トリックは推理されたけど、ターゲットを全員殺すまで止まりませんよ?   作:Distance

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映画観てきて執筆意欲が戻ったので投稿を。
十二月までに終わらせるとか言ってた自分をぶん殴りたい。


江戸川コナン編

 阿笠博士の邸宅でコナンはソファーに座り、ボーッとニュースを眺めていた。

 時折チャンネルを変えるが見ているニュース内容はどれも似たような物ばかり。

 それは、先日コナン達が関わった連続殺人事件についてだった。

 既に五日程経ったが、今も連日ニュースを騒がせている。

 そうしていると、不意にテレビの電源が切られた。

 

「あ……」

 

「ちょっと。なんであなたが他人(よそ)の家のテレビを独占してるのよ?」

 

 明らかに不機嫌そうな顔で座っているコナンを見下ろしてくる灰原にコナンは引きつった笑みで視線を逸らす。

 

「あ、あぁ……わるい」

 

 普段ならもうちょっとこう軽口でも叩こうモノだが、今はその気力が無く、素直に謝罪する。

 その様子に肩透かしをくらいつつも灰原は小さく息を吐く。

 

「いつまで気にしてるの。そんなに犯人(あのひと)の自殺を止められなかったのがショックだったわけ?」

 

「そういうわけじゃ……」

 

 庭で阿笠博士の新しい発明品で遊んでいる子供達を指差す。

 

「だったら、せめて博士やあの子達の前では普段通りに振る舞いなさい。アレで三人とも、結構気にしてるのよ」

 

 灰原が気にしているのはコナンというよりも、阿笠博士や小学生の友人らだった。

 あの旅行から帰って来てから元気の無いコナンを心配して子供なりに気を配っているし、阿笠博士も件の旅行に行かせたのを後悔している。

 灰原からすれば、事件に巻き込まれるのはいつもの事という認識なのだが。

 哀しいかな。良くも悪くも事件に遭遇するのに慣れてしまった。

 流石に今回のような事態は珍しいが。

 未だに立ち直ってないコナンに灰原は苛つきながらも質問する。

 

「それで、結局はなにに悩んでるの?」

 

 これ以上空気が悪くなるのを避ける為に、灰原はコナンの悩みを聞く事にした。

 悩むような素振りを見せつつもコナンは開いた自分の手を見て話し始める。

 

「前にも、死なせちまった犯人(ひと)が居たんだ」

 

 そしてこうもあっさりと口を割るのは、コナン自身相当参ってる証拠でもある。

 まだ灰原哀が帝丹小学校に転校してくる前の話。

 他の少年探偵団も知らない事件。

 

「その人は、父親の仇を討つ為に小さな島で医者として働いてたんだ。島の人達からも慕われてて……あんな事件を起こすような人じゃなかった。俺達にも良くしてくれて」

 

 あの人自身、決して悪い人ではなかった。

 事実、最期に火を点けた建物の外へコナンを投げ飛ばして巻き込まないようにしてくれた。

 コナンがもっと上手く立ち回っていれば、あの人の死を防げた筈。

 その後悔は今も胸の内に残り続けている。

 

「あの人がやったことも、最期に死を選んだのも、納得はできねぇけど、理解はしてるつもりなんだ」

 

 それはきっと、犯人の最期に立ち会い、短いながらも本音を話してくれたからだろう。

 だけど。

 

「今回の犯人は、同じように最期に話した筈なのに、結局何にも解らねぇままなんだ」

 

 本心を語らず、最期まであしらわれたままだった。

 復讐を終えて多少すっきりしたと言う春日井明夫。

 その顔には疲れた感じはあっても、後悔の色は微塵も感じられなかった。

 春日井明夫が根っからの悪人だったとは思わない。

 だから尚の事、今回の事件での彼の凶行が納得出来ず、モヤモヤが残っている。

 腕を組んで聞いていた灰原が片目を瞑って自分の意見を言う。

 

「ま、普通に考えて、たまたま顔を合わせただけの小学生に自分の心情を吐露する大人なんてそうは居ないでしょ」

 

「ぐっ……!」

 

 灰原の呆れ声にコナンの顔が歪む。

 春日井からすれば、やる事を全部やった後で遺す物など何も無いのだ。

 それも旅行(復讐)先で偶然知り合っただけの子供に自分語りをする程の自己主張が無かっただけ。

 

「それでも、雨ヶ谷小夜さんだってそんなことを望んでるとは────」

 

 どうにか反論しようとするコナンの口を灰原が人差し指で制する。

 

「やめておきなさい。亡くなった小夜さんって人のことを私達は一切知らない。そんな人の心情を勝手に語るのは、それこそ探偵に在るまじき行為よ」

 

 望んでいたかもしれないし、そうじゃないかもしれない。

 しかし、感情論で決め付けるのは違う筈だ。

 灰原に探偵の在るべき行動を突かれてコナンは視線を下に向けて俯く。

 そんなコナンの姿に灰原は鬱陶しそうに息を吐いた。

 

