【書籍化】俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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【挿絵表示】


炭酸ミカン様よりファンアートを頂きました!
うおー素敵なビフォーアフターありがとうございます!!

03/20
20話にてでていた復讐姫の起動能力を修正、及び場に出た時の楔カウンターの追加をわかりやすく修正しました
こちらが正式データです、ずっと気づかずすみません


六十九話 孤絶はあらゆる魔法・能力の対象にならない

 

 染め上げられたフィールドの中を揺蕩うその姿を忘れるわけがなかった。

 

「永夜?!」

 

 その姿は。

 そのクリーチャーは間違いない。

 

 ――永夜(えいや)揺蕩(たゆた)香海(こうかい)マグダラ

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 吾たちが倒した闇使われ共がそれぞれ持ち合わせていた切り札。

 

「まさか」

 

 デッキケースに触れ、命衣流を纏うべきか考えて気付いた。

 ……プレッシャーがない。

 気配がない。

 あの冷たく、世界を蝕むような空間異常もない。

 なによりも甘く蕩けるような陶酔感がない。

 

「これ、は」

 

「どうかしました?」

 

 ()()()()()()()

 

「いや、なんでもない……他になにかあるか?」

 

「では、ターンエンドです」

 

 僅かに首を傾げていた少年がターンを終える仕草に異常はない。

 その目つきはじっくりと吾の手札に向けられていた。

 自我はしっかりしている。

 

「すぅ」

 

 息を吸う。

 息を吐く。

 喉に異常なし。肺に異常なし。

 冷たくはない。

 見上げるマグダラの映像に、吾は目をひそめて。

 

「……”剥製”か」

 

 かつて打ち払った闇。

 吾たちの命界(めいかい)に介入してきた精霊が、布教や侵蝕によって観測されて、爪痕を残してくることがある。

 往々にしてそれらが奴らの器となるカードとして作られる要因になるが、何も知らずに、あるいは対策としてカード化されることもある。

 ”抜け殻”或いは”剥製”と吾たちは呼ぶ。

 このカードもその一つだろう、が。

 

「吾のターン!」

 

 そやつの能力は知っている。

 生かしておく理由はない。

 

「そやつは【孤絶】持ちじゃな?」

 

 でも念のため確認しとく。

 

「はい」

 

「感謝する。ではレディ、アップキープにて<採集光の祭壇>と<黄昏の追悼碑(ついとうひ)>にカウンターを追加! ライフドロー!」

 

 ライフデッキを引いた右手を閉じて、再び開く。

 

「メイン」

 

 メインデッキに、スピリットを篭める。

 少しばかり本気を出す。

 

抽出(ドロー)!」

 

 引きずり出させたのは……吾が望む可能性(カード)

 

「通常魔法<黙示録の光>じゃ!」

 

「ッ、通ります」

 

「全てのクリーチャーを破壊する、それは再生出来ん!」

 

 全体除去の光が、再び全てのクリーチャーを消し飛ばした。

 

 

 

 

「くらげさーん!」

 

「全体除去を握ってた? ……いや、ここで引いたぁ!」

 

 

 

 

「悪いが、そいつは生かしておけんのでな」

 

 二度更地になった盤面を見ながら親指で額の汗を拭う。

 このデッキには2枚しかいれてない全体除去だったが、ここで使うしかなかった。

 

「さて」

 

 式盤(ボード)に指を置き、くるりと回して操作。

 表示するのは今まさに墓地に落ちたマグダラの情報。

 

 

 


 

<永夜・揺蕩う香海マグダラ>(青)(青)(黒)(5)

 

 スピリット・クラゲの唯一無二のクリーチャー

 

 3/8

 

 【飛行】【孤絶】【波乗り】

 【夜侵(3)】

 

 召喚された全てのクリーチャーはステイで出る。

 

 孤絶(この能力を持つクリーチャーはあらゆる魔法、能力の対象にならない)

 

 このクリーチャーはレディフェイズでレディしない。

 

 このクリーチャーがこれ以外のクリーチャーにダメージを与えた時、代わりにそのクリーチャーにダメージに等しい数の【昏睡カウンター】を乗せる。(昏睡カウンターが乗っているオブジェクトがレディする場合、代わりにそれの上から昏睡カウンター1個を取り除く。昏睡カウンターの数がクリーチャーのタフネス以上だった場合、そのクリーチャーは生贄に捧げなければならない)

