【書籍化】俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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【※<沈黙>が想定以上に強すぎるという声もあり、修正しました】





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朽木様より可愛いドロシーちゃんをいただけました!


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真機楼様よりユウキちゃんを頂きました!
ありがとうございます(めそらし)


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まったく女子高生というのは主人公ちゃんに厳しいですね!
私服のFAもいただきました~!


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こちらは学生服のモブくんです
手袋は遅れてきた厨2かな?


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oota様より忙しいジグ部長のFAもいただけました!

みなさまいつもありがとうございます!


四十一話 打ち消すとは、その効果をスタックから取り除くことである

 

 

 

 メインデッキをシャッフルする。

 ファローシャッフルを三回。

 カットを行ってからセットする。

 

 ライフデッキをシャッフルする。

 ファローシャッフルを二回、こちらはカットを二回。

 そしてセット。

 

 目の前の少女もほぼ同時に終わった。

 同じシャッフルをして。

 

「……シャッフルが上手くなったね」

 

「……たくさん練習しました」

 

 最初の時はカードを扱うのもたどたどしかった初心者だったのに。

 たった数ヶ月で淀みなく、視線も向けずに出来ている。

 

「ボードになら自動シャッフルがあるからしなくてもいいのに」

 

「そうですね」

 

「シャッフルまで真似なくてもいいんだよ?」

 

「カッコよかったんです」

 

「そっか?」

 

「シャッフル。スムーズに出来たらカッコいいじゃないですか」

 

「そうだね、うん、そうだ」

 

 シャッフルは出来たらカッコいい。

 TCGを始めた時はわりとそんな動機で触れることもあるもんだ。

 そのあとの迷いのない並べ方、切れのいいプレイ宣言、まるでマジシャンみたいだなんて思ったこともあったっけ。

 LifeでもないTCGだったけれど。

 

「ゲームなんだ。楽しく、かっこよく出来たらそれだけで十分だ」

 

「はい。今日のはただのゲームです」

 

 立ち位置を調整する。

 展開したバトルボードが重い、その重さが少しずつテンションを上げてくる。

 

「ファイトのアンティは?」

 

 嵌め直した手袋越しに右手を握りしめる。

 握りしめて、開いて、また握る。

 

「私が負けたなら二度と近づきませんし、話かけません。顔を合わせたりとかも出来るだけ努力します、さすがに登校時間とか知らないので回避は頑張りますけど」

 

「偶然はしょうがない。手札事故みたいなもんだし、で。君が勝ったら?」

 

「話をさせてください」

 

「どれぐらい?」

 

「貴方が席を立つまで」

 

「おっけー」

 

 都合のいい。

 僕にとって都合の良すぎる条件だ。

 

 メールで提示されたドロシーからの条件の提示。

 

 本来なら問答無用でお断りしてもいい、ある意味僕にはそれをしてもいい道理があった。

 けど。

 

 

 ――だって後味が悪いことをしたら、しんどいじゃないですか。

 

 

 後味が悪くなる。

 だから、受けた。

 

「そろそろやろうか」

 

「はい、やりましょうか」

 

 ジャッジの店長に目を向ける。

 頷いたのを見て、息を吸った。

 

「レディ……」

 

 

「「ファイト!!」」

 

 

 お互いに手札を引き抜いた。

 

 ――手札はまあまあ。

 キープでいいか?

 

「マリガンします」

 

 なにっ。

 

 天儀の発言に耳を疑った、まさか事故った?

 この世界のファイターが……いや、あの顔は。

 

「こちらもマリガンします」

 

 手札に満足をしていない。

 なにか充実した手札であるべき動きを求めてる顔だ!

 手札五枚をメインデッキに重ねてオートシャッフル。

 

「……手札が悪かったんですか?」

 

 シャッフルが終わるまでの間に発せられる、天儀の質問。

 

「さて、君は?」

 

 はぐらかす。

 

「悪くはなかったです。けど」

 

「けど?」

 

「貴方を倒すのには少し不安でした、だから」

 

 シャッフルが終わる。

 

 ――お互いに5枚引き抜く。

 

 そして、1枚。マリガンをした回数分の枚数をメインデッキのボトムに戻す。

 

「キープ。これで行きます」

 

「キープ。受けてたとう」

 

 バトルボードが点灯した。

 

 

 

 

「僕のターンから始める」

 

 

 

 僕の先行。

 

「レディ・アップキープ・ドローフェイズ、ライフカードを2枚ドロー。土地をセットして」

 

 引き抜いたライフカードを横向きにチェック。

 土地をセットしながら、クリーチャーカードを手札から一枚引き抜く。

 

「<受粉ゴブリン>をプレイ、通りますか?」

 

「通ります」

 

「では召喚して、ターンエンドです」

 

 3積みしているコスト加速(オド・クリーチャー)を召喚して、すかさずターンエンド。

 

「私のターンです」

 

 思考するなら相手のターンに八割終わらせればいい。

 迷いのないように見えるプレイは、相手の時間を奪うことにも繋がるから。

 

「レディフェイズ、アップキープフェイズ、ドローフェイズ。メイン・ライフドローします」

 

 スムーズなドロー。

 そして、進行管理。

 教えた時のままだった。

 

「土地をセット。ターンエンドです、ゴー」

 

 ん?

