【書籍化】俺の切り札は光らない   作:雨 唐衣

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 同人先行版第二話を更新しています



 おまたせしました!
 八千文字弱、かなり長いのですが 今回で決着です


 そして、FAを頂きました!
 本当にみなさまありがとうございます!




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 真機楼様よりFAを頂きました!
 あまりの外道っぷりにげきおこぷんすこのモブくんです!
 きゃーこええ!


【挿絵表示】

 ミミックもどき様より無知なる乙女アルマーのFAを頂きました!
 うお、裸よりえっちだ!


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 こちらはジグ部長!
 平和じゃない話が続くので出せないんですが、早くまたドロシーちゃんたち共々出したいですね!
 眼鏡はアドです




【挿絵表示】

 ヨン様よりアルマーのFAが!
 はやくない???
 本当にありがとうございます!! こっちも素晴らしい~~
 青少年のあれこれがあぶない!


【挿絵表示】


【挿絵表示】

 ヨン様よりいただきました
 もうあぶなくなってしまった少年・・・・

 がんばれー



七十三話 クリーチャーの召喚はメインフェイズだけとは限らない

 

 

 

 言葉が出なかった。

 なんのこと? とか。

 何故? とか。

 そんな反応すらも出来なかった。

 

「不思議デシたよ、あのファイトの決着ハ」

 

 ”101人目”が悠々と、優雅さを勘違いしている動きで片手を上げる。

 

敗北は、勝者に絶対服従するというそのアンティでしたネ?」

 

 そうだ。

 あの十回以上にも及ぶファイト。

 最初は骨が折れる、痛みが増す、足が折れる、片目が見えなくなる、どんどんと身体の一部が千切り取られる。

 負けても即座に致命傷にならない――死ねない敗北ペナルティの繰り返しで。

 その全部に勝っても、シスターは死ねなかった。

 助けを叫び続けていた。

 

 それがこいつの演技だったとしても、本当だったとしても、あの子は耐えきれなくなって。

 

「なのに、敗北しテモ、貴女は無事だった」

 

 そうだ。

 あの子は負けた。

 目を瞑っても負けないはずの動きを、攻撃をすることをためらったせいで負けた。

 だから。

 だから。

 

 

「負けた瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ――――そうだ。

 あの子は、それをした。

 ボクはそれをした。

 だって。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、だからアンティから免れた」

 

 それがあの子の指示で。

 

「そして――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それがあの子の意思だったから。

 

地柩セトの魂が入ったカードを破壊した

 

 

 ボクが、あの子をこの手で破壊(ころ)したんだ。

 

 

「……」

 

「上手イ、ウマい、まったくやられタワ♪ 本来なら、ファイトに勝てばレガシーの所有権は譲渡される、だから中身を入れ替えても意味がない。遅かれ早かれなのに、操られる前にそれを殺シタ」

 

 指が鳴る。

 パチンと愉しげに、静かな黒い世界で音を鳴らして。

 

「本当にジョウズな損切ですネ♪ ()()()()()()()

 

 耐えられなかった。

 

「お前に、あの子の何が分かる!!」

 

 あの子が、どれだけの覚悟でそれを選んだのか。

 あの子は、まだ十五歳(オトナ)にもならなかった子だったんだぞ。

 それが、ボクが止める事もできずに、動かさせて。

 

 

 ――”ごめんなさい、アルマー”

 ――”僕が弱くて”

 ――”僕が死ねば、あいつはきっと油断する”

 ――”だから、お願いします”

 

「あの子は、ボクに()()()()()()()()()!」

 

 ――”生きて”

 

 そう言い遺して、だから、ボクは、ボクが……!

