【書籍化】俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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※1/18 冒頭のほうで、同人版の予告2本が更新されています


 更新が遅くなってすみません
 次回は急ぎます

 ロスロスマンVSユウキちゃんのファイトです

 ヨン様より素晴らしく恐ろしいFAを頂きました!
 前話にも挿入していますのでよろしければお楽しみください


【挿絵表示】




六十話 回復とはライフを得ることである

 

 ピタリと止まった。

 ゆらゆらと揺れていた化け物の震えが止まった。

 

 ダメかな……!?

 

「ロス。ロス、ロス」

 

 怒った? いや、違う。

 

「ロス、ロス、ロスロスロス」

 

 これは。

 

「ふぁイト?」

 

 ()()()()

 天井に着地していた化け物が落ちる。

 熟れ過ぎた葡萄が腐って落ちるような勢いで落ちて、くるりと着地する。

 抱えていた入院着の子供(メガバベルの支部社長)ちゃんが、モノのように放り捨てられた。

 

「なにを!」

 

 受け身も出来ずに転がって痛かっただろうに。

 けれど目を開けない。気絶してるんだろうか。

 でもそれどころじゃなかった。

 

「ふぁふぁふぁ、いと」

 

 化け物が伸ばした手からぶくぶくと肉が膨れ上がって、泡が弾けるように骨が現れた。

 いや違う。

 骨と血で染まったバトルボード!?

 

「ロス? ロス? ロス!」

 

 目玉の集合体の頭に手を突っ込み、ぐちょぐちょと音を立てて何かを引きずり出す。

 血泡に汚れたデッキ。

 長い指先に三つ束があって、ジーと何かを見るような仕草と共に二つを頭に戻した。

 

「ロス」

 

 残ったデッキが共にボードにセットされる。

 そして、頭を振って……汚物のように吐き出された小さな束が、吸い込まれるようにボードにセット。

 あれはライフデッキだ。

 

「トゥ、みー!」

 

 グルンと円を描くように、長い手を回転させて、遠心力でボードが展開する。

 真っ黒な飛沫が飛び散って、汚れ一つないバトルボードが現れた。

 

 ファイトの意思はあるみたい。

 

「いくよ!」

 

「ロロロ」

 

 ボードのメインデッキに手を伸ばした時だった。

 

「我ハ黄金ヲ作ル地上ノ悪魔成」

 

 化け物が右手を掲げて、指を掻き鳴らすように曲げた。

 

 

 

その祈りに光亡く(PRAY MATTE)

 

 

 

 光が消えた。

 いや、これまでも真っ暗だったけれどそれ以上に光が、艶が、ない。

 真っ暗で、足が動かない。

 

「これ、は」

 

 化け物の周囲が、私の周りが歪み出す。

 真っ暗にされた病院の廊下だったはずの空間。そう空間が歪んでる、広く、まるで宇宙のように、あるいは墨汁で出来た水底のように広く、拡大された。

 

≪マスター! 領域が濃さを!≫

 

「濃さ?!」

 

≪物質化している! 堕ち始めてる!≫

 

 廊下の形が変わっていく。

 足元がゆっくりと沈んでいく、まるで腐敗した草むら、あるいは土が腐るようなもの。

 これに飲まれたら終わりだと何故かわかった。

 

 ――誓言 敗北せし者は(カード)に仕舞われる――

 

 アンティが何故かわかる。

 こいつに負けたらカードにされる、自分の尊厳も何もかも封じられる。

 それが何故か分かった。

 だから。

 

「アリーシャ、力を!」

 

 右手を伸ばす。

 そこにある金色の腕輪、師範から貰った補助具。

 これを左手のバトルボードの、父さんの形見の腕輪に重ねるように叩きつける。

 

≪補助する、マスター!≫

 

 手を十字に組み、イメージするのは火。

 形見の鍵が熱く光る。

 闇が燃え盛る世界を見た、自分を燃やす姿を視る――火をつけろ。

 

点火する(イグニッション)

 

 腕から真っ赤な火が登る、私の精命力が燃え上がる。

 それは火が宿って、足元から登ってきていた泥を焼いていく。

 右手から火が駆け上がる、右足から熱が登ってくる。

 炎で炙られたように、自分の髪が大きくたなびるのがわかる。

 自分の姿が何故か俯瞰的に見える。

 

 これが二度目だから。

 

「メ イ ル」

 

 これが戦うための姿。

 化け物を見つめながら、命衣流を纏った私は左手を振って――少し姿を変えたバトルボードを展開した。

 負けられない戦いだからこその。

 

「ファイトだ!」

 

 イ グ ニ ッ シ ョ ン ・ フ ァ イ ト

 

「ふぁいと」

 

 ニチャリとそいつが笑った気がした。

 

 

 ボードが点灯する。 

 

 

 先手は、私じゃない。

 

≪先手が奪われてる、あいつの領域だから?≫

 

「ロス、ロスロス」

 

 化け物がカードを引き抜く。

 

 そして、カードを1枚放置捨て、え!?