 

「僕のターン」

 

 特に手札を確認せず、土地セット、エンドしたな。

 軽量カードがなかったか、あるいはエンドフェイズに唱えてくるか。

 

「レディ、アップキープ」

 

「ストップ」

 

 天儀の細い手が上がったので、止める。

 

「はい」

 

「アップキープフェイズに、1コスト支払って瞬間魔法<沈黙>をプレイしたいです。通りますか?」

 

 沈黙?

 どんな効果だったっけ――……1コストのちんもく?

 

「……ッ、コヒュ」

 

 僕の息が止まった。

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

「モブさんの動きが止まった?」

 

 茂札くんがビタリと不自然な動きで止まったのが見えた。

 わかるよ。

 

「なんで貴女達、お腹抑えてるの? トイレいく?」

 

「ちゃうねん、ちょっとトラウマが」

 

「胃痛が……」

 

 胃が痛い。

 いや幻痛なのはわかってるが、ドロシーのあのカードだけでも本当にお腹が痛くなる。

 

 

 

 

「――……土地をセットして、エンドします」

 

 

 

 数秒。

 たった2秒ぐらいで復帰して、茂札くんがターンを終えた。

 復活が早い。

 あの沈黙からして効果を理解したのだろうに、やはり彼は強いな。

 

「? 3コストもあるのに、動かなかった?」

 

「あの瞬間魔法の効果?」

 

 常連客の少女――祇浄ちゃんと店員さんが首を傾げる。

 姉妹みたいで仲良しだなぁ。

 

「沈黙の効果は単純だよ。相手ファイターを1人指定して、このターンカ(・)ー(・)ド(・)を(・)手(・)札(・)か(・)ら(・)プ(・)レ(・)イ(・)出(・)来(・)な(・)く(・)な(・)る(・)」

 

 説明要求をしなかったために省かれた内容を、ぼくが答える。

 リナ、君もジュース飲んでお腹なだめてるんじゃない。

 

「ターン使えないって……それだけ?」

 

 それだけだよ。

 それだけで、うん。

 

「うっわ」

 

 店員さんが声を漏らした。

 よくみればわかるぐらいに微かに眉を曲げて、顔をしかめている。

 

「1コストで、それってエグいカードだね」

 

「? エグい?」

 

「修行が足りないね、ユウキは」

 

「なんでさ!」

 

 

 

「――ドローフェイズ。土地をセットして、ターンエンドです。ゴー」

 

 

 

 あ、ドロシーのターンが終わった。

 これで土地2枚かぁ。

 

「1ターン、カードを召喚出来なかったらどうなると思う?」

 

「? えーと、土地とかはセットだから出来るし、魔石もセットだから平気だよね」

 

「そうね、ただし秘宝とか魔法は使えない。あと呪言も手札からのプレイに当たるから」

 

「既に出てるカードの起動とか、殴るぐらいは出来る?」

 

「そうね」

 

「あの沈黙は【明願】――アップキープフェイズにプレイすることで得られる追加効果がある、そ(・)の(・)タ(・)ー(・)ン(・)の(・)攻(・)撃(・)も(・)出(・)来(・)な(・)い(・)っ(・)て(・)い(・)う(・)」

 

「えっ」

 

 ぼくからの補足。

 瞬間魔法なのに使うタイミングがアップキープ、それに制限を得ることによって追加効果を得るキーワード能力がある。

 

 それに何の枷にもならないことがわかっていておいて。

 

「それって……ターン丸々セットとかするだけでなんもかわりませんよね?」

 

「そうだね」

 

 そうだよ。

 本当にそれだけで、うん。

 

「……なんか嫌な、激しく嫌な予感するんだけど、これ気の所為じゃないよね」

 

「少し賢くなったね、よしよし」

 

「ば、馬鹿にされてる!」

 

 仲良しだなぁ。

 

「序盤、先行とかでの2ターン目でぶっぱされたら先行取れたアドなくなるねん」

 

「だね」

 

「? アドって、土地とかは置けるんですし」

 

「自分でファイトする時のことを考えて、想像してみて。序盤の2ターン目の展開と、手札が尽きそうな時の10ターン目とかのターンに、どれだけ価値の差があるか」

 

 淡々と、聞き取りやすい声で店員さんは言った。

 

 

 

「強いタイミングで使うカードこそ強いカードだ」

 

 

 

「それモブさんの口癖じゃあ、あみゃみゃ」

 

「私が言っても様になるからいーの」

 

「おお、ほっぺが可愛いことになっとるー」

 

 フレンドリーなお店だなぁ。

 

 ん?