 

 

「わかりますトモ。だから、こうやって銀河乙女を手に取るように分カル♪」

 

 

 パンと手を叩く音。

 

「さあ、ファイトを続行ダ。<無知なる乙女 アルマー>を召喚、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 音が鳴る。

 あの子を縛る鎖が蠢いて、広がっていく。

 

「セト!!」

 

「今はアルマーですヨ。能力は、説明しますか?」

 

「いるもんか!」

 

 アルマーの能力は知っている。

 この世の誰よりもボクが知っている。

 

 

 


銀河乙女(アウターアムニオン) 無知なる乙女 アルマー>(5)

 0/1

 アウターアムニオン 唯一無二のクリーチャー

 

 このカードは相手ファイターの場に召喚してもよい。

 召喚された場に存在する全てのクリーチャーを全て取り除き、その数だけの【盲目カウンター】を乗せる(除外されたクリーチャーは裏向きにしてこのカードの下へ重ねる。重ねる順番はオーナーが自由に選び、重ねられたクリーチャーはファイトから取り除かれた扱いとなる)

 このカードがダメージを受けた時、コントローラーも同じ数のダメージを受ける。

 これが破壊される時、代わりに盲目カウンターを上から1つ取り除いて墓地へと送る。

 

 これが場から墓地に送られた時、全てのクリーチャーを破壊する。それは再生できない。このカードのオーナーはデッキ・手札から<銀河乙女 愛を知るオニムス>を場に出してもよい。

 

 起動(5-X):盲目カウンターを全て墓地に送り、無知なる乙女 アルマーを生贄に捧げる。

 Xはこれの下に重ねられた盲目カウンターの数に等しく、(1)より少なくなることはない。

 

 銀河乙女のクリーチャーは自分の場に2体までしか存在出来ない。

 このクリーチャーがあなたの場に存在する限り、このカードのコントローラーは銀河乙女以外の召喚が出来ない。

 このクリーチャーは場に存在する時、全ての色として扱う。

 


 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 それもほぼ全ての召喚を封じ、出した時と場から離れた時に二度全体を除去する二弾重ね。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ……人間として活動してファイターやってたからわかるけど、結構酷いなこれ。

 破るのにちょっとカードと時間が欲しい。

 

「では、ファイトの再開ダぁ!」

 

 どう対処するか考えている間に、”101人目”が声を上げた。

 

「アルマーを出したところで、ボクのデッキは銀河乙女だ! ロックの意味はないよ!」

 

 そうなのだ。

 アルマー(ボク)の効果の最大の利点にして弱点は銀河乙女の3つの制限にある。

 

 1つ――銀河乙女のクリーチャーは自分の場に2体までしか出せないこと。

 これは3体以上出そうとしたらどれかを選んで生贄に捧げて、入れ替えないといけない。フツオくんに確認されたこともある。

 

 2つ――銀河乙女を出していると、銀河乙女以外の召喚が出来なくなる。

 まあこれは事前に銀河乙女以外のクリーチャーを出しておくとか、墓地とかデッキから直接場に出したらくぐり抜けられる。あの子も”魔王”にそれやられたし、そもそも”覇手”に至ってはクリーチャーをいれないバーンデッキなんて奇天烈なデッキを使ってきた。

 

 3つ――銀河乙女は全ての色として扱う。

 これは利点でもあり、相手のデッキ次第では不利になるから一概には言えないけれど。

 

 その全てを承知の上で組まれているし、そもそも銀河乙女を運用している銀河乙女使いには完全に力を発揮出来ない。

 

「当然承知。だからただの置物として、有効活用するのデす! ロゴスを起動、墓地の<色褪せる夢>……いや、<空文の予言>ヲ除外すル」

 

「予言の数字コストは(2)……!」

 

 ロゴスの錫杖が円を描き、虚空から靄のような光を引きずり出す。

 

「オマエに直接2ダメージ!」

 

 そして、紫電となってボクへと飛び込んできた。

 

「ッ、くぅ!!」

 

 右手を胸に挟んで、背中とボードで庇う。

 衝撃と痛みに、歯を食いしばる。

 バトルボードは頑丈だ。十二聖座(ラスール)で採用されるバトルボードは全て頑丈に、クリーチャーの攻撃を受け止めてなお破壊されないように設計されている。

 手札を握る右手と、言葉を発する口と、意識さえ持てばいい。

 

「はぁ、はぁ、チェック!」

 

 削れたライフデッキを確認――色彩、魔石……!

 

「残念、欲しかった魔石は落ちた」

 

「色彩は増えた。ここからだよ!」

 

 何故空文の予言を除外したんだ?

