【書籍化】俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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ひふみつかさ様より(@Aitrust2517) よりサレン=アンダーちゃんのFAをいただきました!
とても素敵でかっこいい、がっしり特徴を捕らえたカットです!
嬉しい!


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真機楼様より、ドロシーのメイドFAを頂きました!


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真機楼様よりメイドジグ部長のFAをいただきました!
ミニスカいいね!


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朽木様より ドロシーと店長のメイル姿をいただきました!
わあ! えっちだ!
本編でもえっちにしなければ!

モブくんのFAなどもいただけましたが、恐ろしい姿なのでXで探してもらえれば幸いですw



三十九話 投了とは、あらゆるルールに優先される権利である

 

 

 

 あれ? おかしいな。

 あと二回ぐらいは妨害か立て直し来ると思ってたんだが、通ったぞ?

 

 エンド前にはまたウタの化身捨てて粘るつもりだったし、墓地起動のやつもまだあるのに。

 

 ――……マジかよ。

 

「あああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

 

 うるさい。

 喚くな。

 

 闇の領域が解除されていく、元々夜だったからあまり明るさは変わらないがはっきりと温度が変化する。

 

「さて」

 

 喚く副部長を放置してデッキを仕舞い、左の手袋をはめる必要があるかと思ったが……周りを囲む連中はふらふらとしているだけ。

 まとめて殴ってきたり、掴みに来ない。

 銃器は愚か、ナイフすら構えずに呆然と立っている。

 まるでマネキンだ。

 

「確か……アンティは絶対服従だったか」

 

 副部長がカード化する気配はない。

 そして、前のメスガキのことを考えるとそういうことか?

 

「おい、副部長。”こいつらはどうなっている”?」

 

「! ……こ、こいつらは……」

 

 不自然な痙攣。

 

「お、おれのいうことにだけ従うように服従させ、ている……」

 

「闇カードの力でか?」

 

「そ、そ、うだ……」

 

 俺の言葉によろめきながらそういった。

 なるほど。

 

 ……なるほどなぁ。

 

「周りの連中に指示が出来るならこういえ。警察いって、今までの自分の所業を自白して、捕まるようなら大人しく逮捕される。そして、心悔い改めて真っ当に生きられるように努力しろ。身の丈にあった程度でいい」

 

 死ぬまで善人でいろなんて言えやしない。

 だから出来る限りの努力でいいだろう、その匙加減なんて迷惑にならない程度でいい。

 

「ぁ、ぁあ……!」

 

 副部長の体が立ち上がり、俺の言った言葉通りに周りのチンピラに復唱する。

 そして、よろよろと不自然な動きで解散していくチンピラたち。

 

 そうして静かになった道端でまだ動けない副部長。

 逃げる気配もない。

 多分ライブラリアウトのダメージもあるんだろうが、ライフには1点もダメージ与えてないんだけどなぁ。

 

「……一回きりじゃねえのか。なら色々聞かせてもらうぜ」

 

「ぅ、あ」

 

「俺を狙った理由はなんだ。答えろ」

 

 そう尋ねると副部長はぐるぐると()()()()()()()

 

 

 

「あ、天儀ドロシーのデッキを奪うため、だ……」

 

 

 そう絞り出すように言った。

 

「デッキを奪う?」

 

 デッキ?

 そういえば最初の時もいってたが……

 

「なんだそれは、あのクソカードなら使おうとしたら手を焼いてくるカスだぞ」

 

「れ、レガシーカードは……資格がなければ使えない、が」

 

 資格?

 

「例外がある……敗北した時、その所有権を得ることが出来る……」

 

「アンティルールってことか」

 

 敗者は勝者に従う。

 物理的じゃなくて勝敗によって奪われるなら従う。

 そんなルールがあるのだろうか。

 

 いやまてよ。

 

「ならフリプとかでやってたら幾らでも奪いたい放題じゃないか?」

 

「……それは無理、だ。所有権をかけ、た、本気のファイト、でない、と認めない……らしい」

 

「めんどくさい仕様だな。ところで降参させてもそれは譲渡されるのか?」

 

「され、る……屈服さえすれば……」

 

「……つまり手先にされた俺が天儀を倒して、デッキを奪ったあと、お前相手にサレンダーすればほいほい手に入ると」

 

「そう、だ」

 

 なるほど。

 合理的だな。

 

 くっそ情けないことを除けばやりやすい手口だ。フィクションの悪役か?