 このクリーチャーが対戦ファイターに戦闘ダメージを与えた時、ダメージに等しい数をそのプレイヤーの土地から選んで【昏睡カウンター】を1つ乗せる。この時、ステイ状態でなければステイにする。

 

 (黒):クリーチャーを1体生贄に捧げる。

 このクリーチャーをレディする。

 


 

 

 

「うげ」

 

 危ないところだった。

 ここで全体除去で引けなかったら間違いなくこのまま頓死しておったわ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 全体除去を切った判断は間違ってなかった。

 

 しかし……まだマシか。

 

 このマグダラ――吾の知ってるものより()()

 与える戦闘ダメージがマイナス修整変換されておらんし、こちらに直接殴られた時は土地だけどころか秘宝も魔石もお構いなしの全部対象(オブジェクト)指定だった。

 そういう意味では弱体化しておる。

 

 ステータスは3/8……そのままか。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 単体で戦えば高いタフネスもあって倒しきれず、眠らされる厄介な空飛ぶブロッカー。

 とはいえ、ブロッカーとして厄介であってアタッカーとしては空を飛べてそこそこ頑丈な防御役がいれば凌げる。

 蓄積する昏睡カウンターは厄介だがそう繰り返して受けるものではないし、【波乗り】のすり抜け効果も土地さえ残していればよい。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ここまでの動きだけなら……

 

「ふむ」

 

 少し、眼の前の少年を見上げた。

 

 向かい合う少年は、薄く微笑んでいた。

 

 何を考えているのか計り知れないような微笑で、こちらの一挙一動を見ていた。

 

「少年」

 

「はい?」

 

「無理なら答えなくてよいが、このカード。どこから手に入れた?」

 

 単純な疑問。

 弱体化しているとはいえ【永夜】のカード。

 間違いなく高額であり、一介の一般人が手に入れるには無理がある。

 闇の気配はないが。

 

 

夜疾猟団(ナイトレイダー)()()()()()()()

 

 

 おおよそ()()()()、前回の【バブルマッチ】が現れた時に出現したテーマ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 世界各地で闇の領域による大規模な搾取とそれに伴う存在の劣化(ラグ)化。

 その末路を暗示するように【ソリティア】の幹部がそれぞれ持ち合わせていたカード。

 それが【永夜】

 水母(マグダラ)、”人腕獣脚”、”両脚羊”、”狂界龍”、”輪廻蝶”、”地鮫”……そして”廃王”。

 八十八星座(アステリズム)はもちろん十二聖座(ラスール)ですら複数人の命を奪った怪物の切り札であり。

 

 なんかたまたま通りかかった”覇手”と呼ばれる前だったあやつが壊滅させたんじゃよなぁ

 

 ――全部揃えてみたけど、全部入れる意味はない

 

 ――それぞれ専用デッキ作るほうが強くなるな

 

 

 なんていって使い倒したら満足したといってどっかに仕舞ったんじゃよなぁ、あやつ。

 

 今となっては古く、やや時代遅れのスペックに抑えられたものしか流通していないが。

 

「あ、普通にパックから出てきました」

 

「お、おう」

 

 さらりと言われた。

 別段隠すことでもないのか。

 

夜疾猟団(ナイトレイダー)関係のは昔ゴロゴロ出てきたことがあったんで、その時手に入れた奴です。使いづらいんでこのデッキになるまでは箱に仕舞ってましたが」

 

「そ……そうか」

 

 使いづらい。

 使いづらい、かぁ。

 まあ確かにそうじゃろうな、コストもアホみたいに重いしの。

 前に倒したやつも必死になって楔カウンターばらまいてなんとか出しておったし。

 だが、これを御伽噺のデッキにいれるのはシナジーとしてはあり、か? 主な色は同じ黒ではあるが……土地には青もあるな。

 もしかするとそれも偽装か。

 

「夜疾猟団と童話死神の二重結合(デュアルデッキ)か?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「さあ、どうでしょう?」

 

 少年が肩をすくめる。

 素直に答えるわけがないから当たり前だ。

 

「ふむ」

 

 左手で顎に撫で、袖を軽く食む。

 単衣(ひとえ)の頃から直らぬ仕草。考えるときのくせ、落ち着くためのルーティーン。

 

 考えられるパターンを思考する。

 

 相手には共鳴率はない、ないが、もしもあの少年が縛り手になるまえに二重血統(デュアル・ブラッド)だったか?