 あっちは(青)と(2)コスト、<色褪せる夢>のままなら3点だったのに。

 

「そウ、ここから。1オド、通常魔法<彷徨う羊水>をプレイ! ロゴスを<銀河乙女 地を這えぬプシュケー>へと置換スル!」

 

 起動し終えた(ステイした)ロゴスが、現れた羊水に溶けて姿を変える。

 

「……そのコンボは!?」

 

 濁り、揺蕩う温もりすら感じる羊水が割れて現れたのは、足のない乙女。

 翼の生えた手のみで羽ばたくプシュケー(4/4)。 

 ”飛行する速攻クリーチャー”。

 

「置換した銀河乙女はレディ状態で場に出され、プシュケーは【速攻】と【飛行】を持つ! バトル!」

 

 あの子が得意としたコンボ。

 

「ブロ」

 

 いや駄目だ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 目を瞑り、鎖で縛られたアルマーは何の反応もしない。

 

「プシュケーで攻撃」

 

「ライフで受ける!」

 

 次の衝撃は、さっきまでよりも遥かに大きかった。

 身体が吹き飛ぶ。

 

「きゃああああああ!」

 

 耐えようなんて屈んだことに何の意味もなく吹き飛ばされて、あるかもわからない地面を転がった。

 身体が痛い。

 ごっそりと精命力が削れる。

 疲労が、足先から、活力を奪って、溢れた唾が口から零れ出る。

 

「はぁ、はぁ」

 

 それでも、右手だけは無事だった。

 まだファイトは出来る。

 

「だめーじ……チェック!」

 

 まだ戦える。

 削れたライフのカードを見る。

 魔石、色彩、色彩、ませ――

 

「残念。<黒き海の悪戯と気紛れ>は全て(3枚)落ちた」

 

 銀河乙女の始動であるべきパーツが落ちた。

 

「文字通りの気まぐれ、運がなかったデスねぇ」

 

 ライフはこのターンで6点。

 もうライフは半分に割り込んだ。

 残ったのは6枚の色彩とアルマーだけ。

 

「そしてターンエンド」

 

 残った1枚の手札、間違いなくライフカードだけを掲げて、”101人目”は告げた。

 

「次のターンで、ワタシは勝利を確定します」

 

 そう告げるヤツは間違いなく、次のターンでオニムスを引く。

 そしてあのロックを完成させる。

 あの子ならばそれを成し遂げる。

 

 

 だから――

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 殴りつける。

 もう一度殴りつける。

 

「セトさん!!」

 

 そして叫んだ。

 

「無駄じゃ、中に声は届かん」

 

「でも!」

 

 横からかけられた声に振り向く。

 そこにはカドさん、マリカちゃんに、サレンさん、バニラちゃん。

 モブさんを除くいつものみんな。

 全員がボードを装備しているから無事で、モブさんがいないのはつけていなかったからだろうか。

 

「レガシーカードでも破れない?」

 

 そう言うのは前蹴りで、真っ暗な壁を蹴るサレンさん。

 いや、言うというのもなんか違う。

 声のように聞こえるけど、口が開いてるわけじゃない。音じゃないなにかで聞こえる。

 私たちがいる上も下も真っ黒の中で、ボードを着けている私たちだけが浮かび上がってる。

 あのテロップさん、いや、その体を乗っ取ってるキモ化物が展開した闇の領域からなんとか集まれたのがここで。

 

 私たちはセト店長が戦ってる景色を、外から見ているしか出来なかった。

 

「やってみたけど、硬かったぁ。ただの闇のカードの結界じゃない」

 

 そう言うのはあの虎のような腕を出して真っ先に殴りつけたマリカちゃんだった。

 

「密室空間を使っての形成補助もあるが……この強度、堕悪(ダーク)カードそのものを使っておる」

 

「それって」

 

「レガシーに匹敵するどす黒い闇、顔差し(ネームド)共の()()そのものじゃ」

 

「本体……?」

 

「ねえ」

 

 不意にバニラちゃんが声を上げた。

 

「セトって、セトじゃなかったの?」

 

「それは……」

 

