【書籍化】俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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朽木様よりFAをまたまたいただきました!


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変わり果ててしまった副部長とそれと対峙するモブくんです!

ドロシーちゃんがヒロインのようですね!



真機楼様よりリナちゃんのFAをいただきました!

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メイドかわいい!



残酷な描写(TCG)にご注意ください




三十八話 生成とは、トークンをその場に出すことである

 

 

 

 強い。

 強い。

 強いぜ、このデッキは!

 

「ははは、どうした! 遅い、おせえぞ!」

 

 クリーチャーが破壊される、そうすると効果が出る。

 クリーチャーを生贄に捧げる、それだけでカードが引ける。

 クリーチャーがくたばる度に力になる。

 誰からも忌避される、ありえないはずのデッキの使い方。

 だが闇のカードが、新しい世界が、オレに勇気を与えてくれる。

 

 いや勇気? そんなものじゃない。

 

 これは快感だ!

 

 

「<壁際の監視者>が死亡したため、オレはデッキの上からカードを2枚除外! このうちの一枚を次のオレのターンまでプレイすることが出来る」

 

 

 楽しい。

 愉しい。

 今までのデッキがなんだったのかっていうほど場が回る、展開が動く。

 踏みにじる喜びは、それが得る力は最高だ。

 今までのデッキの弱さを、一々一体ずつ生かして、戦わせる小賢しい真似なんてしなくてもよくなった。

 使い捨てる。

 それこそが強者の在り方!

 

「クリーチャー<移ろう霊魂>をライフ2点支払って墓地に送る、カードを1枚引きます」

 

 

 見ろよ、あの澄ました野郎がろくに動いてない。

 思いどおりの動けなくて苦しんでやがる。

 わかるぜ、澄ませた顔をしていても苦しいんだろう。

 いい気味だ。

 

 

「甘い、もう一度だ! 瞬間魔法<弱肉浄化>を発動! 3体目の案山子を生贄に、出したコストでフランシスを再召喚する!」

 

「通します。手札からカードを1枚捨てる」

 

「おいおい、まだ1点もオレにダメージを与えてないぞ、大丈夫かぁ!?」

 

 

 弱い。

 弱い、弱い。

 あの茂札が何もできやしない。

 せいぜい出したのはカードとコストを支払ってトークンを出すだけのジリ貧の秘宝と、クリーチャーを生贄に捧げてコストが2しか出せない<弱肉浄化>の劣化版秘宝。

 さっきは魔石で妙なカウンターが乗った奴を出したが、それが動き出すまで10ターンもかかる。

 あと2ターンもあれば決着だ!

 

「ターンエンド! さあ、どうする! 命乞いの準備をしておいたほうがいいんじゃねえか?!」

 

「俺のターン」

 

 言い返してもこない。

 みろよ、オレの場を!

 舞い戻ったフランシス(4/4)に、次のターンには土地を出す度に戻って来る使い減りしない生贄の2/1<妄執の言霊>も出し直せる。

 案山子を除去されるところもサクリファイスで回避した。

 

 オレのライフはまだまだ十全、怪我一つ負っていない。

 

 次のターンにはこの手札の<群れ集う黒獣>をねじ込む。

 4/4の高い性能に加えて、場にさえ出せば同じサイズかつスレイヤー持ちの影トークンを生み出す。

 前のターンに引き込んでれば出せたんだが、まあいい、1ターン遅れた程度。

 

 

「レディ・アップキープ・ドローフェイズ――」

 

 

 さあどんな風にねじ切ってやろうか。

 

 

「秘宝<増殖の仕組み>をプレイ、通りますか?」

 

 

 

 うん?

 また秘宝だと。

 

「なんだ、また場の固めか」

 

 手札を見る。

 まだなんとでもなる。

 

「……通ったなら場にセットする。おい」

 

 声がした。

 酷く渇いた声だった。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 あ゛?

 

「1コストと手札の<解呪腕の祈者>を捨てて、秘宝<植物戦鬼の故郷>を起動。1/1のゴブリントークンを1体生成する」

 

 手札のカードを捨てて、雑魚トークンを生み出す茂札。

 馬鹿め、壁にもならねえ。

 フランシスの効果に耐えるなら土地カードでも残しておいたほうがマシだろ。

 

「秘宝<薪の剣火>を起動。ゴブリントークンを薪に、2コスト得る」

 

 1コストと1カードを失って1マナを得る。

 なんともまあ効率の悪い微々たるものだ。

 奴の残っている土地からしてまたつまらない手札交換か、それとも除去でも飛ばして「そして、カードを1枚引く」 うん?

