【書籍化】俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

7 / 102
本日 2つ目のお話です
昨年 冬コミで出した同人誌とほぼ同じ内容です

こちらに続く? お話が今年の夏のコミックマーケットで同人で出す予定です

文章が原稿用のため一部記号などが違うものになっています




【劇場版】俺の切り札は光らない【先行体験版】

 

 

 

 

 

 

 

 都心部。

 といっても都会って言われるのは思っているよりも範囲はでかいと思う。

 東京から電車で10分圏内、グルグルと回る結界のような山手線内ならばどこにいっても都会だろう。

 土地格差? そんなものは知らん。

 そんな都会で電車で十五分、降りて缶コーヒーを飲みながら歩けば体感五分ぐらい。

 ちょっとした特徴的な形状の屋根の建物がそこにあった。

 

 ホビーショップ『ガラパゴス』

 

 

 俺の青春がそこにあった。

 

 

 

 

 自動ドアを開く。

 途端、目に入るのは無数のショーケースだ。

 まるで綺羅びやかなドレスがガラスで保存されているかのように、無数のカードが規則正しく飾り付けられている。

 ショーケースの一番上には何のゲームなのか。そのカードが所属しているTCGの名前が飾り付けられ、それが規則正しく合わせ鏡のように順路の道から外れた位置に並べられている。

 通りやすく歩きやすい場所にはボードゲーム、TRPGのルールブック、関連書籍、スリーブ、ダイス、あと店が推している海外ボードゲームとそれの塗装のためのスプレーなどなどが飾られている。

 

 これだけでもとても楽しいし、通い始めた時は見慣れないジオラマに、大きなフィギュアに目を奪われた。じっくり見ながら、紐で結ばれた簡単な紹介パンフレットに目を通した。

 こんな世界もあるのかと楽しんで、違う世界の楽しさに首だけ突っ込んでヒューすごいって口笛を吹いた。

 店員自慢のジオラマを横目に、財布を握りしめてショーケースを眺める学生と……それ以上に多い大きい子供(オレら)をチラリと見てから、階段を昇っていく。

 ガラパゴスにエレベーターなんて洒落たものはない。

 

 業務用のエレベーターぐらいは奥にあるみたいなことは聞いたが、足で登れないような奴はたどり着けない場所にある。

 まあ手すりも付いてるし、階段幅もでかいから気合があれば車椅子でも持ち上げられるだろ。

 どこぞの女狐が電車止まった代わりに代行バスで乗り継いで力尽きてて、親切な俺たちがおーえすおーえすと言いながら運んであげた思い出もあった。

 やめろー貴様らー! なんて泣いて喜んでくれてたっけ、いい思い出だ。何故か俺だけグーで御礼返しされたが、解せぬ。

 

 二階に辿り着く。

 聞こえてくるのは静かな音。

 一番感じるのはボソボソと誰かが囁くような震え。続いて来るのは硬質な音の響き、コロコロコロなんて音じゃない。カッ、コンみたいな音。プレイマット以外に落ちたダイスはそんな音を鳴らす。

 無数のテーブル、ゲームスペースで行われる音なんてそんなもんだ。

 長机に思い思いのプレイマット、デッキ、カードゲーマーたちが遊んでる環境はそんなもので、馴染みしかない。

 二階丸々占領したゲームスペース、ここが俺達の戦場。

 

 仕事帰りのスーツもそのままに背負ってたリュックを下ろしながら、夜からの大会にささっと申し込む。

 ガラパゴスのいいところは、店発行のポイントカードに書かれてる登録IDを使えば一々名前とか書かなくていいことだ。

 もちろんリストは書かないとまずいが。

 参加料とスペースの場所代も一緒に払って手続き完了まで5分で終了。

 ……まだ開始まで時間があるな。一戦、いや二戦ぐらいは出来るか。

 誰か暇そうなやつでもいるかと思って見渡して……ちょいちょいと手を振ってる知り合いを発見。

 

「やあ」

 

「ども」

 

 その対面に腰掛け、見上げる。

 巨大だった。

 腕が太い、肩が太い、首が太い、背がでかい、そして顔もでかい。

 日進(にっしん) 月歩(げつほ)

