【書籍化】俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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たくさんのFAをいただいております!


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ヨン様よりFAを頂きました!
まさかのカド市長ルートEDが!
いやあかわいい ロリコン必須ですねえ

後ろ? 仲人さんかなぁ




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※同じ絵二連になってたので直しました

朽木様よりイラストを頂きました!
夏頃本になって出る予定の12位(加藤リオ)デザインだけ先行で出来上がっております
楽しみですね

そしてもう一枚は挿絵で今回でております!



あ、今回は冒頭部分だけアニメで放送されたようですよ



六十四話 瞬間魔法はいつでもプレイすることが出来る

 

 

 

 音はなかった。

 闇はなかった。

 光はなかった。

 

 ただ4つの色があった。

 

「失望した」

 

「失輝した」

 

「無念である」

 

「落胆である」

 

 広い、広い空間。

 外の光を取り込む窓さえもない空間の中央に四つの影が立っている。

 それは赤く、青く、白く、黒い外套を羽織った人型であった。

 体型はわからない。

 ただそれぞれがそれぞれ意匠の異なる杖を手に持ち、仮面を着けていた。

 その前に跪くのは一人の少女。

 まだ十代半ばだろう少女は白いケープを纏い、顔を上げられない。

 上げる資格がない。

 

導師(グル)セト

 

 紅い炎を思わせる仮面が言葉を発した。

 

「汝は敗北した」

 

 青い薔薇を連想させる仮面が言葉を続けた。

 

「その、咎は、重い」

 

 目も鼻も口すらもない髪すらもない頭部を思わせる仮面が、震えた音で言葉を紡いだ。。

 

「敗北は咎である」

 

 羽根で顔を閉ざした鴉のような仮面が、声にて室内を震わせた。

 少女は応えない。口を開く権利がない、権限がない、許可がない。

 彼女は裁かれるべき罪人なのだから。

 許されざる咎人である。

 

()()

 

「セト」

 

「汝が名を」

 

「使命をもはや果たせぬ」

 

 声が4つ。

 

「「「「銀河乙女(アウターアムニオン)は欠けた」」」」

 

 四重奏。

 跪く少女は身体を震わせる。

 

「無知なる乙女」

 

「アニマ」

 

「優れたる精霊」

 

「我らが聖意を叶えるもの」

 

「汝は担い手」

 

「アニマの手」

 

「アニマの足」

 

「アニマの器」

 

「逆はない」

 

「逆ではない」

 

「器が砕けることはあっても」

 

「中身こそが全て」

 

「だというのに」

 

「であるべきというのに」

 

 声、声、声、声。

 4つの杖が、何度も、何度も、音を立てる。

 

「「「「何故貴様が生きている」」」」

 

 反論はない。

 

「失望した。汝の未来は欠け落ちた」

 

 少女に反論はない。

 

「失輝した。汝の可能性は欠け落ちた」

 

 なぜならその通りだから。

 

「無念である。色持たぬものよ」

 

 その通りだと心の底から思っていたから。

 

「落胆である。地柩よ」

 

 なんで。

 ――()()が生き延びてしまったんだろう。

 

「”覇手”へと届く刃にならぬか」

 

「”人界の守護者”にもまだ届かぬというのに」

 

「イレギュラーめ」

 

「”染めるもの”はどちらへと転ぶか。魔王か、聖者か」

 

 苛立つような声音を感じる。

 それは期待。

 それは落胆。

 彼らには期待されていた。

 ただの親もいない孤児の一人だった。

 血筋もない、戸籍も街ごと消えた。

 闇の領域に丸ごと喰われた生き残りの人災孤児に与えられた法外の幸運。

 それを無駄にした。

 

導き手(ノア)へと届くと期待したが」

 

「二つの杖は一つ折れた」

 

(そら)の色は墜ちた」

 

(そら)の色はまだ浮かぶ」

 

 告げる、言葉の先に一人の少女がいた。

 灰色の髪を垂らした少女だった。

 裁かれる少女と似た体躯、同じような格好、違いはただ一つ。

 まだそれには可能性があるということ。

 聖なる座にて十代半ばにして、10の位に降り立った天才。

 本物の聖女。

 失敗作の少女とは違う真作が見つめている。

 それは何の色も浮かばぬ顔をしていて。

 

「もはや秘跡は許されず、その資格はない」

 

「汝の知識を封ずる、それは過ぎたるものならば」

 

「ただの肉身にて、この苦海に堕ちるがいい」

 

「これは慈悲である」

 