 

「……まて。今なんていった?」

 

「<増殖の仕組み>によりコントロールしているクリーチャーが死亡したためカードを1枚ドローする。1コスト支払い、カードを一枚捨てて<植物戦鬼の故郷>を起動。1/1のゴブリントークンを1体生成する」

 

 うん?

 またゴブリントークンが生み出された。

 

「秘宝<薪の剣火>を起動。ゴブリントークンを薪に、2コスト得る」

 

 それが燃えた。

 

「そして、カードを1枚引く」

 

 デッキからカードを引かれる。

 

「いや」

 

「この手順を繰り返します。1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー」

 

 コストが出る。

 

「まて」

 

「1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー」

 

 トークンが出る。

 

「まて!」

 

「1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー」

 

 生贄に燃える。

 

「まてよ!?」

 

 カードが引かれる。

 

「1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー。1コスト、カードを捨てて、トークン生成、ウタの化身がデッキに戻る、生贄に、カードをドロー。1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー。1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー。1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー。1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー。1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー。1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー。1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー。1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー。1コスト、カードを捨てて、トークン生成、ウタの化身がデッキに戻る、生贄に、カードをドロー。1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー。1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー」

 

 止まらない。

 止まらない。

 コストが次々と生み出されていく。

 カードが次々と引かれては墓地に投げ込まれていく。

 オレのサクリファイスデッキなんて比較にならないほどにカードを使い捨てる。

 

 あまりにも残酷な光景。

 

「おいおいおいおいおい!!?」

 

 イかれてるのか!?

 

 いやまておちつけ。

 奴のデッキを見ろ。見る見る間に減っていく、デッキはもう半分も残っていない。

 デッキがオートシャッフルを繰り返し、終わる度に引かれるデッキの枚数は薄くなっている。

 このまま続ければ自滅するだけだ!

 

「1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー」

 

 いずれ止まる。

 奴の手札は増えはしない。トークンも増えることはない。

 

「1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー。ウタの化身がデッキに戻る」

 

 トークンは一体だけ。

 出せるのもコストとカードを捨てる必要がある、これ以上増えることはない。

 

「1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー」

 

 もう20,いや30にも届くコストだが、使いきれやしない。

 次のフェイズになればコストバーンで即死だ。

 

「1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー」

 

 いやその前にデッキ切れで自滅する。

 

「1コスト、カードを捨てて、トークン生成、ウタの化身がデッキに戻り、生贄に、カードをドロー」

 

 ほらもうデッキが減って。

 

「1コスト、カードを捨てて、トークン生成、ウタの化身がデッキに戻り、生贄に、カードをドロー」

 

 減って。

 

「1コスト、カードを捨てて、トークン生成、生贄に、カードをドロー」

 

 底を着く。

 

「1コスト、カードを捨てて、トークン生成、ウタの化身がデッキに戻り、生贄に、カードをドロー」

 

 着く――

 

「1コスト、カードを捨てて、トークン生成、ウタの化身がデッキに戻り、生贄に、カードをドロー」

 

 つか、

 

「1コスト、カードを捨てて、トークン生成、ウタの化身がデッキに戻り、生贄に、カードをドロー」

 

 ない?!

 

「デッキは残り一枚。手順省略する――これをコストが360になるまで繰り返す」

 

「はぁ!?」

 

 ありえない。

 ありえないことが起きている。

 なんなんだよ!

 

「デッキの一枚をめくって、捨てて、戻して、めくって、捨てて、なんなんだよ!?」

 

 繰り返す。

 繰り返す。

 あまりにも自動的な、淡々とした挙動が行われている。

 

「クリーチャー<ウタの化身>は如何なる領域からでも、墓地に送り込まれた時、デッキに戻る効果を持つ」

 

 それがたった一枚のカードが墓地と手札を循環している。

 

「故に、俺はワンドローである限り、ライブラリーアウトはしない」

 

 はぁ!?

 ぶざけんな!

 そんなカードがありえるか!?

 

 

360年定理(スリー・シックスティ・セオレム)。俺の手札は全て交換され、勝利の方程式(パーツ)は並べ終えた」

 

 

 

 は?

 

勝負だ(コール)! お前の手札と俺の手札がどちらかが勝つか、その証明を!」

 

「何をする気だ!?」

 

「復号しろ――2コスト支払い、クリーチャー<テスタロッサの墓守>を召喚する! 通りますか!?」

 

 

 激しく寒気がした。

 通したらまずい、全身がそう叫んでる。

 

「ッ、ざけろ!!! 通すか! 瞬間魔法<防災>、土地を3枚生贄にして打ち消す!」

 

 万が一のために握っていた汎用の打ち消しカードを使う。

 はははは、こいつのデッキ情報を与えられた時に時に渡された高額カードだが、役に立ったぜ。

 

「そのまま自滅しろ!」

 

 350以上のコストで焼けて死ね!