 この場合、デッキが学習をしている可能性はある。

 スピリットが与えられなくても、ある程度はデッキが並びを調整するじゃろう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 この場合、使い慣れているデッキならば手なりで、テキストを覚えていれば使うことも出来るじゃろう。

 

 が、問題は童話死神だ。

 

 あれは前回の夏、エレウシスの大会で初めて表舞台に出たばかりのカード。

 昔の御伽噺ならともかく、赤ぎれずきんを含んだ歪んだ御伽噺シリーズは世に出ていない。

 企業が開発した新しいカード。

 それも強さを売り込むためにあの星座入りも検討されている【女帝】の童のチームメイトに話を持ちかけた新テーマ。

 それとたまたま適性があり、デッキに学習させた?

 ナイトレイダーと?

 

 ……ありえんわ。

 都合のいい考えはやめろ。

 そう考えている時点で不味い。

 

「……メイン1」

 

 袖を離す。

 思考は切り替えた。

 

「ッ」

 

 推察はもう十分、ここから先は。

 

「始めようかの」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「魔石<黄昏の追悼碑(ついとうひ)>をセット、通るか?」

 

「二枚目?! 通ります」

 

 妨害はしてこない。

 

「ではセットじゃ!」

 

 足を踏み出す。

 かかとを鳴らす、方位を見る。

 

 土地の数は足りている。

 

「最初の追悼碑を起動(ステイ)し、生贄に捧げる! 怨念カウンターの数は2つ! 故に2/2の飛行する死霊クリーチャー・トークンを生み出す!」

 

 その効果は。

 

「通ります。だが召喚酔いで、ハンデスの攻撃もまだ出来ない」

 

 ――戦闘ダメージを与えた対戦ファイターの手札を無作為に1枚捨てさせる。

 

「そうじゃな」

 

 今呼び出したのは吾のミスか?

 いや、ミスではない。

 吾はマグダラを見た瞬間、全体除去(黙示録の光)で吹き飛ばすつもりだった。

 だから呼ばなかった。

 ()()()()()()()()()

 そう誘導されていた。

 

「じゃが、ここからは届くぞ! 誰彼(黒・黒)を宣言し、墓地から5枚を除外する!!」

 

 だからここから先は――残った手札を強く回すのみ。

 

()()()()()()()

 

 少年が笑う。

 楽しそうに、歯を剥き出しにて、笑った。

 

「迎える、夢見る、純白の白無垢よ」

 

 床を踏みつける。

 

「来たれい!」

 

 片割れのレガシーカードをボードに叩きつける

 

 花びらが舞った。

 白い、白い、百合の花びらが舞う。

 

 吾の眼の前に現れたのは巨大なる人形。

 全てが白く、鋼細工で、美しい流線型のフォルム。

 それは女の形をしていて、なによりも。

 

<未亡人形・白無垢のウィルダンス>!

 

 花嫁である。

 

「パワー4タフネス5! これは速攻を持ち、破壊されない唯一無二のゴーレムである!」

 

 

 

「見たことがない未亡人形、まさかレガシー?」

 

「きれい……したかったなぁ」

 

 

 

「通ります、存分にどうぞ」

 

 妨害はない。

 代理コスト(ピッチスペル)を握っていないのか。

 

「さあウィルダンスよ、舞え! 能力発動! 1コスト支払い、墓地からカードを1枚除外する! ターン終了までウィルダンスのステータスが+1/+1修正される!」

 

「怨念カウンターが乗る」

 

「これを二度繰り返す!」

 

「怨念カウンターは3つ」

 

 ウィルダンスの誰彼(たそがれ)強化(バンプアップ)2回に、【怨念】カウンターが3つになる。

 少年に動揺はない。

 

「バトルフェイズ! パワーが6まで上がったウィルダンスで攻撃する!」

 

 ダメージ6、さらに<採集光の祭壇>のカウンター3(バーンダメージ)で削りきれる。

 呪言の恐れはない。

 何故なら。

 

 

「ストップ。その攻撃クリーチャー指定時、()()()()()()()

 

 

「なに?」

 

「最後の土地を起動! (黒)を生み出し、墓地の<未読者>の能力を発動」

 

 墓地起動?!