「博士が、亡くなった雨ヶ谷小夜さんの御両親と連絡(コンタクト)を取ったんだけど」

 

「え?」

 

「春日井さんは御両親とは疎遠だったみたいだし、二人のことを知るなら婚約者の雨ヶ谷小夜さんの方だと思って、博士が連絡先を調べたのよ」

 

 阿笠博士も今回の件で責任を感じており、何か出来ないかと奔走した。

 その結果、雨ヶ谷小夜の御両親との接触に成功したのだ。

 

「向こうも、春日井さんの最期が気になってるみたいだし、どう? 行ってみる?」

 

「あ、あぁ……!」

 

 博士がそこまで気にしているとは思わなかったことに申し訳なく思うと同時に、心の中で感謝する。

 そこで灰原が外を指差す。

 

「ならさっさとあの子達にも元気な姿を見せに行きなさい。これでも、みんな、心配してたんだから」

 

 同時に博士の発明で遊んでいた子供達が中に入ってきた。

 

「コナンくーん! 哀ちゃーん! いつまで中にいるのー!」

 

「お、おう! いま行くー!」

 

 立ち上がって外へ出て行くコナン。

 それを見た後に灰原も後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。

 コナンと灰原は阿笠博士に連れられて雨ヶ谷小夜の御両親の下へ訪れていた。

 何処にでもある普通の一軒家。

 中からは六十前後の夫婦が出迎えてくれた。

 

「どうも。よく来てくださって」

 

「いや〜。こちらも急なご連絡をしてしまい、申し訳ない」

 

 そこから軽く自己紹介をすると家の中に通される。

 家の中には段ボールが積まれていた。

 テーブルを挟んで座り、奥さんの方がお茶や茶菓子をだしてくれる。

 

「引っ越すのですか?」

 

「えぇ。今回の事件でマスコミの接触にも疲れてしまって。幸い早期退職でしたが、会社から満額に近い退職金は出ましたし、田舎の兄が継いだ果樹園を手伝えば、生活に困ることはないでしょう。少し早いですが、悠々自適なセカンドライフですよ」

 

「とりあえず、今は必要な物を纏めて要らない物を処分している最中でして。来月の頭……いえ、出来れば今月末までには田舎に帰る予定です」

 

 夫婦の説明にコナンが軽く質問する。

 

「この家はどうするの?」

 

「今まで手直しして使ってきたけど、この家も古いからねぇ。壊して更地にしてから土地を売りに出すしかないな」

 

 よく見れば、家の中には使われてる木の板が一部新しかったりと所々後から直したような箇所がある。

 

「これ、おじいさんが直したの?」

 

「いや、明夫君がね。こんな事でお金をかけるなんてもったいないって日曜大工感覚で直してくれたんだ」

 

 春日井明夫の名前が出て、少しだけ空気が重くなる。

 灰原が続くように質問する。

 

「お二人から見て、春日井明夫さんはどんな人だったのかしら?」

 

 その問いに夫の方が少しだけ嬉しそうに目を細めた。

 

「そうだね。初対面の印象はあまりよくなかったかな?」

 

 初めて会ったのは雨ヶ谷小夜が大学を卒業して実家に戻って来た時に紹介されたらしい。

 しかし、中卒のフリーターと付き合っていると聞いて将来が不安にならない親は少ないだろう。

 何度か別れるように娘に言っていたようだが、『明くん、頑張ってるから』とやんわりと拒否されていたと。

 

「最初見た時は、恋人というより、駄目な弟の面倒を見る姉のように見えたかな。それからしばらくして、なんとか自動車整備の会社に就職して、必要な資格の勉強やら、この家の手直しをしてくれたり、色々と気を遣ってくれてる内に自然と仲良くなってた。私達も息子が出来たような気持ちで接してたよ」

 

 話してみれば、屈託のない普通の青年。

 娘に対しても優しい人。

 いつの間にか、二人が結婚するのを心待ちにしていた。

 

「娘の小夜は仕事に夢中だったし、明夫君の方も、もう少し給料を上げてお金を貯めたいと思っていて、中々決まらなかったけどね。だから二人が結婚すると報告してくれた時はそりゃあ嬉しかったよ。明夫君は御両親との仲が良くなくて、うちの姓を名乗ると言った時もね。だけど────」

 

 それから程なくして、小夜の首吊り自殺が起こったと。

 

「信じられなかったよ。報告に来た時はあんなに幸せそうだったのに。娘が急に仕事を辞めたのもね」

 

 おそらくは結婚報告直後に望まぬ妊娠が発覚し、雨ヶ谷小夜は自殺したのだろう。

 話している内に雨ヶ谷夫妻は目頭に涙が浮かび、それを手で覆って隠す。

 

「馬鹿な娘だよ。これからって時に、明夫君ならきっと責めたりしなかったろうにね」

 

 涙を拭く夫妻。

 

