歴史上、英雄の存在は、平時においてしばしば国家の重荷となる。
かつて帝国を滅亡の淵から救ったバーラト星系会戦の英雄たち――エドワード・コリンズ少佐、ウォルター・フェン中尉らが、この歴史の法則の新たな証明者となった。

戦後、彼らの武勲と国民からの人気は、帝国最高意思決定機関である元老院の猜疑心を煽るには十分すぎた。権力者にとって、生きている英雄ほど危険な存在はなく、死んだ英雄ほど便利な存在はないからである。
かくして、彼らは「フロンティア探索」という名誉ある任務を与えられ、帝国最新鋭艦『モイクス・カルヴス』と共に、銀河の辺境へと事実上、追放された。

だが、歴史の女神は、彼らに安らかな忘却を許さなかった。
航海の途中、『モイクス・カルヴス』は、帝国のいかなる物理法則でも説明のつかない、高次元からの時空干渉というべき現象に遭遇する。最新鋭の巨艦は、赤子の手をひねるが如く、一瞬にして航行能力を喪失した。

この絶望的な状況下で、二名の士官が、人型機動兵器『センチュリオン』による単独大気圏突入という、無謀な賭けに打って出る。
彼らが不時着した惑星は、人類の文明が未発達の未踏の地であった。

ここに、歴史上、最も痛烈な皮肉が誕生する。
腐敗していようとも「民主政治」の原則を守るために、自らが独裁者となる道を望まなかった男たちが、その原則が存在しない世界で、いとも容易く「神」にも「王」にもなれる、絶対的な力を手にしてしまったのである。

彼らは、自らが信奉した理想を、この未開の星で貫き通すのか。あるいは、力に溺れ、かつて自らが否定した、新たな「カエサル」となるのか。
後に「銀河辺境戦記」と記録される、一つの歴史が、ここに幕を開けた。それが、銀河の運命をいかに変えることになるのか、この時点ではまだ、誰も知る由もなかった。
  始まり()
  出会い2025年07月18日(金) 17:00()
  通信2025年07月29日(火) 16:43
  新人類2025年07月18日(金) 22:33()
  新人類 v22025年07月19日(土) 02:31()
  移動中2025年07月20日(日) 22:18()
  エトリア2025年07月21日(月) 06:49()
  調達2025年07月30日(水) 16:26
  正午の酒場()
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