 

「セット。しボるゥ~」

 

 放り投げられたはずの土地が空中で静止する。

 くるりと回転して、軋みを上げながら真っ黒な色の光を放つ。

 

「通常魔法<穢れの儀式>、”オド”を3つ産ム」

 

 続いて放り捨てられたカードが土地から出た光を吸い込んで、より大きな黒い光をこぼす。

 まるで血を流すようにこぼれるそれに、化け物が差し出したカードで受け止めた。

 

「3オド<魂啜(ソウルカーカス)唇噛羊(ハム)>ヲ召喚」

 

 そして、放り投げられたカードから現れたのは異形の怪物だった。

 おそらくは羊。

 だけど、それには顔がなかった。

 顔の代わりに一杯に広がった口と円を描くように形成された唇がハムハムと震えている。気持ち悪い。

 ステータスは、3/2?

 攻撃力はコスト相応だけど、タフネスが低い……何か能力がある。強めのものが。

 

「エンド」

 

「私のターン! レディ、ドロー、アップ!」

 

 メインデッキとライフデッキからカードを引き抜く。

 

「っぅ、まだ!」

 

 ライフが減ったことによる疲労感はある。

 けど、闇のファイトであった身体を蝕む闇とかはない。燃え盛る命衣流が守ってくれている。

 

「私も土地をセット。 1コスト支払い<ブレイバー・躍動>を召喚するよ」

 

 そうしてボードに手札を置いて……反応しない。

 

「え?」

 

 まさか故障した? こんなタイミングで?!

 

≪ユウキ、違う! 精命力が、光が消されてる!≫

 

「消されてるって……」

 

 

「ソノ程度ノ祈リでは灯らナい」

 

 

 それなら!

 

()()()()()()()!」

 

 宣言を言い換える。

 手に持ったカードに、自分の火が灯るようなイメージ。

 

「手札から1オドで<ブレイバー・躍動>を召喚! これは全てのブレイバーに飛行を与えるよ!」

 

 改めて出したカード、そこから頼もしい勇気ある戦士が現れる。

 イケた!

 少し疲れるけど、これでなら戦える。

 

「ただし、このブレイバーは可能な限り毎ターン攻撃に参加しなければいけないデメリットが有る。まあ召喚酔いで出来ないけどね」

 

 1コストで呼び出せるブレイバーの種類は多くない。

 本格的なのは2コストから。

 次のターンから動かせる選択肢が増える。

 

「ターンエンド!」

 

「ロス、ロスロス」

 

 ターンが切り替わる。

 何をしてくる。

 

無駄(ロス)

 

 うん?

 

無価値(ロス)損失(ロス)消耗(ロス)欠乏(ロス)……」

 

 ゆらゆらと揺れて、化け物は。

 

失う悦び(ロスト)

 

 ()()()

 はっきりとこちらを嘲笑った。

 

「ドロぉ」

 

 カードが引き抜かれる。

 2枚のカード、これを化け物はまた放り投げた。

 

「セット、魔石<尊厳啜りの舌> 通常魔法<穢れの儀式>ぷレい」

 

 土地じゃない? それも穢れの儀式2枚目!

 魔石のカードが空中で静止し、もう一枚のカード――魔法カードが軋みを上げる土地からのコストを浴びて、断末魔のように脈動した。

 

「2オド<魂啜の吸嘴鳥(バード)>、1オド<魂啜の圧鼠(プレッシャー)>召喚」

 

 続いて現れたのは二体のクリーチャー。

 両方ともが顔がない鳥と大きく膨れ上がった鼠。

 

 まだ1枚しか土地を出してないのに、これだけの展開を。

 

「プレッシャーノ効果発動。お前はライフを一つ失ウ」

 

「っ?!」

 

 ライフカードが1枚墓地へと滑り落ちる。

 それは土地だったけど、セットはされない。

 

 ライフを失う(ライフロス)だから。

 

「そシて、1点回復(ゲイン)すル」

 

「……ライフドレイン!」

 