 

 

「――レガシーカードとはなんだ?

 

 

 どこかで聞いたような言葉だが、思い出せない。

 レアカードとは違う意味だろう。

 神格(ミュートロギア)レアなら、前世のLifeカードのレア分類であったけど。

 

生命秘札(レガシーカード)は……伝説の、凄まじい力を秘めた、カードのこと、だ」

 

「力を秘めた?」

 

 精霊が宿ってるとか、闇カードの上位互換か。

 

「意思さえ宿っているっていうが、手に入れさえすれば大いなる力が手に入る……それを持っていれば、くそ、お前程度に負けたり、なんかしなかったのに……くそっ」

 

 ガクガクと揺れながら、悪態を吐く副部長。

 

「……<律たるもの 天界龍(エンジェルハウンド)>がそのレガシーカードだと?」

 

「そう、だ……あの伝説の、エレウシス個人三連覇をした、さい、きょうの……デッキだ」

 

 Life部に伝わっていた昔話か。

 

 そんなもんを学校に置いておくな。

 博物館とかにでも寄贈しておけよ。

 

「あれを手に入れれば、強くなれる……どんな未来も思いのままだとおもって、くそ、あんな学校に入ってやったのに三年、何も出来ずに三年も我慢して、どう、して、いまさら、くそが」

 

 揺れる。

 揺れながら悪態、いや、愚痴を吐き出す副部長。

 

 色々と溜め込んでいたんだろう、そんな言葉が次から次へと口から出ている。

 その大半が聞くに耐えなかったが。

 

 

「――誰も手に入らないならいっそ諦められたのに」

 

 

 そう〆る言葉は、重かった。

 

「……俺が追い出されることになった時、なんでお前騒ぎ立てたんだ?」

 

「お、まえが邪魔だったから、だ」

 

「? 意味がわからん」

 

 

「茂札、てめえが……()()()()()()()()()()()()()

 

「なに?」

 

「そうだろう。ころ、ころ、デッキを変えやがって、その上で勝ったり負けたり……」

 

 恨みがましい目だった。

 憎まれる目だった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それ以上に怒りを感じる目だった。

 

 

 

「楽しかっただろうが、手を抜いて勝ちを与えてわからずに喜ぶオレたちが!」

 

「――」

 

「てめえのさじ加減一つで踊らされてるオレたちが!」

 

「……」

 

「てめえが真面目にやれば、あのデッキを握ったら勝ち目がなくなる! だから、素人のあの女から奪うつもりだったのに……」

 

「……――」

 

 

「ああそうだ! 全部テメエが悪い! てめえがむかつくや「カードゲームで事故らねえわけがないだろうが」つ?」

 

 

 その顔面に拳でもねじ込んでやろうかと思ったが、我慢する。

 

「真剣勝負で手を抜くわけねえだろ。事故ったり、回らなかったのはデッキが未完成と……引き運が弱かっただけだ」

 

「はぁ?!」

 

 いや本当に引きはそんなに自信がない。

 相手のデッキがわかって動きがわかっていても手札になければ動けない。

 だからルーターなり、サーチでシルバーバレット式で対処することが多い。

 この未完成エニグマ、前世での最新式のと比べれば下位互換のカードで埋めている事も含めても7割ぐらいの完成度だ。

 前世のガチ勢がいれば3-0は難しいだろう。

 

 けどそれでもカジュアル、それもテーマ統一デッキと比べれば大体勝てる。勝ててしまう。

 

 だから――部活では”それに合わせたデッキだけ作ってた”。

 まあそれでもテーマを縛り、これ他に代用利くカードあるよなってやつをあえて活かす、採用するデッキ作るのは楽しかったけど。

 引き運で負けてるから普通に巻き返せずに負けることもめっちゃあるし、でも上手くハマれば勝てるし、細い筋のコンボを通すのは楽しい。

 