「明夫君も、娘の為にこんなことをする必要はなかったんだ。あの子のことを忘れないで居てくれれば、それだけで良かったのに。生きていれば、新しい幸せもあったろうにね……」

 

 そうだ。

 死んだ人の為に復讐したって、その人が生き返る訳じゃない。

 春日井明夫まで自殺した事で、目の前の夫婦を更に深い悲しみに落としている。

 だから、彼のやった殺人は間違って────。

 そこで奥さんの方が、でもと口を開く。

 

「変な話だけど、嬉しくもあるんですよ。娘の小夜は、明夫君にそこまで想われていたんだなって。それに、真相を知っても、私達はきっと、泣き寝入りすることしか出来なかった」

 

 裁判などで戦う道もあっただろうが、きっとそんな気力も体力もお金も残ってなかった。

 娘の自殺に対して、悲嘆に暮れるしかなかっただろう。

 

「世間的には、明夫君の犯した罪は赦されないでしょう。だけど私達だけは、小夜の親として、明夫のしたことを感謝します。娘の仇を討ってくれてありがとうって」

 

 そう言って微笑む夫妻。

 そんな二人にコナンは強い反発を覚える。

 

「……小夜さんも、それを望んでいたと思うの?」

 

「江戸川くん」

 

 あまりにもデリカシーの無い質問に、灰原が止めに入る。

 しかし夫妻は気を悪くした様子もなく答えた。

 

「さぁねぇ。ただ、どんなに怒っても、最後には受け入れてあげると私達は思ってるよ。それでこちらから質問だけど、明夫君の最期はどうだった?」

 

 春日井明夫の最期に携わったのはコナンだけ。

 阿笠と灰原がコナンに視線を移す。

 コナンは躊躇いがちに答えた。

 

「また、小夜さんに会いたいって……」

 

 毒を飲んで倒れ、聞き取れるかどうかのか細い声で言った最期の願い。

 それを聞いた雨ヶ谷夫妻は目を丸くした後に仕方ないねとばかりに小さく笑った。

 

「あぁ……本当にあの子らしいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雨ヶ谷夫妻の家を出て、車の中に居る三人。

 

「で、少しは納得出来た?」

 

「……」

 

 コナンの顔は、まだ納得しきれてない様子だ。

 その様子に灰原はやれやれと肩を竦める。

 

「言っておくけど、春日井明夫さんの自殺に、工藤君が責任を感じるのはナンセンスよ」

 

「なんだよ、いきなり」

 

「もしも捕まえられたとしても、刑務所や刑期を終えた後に自殺してたかもしれない。それを全てどうにかするなんて不可能よ」

 

 人間、本気で死のうとしている人間を止めるのは難しい。

 それこそ四六時中見張るでもしないと。

 灰原には、あの事件で捕まえても、春日井明夫がどこかで命を絶っていたように思える。

 

「それに全て責任を感じる気? 正直、付き合い切れないわ」

 

 だから、春日井明夫について悩むのはここまでにしろと暗に警告する。

 コナンが反論しようとする前に空気の悪さから阿笠博士が話題を変える。

 

「それはそうと、そろそろ暗くなってきたし、今日の夕飯は何処かの店で済ませるとするかの」

 

「そうね」

 

 既に18時を回っており、ここから阿笠博士の家に着くにも1時間以上かかる。

 それから夕飯の用意をするのは大変だ。

 灰原が博士にあまり脂っこい物を頼んじゃダメよ、と釘を刺しながら近くのレストランに入る。

 注文を済ませて料理を待っていると、トイレの方から悲鳴が上がった。

 

「誰か! トイレで人が倒れてっ!」

 

 そう叫ぶお客にコナンは動こうとするが、咄嗟に足が止まる。

 いつもなら真っ先に事件に飛び込むが、春日井明夫の事件がフラッシュバックしてしまった。

 もしまた犯人を死なせてしまったら? 

 その恐れがコナンの足を躊躇わせた。

 

「行ってきたら?」

 

「灰原……」

 

 救急車と警察に連絡を入れている灰原は息を吐く。

 

「どうせ我慢なんて出来ないんでしょう? それが貴方だもの。あーもしもし?」

 

「悪い」

 

 そう言って人が倒れているトイレに急ぐ。

 走りながら誓う。

 

(今度は絶対に死なさねぇ……!)

 

 犯人を捕まえるし、絶対に死なせない。

 やっぱりコナンには、春日井明夫の復讐も自殺も肯定出来ない。

 

(だから、証明してやるよ! これから関わる事件の全部を解決して、あんたと同じような動機で殺人を犯す奴に会ったとしても、二度と絶対に死なせねぇ! あんたのやった復讐は間違いだって一生かけて俺が探偵として証明してやる……!)

 

 いつか、その答えに辿り着く為にコナンは事件へと足を踏み出した。

 

 

 




自分的には無難な終わらせ方にしました。
これ以外は思いつかなかったです。
たぶんアンケートの誰を出演させてもこの答えになってた思います。
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