 バニラちゃんの問いに、私はすぐに答えられなかった。

 セト店長とあいつのファイトを、私たちは見ていた。

 会話も聞こえていた。

 だからわかった。

 

「わかんない。いろんな事情があると思うんだけど」

 

「カドは知ってて黙ってたの?」

 

「……いや、知らんかった」

 

「おい、市長」

 

「カドさん」

 

 私とサレンさんが思わず見る。

 

「言い訳をするつもりはないが、セトがたしかに変わったタイミングはあった。だが、それはアルマーを失ったことやネームドに襲われたショックの影響だと思っておったわ……教会からの処置の影響もあったはずじゃと」

 

「教会の処置……」

 

「それに、アルマーとセトのスピリットはよく似ておった。親と子、いや双子の姉妹といっても過言ではないぐらいにの」

 

「だから、見分けがつかなかった?」

 

「ああ……感じる魂の数も1つだけじゃったしな。情けない限りじゃが」

 

「それだけ隠し通していたってことになる。本物の地柩セトの死を……」

 

「じゃあにせものなのぉ?」

 

「それは」

 

 

「関係ないよ」

 

 

 バニラちゃんの言葉に、私は思わず言った。

 

「ユウキ?」

 

「関係ないと思う。本物だとか、偽物だとか、私たちが知っていて、色々と助けてくれたり、ちょっとポンコツだったりするけど」

 

「すごい言われてるぅ」

 

「それでも、私たちが知ってるセトさんはあの人だけだ」

 

 だから何も変わらない。

 中身が精霊だったとか、人間じゃなかったとか、違う人だったとかなんて関係ない。

 だって。

 

「それに。あの人は、今、戦ってるんだ」

 

 手も声も届かない向こう側で、傷ついてもなお、立ち上がることを諦めていないセトさん。

 あの人は戦ってる。 

 大切なものを取り戻すために。

 

「あの人は私たちが信じてるセトさんのままだ」

 

 それを疑うなんて出来ない。

 

「ん……確かに。私たちが知ってるセトはあのへっぽこだけ」

 

「セトー、がんばれー! まけるなー!」

 

「ファイトの決着がついたら、フィールドが弱まると思う。その時、一斉に割ればいけるよぉ」

 

「みんな」

 

 サレンさん、バニラちゃん、マリカちゃんの言葉に胸が熱くなる。

 

≪ユウキ。もしもセトが負けたら≫

 

「分かってる。私たちが、私が取り返す」

 

 ――()()()()、成し遂げる。

 絶対に。

 

「……ん?」

 

 だから。

 アリーシャの言葉に強く手を握り締めていた私は気づかなかった。

 

「なんじゃ?」

 

 目線を外さないまま首を傾げたカドさんの言葉を。

 

 

 

 

「なんでセトのやつ、使()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 だから。

 

「ボクのターン……!」

 

 デッキに手を添える。

 

「レディ」

 

 共鳴はしない。

 だって奪われているから。

 

「アップキープ」

 

 光りなんてしない。

 だってボクは偽物だから。

 

「ライフ・ドロゥ」

 

 残りライフ9。

 あの子のものだったはずの精命(ライフ)を引き抜く。

 

「メイン・ドロゥ」

 

 メインデッキすらも熱はなく。

 それは熱くも、冷たくもなく、ただいつも通りで。

 ボクを見放している気がした。

 当然か、デッキもあの子じゃないと気づいたのだろうから。

 

「は、ハハハハハハハ! なんて寂しいドロー、まるで輝かない、悲しいですねェ!」

 

 そして引き抜いたカードを確認する。

 

「……もうボクが夢は見る必要はないみたい」

 

 それは色彩と<地を這えぬプシュケー>だった。

 望んだ引きではなかった。

 

「いえ、見てもらいますよ。楽しい愉シイ悪夢の未来を!」

 

 いや、それはない。

 だって。

 

 

もう勝った

 

 

「あ゛?」

 

「メイン1。色彩をセット」

 

 最初のターンから引いていた()の色彩をセットする。

 まったく下振れにも程がある。

 まさか2枚しか入れてない変容色彩はともかく、3枚は入れてある赤の色彩がここまで出ないとは思わなかった。

 