「デッキが弱かったら普通に負けるし、引きが弱ければ負けるに決まってんだろ。やり込めば段々勝てるが、まあそれも楽し「ざけんな!」い」

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「お前がたまたま運が悪くて負けた!? 運が良くて勝ってた?! 舐めたデッキを使ってただけだろ! そんな()()()()()()()()()()()()()()

 

「黙れ」

 

「んごっ」

 

 口を閉じさせる。

 多少舌を噛んだかもしれんが、知ったことじゃない。

 

 心が冷めていくのがわかる。

 

「最後の質問だ――そのレガシーカードの情報は誰から教わった」

 

「……で、伝説は……部活の、先輩から聞かされただけで」

 

 不自然に言葉が途切れる。

 べらべらと喋れることは喋ってたのにな。

 

「じゃあ質問を変えるわ。そのサクリファイスデッキ、どうやって手に入れた?」

 

「ッ」

 

「闇のカードの出どころも含めて全部吐け」

 

 どうしてっていう顔をしているが、わかんだよ。

 

 真偽判定とか心理学のチェックを誤魔化す時のような喋り方してんだよ、お前。

 今生では全然やれてないが、前世の学生の頃はカードじゃなくてTRPGに嵌まってたし。

 誤魔化されねえよ。

 

「ぎ……ぎ、や、やみの、フランシスは……貰った」

 

「誰から?」

 

「が、ガキだ……乳のでけえガキに、お前を、倒せばもっと、くれるって……」

 

 その言葉に思いつくやつがいた。

 

「……あいつか」

 

 シャフルだったか。

 それのディールという巨乳メスガキ。

 あいつが裏から糸を引いてやがったのか。

 

「お、おまえの本気デッキも教わって、たけえカードを、勝てばくれてやるっていうから、くそ……くそが! 騙しやがった、なにがナイトレイダー、だ! そんなの一体もでてこなかったじゃねえ、か。サクリファイスの、生贄にするデッキなら対抗出来ねえって、嘘つきが!」

 

 なるほど。

 サクリファイスデッキは、夜疾猟団(ナイトレイダー)へのメタか。

 確かにカウンターを乗せたり乗せられたりするのは相手のクリーチャーにも依存するし、生贄にされたら回収は出来ない。

 よく考えてる。

 

 まあ違うデッキだけどな。

 

「くそ! くそ! なんでだ! なんであんなわけのわからないデッキに!」

 

「副部長」

 

「なんで負け!」

 

 

 

 

妖鬼管弦楽団(トロルオーケストラ)の時のほうがあんたは強かったよ

 

 

 

 

 呆然とした顔。

 だが正直に伝える。

 

「は゛?」

 

「事実だ。あのデッキのほうがあんたは強かったよ」

 

「んなわけ」

 

「あのデッキのほうが魔石は破壊できた、秘宝だって破壊する効果もあるクリーチャーがいたし、なにより」

 

 ゆっくりと息を吸う。

 

 

「あのデッキのほうがあんたは使い込んでいた、その力を引き出せていた。なによりも妖鬼管弦楽団(トロルオーケストラ)のほうが――あなたを強く出来たよ

 

 

 副部長の顔が硬直する。

 

「あのサクリファイスは使い慣れてない、回し慣れてない、効果の切り方もガタガタ」

 

 キョロキョロと目線が動く。

 

「自覚してんだろ。あのデッキの回し方に、使い方に、勉強家で努力家だったあなたのプレイは生かされてたのか?」

 

 耳を塞ごうとして、その手を抑える。

 そして、はっきりと目線を合わせて伝えてやる。

 

「今まで一番弱かったファイトだよ」

 

 事実を。

 

「あ、ああ、ああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 

「最後の命令だ。今すぐ持ってる闇のカード全て置いて、警察いって、今までの自分の所業を自白して、捕まるようなら大人しく逮捕される。そして、心悔い改めて真っ当に生きられるように努力しろ」

 

 

 先程までのチンピラ共と同じ命令をする。

 

「二度と闇のカードなんて手に入れようなんて思い上がるな、俺や天儀さんたちの前に顔を出すんじゃねえ」

 

「わ、わがっだ……」

 

 ぎくしゃくと。

 顔も格好もボロボロになったままロボットのような動きで副部長――彼の名前を思い出そうとして……やめた。

 

 思い出す価値もない。

 そんな感傷は。

 

