オラオラヒーロー『スタープラチナ』   作:花京院

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オラオラオラオラオラオラ

 雄英体育祭は、特に問題なく無事に終了した。

 裏で色々な事があった一年生の部は、一位が爆破の個性の少年、2位がエンデヴァーの息子、そして3位がスタープラチナの気にかけていた影の個性の少年。

 個性の強さ、体の鍛え具合から考えれば、妥当な結果だろう。

 ちなみに緑谷出久はエンデヴァーの息子、轟焦凍に敗北した。

 

「…………チッ」

 

 そして現在、警備員の仕事を終え、東京都内にある自分の事務所────と言うか自宅────にスタープラチナは帰って来ていた。

 

「あら承太郎! 帰って来たのね!」

 

 玄関の扉をガラガラと開ければ、エプロン姿でパタパタと駆け寄って来るのはスタープラチナ……もとい、空条承太郎の母親、空条聖子である。

 つい数ヶ月ほど前まで諸事情あって死の淵を彷徨っていた彼女だったが、今はこの通り元気にしていた。

 

「おかえりなさいです! お仕事お疲れ様でした!」

「…………ああ」

 

 そして、少し遅れて同じくエプロン姿でパタパタと駆け寄って来るのは渡我被身子。

 承太郎と血の繋がりはないが、諸事情あって承太郎が引き取ることになった少女である。

 

「私たちも観てたわよォ、雄英体育祭! 今年も今年ですんごかったわねぇ! 特にあのエンデヴァーさんの息子さんの個性! あの子、エンデヴァーさんよりも強いんじゃあないかしら?」

「私は出久くんの方が気になりました! ボロボロになって、皮膚が剥がれて、真っ赤なお肉が見えて、とってもカッコよかったです!」

「…………」

 

 姦しい二人は放っておいて、承太郎が向かうのは自分の部屋だ。

 広い家の縁側を少し歩いたところにある、8畳ほどの和室。そこが承太郎の部屋だった。

 しかし、これと言って目立った私物はない。

 あるものと言えばちょっとした机の上に積み重ねられたジャンプが数冊と、5人と1匹の写った、砂漠を背景に撮った写真程度のものだ。

 

「ちょっとちょっと承太郎!? ちょぉっとくらいお話くれたっていいじゃない! オールマイトさんともお話ししたんでしょ?」

「出久くんともお話ししましたか!? もしお話ししてたら、どんな子だったか教えて欲しいです!」

「失せな」

 

 追って来た姦しい女二人を遮るようにピシャリと障子を閉める。

 

「あら! 全くもう、承太郎ったらいけずなんだから!」

「仕方がありませんね、お夕飯の時に詳しくお話を聞いちゃいましょう!」

「そうね! お夕飯の時は承太郎も逃げられないもの────」

「…………ハァ」

 

 そんな二人の会話が遠ざかっていくのを聞いて、承太郎はらしくもなく溜息を吐く。

 あの二人の相手は、精神的にとても疲れてしまうのだ。

 渡我被身子の方は辛うじてまだ仕方がないと言っていいが、母親の方はいい加減子離れして欲しい。切実に。

 

「…………」

 

 ドカリ、と。畳に座って仕事用のパソコンを立ち上げる。

 改造制服姿の大男が畳に座って机の上のパソコンを操作していると言う絵面はびっくりするほど不自然であったが、そんな事はどうでもいい話というもの。

 

「……!」

 

 そうしてメールボックスを開き、方々から届いて来たヒーローとしての仕事のメールに目を通し、そして片っ端からお断りの定型文メールを打ち返していると、一件のメールが承太郎の目に留まる。

 

「……スピードワゴン財団」

 

 スピードワゴン財団。それは100年近く前、超常黎明期が終わった頃にロバート・E・O・スピードワゴンによって立ち上げられた、全世界の医療支援や自然植物保護などを目的とした組織であり……同時に、『とある事件』についての秘密裏な調査も行なっている組織だ。

 承太郎は『とある事件』と密接な縁があり、それゆえにこうして、スピードワゴン財団から調査の協力を要請するようなメールが承太郎のもとに届くのだ。

 

 そして、承太郎はそんなメールが届いた時は、あらゆるヒーローとしての活動を差し置いてスピードワゴン財団からの要請を優先する。

 というかむしろ、承太郎がヒーロー資格を取ったのはこのスピードワゴン財団への調査協力に、合法的に個性を使うためであった。

 

 ちなみに、承太郎と渡我被身子が出会う事になったきっかけも、このスピードワゴン財団からの調査要請であったりする。

 

「……」

 

 ほんの少しの緊張を胸に、承太郎はメールをクリックし、内容をディスプレイに表示する。

 

「……!!」

 

 そうして表示された内容は、承太郎を大いに驚嘆させるに足るものであった。

 

『吸血鬼事件に『オール・フォー・ワン』が関わっている可能性大。例の『日記』の記述にAFOの事を指しているであろう記述が発見された。奴の『吸血鬼』の個性は、与えられたものである可能性が高く─────』

 

「ッ!」

 

 そこまで読んで、感情を抑えきれなくなった承太郎は衝動のままにドゴン、と。机を叩く。

 バキバキと音を立てて机が真っ二つに割れ、パソコンがガシャンと音を立てて畳に落ちる。

 

「フー……っ、フー……っ」

 

 青筋が額に浮かび上がる。

 承太郎は、机を叩き壊して尚湧き出し続ける己の怒りを抑えるのに必死だった。

 そうして数秒ほど経ち、未だ冷めぬ怒りの中で、ドタドタドタと足音が二人分、こちらへ向かって来ている事に承太郎は気付く。

 

「承太郎!? 一体何があったの!?」

「大丈夫ですか!? 承太郎くん!?」

 

 スパァン、と障子が開いて、慌てたような表情の母親と渡我被身子が顔を覗かせ、ただならぬ様子の承太郎に駆け寄る。

 壊れた机と落ちたパソコンに気付いたのは、その少し後だった。

 

「……何か、よくない事があったの?」

「承太郎くん、手は怪我してないですか? 怪我してたらチウチウしていいですか?」

 

 二人とも、どうやら承太郎の事を心の底から心配してくれているようだ。

 なんだか渡我被身子の方は心配のベクトルが違うようだが、まぁそこはご愛嬌というやつだ。

 そんな二人の優しさ(?)に触れ、承太郎はようやく冷静さを取り戻す。

 冷静さを取り戻したとは言っても、あくまでやっとまともに口が利ける程度であるが。

 

「……チと、頭を冷やす。少し、出かけるぜ」

「お出かけするんですか? 今から? もう夕方ですけど……お夕飯ももう少しでできますし……」

 

 そう言って承太郎を引き留めようとする渡我被身子の肩に手を置くのは、母親だった。

 

「……なるべく早く、帰って来るのよ」

「…………ああ」

 

 そう言って、承太郎は再び靴を履き、夕方の東京へと繰り出すのだった。

 




※この世界では日記は燃やされていません。
なんか評価の数少ない……少なくない?
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