「はは! まさかそちらにもアルマーがあるとデモ? それともオニムスを出しマスか?」

 

 オニムスはとっくに握ってる。

 

「色彩7枚を起動、赤・青・白・黒を含む7オドを生成」

 

 出す必要はない。

 

「7オド、秘宝<銀河に願いを>をプレイ。通りますか?」

 

「? なにヨ、そのカード……銀河乙女じゃない?」

 

「通りますか」

 

 通るはずだ。

 ”101人目”の手札も墓地も確認している。

 奴が今握っているのはライフカードが1枚だけで、<防災>はない。

 だけど、ボクの知らないレガシーカードや思いもよらないカードで防がれることもないわけじゃない。

 だから確認し。

 

「は、出せばイイ! 銀河乙女は最強のデッキ、私は無傷、どんなことをしようとも完成する連環(サイクル)ロックに、お前は勝利を掴めない!」

 

「きっと叶うさ。セット」

 

 少し古いだけのレアカードを出した。

 

「ターンエンド」

 

 それでやれることは全て終えた。

 

「ふ、ひ」

 

 笑い声。

 

「ロスロスロスロスロスロス、ロスト! 残念だ、滑稽ヨ、悲劇デス! 君は生き延びるための最後の可能性(チャンス)喪失(ロスト)した!」

 

「お前のターンだ」

 

「教えて上げまショウ! わたしの共鳴は、そのアルマーたるセトそのもの!」

 

「お前のターンだ」

 

「故に願えば、なんでも引ける! そう、オニムスでも、もう1枚のプシュケーでモ!」

 

「お前のターンだ」

 

「数えるといい、ここがお前のリーサル! わ・タ・シの、ターン!! ド」

 

 輝き。

 どす黒く眩しいほどに光り輝く”101人目”のデッキに。

 

 

「――教えてあげるよ」

 

 

 アップキープフェイズを見計らって、ボクは伝えた。

 

「<銀河に願いを>は、赤・青・白・黒と3コストでセット出来る秘宝だ」

 

「そうデスか、どんな恐ろしい効果なのデス?」

 

 テロップさんなら知ってたかもしれない。

 これは古く、レアカードだけどまったくもって実用性がなくて誰もが埃を被らせていたカスレア。

 

「これの効果適応には2つ条件がいる。まず全ての色(4色)のオブジェクトをコントロールしていること、そして4色以上の基本色彩を場に出していなければならない

 

 所謂、浪漫(ロマン)カード。

 

「ほうホウほウ、それデ?」

 

 こいつはテロップさんの知識は持っていないんだろう。

 つまり、あの子の知識も経験も――あの覇手と魔王にボコボコにされまくった、あの悪夢のようで、楽しかった日々も。

 

 

「2つの条件が揃っていた場合、ボクのアップキープフェイズに、ボクはファイトに勝利する

 

 

 ボクの共鳴率を奪っても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――………………は?」

 

「以上だ。さあカードを引きなよ」

 

「は? え? いや、まて。そんな条件は揃っテない!」

 

「ボクにはアルマーがいる」

 

 ボクの場にて佇むアルマー(彼女)の頭を撫でる。

 

「銀河乙女は全ての色として扱う。すなわち全ての色のオブジェクトを揃えている」

 

「ど、ど、ど」

 

「何でも引きなよ」

 

 ライフデッキに手をかけて、それを震わせながら、動きが止まり。

 

「ライフをドロー!」

 

 引き抜かれる。

 めくるように見えたのは――魔石。

 

「よかったね、3枚目の気まぐれな海だ」

 

「まだだ! 銀河乙女は最強! この程度の危機なんて蹂躙出来ル! メイン」

 

「何でも引きなよ」

 

 明滅する。

 見たこともないほどの光、ああ、もしかしたら本当にこいつは銀河乙女の適性があるかもしれない。

 ボクよりも、あの子よりも強い、選ばれたファイターだったのかもしれない。

 だけど。

 

 

「ただし――ボクの知る限り、あの子のデッキにはこれを覆すカードはない

 

 

 たった1枚じゃあ出来ない。

 ロゴスでアルマーを焼く? 召喚酔いで間に合わない。

 秘宝を破壊する魔法カードを唱える? 1枚で破壊する魔法は、色が出せなければ唱えられない。

 色彩でも破壊するカードを唱える? ボクの手には2枚目の赤も白もある。

 手札を増やすカードを唱える?