 

「そんなものいつから……<抱き寄せ>で捨てた1枚か!」

 

「御名答。通りますね、<未読者>は俺の場に【御伽噺】がある時のみ1コストで場に戻すことが出来る!」 

 

 何もなかった場所、そこからにじみ出るように黒い炎が上がった。

 まるで怨霊。

 いや、そのもの。

 そこから這い出るのは死ぬことも許されない死ねず者か。

 

「<未読者>の出自を騎士に指定! そして、未読者が場に出た時、俺のコントロールする全ての<御伽噺>に【栞カウンター】が1つ追加される!」

 

 黒く濁った人型が鎧を纏い、剣を握り掴む。

 

「物語は捲られる」

 

 その側にて微笑むのは、赤いリボンを付けた金髪の少女。

 

「<幻想少女の御伽噺>の3ページ目、クリーチャー1体に+3/+3の修整を与える」

 

 鎧を纏った未読者の手を取り、少女は何かを告げて、光と共に消えた。

 その消えた光に、小さな雫が混じっていたように見えたのは錯覚だったのか。

 

「<未読者>を強化し、2/2から5/5へと上昇」

 

 それは遠いどこかであった過去の幻影だったか。

 

「そして、<御伽噺>1つに付き、<未読者>は+1/+1の修整を受ける――6/6に強化!」

 

 ”騎士”が立ち上がる。

 

「処理は以上――そして、ブロックに<未読者>を指定する!」

 

「戦闘を開始じゃ! 打ち崩せ、ウィルダンス!」

 

「受け止めろ、我が騎士!」

 

 吾の指示を受けて、ウィルダンスが疾走する。

 赤い眼光を光らせて、”騎士”がそれを受け止め、刃を突き立てるが。

 

「ウィルダンスのタフネスは7であり破壊されもせん! 撃破じゃ!」

 

 同時に繰り出されたウィルダンスの手刀によって甲冑ごと貫かれ、砂のように崩れ去った。

 6点のパワーで、6点のタフネスを削りきった。

 ……強化をケチらんでよかったわ。

 

「貫通があっても通らんかったか」

 

 ウィルダンスの【魂葬】で削り切る算段だったんじゃがな。

 

「メイン2。ウィルダンスは攻撃でステイしたが、こやつは通常のレディフェイズでレディ状態にならない制約(デメリット)がある」

 

「そうでもなければ強すぎますからね」

 

「だが、それを克服する手も持ち合わせておる――手を貸せ。死霊クリーチャーをステイに変え、()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 追悼碑から生まれでた死霊が待機(ステイ)し、その代わりに花嫁が立ち上がる。

 

「こやつは手を引くものがいる限り、何度でも立ち上がる」

 

 ――介添人がおったら、あやつの効果で追加ドローも出来たんじゃがな。

 あれはステイになる度に追加で1枚引く能力があった。

 逆を言えば、あれを出した時にこのウィルダンスが想定された?

 

 ありえ……いや、此奴に関してはもう計算はしない。

 

「ターンエンド、仕留めきれんかったの」

 

 全力で叩き潰すだけじゃ!

 

 

 

 

 

 

 

「うっわ、下手なクリーチャーだったらあれで返り討ちにしてたぁ」

 

「???」

 

「フツ兄、本当にえげつない備えしてるよね」

 

「攻撃のあとに呼び出して、受け止めたってこと?」

 

「うん。あの花嫁さんで殴るよぉーして、決まったからじゃあ騎士さん呼び出して受け止めまーすってことだよ」

 

「なるほどなぁ。失敗しちゃったんだ」

 

「でもね」

 

「うん?」

 

「フツ兄、楽しそう」

 

 

 

 

 

 

 

「俺のターン!」

 

 少年が笑っている。

 

「レディフェイズ」

 

 楽しげに。

 

「アップキープフェイズ」

 

 自分の算段を崩されたというのに。

 

「能力を起動! 1コスト支払い、再び出自を騎士にした<未読者>を場に戻す!」

 

 まるで手を緩めない。

 

「また戻るのか!?」

 

「物語がある限り、彼は何度でも蘇る……<幻想少女の御伽噺>最終章、墓地から<赤ぎれずきんの御伽噺>をデッキボトムにして、生贄に捧げる」

 

 読み終えた御伽噺が場から取り除かれる。

 そうして残ったのは何の強化もされていない2/2の”騎士”が1人じゃが。

 あのカード、アップキープにも戻ってくるなんて下手すればドローフェイズも含めば2ページも進むのでは?

