銀河辺境戦記 〜鋼鉄の使徒と剣の惑星〜   作:モイクス・カルヴス

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出会い

「足回りも問題は、大丈夫そうだな」

 

機体を見て回る。

取りあえずセンチュリオンは大丈夫だ。

無駄にパージできなかった両腕パイルバンカーも無事だ。

 

「こっちも大丈夫だ。推進剤は3%しか残らんかったがな」

 

エド少佐も自機の様子を確認していたようだ。

 

「3%残れば上出来です。揚陸艇なしで大気圏降下なんて想定されてませんから」

「ま、そんなもんか」

 

さて、やるべき事が多い。

降下中に地表スキャンによって得られたデータには驚愕した。

この惑星には文明が存在し、都市を構成しているのだ!

その調査もしなければならない。

母艦の生存確認や他の生存者も捜索せねばならない。

戦力を確保せねば、不測の事態に対応できない。

 

「取り敢えず、簡易拠点の構築だな。メシがない」

 

エド少佐の言う通りだ。

最低限の物資もない。

無線機や推進剤生成の為の融合炉の材料も無い。

 

「メシは何とかなりそうですけどね」

 

周りは緑の森だ、湖もある。

東に行けば数万人規模の都市もあるらしい。

スキャンデータをエド少佐に送っておこう。

 

「敵対勢力じゃなければ、飯でも分けてもらいますか?」

「いいな、随分とロマンチックな建造物だ」

 

この星は帝国圏ではない。

と、すると恐らくは天の川銀河ではない可能性が高い。

天の川銀河のほぼすべては帝国圏だ。

銀河の外側の開拓圏のどこかだろう。

 

「うまくいけば1年もしないうちに船舶を構築できるぞ」

 

何を言ってるんだこの人は。

軌道上造船所や工業プラントの構築には10年はかかるぞ?

 

「そううまくいきますかね。少佐も分かっているでしょう。あれは攻撃だった」

 

そうだ、攻撃。

つまり敵対勢力がこの宙域のどこかにいるのだ。

それも帝国をはるかに上回る技術を持った何かが。

 

「そう言ってもなぁ、考えても仕方ないだろ」

 

まぁぶっちゃけその通りだ。

母艦の生存も不明、生存者も不明。

仮に艦を構築したとして、母艦以上のモノはできない。

敵対勢力が我々の殲滅を狙うなら、もうすでにこの星は跡形もなくなっているはずだ。

 

「取りあえずは情報ですね。二手に分かれましょうか」

「うーし、俺は食料だな。生存者も考えておこう」

「んじゃ、俺は東の方の居住地を見てきますよ」

「日没までには戻れよ?」

「もちろんです。夕食は楽しみにしておきますよ」

 

今は13時ごろ、日没までには5〜6時間ほどだ。

25kmほど東の居住地へ1時間程度、言語データを入手しておけば後々役に立つだろう。

センチュリオンのスタンドアロンでもいいが、折角だから文明を見に行こう。

思わぬ収穫もあるかもしれない。

 

 

 

20kmほど進出した時の事だった。

森の中から街道にでると、生体反応があった。

なにやら一人の女がこちらを見ている。

 

「なんだぁ? 光学迷彩で視認できないはずだぞ」

 

音だってノイズキャンセリングによって完全に遮断されている。

 

「ッ!」

 

なんだと!

触れやがった!

クソ!

油断して動かなかったのがいけなかった。

彼女は怖がらず、片手で触りながら興味をもって見つめている。

仕方ない。

静かにコックピットを開け、姿を現す。

 

「...?」

 

彼女は少し困惑しているようだ。

驚くでもなく、叫ぶでもない。

相当肝が据わっているようだ。

 

「チャオ!」

 

おっと、何故か叫んでしまった。

彼女は銀色の瞳でこちらを見ている。

 

「Salvē, vir armate.」

 

よーし、なにいってるかさっぱりわからん。

 

「勘弁してくれ、何の用だ」

「Video gigantem ferreum tibi adstantem, cuius signa et ars mihi ignota sunt.」

 

幼さは残るが意思の強そうな顔だな。

おっかなくてかなわん。

 

「Igitur, pro pace et ordine huius regionis, nomen tuum et propositum tuum, quaeso, revela.」

 

身長150cm前後、ナイフで武装。

この星はみんなちっこいのかな?

 

「Silentium vestrum... estne hoc modus colloquii vestri?」

「だから! 何言ってんのかわかんないの!」

 

ジェスチャー!フィーリング!

身振り手振りで伝わらないことを伝える。

 

「...Verba mea non intelligunt」

 

……奇跡的に伝わったようだ?

 

取り敢えず最初の接触者だ。

どうしようか。

コミュニケーションが取れないのに情報もクソもない。

上司に投げるか。

 

「エド少佐、ウォルターです。現状を送信するんで判断は任せます」

「確認した、連れてきていいぞ。飯はある」

 

この人ちゃんと考えてるのかな?

言葉通じんのやぞ。

しかも光学迷彩が通じない。

もしや超文明の生き残りなのでは?

 

「了解、通信終わり」

 

まぁ、それはそれだ。

上官に判断を仰いだならそれに従う義務がある。

問題はここからだ。

 

こちらを興味深そうに見ている彼女に身振り手振りで伝える。

 

(お前、こっちに来るか?)

 

彼女が頷く。

恐ろしく聡明だな。

エド少佐に似てるのか?

 

彼女を膝の上に載せ、予定を変更して降下地点へ戻ろう。

彼女は落ち着いている。

センチュリオンは一人でも狭いのに二人はキツい。

まぁこればかりは仕方ないだろう。

 

「中隊長より第三小隊長へ、おたくの新人を拾ったぞ」

 

間髪入れずに叫び声が入る。

 

「隊長! 生きてたんですね!」

 

この声はハンスか!

第3小隊に生き残りがいたのは嬉しいことだ。

 

(……?)

 

っと、彼女に上目遣いで見つめられる。

わざわざスピーカーで無線通信してるんだからしゃーない。

 

早く合流して言語解析を始めよう。

まぁ、言語野にナノマシン入れれば一瞬か。

 

 

 




不定期更新をお許しください。
今後は週3目指して頑張ります。
温かい目で見守ってあげてください。
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