銀河辺境戦記 〜鋼鉄の使徒と剣の惑星〜 作:モイクス・カルヴス
「よし、想定外だが情報源は手に入ったな」
「中隊長、何をするんですか?」
「ま、いいじゃないの」
うーん、中隊長が何を考えているのかいつも分からない。
今は小隊長を待つことと、僕が持ち帰った言語データの解析をするらしい。
エド少佐が湖畔に置きっぱなしのセンチュリオンのコックピットに入る。
コックピットを閉めなかったので声が聞こえた。
「あーあー、コーネリア、聞こえるか? エドワードだ」
この短時間で通信を? でも通信復旧は緊急時の基本だ。
センチュリオンの通信機能なら、母艦さえ生きていれば通信できる。
「確認できました。同調完了。エドワード少佐ですね?」
「そうだ。そちらの様子は?」
「生存者なし、復旧は絶望的。低軌道を周回中です」
「了解。メインフレームの損傷率は?」
「60%ほどを喪失しました。大半は艦の中央部です。前部及び後部の電算室はつなぎ留めました」
「上出来だ、言語データを送った。解析してくれ」
「了解しました。終了次第送付します」
ポンポンと会話が進んでいく。
母艦が生きていたのは驚きだが、復旧は絶望的なのか。
喋り終わるとエド少佐は機体から出てきた。
「なぁ、お前は大丈夫か?」
「え? 自分ですか?」
「ウォルターと俺は付き合いが長くてな。まぁ、信頼してくれていいぞ」
「はぁ、どちらでお知り合いに?」
「ウォルターとか? 特殊部隊だよ。最も高価なワンマンアーミーさ」
初めて知った。小隊長は特殊部隊出身だったのか。
喋りながらエド少佐は煙草を取り出して木に座る。
「そこから左遷されたのが俺とアイツだ」
「何故?」
「聞くな。その後はバーラトだよ」
聞くなと言われれば聞かないが、何故だろう。
無能な人じゃないはずなんだけど、それも二人そろって?
「バーラトでは?」
「コーネリアが盾になって惑星降下。参謀部のオカマ野郎の作戦だよ」
「それでも生き残ったんですよね?」
「だからここにいる。ま、生き残った奴らもヴァルハラに行ったけどな」
そういえば聞いたことがある。
バーラトで異常な生存率を記録した不死身中隊。
腰抜け中隊とも呼ばれていたが。
「その英雄がなぜこんなところにいるんですか?」
「バカかお前? 民間人の前で戦ったら不味いんだよ」
「何故?」
「国民の英雄イコール政治的脅威」
「そんな馬鹿な、くだらない理由じゃないですか。ありえない」
「あのな? 事実は小説よりも奇なりって言うがね、そもそも小説は事実を基にしてるのさ」
うーん、参謀本部がそんな決断をするかなぁ?
「制服組だけじゃねぇぞ。元老院さ」
「元老院が? 関係あるんですか?」
「大ありだよ。レプリケーター構築してこい」
「了解」
元老院が何で我々に関係あるんだ?
非常用レプリケーターをいじくり回しながら考える。
その途中でエド少佐の声が聞こえる。
会話を聞くつもりはなかったが、声が届いてしまう。
「……ありがとう。完璧だ」
「ラグナロク計画だと?いや、いい」
なんだ? ラグナロク? 終末戦争?
「よし分かった。明朝7時に降下だな。了解」
降下? 何か降下するのか。艦船用の大型レプリケーターとかかな?
「ハンス! 手を動かせ!」
うっ、怒られた。おとなしく作業しよう。