 

 ああいいよ。

 

「お前の色彩(ユメ)が足りるのならば」

 

 色に縛られ、それを克服するための生贄がいる。

 だから2枚はなければ動けない。

 どれほど望んだカードを引けても、デッキにないものと、足りない可能性(手数)は補えない。

 

「ドロゥ!! ……――……色彩をセット! 2オドで<銀河乙女 地を這えぬプシュケー>を召喚ンン!!」

 

 呼び出される2体目のプシュケー(4/4)

 合計ダメージは。

 

「愚か、無駄、ロスト! バトル!! プシュケー2体で攻撃!」

 

 8点ダメージ。

 

「ライフで受ける」

 

 左のボードで顔を、右手を胸を抱き抱えて、守る。

 目を閉じる。

 見る必要はない、もう未来は瞼の先に映っているから。

 

 痛みは覚悟していたよりもなかった。

 

 吹き飛ばされて、背中から落ちたけど、頭だけは打たないように丸まった。

 人刹師範から教わった、あの子と一緒にボクも憶えていた耐え方。

 十二聖座の、八十八星座たちが少しでも戦えるように、無事に過ごせるようにと足を運んでくれて、あとちょっとセクハラとかで怒られていたけど、あの子も嫌いじゃなかった人だった。

 

 意識を保つ。

 動揺を抑えるための呼吸は、カドさんから教わっていた。

 何もかもわからない、人間として生きなければいけない、あの子の体を守る墓守にならなきゃいけない。

 あの子から託された、最後の願いを守りたくて、でもなにをすればいいのかわからなかったボクに、根気よく教えてくれた人だった。

 

「ふぅ」

 

 息を吐く。

 血が流れて、オドが削れて、めまいがするけれど、身体を起こす。

 

「ライフは、まだある」

 

 散らばったカード。

 それらはもうチェックするまでもない。

 魔石3枚と変容土地2枚、それ以外は全て基本色彩の20枚。

 その全てを憶えているから、自動的にセットされた色彩たちをみて、ライフデッキを見る。

 

「残り1点」

 

 まだ生きている。

 

「――は」

 

 声。

 血が流れすぎたのか、精命力が削れたのか、どこか遠くに聞こえる声。

 

「は、ハハハ! 終わりだ! そう、負けはナイ!」

 

 ”101人目”が叫んでる。

 

「残り1点! 次で終わりだ! ライフはもうツきる、ロストする!」

 

 計算はあっている。

 

「さあ、叶わないユメを抱いて折レロ!」

 

 愉しげな笑い声だった。

 計算していたんだろう。

 

 だから3点の魔法じゃなくて、2点のロゴスの投げつけ(バーン)だった。

 いたぶるために調整したんだ。

 舐めていた。

 

「ボクの……ターン」

 

「ロス!」

 

「れでぃ」

 

「ロス!」

 

 だから、お前は負けるんだ。

 

()()()()()()()()()()

 

「ろす――え」

 

 ターン開始のフェイズは3つ。

 レディフェイズ、アップキープ、そしてドローフェイズ。

 

「ドローはしていない」

 

 セットした秘宝が輝く。

 それは何も見えない不可思議な球体で、けれど、ボクはそれに手を伸ばし。

 

「その前に……ッ」

 

 空を切ろうとした時、誰かがそれを支えてくれた。

 

「……アルマー(セト)?」

 

 目を閉じていたはずの少女が、目を開けていた。

 そこから伸びる鎖が、ボクの手に結びついていた。

 

 

セト(アルマー)、貴女の勝利だよ≫

 

 

 笑顔()があった。

 

 闇の中に、真っ暗な世界に、無数の光が煌めいた。

 

 見上げる全てが、天の光で、星だった。

 

 

 

≪願いは叶った≫

 

 

 

 

 銀河(ユメ)の願いは叶えられた。





 きっと叶うさ。

             ――<銀河に願いを>
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