 

 

「あのカードは」

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 現時点を持って最大警戒だわ。

 

 僕の記憶にある限り、あのエンジェルハウンドのデッキは撹乱アグロ……にしたかったミッドレンジ。

 時(・)代(・)遅(・)れ(・)の(・)カ(・)ー(・)ド(・)類(・)と(・)最(・)後(・)の(・)エ(・)ン(・)ジ(・)ェ(・)ル(・)ハ(・)ウ(・)ン(・)ド(・)を(・)ね(・)じ(・)込(・)ん(・)で(・)な(・)ん(・)と(・)か(・)負(・)け(・)な(・)い(・)よ(・)う(・)に(・)す(・)る(・)。

 そんなデッキだった。

 

「僕のターン」

 

 あのデッキに<沈黙>が入るか?

 入るかといえば入るし、汎用カードとしても悪くはない。

 

「レディ、アップキープ、ドロー」

 

 しかし、あれは打ち消さない。

 ターンを引き伸ばす、延命にしかならない。

 

「メイン・ライフ、ドロー」

 

 意(・)図(・)が(・)な(・)け(・)れ(・)ば(・)そ(・)ん(・)な(・)程(・)度(・)に(・)し(・)か(・)思(・)え(・)な(・)い(・)強(・)さ(・)が(・)変(・)動(・)す(・)る(・)カ(・)ー(・)ド(・)だ。

 

 今は2土地、受粉で1コス、合計3コスト。

 土地を出せば合計4コストまで動ける。

 

 天儀の目を見る。

 

 彼女は真っ直ぐにこちらを見ていた。目は少しだけ合うが、それも瞬き程度。

 視線はこちらの手札に向けられている。

 

 ……枚数を数えているな。

 

「ふぅ」

 

 笑みが浮かびそうになる。

 

「土地2枚をステイして2コスト生産」

 

 ギアが回る。

 

「プレイ」

 

 テンションがジリジリと弱火で上がってくる。

 

「クリーチャー<角笛吹きオグル>を召喚したいです。通りますか」

 

「ッ、……オグル?」

 

「通りますか?」

 

 カードがわかったのだろう。

 目を瞬きして、それから天儀は頷いた。

 

「通ります」

 

「では<角笛吹きオグル>が召喚されます」

 

 オグルのカードをセットし、バトルフィールドに光が灯る。

 そこに現れたのは不格好で、大きく削り出しただけの角笛を手に握った巨漢のオーガ。

 

 未だ未熟な角笛吹きオグル、2コスト2/2のクリーチャー。

 

「土地をセットして、受粉ゴブリンと共々ステイに」

 

「オグルの効果……は!」

 

「オグルの効果が発動」

 

 彼が下手っぴな笛を吹き鳴らそうとして、顔を真っ赤にふーふーと下手っぴな音を鳴らしている。

 

「――オグルが召喚された次のクリーチャーカードの、コストは1軽減される。プレイするのは<滑り舌のランバート>」

 

 カードをセット。

 目の前の天儀を見る。

 

 確認する。

 

「通りますか?」

 

「通りません。ランバートに対して、瞬間魔法<反応解呪>で打ち消します!」

 

「打ち消されました」

 

 光が灯って消える。

 

 まだまだ下手っぴなオグルの肩を叩く、あるいはヤジをつける仲間は現れない。

 

 ――ランバートの効果でのルーターのコスト踏み倒しは出来ないか。

 

 だが1枚は消費(1:1交換)させた。

 

「これで僕はターンエンド」

 

 たった二枚。

 しかし、次のターンも引いて(ドロー)動かない(ゴー)なら……おそらく。

 

「……そのデッキ」

 

 天儀の声。

 その目は真っ直ぐに僕を見ている。

 

 睨みつけるように、けれども焦らずに、少しだけ口元を噛み締めて、前は見ている。

 

 

「妖鬼管弦楽団(トロルオーケストラ)ですか」

 

 

 僕のデッキを見ている。

 

「さてね」

 

 答えはしない。

 何故なら断言をしたら嘘になるから。

 ゲーム中に勘違いをさせるぐらいならばテクニックだろうが、はっきりとルールで、カードで嘘を付くのは違反だ。

 

「ただ」

 

 だからこう答えた。

 

「俺(・)はこのデッキをこう名付けた」

 

 この世界にはいない。

 大好きだった音楽バンドになぞらえて、それをモチーフにしてるだろうカードたちを。

 

「【マイ・フェアリー・キング】」

 

 奏でてやれるか。

 俺に出来るか。

 まあ試してみるか。

 

 想像が正しければ――目の前の少女はもはや素人ではない。

 

「君が彼らを憶えているならば簡単さ、戦いやすいだろう、切り抜けてみろよ」

 

 手袋を嵌めた右手で、指を鳴らす。

 

 彼女の戦い方が俺の推測どおりならば。

 

 

「戦慄の王女様」

 

 

 こう呼ぶしかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 ――パーミッション使い。

 

 

 






ゴードンの家にはヘンテコな形をした岩がたくさん転がっている
冬を越すたびに一つ、また一つを増えていくんだ


                 ――ごつごつ岩のゴードン
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