 名前もデカい。

 

「今日は大会かい?」

 

「うっす、日進さんもですよね?」

 

 挨拶。

 日進さんは広げていたカード――サイドボードだろうものを数枚ずつ、束で入れ替えて、目の前で何枚かと、束ねてたメインデッキと入れ替えた。

 チラリと見えたカードの名前からして思い当たるメジャーは2つ。マイナーは2つ、いやこの間ネットで見たのにも使われてたから3つ。

 とはいえ、それらをブラフに動かすなんて目の前の人には造作もないだろう。

 俺はリュックから取り出したデッキケースを3つ出して、そのうち1つを考えて出して枚数を確認する。

 メイン、ライフと二つのデッキがあるから混ざると大変なのだ。

 Lifeというゲームは。

 

「やるかい?」

 

「時間もないので一戦ぐらいで」

 

「いいだろう、デッキは?」

 

「いつものですよね、そっちは」

 

「もちろん」

 

 エニグマ使いの日進月歩

 

 ガラパゴスにおける四強、考えると七人ぐらいいる変人の一角、あいさつ代わりにエニグマ布教、脳みそでローターが回ってる多分エニグマロボ。

 だからデッキを隠すことなんてしない人だ。

 する意味があるデッキなんだが。

 

「順番は?」「ダイスで」「おk」

 

 お互いにプレイマットを置く。

 その上で12面ダイスを振る、こちらが6、あちらが「11、先行で」取られた。

 

「しかし、最近は気温が下がってきたな」

 

「ずっとくそ熱いままだと思ってましたよ」

 

「違いない」

 

 季節事項の会話をしながらシャッフルする。

 メインデッキのシャッフル、ファローシャッフルを3回。

 カットを行ってからセットする。

 ライフデッキのシャッフル。

 ファローシャッフルを二回、こちらはカットを二回。

 そしてセット。

 

「君もシャッフルが上手くなったね」

 

「そうです?」

 

「ああ、シャッフルが上手い奴はカード捌きも上手いもんだ。それだけカードに触ってる証明なのだから」

 

 なんていいながら日進さんは手を止めずにフォローシャッフルを5回行い、魔法のような速度でカットを2回してる。

 ライフデッキに関してはファローを1回、カットを2回だけ。

 ライフデッキには魔石も呪言も殆ど入れない王道――固定値信者(イノベスター)のエニグマデッキだからこその質実剛健(シンプル)さ。

 魔石や呪言に頼る乱数信者……混沌主義者(パチンカー)を許さない過激派でもある人だ。

 

 お互いのデッキを交換し、さっくりとカットを行って手渡す。

 

「では」

 

「それじゃ」

 

「「宜しくお願いします」」

 

 一礼。 

 

「レディ、アップ、ドロー。土地セット、エンド」

 

「レディ、アップ、ドロー。土地をセット。手札から呪言〈土台の構築〉、デッキから土地を探してセットします」

 

「シャッフルした、どうぞ」

 

「エンドします、対応は?」

 

「エンドに、瞬間魔法〈考選〉」

 

「対応ありません、どうぞ」

 

「めくり……キープする。私のターン、レディ、アップ、ドロー……ふむ」

 

 さくさくと対応する。

 雑談はあまり余裕がない。

 相手の手札枚数、場のカード、自分と相手のライフ、自分の手札。

 そこから考えられる相手のプレイと持ち合わせているだろうカードを推測する。

 そこから自分の出してもいいプレイを考え込んで、使う。

 使い慣れたデッキならばある程度は手なりでいける。

 手なりで戦うのは上達するという意味では悪影響だが、複雑なコントロール相手には思考のリソースへの余裕のほうが重要だ。

 

 複雑な記述やシナジーで戦うコンボデッキは一見カッコいいように見えるが、それはやり込んで使い込んだ熟練者だからこそ。

 シンプルなデッキこそ強く、曲がらず、アドがデカい。

 まあそんなアドに背を向けてコントロールを使いたがる自分は変人だが、カードゲームではそれが許される。

 

「レディ、アップ、ドロー。魔石〈凍え堕ちる星々の記録〉をセット」

 

「エニグマではないな」

 

「ちげえよ」

 

 なんでもエニグマと結びつけるのやめません?