 あの鼠は1コストで1点ダメージのライフドレインするクリーチャー。

 じゃあ鳥は? ステータスは2/1だけど。

 

「バトルフぇイず。バードは速攻・飛行を持ち、ハムで攻撃ぃ」

 

 計算する。

 2点と3点、合計5点。

 まだ2ターン目、それだけ受けても土地を増やせるから損はない。

 

「ライフで受け」

 

 嫌な予感がした。

 

「――ない! その鳥を、躍動でブロックする!」

 

「……相討チ」

 

 ブレイバー・躍動と吸嘴鳥が激突し、共に墜落する。

 後の展開を考えれば残しておいたほうがよかったかもしれないが、躍動は軽い1コストだ。

 飛行が必要な時に出すだけでも間に合うし、どちらかといえばあの鳥が強化される前に撃墜出来るほうが得な気がした。

 

 少なくともモブさんならそういう判断をする気がする。

 

「<魂啜の吸嘴鳥(バード)>は破壊さレた時、ライフ2点回復さセル」

 

 化け物の頭の光が眩しいぐらいに取り戻された。

 回復効果持ちのクリーチャー。あっという間に20まで回復された。

 

 イグニッションファイトは通常20までのライフの上限がない。

 それなら相手もライフドレインを繰り返して、どこまでも上がるのかもしれない。

 

「ゴートでアタック」

 

「ブロックは出来ない」

 

 3点ダメージか。

 これで土地が4枚、次でセットもすれば5オドで動け――

 

「<尊厳啜りの舌>ヲ起動。ライフ2ツ支払う(ロスト)

 

 化け物のライフデッキからカードが2枚。

 吐き捨てられるように墓地へと落ちた。

 

 目玉で出来てる頭の光が少しだけ弱くなった気がした。

 

「コのターン、受けルダメージは全て()()()()()()()()()()()()()()

 

「なっ!」

 

 気色の悪い羊の突撃を受ける。

 その衝撃と痛みに、ライフデッキがこぼれ落ちて……()()()()()()()()()()

 まるで魂葬のような効果。

 

 でも何かひっかかる。

 魔石とはいえ、効果に対して()()()()()()()()()

 

「エンド」

 

「私の、っ」

 

 痛い。

 

「……ターン!」

 

 痛いけどまだ耐えられる。

 よかった、バードをブロックしておいて。

 

「レディ、アップ、ドロー! 土地をセット」

 

 土地は2枚。

 あの魔石がある限り、ダメージによる土地急増は期待しないほうがいい。

 

「2オドで<ブレイバー・長手>を召喚して、ターンエンド!」

 

 2/2の【機先】を持つブレイバーを召喚しながら思考を続ける。

 考えろ。手癖でカードを出すな、負けられない戦いである以上考えを止めたら負けに繋がる。

 魔石。

 あれは起動能力。使えるのは自分が相手のどちらか1ターンのみ。

 となれば付け入る隙はある。

 

「ドロォ、セット」

 

 ターン開始の宣言もしない。土地もカードを投げてセットしてる。

 ほんっとマナーが悪い奴。

 ()()()

 

「手札をこぉーカイし、2オドで<喰手(ハンドグール)・指齧り>ヲ召喚する」

 

「! 病院で襲ってきたやつ! やっぱりお前だね!」

 

 呼び出されたクリーチャーに見覚えがあった。

 ステータスも確認する、2/1。

 

「……ターンエンド」

 

 羊で攻撃してこなかった。

 こっちの長手の【機先】に気づいた?

 1点ぐらいのダメージなら攻撃させるほどじゃないってことかな。

 

 ()()()、でも明らかに攻め手が鈍ってる。

 カードの消費が激し過ぎたんだ。

 

「私のターン!」

 

 闇ファイターにありがちな、共鳴力任せの都合のいい手札の弱点。

 

「レディ、アップキープ、ドロー!」

 

 すぐに使えるのばかり出すから手札が尽きる。

 無駄なく使える手札を共鳴率で揃えるから無駄なく使い切ってしまう。

 

 だから残った手札は少なくて、故に取れる選択肢も少ない。

 

「土地をセット! X1・1オド支払い通常魔法<大地の怒り>を発動するよ!」

 

「ロス?」

 

「――払ったX点分、全ての飛行を持たないクリーチャーとファイターにダメージを与える! つまり1点!」

 

 <魂啜の圧鼠>は1/1、<喰手・指齧り>は2/1。どちらも破壊出来る。

 さらに私にも1点入るし、相手にも1点入る。

 