 4つの声と共に聖女が杖を掲げた。

 黒く――かつては蒼かった髪に先を当てて告げる。

 

「地柩セト、汝を除名する」

 

 そして。

 

 そして最後に少しだけ見上げた先には――泣きそうな誰かの目が。

 が。

 

 

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()

 

「……ん」

 

 目が覚めた。

 見慣れた天井、ボクの部屋。

 

「いまの、は……」

 

 なにかを見ていたのがわかる。

 でも多分すぐに消えてしまうのがわかる。

 いつものことだ。

 ボクの記憶、それがいつも寝る度に見ていて、すぐに解けてしまう。

 文字通りの夢のように。

 

 その残滓を掴もうと右手を上げようとして……出来ない事に気づいた。

 

「あ」

 

 右半身に重みがあった。

 身体を少しだけ傾けて、左目を向ける。

 黒い髪。

 長く伸びた髪の少女、バニラちゃんがいた。

 ボクの胸元に潜るように眠っていた。

 それで思い出す。

 昨日、彼女をベッドに寝かせてボクは床の布団で寝ようとしたら嫌がって一緒に寝ることになったんだ。

 暗い部屋を怖がって、震えていたのをあやしていたのを思い出す。

 まるで、孤児院にいた時の自分みたいで放っておけなかったんだよね。

 すぅすぅと温かい寝息を漏らして眠ってるのに微笑む。

 少しだけ抱き寄せる。

 ……温かい。

 熱いぐらいに子供の体温は高くて温かい。ぬくぬくだ。

 起こさないように気をつけながら頭を撫でてから、ベッドから這い出る。

 時計のアラームより早めに起きてしまったみたいだ。

 

 椅子の背にひっかけたままだったワイシャツを軽く羽織る。

 ちょっと冷たくて、思わず身震いした。

 まあ素肌の上からだからしょうがない。

 リモコンを手に取り、消していたエアコンの電源をつける。空量は静かに設定。

 スリッパを探す……パッと見つからないので諦めて、裸足のまま部屋を静かに出る。

 どうせ一人暮らしなのに大きな家のほうがいいだろうと二階建ての階段を、気をつけながら降りる。

 

 やっぱりスリッパ探せばよかったかなぁ。

 でもめんどうだったし、起こしちゃいそうだったからなぁ。

 廊下の冷たさにくじけそうになる。

 それだったらちゃんと服を着るべきなんだろうけど、めんどう。

 片手でシャツの第一ボタンと第二ボタンだけなんとかつけながら、一階のリビングからキッチンの冷蔵庫に、ドアを開ける。

 中から常備してある低温殺菌牛乳のパックを出す。

 シリアルフレークの袋を取り出す。

 気分で適当に買ってるドライフルーツの袋を取り出し、なんか洗ってある器にざらざらと流し込んで、適当に埋もれるぐらいに牛乳を注ぐ。

 甘いのが好きだけど、虫歯になるのいやなんだよね。

 握りしめたスプーンでシリアルをかき混ぜて、ぐずぐずになったのを口に放り込む。

 

「ん~」

 

 おいしい。

 文明の便利な味がする。

 

 

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 なによりも楽だし。

 あーでもあの子の朝ごはんはなんか用意しなきゃなー、めんどくさいけど手抜けないし。

 パンとか食べられるかなー。

 結構小さな子供って気分で好き嫌い出るんだよなぁ、色々買って食べれるの確認しなきゃなぁ。

 孤児院暮らしの時はそうだった。

 怒っても褒めても食べれないとか嫌だって泣いて、いつもグランマたち大変だったなぁ。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 憶えているのは孤児院時代と、教会から出向して星座(アステリズム)から十二星座(ラスール)でのファイターとしての活動時代ぐらいだ。

 ボクがレガシーカードを、”あの子”を失って教会からの除名処分(ペナルティ)で失ったと聞いている。

 だから、あの頃とは性格もちょっと変わったらしい?

 今のボクには自覚はないんだけど、昔はもうちょいしっかりしてたらしい。

 

 まあ教会にも色々と漏らしちゃいけない知識とか知識とかがあって規則だから消されたのはしょうがない。

 カドさんとか師範はなんかその時凄く怒ってたんだなぁ。

 ボクは大丈夫だってなだめるの大変だったっけ。

 

「んー御飯御飯」

 

 半分ぐらい食べてお腹が落ち着いてきたのでスプーンを咥えて、冷蔵庫の中身をチェックする。

 ジャムは二種類ある。お腹の具合は、まあファイターなら頑丈だから普通に食べられるだろっていってたし、アイスも昨日美味しく食べてたしなぁ。

 ホットミルクでも作る?