 いや使えそうなパーツ(ローター)がこのテーマにもあるけど。

 

「場に出た時記録カウンターを2つ重ねる。さらに、クリーチャー〈星詩す人(スター・バード)〉を召喚。場に出た時の効果で、魔石にカウンターを1つ乗せます」

 

 テーブルの端に用意しておいたダイスを3の目にして、カードの上に乗せる。

 代用カウンターだ。

 

「ふむ」

 

 日進さんはでっぷりとした厚みのある顎を撫でて。

 

星航る鳥たちの記録(コメートテイルズ)か」

 

「はい。出たばかりですけど、結構面白いんですよ。ターンエンド」

 

「速攻があるのに攻撃はしないのかね?」

 

「しませんよ」

 

 Lifeは一昔前まではアグロ――速攻戦術が不利なゲームだった。

 クリーチャーで殴ること、バーンで焼くことは、即座に仕留めなければ相手を有利にするだけ。

 相手の手札が潤沢なうちに追い詰めれば豊富な土地によるオドで捲くられるだけ。

 だからある程度の防御カードをいれて、ギリギリまで削られてからオドコストの重いカードで一気に制圧し返す。

 それを防ぐために軽量カードとロックで制圧する。

 そのせめぎ合いでいつも悩ましいゲームだった。

 

 そうだった、だ。

 

 まあ今は【創生】もあるし、相手の土地出しに反応しての誘発カードも増えた。

 向上したカードパワーもあってアグロの全盛期とも言える、が。

 最初期から常に存在感とノウハウを磨き上げてきたコントロール、そしてコンボデッキの個人的にやべえやつ代表格のエニグマを侮る気はない。

 

「1ターンでも動ける余地を増やす気ねえんで」

 

 なので殴る気はない。

 殺す時までは。

 

「まったくつれないな、私のターン」

 

 そう言いながら出してくるコードのパーツを見て、マスカンかどうか考えながら捌いていく。

 組んだばかりのデッキとテーマだが、中々動ける。

 純正に汎用カードを多めに差して調整したやつだけど、もう少しコメートテイルズの数を増やしていれてもいいかもしれない。

 

 そんな事を考えながらターンを重ねる。

 出してきた魔石や秘宝を、〈凍え堕ちる星々の記録〉で2ステイさせたりして、捌く。

 その代わりに展開したクリーチャーが切り崩され、外される。丁寧なリーサルの数え。

 

 エニグマ対策は二つある。

 

 まずコンボを成立させる前にぶち殺す速攻。

 もう一つは慎重にマスカンを叩き伏せていく長期戦――解読戦だ。

 エニグマはターンを重ねれば重ねるほど、どんなカードをデッキにいれているのか、その歯車を晒しだす。

 一番効果的なのはピーピングハンデスだが、まだ引けてない。

 しかし勝つ。

 

「〈星描く翼(スターロード)〉で攻撃、通りますか?」

 

 通れば消し飛ぶ、ライフも消し飛ぶが。

 

「その攻撃クリーチャー指定ステップに、優先権を貰う」

 

「ブロックはいないよな」

 

「ライフで受けるが、これを出しておく――瞬間発動で〈戒するもの天壊龍(エンジェルハイロウ)〉」

 

 そのカードには見覚えがあった。

 

「120円?!」

 

「それは50円のほうだ。こっちは550円だ」

 

「テキスト確認していーですか?」

 

「まあ古いカードだしな、どうぞ」

 

 テキストを確認させてもらう。

 ふむ、飛行・瞬間発動。まあ唯一無二だからそんなもんだろ、で能力・魔法の対象にならないであーステータスは低めで。

 え。

 

「召喚成功時、このカードの上に時滅カウンターが3つ乗せられている。これが全てなくなるとエンジェルハイロウは自壊するが」

 

「それまで勝てないじゃないですかやだー」

 

「私は勝てるぞ、あ、ライフがゼロになったな、困ったなぁ」

 

「死んでねえし」

 

 日進さんのライフデッキが全てめくられる。

 そして、同時にダメージ分だけ土地になり……ライフはゼロなのに、負けていない。

 

「ターンエンドです。〈星描く翼(スターロード)〉から記録カウンターを3つ取り除くが、2つしかないため生贄に捧げます」

 

「私のターン。ライフはないからスキップ、メインだけ引いて。ふむ、〈残らずの契約〉をプレイだ。いいかね?」

 

「どうぞ」

 

 これはもう無理では?

