銀河辺境戦記 〜鋼鉄の使徒と剣の惑星〜   作:モイクス・カルヴス

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始まり

 

「けっ」

 

モイクス・カルヴスが出発してから2年。

本当に何もない。

 

FTL航法を繰り返しながら情報を収集している。

存在もしない入植惑星を探すために銀河の辺境へ追放されたのだ。

 

「ウォルター、いるか?」

 

おっと、エドワード・コリンズ少佐だ。

我々モイクス・カルヴス分遣隊のエド隊長だ。

第1海兵師団の生き残りであり、その前からの知り合いでもある。

付き合いも長い。

 

「おりますよ。また訓練ですか?」

「ん? 嫌か? いや、そうじゃないんだ。パワードスーツの事でな。詳しいだろ?」

「まぁそりゃ長いこと乗ってますからね。なんです?」

「これだよ」

 

嫌な予感がする。

 

オムニ、神経インターフェースに送られてきたデータを見る。

オムニは脳インプラントや神経インターフェースを内蔵した医療モニター、知覚強化、戦術支援、その他などの多機能システムだ。

 

「ま、実物があるから見てくれや」

 

資料に目を通して呆れつつ、自室を出て格納庫へ向かう。

超振動破砕杭??

なんだこれは、たまげたなぁ。

 

静まり返ったハンガーに並ぶセンチュリオンはやはりいい。

帝国最新・最強のパワードスーツ[センチュリオン]。

駆逐艦クラスのコストが掛かっている、らしい。

 

「コイツなんだが」

「え?」

 

イカン、声に出てしまった。

やはりこれは……おそらく設計者はスパイだろう。

 

「何故か本艦配備になった代物だ。上層部は我々に要塞制圧戦でもやれというのか?」

 

既に格納庫にいた上官に慌てて敬礼する。

エド少佐は煙草を咥えて機体を見ている。

それでいいのか?コーネリア特務大尉は中佐相当だぞ。

 

「こんなゲテモノさっさと換装すべきです」

「まぁ、ゲテモノだが換装する前に1度ぐらいは中身を確認してもいいだろう。このフルアーマーオペレーションというのはいいじゃないか」

 

確かに、突撃用の増加装甲は生存性を向上させるだろう。

しかし両手パイルバンカーはそれ以上に生存性を低下させるだろう。

 

「ま、乗ってみてくれや」

 

少佐が自分で乗らないのはヒドイと思う。

無責任だが少佐はいつもこんな感じだ。

でも言う事はだいたい正しい。

気づくのは後になってからだが。

 

「まぁ、やりますけどもね。これは酷いよ、うん」

 

シートにおいてあるパイロットスーツを着てシートに座り、オムニを通して機関を始動する。

最新式パワードスーツは神経インターフェースオムニで操作が可能なのだ。

流石に嗅覚はないが、電磁筋繊維の感覚や視覚は文字通り人体の拡張だ。

 

「オムニ、縮退炉を点火」

 

機械音声が返す。

 

「縮退炉、臨界に到達。全システムへのエネルギー供給を開始」

 

様々なログが流れ、ブートシーケンスが完了する。

コイツは近接型カスタム、近接装備は瞬間火力が命だ。

 

「だからって両手パイルバンカーはバカだろ!」

「私も同感だ」

 

マズイ、通信を切っていなかった。

 

「せめて片手にライフルがあれば使い物にはなるな」

「それをするならもう片手にシールドつけましょうよ」

 

パワードスーツは限られた推進力で稼働するので、空間戦闘には向かない。

よって地上あるいは艦及び要塞内で使用される。

当然近接戦闘は多くなる。

が、多いだけで絶対じゃない。

 

パワードスーツの最大のメリットの1つである汎用性を全部潰しやがった。

 

「やっぱりパイルバンカーはナシですね」

 

それに返すように大きな音がした。

構造がブチブチと引き裂かれ、艦そのものが雑巾のように捩じられた。

 

「嘘だろ! エド少佐ァ! 大尉!」

「警告、異常な重力波を検知」

 

機械音声に遅れて爆発音が響く。

警報もなり、非常灯がついた。

格納庫と火薬庫は同義だ。

これはマズイ。

 

「艦の損害率が60%を超えた! 格納庫なら外に出たほうが早い! パイルバンカーを使って脱出しろ!」

「了解! やっぱりパイルバンカー最高!」

 

コーネリア特務大尉はダメコンの処理があるだろうにこちらへも情報をくれる。

ありがたい。

 

「こりゃダメだ! 脱出するぞ!」

 

お、エド少佐も適当なパワードスーツに乗ったらしい。

やはりタフな人だ!

 

「さっさとぶち破るぞ!」

 

言われた通りにハッチに向けてパイルバンカーをぶち込む。

 

「どっせーい!!」

「遅れるな! 爆雷や魚雷が誘爆したら死ぬぞ!」

 

慌てて宇宙空間に出るが、艦中央部がねじ切れているのが見えた。

艦橋はダメだ。

居住区もやられているかもしれない。

 

「宇宙空間なんて死んだも同然ですよ!」

「あそこに降りられるか?」

 

惑星だ!

直径13000kmクラスの地球型惑星だ!

なぜこんなものが!

 

考えても仕方がない。

割り切って降りる方法を考えよう。

スラスター出力を、推進剤を効率的に使うんだ!

 

「可能な限り機体を軽く!」

 

とりあえず増加装甲はパージだ!

 

「武器は全部捨てた! 増加装甲無しでも行けるか!」

 

さすがエド少佐だ、判断がいい!

 

「帝国軍技術部を信じましょう!」

「行くぞぉ!」

 

降下姿勢をとりスラスターをふかす。

 

「嘘だろ!」

 

艦の破片が肩を掠める。

この可変位相装甲は大気圏ごときには負けん!

温度も量子泡冷却器によって解決される!

 

「死ぬなよ!」

 

まさか、こんなところで死んでたまるか!

俺は生きてきた!

死ななかった!

 

「エド少佐こそ!」

 

破片を避けつつ減速を始めると大きな破片が後ろから前に抜けた。

 

「おわーっと!」

「今のはヤバかったなぁ!」

「もう大きな破片はありません。あとはコイツのAIを信じましょう!」

「はいよ、結局それかい!」

「帝国技術部万歳!」

 

オムニを通して大気圏突入のシミュレートし、突入角度を修正し、そのデータをエド少佐にも送る。

やることはやった。死にはしないだろう。

 

あとは降りた後だ。

どうするんだ?これから。

 

「降りてどうするんです?」

 

やるべきことを済ませ、自分でも驚くほど落ち着いて喋りかけた。

 

「生き残るには降りるだけだぁ」

 

間の抜けた返事が返ってくる。

それもそうか。

 

「注意、表面温度上昇中」

「大丈夫だァ!」

 

機械音声に返しても無駄かぁ。

 

HUDの表面温度はさらに上がる。

エド少佐の機体も紅く輝いている。

思ったより振動はなく、慣性制御システムがうまく作動しているようだ。

しかし推進剤の残量が気になるところだ。

 

まぁ賽は投げられた。

ルビコン川を渡ろう。

 

 

 




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