 電子レンジ、確か設定すれば出来たよね。

 あーでも温かさ考えると、鍋でやったほうがいいんだっけ?

 

「んんん」

 

 放り込んであるものを一つずつ外側に出しながら、自分で食べるものじゃないのを用意するってどうしてこんなにめんどうくさいかなぁ。

 

 

「うわ、デカケツがある」

 

 

「ひゃあ!?」

 

 痛い!

 あ、頭が……

 

「おっと、ジャムセーフ」

 

 なんか硬いの当たったと思ったけど、ジャムだったのって。

 

「え? サレンちゃん?!」

 

 頭を擦りながら振り向いた先には、サレンちゃんがいた。

 それもモコモコのピンクの猫パジャマに、歯ブラシを咥えたままって……あ。

 

「そっか、泊まってたんだっけ」

 

 サレンちゃんは今うちに泊まってくれてるのだ、護衛として。

 

「ん」

 

 シャコシャコとブラシを動かして、片手に持ったコップを煽り、うがい。

 ぺっとキッチンのシンクにサレンちゃんは吐いた。

 

「人が歯を磨いてたらごそごそなにしてんの」

 

 ジャーと蛇口から水を出しつつ、サレンちゃんが半眼を浮かべる。

 

「ごはん」

 

「見ればわかる。ちゃんと着なよ」

 

 すすいだばかりのブラシで指されたのはボクのおヘソ辺り。

 

「ズボンは履け。パンツ一つでだらしない」

 

「女の子しかいないしー」

 

「教育に悪い。パン貰うよ」

 

 言いながら食パンを手にとって、慣れた手つきでジャムを塗るサレンちゃん。

 お皿も出してるし。

 あ、そっか。昨日の洗い物はボクじゃなくてサレンちゃんにやってもらったんだっけ。

 

「サラダでも食べる?」

 

 ジャムパンだけだと栄養偏るよね。

 

「あったっけ?」

 

「買い切りのなら、野菜室に」

 

「ん。ドレッシングは適当でよろ、コーヒーいれる」

 

「わぁい豪勢ーありがとー」

 

「テーブルに置いとく」

 

 ささっと用意して、先にコーヒーを運ばれたテーブルにサラダとボクの食べかけのフレークを持っていく。

 ガジガジとジャムパンを半分だけ食べて、サレンちゃんはコーヒーを飲んでいた。

 

「バニラは、まだ寝てる?」

 

「うん。暖房はつけた」

 

「朝食食べたら迎えにいったほうがいいかも。結構子供泣くっていうし」

 

「そうだねぇ。ところでサレンちゃん、御飯前に歯磨いちゃったけど平気?」

 

「朝食の後派?」

 

「普通それじゃない?」

 

「二回磨くのが実はセオリー」

 

「めんどくさくない?」

 

「マウスウォッシュ買っておくべき」

 

「憶えておいたら買うかなー。サラダおいしい」

 

 もぐもぐ。

 

「今日だっけ。レガシーの修復来るの」

 

「うん」

 

 シリアルとドライフルーツの甘みを口に詰め込んで、もぐもぐ噛んだあとにミルク入りのコーヒーを啜る。

 少しだけ苦い。

 けど、ミルクの甘味を感じる。

 

「今日の午後から店に、カドさんと一緒に来るよ」

 

 現実みたいに。

 

 

力札修復者(カード・コンサバター)がね

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

「いやぁ、楽しみだなぁ」

 

「足をぶらぶらさせるでない」

 

「うへっへ、本当に本当にレガシーカード触らせて貰っていいんですかねぇ」

 

「手をスリスリさせるでない」

 

「本当に楽しみだなぁ」

 

「くるくる回るな!」

 

「テンション上がってしょうがないんですよねぇ、あっはっは」

 

 

 

「待っててくれよぉ、めろ・めろ! レガシーちゅぁ~~ん」

 

 

 

「胃が痛くなってきおったわ……」

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ブルッ。

 

「? なんか寒気がしてきた」

 

「服を着ろ」

 

「せとー、どこぉ」

 

「あ、バニラちゃん起きちゃった!」

 

「パン焼いとくか」

 

 まったくまったく、忙しいなぁ!

 

 

 

 

 

 

 




 万知にして万解の手。
 かの者が感じられないものはなく。
 かの物が解せぬものはない。

 世界を狭める言葉を知らぬのだから。

                    ――詞知らぬロゴス
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