 いやまだだ!

 テスタロッサ辺り、防災で消し飛ばすかまだいける。

 ……フラグか?

 

「というわけでめくっていくが、一々確認するかね?」

 

「被ってたらストップいうんで、ざーとどうぞ」

 

「うむ」

 

 時間というリソースは有限だ。

 というわけでさくさくめくっていく、あ、このコードいれてたんだ。

 ん? テスタロッサがねえな……嫌な予感がしてきた。

 本当に嫌な予感が。

 

「デッキボトムの〈テスタロッサの墓守〉を回収するよ。ふむ、運がいいな」

 

 天井を仰いだ。

 

「エンハイ自壊とかしてくれねえかなー」

 

「しない。では〈テスタロッサの墓守>をプレイ」

 

「防災で、土地三枚墓地に送る」

 

「では、2オドで〈血儀の解呪者〉を召喚。通るかね?」

 

「とお」

 

 いやまて。

 これカウンター解除のやつだよな。

 恐怖劇場の魔石はまだ出てない。

 出てない、が……うちの魔石のカウンターくんが解除されるのでは?

 

「通る? 通らない?」

 

「すいません、墓地チェックいいですか」

 

「どうぞ」

 

 過半数が除外されて、少なくなった日進さんのメイン墓地をチェックする。

 ない。

 ない。

 やっぱりテスタロッサがない……これは、うん。

 日進さんの残りの手札を見る、うん、さっき回収したやつ含めて二枚残ってますねぇ。

 

「ありがとうございます。通します、さあやれ!」

 

 勝機もねぇ!

 

「では〈血儀の解呪者〉を召喚するよ」

 

 終わりですわよ、これは。

 次のアップキープかなぁ、存在忘れててくれない? だめ?

 

「さてさらに2オド出して――解号完了といこう」

 

「はいはい、テスタ 「獅子の心臓よ、高らかに高鳴りたまえ」 え」

 

 

クリーチャー〈虚空牙イフ〉を召喚する

 

 

「すぅ」

 

 息を止める。

 否、息が止まった。

 テキスト確認いいっすか? 目線で尋ねる。

 素敵な笑顔で返されて、大きな指でちょんと前に出された。ありがとうございます。

 ふむふむ、なるほど。

 パワータフネスがX/Xでぇ、能力がシンプルですねえ。なになに、除外されてる枚数に等しいだけのパワーとタフネスを得る、そんでタフネスにそれから+1されて出るか。

 ほーん。除外枚数参照型のクリーチャーか。

 

「エニグマデッキ、そっちの何枚でしたっけ? 40枚でしたよね」

 

「違うよ、私のは50枚デッキだ。ついでに虚空牙のパワーは32ってところだね、エンドフェイズに〈血儀の解呪者〉を生贄に捧げて〈圧死する黒星たちの記録(ロストホライゾン・メモリ)〉のカウンターを解除する」

 

 さよなら俺の全体除去。

 

「そっかー。俺のターン、レディ、アップ……すぅ」

 

 来い、全体除去!

 きてくれ、全体除去!!

 自分でも展開していくからあまりいれてないけど!

 光れ、俺の右手ぇえええ!

 

「ドロー……!」

 

 が――〈苦渋の運命(ピッチスペル)〉 だめ!

 

 あと1ターン早くくれば! 乗り越えられたのに! 乗り越えられたのに!

