマでもある。

 後期のブレイバーシリーズは新しい能力の【勇起】の搭載とそれに従ったデザインをされていたので下手に混ぜるよりは別々に切り分けた前期と後期のブレイバーデッキか、<亜人の王>とかを使った種族統一デッキで使うのが楽しいデッキだ。

 

 純正ヴァイスハイランダーと前期ブレイバーだとやっぱりやや前者にデッキパワーは傾くけど……

 

 

 

 

 

「――ブレイブGOの攻撃に合わせて、<ブレイブ・火閃>の効果を発動! 1コスト支払い、生贄に捧げることによってブレイブGOのパワー・タフネスが+2上昇する!」

 

 と、考えている間にもファイトが進んでいた。

 貫通がないヴァイスを上手く他のブレイバーで受けながらしのいでたみたいだけど、仕掛けてる。

 

『速攻強化だけではない!?』

 

「これはターン終了まで維持され、さらに墓地に眠るブレイバーの数が増えたことによって強化される!」

 

「これで互角だぁ! 勇気斬!!」

 

『ッ!? ヴァイスが……』

 

「ブレイブ・GOが戦闘で相打ちになったことから効果発動! 私はデッキから<勇気のバトン>を手札に加える。さらにブレイバーが戦闘で破壊されたことによって魔石<勇気サイン>の効果発動、デッキからブレイブGO未満のコストの<ブレイバー・停目>を手札に加える! これでターンエンド!」

 

 立ち回り次第で戦うことは十分出来る。

 負けるために組まれるデッキは存在しないんだから。

 相性で詰まない限り、勝ち筋は絶対残る。

 

『そのターンエンドに、<発火の秒針>を起動。私はダメージ1点を受け、土地を1枚セットする』

 

 とはいえ。

 

『私のターン……驚いたぞ、まさかヴァイスファングを戦闘で破壊されるとはな』

 

「貴方の切り札は打ち倒した! ここから先は私のターンだよ!」

 

『愚か……私の登る階段はまだ13に達していない――ドロー、土地をセット』

 

 ここからがめんどくさいんだよな。

 

 

『私は手札より魔法<双魂転霊>をプレイ、墓地から2枚の種類と名前の違うカードを手札に戻す。私が戻すのは<ヴァイスファング>と<天狼の強襲(ヴァイス・アサルト)>』

 

「!?」

 

『プレイ終了後、このカードは除外され、さらにこの効果の代償に、私はこのターンクリーチャーカードをプレイするのに必要なコストが+2される。が』

 

「アサルトの種類は……!」

 

()()()()()天狼の強襲(ヴァイス・アサルト)>をプレイ。再び降臨せよ! ヴァイスファング!!』

 

 真っ白な閃光と共に二度目のヴァイスファングが召喚される。

 

『<帝王の槍持ち>の効果で、<勇気サイン>を破壊する! さあ次でフィナーレだ、ターンエンド!』

 

 ここでヴァイスファングの効果を使わないか。

 手札もかなり消費してる、違法踏み倒し手段はあと4ルートぐらいはあるからどれか持っているな。

 

 破壊されてもすぐにリカバリーが出来る前提での動き。

 

 

『さあ示してみせろ! お前に力があるならば!!』

 

 

 かなり強い。

 さあ、どうするユウキちゃん。

 

「私は――……」

 

 

 ゲームはまだ終わっちゃいないぞ。

 

 

 

 

 そう思いながら僕は――使う予定のデッキに、ヴァイスファング除外用のサイドボードのカードを入れ始めた。

 墓地除外は多めにしとこ。

 

 

 

 

 

 






 爆炎を引き裂いて、悲鳴を掻き分けて、苦しみを貫いて、それはやってくる
 ああまったく理不尽だ
 俺等よりもよっぽどの悪夢じゃねえか、ヒーローってやつは


                            ――<勇気サイン>
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