 そうすればどちらにも土地が増えるけど。

 

「通る?!」

 

 あの魔石を起動すればライフを失うから、こっちの土地は増えない。

 打ち消しでも代用で打つ? それならありがたい。

 防災は土地の数が足りてないからもってても吐かせられないのが残念だけど。

 

「……」

 

 化け物は無言で手を振った。

 中断されていた魔法の効果が発動する。

 クリーチャーが2体吹き飛んで、私と化け物のライフデッキからお互いカードが飛び出して。

 

「ステイ状態でセット!」

 

 互いに土地が増える。

 やっぱりだ。

 

「<尊厳啜りの舌>はターン終了までダメージをロストに変換する」

 

 あの魔石を使わなかった。いや。

 

その対象は選べない

 

 どちらにも、いや、全てのファイターに適応される効果。

 だからたった2点のライフ消費だけであんな強力な効果が出来る。

 

 Lifeのカードはある程度は平等だ。

 無数のカードを見て、使って、戦ってきて思う。

 カードにはレアリティに相応しい力しかない。

 コモンにはコモンの、アンコモンにはアンコモンの、レアにはレアの領分というか程度がある。

 クリーチャーなら基本的に出したコスト分と等しいパワーとタフネスが軸になっていて、付けられている能力によって下がってたり上がってたりするように。

 魔法にも、瞬間で使えるものなら軽く、通常(メイン)でしか使えない魔法は効果が重い。

 魔石は軽々しく引けないから強い効果が多くて、呪言はダメージで出ることでないとイマイチだったりするが、その分いい時に出るととても強い。

 そんな風にバランスが取れている。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 感覚的なものだけど、なんかそんな気がする。

 レガシーなんて壊れているものがあるから断言はし切れないんだけど、そういう意味で帳尻はあってるのだ。

 まあ昔よりは今のほうが少しずつカードパワーも上がってるらしいんだけど。

 

「ッ」

 

 ゆらゆらと揺れる化け物の頭が、少し不自然に揺れた気がした。

 図星かな?

 

「バトルフェイズ! 長手で、攻撃するよ!」

 

「<魂啜《ソウルカーカス》の唇噛羊>……ブロック」

 

 お互いにタフネスが2→1に減ってるクリーチャー同士の戦闘。

 相打ちは必至だけど……長手には【機先】がある。

 こちらが一方的に倒せる。

 

()()

 

 唇噛羊が動いた。

 

「唇噛羊を生贄ニ捧げル」

 

「は?」

 

 戦闘寸前で気持ち悪い羊が絶叫を上げながら死亡した。

 生贄ってサクリファイス?!

 でもそれなら直接攻撃するだけって、あれ?

 

 ――長手が攻撃を空振りした。

 

 羊がいた場所を攻撃して()()()()()()()

 

≪なんで?≫

 

 デッキから見ていたのだろうアリーシャの戸惑う声。

 いや、これは覚えがある。

 

「当て逃げ!」

 

 馬鹿げたブロック(チャンプブロック)と呼ばれる状況がある。

 大型のクリーチャーの攻撃に、小型クリーチャーでブロックして一方的に破壊される。負けるとわかっていてもぶつけてしまう時間稼ぎの類のこと。

 Lifeのバトルでは度々あることだけど、これの中で当て逃げとある人が呼んでいたテクニックがあった。

 普段意識してないけど、バトルフェイズには複数の段階(ステップ)が存在する。

 

 ”戦闘開始ステップ”→”攻撃クリーチャー指定ステップ”→”ブロック・クリーチャー指定ステップ”→”戦闘ダメージ・ステップ”→”戦闘終了ステップ”の順番に。

 これらが()()()()()()()()()()()()()

 

 その中で今回重要なのが【どのクリーチャーの攻撃で、どのクリーチャーで防御する】の段階。

 

 これが完了した時、どれとどれが戦い合うという処理が確定する。

 確定した時に、瞬間魔法や起動に誘発とかでクリーチャーが場から消えてしまった時、どうなるか。

 答えは、今のこの状況。

 

 攻撃が空振りになるのだ

 

 攻撃対象を失った時、その攻撃は届かずに空を切って与えるはずだったダメージは消えてしまう。貫通をもっていなければだけど。

 Lifeのバトルに巻き戻しはないのだから、一度決まってしまったことはやり直せない。

 これをブレイバーデッキのミラーマッチの時に、テーブルファイトでモブさんにやられてる。

 

 ――ブロッククリーチャーの指定が終わったね?