 

「ターンエンド、どうぞ」

 

「私のターン、引くのはない、土地だけ引いて、ではバトルフェイズだ」

 

「テスタロッサいいですよ?」

 

「殴ってからでも遅くないだろう、〈虚空牙イフ〉で32点攻撃」

 

「ぐごへ」

 

 俺は死んだ。

 いや特殊勝利とワンショットパンチの同時打ちは無理なんよ。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 というわけで楽しい楽しい感想戦である。

 死んだんじゃないかって? ゲームで人が死ぬわけ無いだろ。

 だから沢山殺せるし、死ねるんだよなぁ。

 

「わははは! みたかね、無限に高鳴る心臓から放たれるパンチを!」

 

「追放されたカード枚数参照ってマジかよ、しかも2オドってコスト安すぎません?」

 

「時代のインフレだねえ。本当にカードパワーも上がったもんだ、一昔前なら5オドぐらいが妥当だろう」

 

 こっちのスターロードも、2マナ5点パンチ出せるからまあ似たようなもんである。

 じわじわと慣らされていったが、一昔前のフォーマットを見直すとびっくりするばかりだ。

 

「しかし、初めてですね。エンジェルハイロウでしたっけ? あれ使うの」

 

「ああ。今環境は高速化が進んでいるだろう?」

 

「ええ」

 

 カードゲームは年月と新しいカードが生み出される度にカードプールが広がっていく。

 その度に違う効果、能力とデザインしていけばより強いコンボ、強力なシナジーを持ったカードと結びついて、ゲームは激化していく。

 これはどんなTCG(トレーディング・カード・ゲーム)でも避けられない問題だ。

 Lifeは複数のレギュレーション……出た時期やブロック事によって出れる大会や試合形式を変えて環境を定期的に一新させて対応しているがそれでも進むことは止められない。

 時代は進むのだ、それは誰にも避けられない。

 

「エニグマはいつだって最強無敵の永久不滅のアーキタイプではあぁるが」

 

「言い過ぎ」

 

 あくまでもエニグマ愛好家が言ってるだけのアーキタイプ(自称)じゃん。

 公式が認めたことはねえぞ。

 

「それでも加速化する環境には遅れを取ることもある。高速コンボのコードが通ればいいが、そうではないコードも無数にあるからな」

 

「そのための天壊龍(エンハイ)?」

 

「うむ。間に合わないならば間に合うように時間を止めてしまえばいい。と、ウルトラ鯖で話題になってだな。試運転していたのだよ」

 

「なるほどなー」

 

 まあ確かに天壊龍は5コストで出せるし、能力・魔法の対象にならないから除去しにくい。ステータスは4/4とちょっと頼りないが、そもそも生きてさえいればいいのだ。壁せずに飛行で殴れる時は殴るだけでも十分だ。

 ……その前の50円は酷かったな。確かもっとコスト高かったんじゃなかったあれ。

 

「そういえばあまり見たことがない絵柄ですよね、それ」

 

「うむ? ああ、これか」

 

 日進さんのエンジェルハイロウを見てびっくりしたのは能力もあるが、見覚えがなかったやつだからだ。

 Lifeの普通のカードデザインじゃなくて、アニメ塗りなのだ。

 日本デザイナーのやつっぽいやつ。

 

「これはLifeアニメのBlue-ray(ブルーレイ) BOXに付いてたやつ奴なのだよ」

 

「え、アニメあったの? これ」

 

「ああ……少し悲しい結果になってしまったがな」

 

 そういって日進さんは斜め上を見上げた。

 キラリと照明に反射して四角い眼鏡が輝いていた。

 

「しかし、中々苦戦したが、【コメートテイルズ】は君にはいいんじゃないか?」

 

「そうですね、純正に汎用ぶち込んだだけですけどもっと弄れば強くなりますよ、これ」

 

 まだまだ粗があったり今回善戦出来たのは上振れが大きかったが、それ以上に使い慣れてなさが目立った。

 もっと俺好みに合わせて使い込んでスペックを引き出せるようになればもっと強くなるはずだ。

 

「それにクリーチャーに鳥が多いのもいいな、補正を分かち合える〈星航る鳥(スターバード)〉も面白いし」

 

「――君のエースである〈_____〉とも相性がよいのではないか?」

 

「そうですね」

 専用デッキまで組んだカードを入れたデッキケースに触れながら、俺は頷いた。

 

 

 

 

 

 そんな思い出、他愛もない思い出。

 

 それを思い出したのはずっと先、本当に凄く先。

 

 俺が死んだ後になるなんて当時の俺は想像もしなかった

 

 

 






 その翼が輝くことはない。
 煌めくものが失われているのだから。

                   ――????(一般配布版)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。