「ツッコミ気質で、負けたらムキになるし、勝ったら隠しきれない笑みでドヤる……努力家だったあんたは嫌いじゃなかったよ」

 

 俺にはない。

 

 そして、壁に刺さっていたのも含めて闇のカードを回収する。

 

「闇のカードねえ」

 

 手袋ごしでもねばついた感触を感じる。 

 精霊の宿ってるものとはまた違う冷たい感触。

 例えるならば、札束が道端にポンって並べられてるのを見たような異質感だろうか。

 

 思わず手にとってポケットにいれたくなって――

 

 ビリリと音を立てて破った。

 

 

薄い本の催眠アプリかよ、くそったれ

 

 

 後で適当に穴を掘ってまた焼く必要もあるだろうが、とりあえずこれで多分使えないはず。

 まったく。

 

 冗談じゃねえぞ。

 

 あのクソガキ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 ビリっと手に持っていたカードが千切れた。

 <蝕みの腐乱使統(フランシス)

 

 その複製(コピー)カード。

 

「……しくじったか」

 

 それを通して、()は見ていた。

 

「……だが、なんだあのデッキは」

 

 くそ、と舌打ちをする。

 あのファイトに使われていたカード、その組み合わせに舌打ちする。

 

「あいつのメインデッキは別にあったのか」

 

 彼が、闇のカードを渡した男に与えた情報はナイトレイダーとゴブリンプラント。

 その混合デッキに対するメタデッキ、考えていた戦術の一つだった。

 闇のカードを持っていれば、どんなデッキでも支配して動かせるし、奪った共鳴力でそれは高まる。

 

 故に必勝。

 闇のカード使いが敗れるとすればそれを上回る光、レガシーカード使いのみ。

 

「……あの魔石、あれはレガシーじゃないのか?」

 

≪違うな≫

 

「違う?」

 

 たったのワンターンで10/10の強力過ぎるパワーを発揮していたのに?

 

≪あれは既製品。我々が、世界の伝承を写し取っただけの絵の魂なき剥製に過ぎん≫

 

「ならばどれだ。あいつのレガシーカードはどこにある?」

 

≪……感じた限り、あれにレガシーの気配はない。共鳴率の気配もな≫

 

「…………まさか本当に共鳴率がないのか? ほんとうに?」

 

 信じられないとばかりに首を振る。

 その度に鬱陶しい部位が揺れて、慌てて手で抑える。

 

≪涙ぐましい努力だな。力もなく、輝きもなく、ただファイターのみの強さで挑むとは……古の戦士でもあるまいに≫

 

「■■■■?」

 

≪だが、所詮は運任せ。いずれは生命を落とすだろう、適度に手駒を増やしてぶつけていけばよい≫

 

「……はっきりと勝てとは言わないんだな」

 

≪あんな屍同然の石ころよりも、お前のほうが大事なのだ――我が愛しきディールよ≫

 

 姿もなく囁きかける声に、ディールと呼ばれた()は顔を歪める。

 

 真っ白な細い指先を持つ手が、その黒混じりの髪を撫でた。

 

「わかった。今は放っておく、まだゲストは集めきれてないしな」

 

≪ああ、そうだ。我らを増やそう、もっと数を、もっと闇を≫

 

「だが、必ずだ。いずれ必ずあいつを倒す、このオレ様が」

 

 ガリガリと、大きく膨らんだ男らしくない胸上を爪で掻きむしる。

 

 

あの男は――オレ様が殺してやる

 

 

 

 長く伸びてきた小指の爪を、唇で加えながらそう呟いた。

 

 ガリガリと。

 

 痛む乳房を押さえながら。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 そんな帰り道。

 

 念の為に道を変えて、コンビニによったりして時間を潰してからの帰路。

 バイブ着信にしていたケイタイに着信。

 

「なんだ?」

 

 メールが一件。

 

 見ると。

 

 

 

「――ファイトの申し込み?」

 

 

 

 羽島先輩からのメールが入っていた。

 

 天儀ドロシーからのファイトの申し込みとして。

 

 

 






 大きな指で、器用に動かし、コミカルに。
 そんな彼は皆の人気者。
 今日も明日も頑張るぞ。


                 ――愉快な角笛吹きオグル

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