 ――あっ

 

 とかいって生贄にさぁ! 捧げてさぁ! 逃げてさぁ! ライフずんどこ回復されるの嫌なんだけど!

 どうして、陰腹は献命と違っていつでも使えるの! 通常魔法のタイミングでいいじゃん、そうしたら逃げられないのに。

 私が使う時以外はあっけなく死んで欲しいよ。

 

「……唇噛羊の起動効果。墓地かラ(黒)コストの魔法、<穢れの儀式>ヲ手札に加えル」

 

 思考を切り替える。

 墓地回収の生贄効果。あ、だから攻撃に参加しなかったのか。

 当て逃げにはブロックする状況がいるし、起動能力だから攻撃してレディ(縦向き)からステイ(横向き)へ切り替わってたら使えない。

 パワーが3でタフネスが2なのに、当て逃げに専念するとちょっと勿体ないな。

 

「私はターンエンド」

 

 手札を見ずに、ターンを終える。

 土地は1枚残ってる。

 出そうと思えば動けたけど、手札に加えた魔法を見てやめた。

 それに。

 

 

「……ドロぉ」

 

 

 ()()()()()()()

 

 

 

 

 

「2オドで<喰手の首狩り>ヲ召喚。オ前ノデッキトップを公開スル」

 

「通るよ」

 

「1オドで<穢れの儀式>ヲぷレい。オドを3つ得ル」

 

「通るよ」

 

「4オド<魂啜の痒蛾蝶(バタフライ)>ヲ召喚」

 

「通らない。長手を生贄に捧げて、瞬間魔法<献身の証明>で打ち消すよ」

 

 それで、化け物の手札はライフカード以外尽きた。

 あとは毎ターン引くカード次第だから油断は出来ないけれど。

 

 間違えなければ負けはしない。

 

 

 

「長手を召喚」

 

「カード1枚捨てて、<ブレイバー・停目>を召喚。場に出たことによってカードを1枚引いて、【賛戦】効果を与えるよ」

 

「<ブレイバー・鉄肌>を召喚。全てのブレイバーのタフネスを+1する、蜘蛛の逆転でも3点になるよ」 

 

 

 事実としてそうなった。

 カードを出して、カードを出されて、出して出して、削る。

 引いたばかりのカードを叩き潰す、対処する、それだけで。

 大きく増えたライフを削って土地を出されても、カードがなければ意味がない。

 あふれる土地があっても、使うカードがなければ意味がない。

 

 そうやって。

 

「これで終わり!! 停目で直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

 化け物の最後のライフを吹き飛ばした。

 声も上げれずにゴロゴロと化け物の体が吹き飛んで、倒れる。

 

≪勝った!≫

 

 ギィンと砕ける音がして、周りの真っ黒な空間が揺らぐ。

 闇のカードが砕けたんだろう。

 

「ふぅ……弱い?」

 

 色々と怖い恐怖体験はしたけれど、なんというか弱かった。

 ライフをあれこれ回復したりドレインしてきたから長引かされたけど、手札の消費もリカバリーなかったから尽きてたし。

 まあそこらへんの闇ファイターよりもずっと強かったけれど、それでも弱い。

 あの時のメガバベルの社長ちゃんほどの馬鹿げた強さではなかった。

 サレンさんのように最初から最後まで気が抜けないファイトにはならなかった。

 店長のデッキでドン引きしたほどの理不尽さでもないし。

 モブさんほど明確に腕で負けてるとは思えなかった。

 

「これで解決だよね」

 

 ゆらゆらと揺れる領域に息を吐きながら、形見の鍵を無意識に握りしめて。

 

 それが熱い事に気づいた。

 

 

その祈りに光亡く(PRAY MATTE)

 

 

「は?」

 

 闇がまた濃くなっていた。

 揺らぎ始めていたはずの世界が、再構築された。

 また足元が腐り始めた。

 

 振り返るそこには……ゆらりと、時間を巻き戻すように起き上がる化け物がいた。

 

 それは頭の光が一部だけ消えていたけれど、怪我はない、ゆらゆらと楽しげに揺れていて疲れた姿もない。

 つまり。

 

 ()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なんで?」

 

「ロスト♪」

 

 ガチャンと飛び散ったライフデッキを嵌め直して、化け物は嗤った。

 

 

 ――誓言 敗北せし者は(カード)に仕舞われる――

 

 

 私と化け物の()()二度目のファイトが始まった。

 

 





 貴方が望むのならば、何度でも捧げよう

                 ――魂啜の唇噛羊
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