 

「――18コスト支払い、魔石<凍れる海の底>の凍結カウンター9個を撤去する」

 

「凍結カウンター……? ?!」

 

 まてよ!

 あれアップキープで解除されるだけじゃなかったのか!?

 コストでも解除出来るだと。

 

 確か効果は――

 

「手札が惜しい、正規手順で解除してやる。カウンターの乗っていない<凍れる海の底>を生贄に捧げることにより、眠れる支配者が氷河期からの冬眠から目覚める」

 

 音を立てて地面がひび割れる。

 闇の領域が震え上がる。

 

 

「10/10の貫通――そして、【双撃】を持つ<ク・ウルウ>という名前を持つアビス・クリーチャー・トークンを生成する!」

 

 

 そこから現れたのは巨大な多腕の化け物だった。

 体のあちこちに絡みついていた氷が、音を立てて蒸発していく。

 

「は、は、はぁ??」

 

 圧倒的なパワー。

 しかも双撃……フランシスが一方的に殴り倒され、もう一発は直撃する、しかも貫通……?

 

 ――即死する。

 

「はぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!?」

 

「失神したのならば大成功、悪夢で魘されて、わけのわからないままに凍りつけ――【残酷劇場(グランギニョル)】」

 

「あ、あ、あ……いや、まだ、まだだ!」

 

 まだ召喚酔いがある!

 なんでもいい!

 次のターン、次のターン、除去するカードを引けば助かる。

 茂札から奪った共鳴力があれば引ける!

 

「まだ負けてねえ! まだアホみたいにお前のコストは残って」

 

 

「3コスト支払い、秘宝<石臼>をプレイ、通りますか?」

 

 

「今度は、今度は何をする気だぁああ!?」

 

「さすがに二枚目の防災はないようですね――プレイに成功」

 

 叫ぶオレの言葉を無視して、茂札の前に現れたのは小さな石の道具。

 小さな古ぼけた、田舎の蔵でも探せば出てきそうな石の臼。

 

 それがゆっくりと回転する。

 

「この秘宝は3コスト支払うことによって起動、互いのプレイヤーはメインデッキの上から2枚、墓地に置きます」

 

 ゴリゴリと音を立てて唸りだす。

 

「3コスト支払い、起動」

 

 茂札のデッキから1枚引き抜いたカードが墓地に置かれる。

 デッキが残り1枚だからこそ一枚しか墓地に置かれず。

 

「<ウタの化身>は如何なる領域からでも墓地に送られた場合、デッキに戻る」

 

 そして、置いたカードがデッキに戻る。

 

「副部長のデッキも上から2枚、墓地に送られる」

 

 オレのデッキが2枚削れ落ちる。

 

「3コスト支払い、再び起動」

 

「あ」

 

「これを残りコスト336コストがあるからの連続起動――112回」

 

「やめ」

 

 石臼が回り出す。

 

「224枚分削り落とします」

 

 ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ。

 ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ。

 ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ。

 

「や、やめ」

 

 ゴリゴリゴリゴリゴリ。

 

 オレのデッキが!

 

 ゴリゴリゴリゴリゴリ。

 

 デッキが全て!

 

 ゴリゴリゴリゴリゴリ。

 

 削り潰されていく!

 

「やめて」

 

 デッキはない。

 

 ゴリゴリゴリゴリゴリ。

 

 もう全て瞬く間に轢き潰された。

 

 ゴリゴリゴリゴリゴリ。

 

 轢き潰されたのにまだ回転する。

 

 ゴリゴリゴリゴリゴリ。

 

「もうやめろ! やめてくれ!!」

 

 なのに何も出来ない!

 

 ゴリゴリゴリゴリゴリ。

 

 何も出来ない!

 

 ゴリゴリゴリゴリゴリ。

 

 コストも残っていない。

 

 ゴリゴリゴリゴリゴリ。

 

 だからただ見ているだけで。

 

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

 

「【潰滅紀機械(ザ・コンクルージョン・マシン)】」

 

 

 それはカラカラと音を立てながら回り続けて。

 

 

「――残存コストはゼロ。墓地から発動するカードはありますか? なければ」

 

「あ゛、あ゛、あ゛」

「ターンエンド。もう未来が残ってなければ敗北をドローしろ」

 

 

 

 叫び、叫びながら、やがて石臼が止まった。

 

 オレも終わった。

 

 

 

 






 ゴリゴリゴリ。
 挽いて潰して粉々にしてしまえば、どんなものだって飲み込んでしまえるさ。


                         ――石臼。
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