 

 エレウシス決勝戦の葉緑メリーでさえ、そんな使い方はしておらんかったぞ!?

 

「ライフ、メインドロー」

 

 少年の手を見る。

 迷いのない手つき、そしてそのデッキとカードからは何も感じない。

 ()()()()

 

「土地をセット……状況は揃った」

 

 なに。

 

「夜明け前がもっとも暗い、メイン1……5コスト。久しぶりの正規召喚だ」

 

 銀色の割れ目が宙に現れる。

 そこから現れたのは真っ白な繊手。

 

 

「――<夜疾猟団(ナイトレイダー)・銀窓の復讐姫(ヴァンデッタ)>」

 

 

 真っ白な絹糸の衣装に、銀糸のような髪をなびかせた白い少女。

 未読者(死霊)を率いているために、パワーが1/2となった亡霊。

 

「旧録版か!」

 

「よくご存知で」

 

 希少なカードだ。

 ()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 その生前の、抗っていた頃の姿。

 まさかまた見るとはな。

 

「場に出た時、【楔カウンター】を1つ乗せる。対象はもちろん復讐姫」

 

 あやつが出たとなれば……

 

「火をつけようか。まだ燃やせるものは残っている!」

 

 復讐姫が手を叩く。

 

「4コスト、通常魔法(スペル)<火責めの陣形>をプレイ! 通りますか!?」

 

「それは」

 

「ターン終了まで俺のコントロールする全てのクリーチャーにパワーを+2し、速攻を得る」

 

 開いた掌を地へと叩きつけた。

 

「楔カウンターを1つ取り除き、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 ギリギリと音を立てて開かれたのは黒い、鮮やかな青に染まった黒の水溜まり。

 そこから現れたのは。

 

 

「選ぶのはもちろん、<永夜(えいや)揺蕩(たゆた)香海(こうかい)マグダラ>!!」

 

 

 開かれた穴をこじ開けて飛び出す巨大なマグダラの威容だった。

 

「蘇らせたじゃと!?」

 

「たった3しかないパワーも使い道がある。そして、フィナーレだ」

 

 少年が指を鳴らす。

 そして、自分のボード、その墓地から掴み取ったのは今まさに使ったカード。

 

「バトルフェイズ、パワー5となったマグダラで攻撃!」

 

「? まて、マグダラは今蘇生させ――」

 

 何故と考えて、すぐに気づいた。

 火攻めの陣形は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「俺のコントロールしているクリーチャーのため、マグダラも効果対象だ! 速攻で召喚酔いは解除されている!」

 

 そして、【孤絶】も無視する速攻を得たマグダラが動き出す。

 

「ッ!?」

 

 自分の手札を見る。

 あるのは<未亡人形・黒染めのシャルウィー>と墓地肥やしのための魔法<末筆のしらべ>のみ。

 

「まだじゃ!」

 

 まだ一撃喰らっても挽回は出来る!

 たった5点! 出る土地次第で……

 

「宣言します。俺はこの攻撃で、”白を出せる土地全てを眠らせる”」

 

 

「な」

 

「バトルフェイズ! 飛行を持つマグダラで攻撃!」

 

「ブロックは……」

 

 飛行を持っているのは片割れの黒だ。白無垢のほうは飛べない。

 そして、飛べる死霊は。

 

「出来ん!」

 

 吾が眠らせてしまった(ステイ)

 

 悠々と夜を泳ぐマグダラ、その姿はどこまでも優雅で。

 楽しげに、自由気ままに舞う、その姿に目を閉じる

 波の音。

 水の音が怒涛のように押し寄せて、思わず口を閉じて。

 押し寄せる波は優しく、痛みすらもなかった。

 ダメージに飛び散るライフデッキ、それらがプカプカと浮かび上がり、眠りに付く。

 それは宣言通り、全てが逆襲するための色(白い土地)で。

 

 

おやすみ(グッドナイト)、貴方の勝利はもう目覚めない」

 

 

 

 吾は詰んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 火をつけろ。
 ケツに火をつけろ。
 火を背負え。
 そうすりゃあ誰だって走り出す、アイツも、オマエも、死人だって飛び出すさ!

                ――燃え上がる蛮族隊長の叫びより(火責めの陣形)

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