銀河辺境戦記 〜鋼鉄の使徒と剣の惑星〜 作:モイクス・カルヴス
「よっと」
岩を飛び越えると、湖畔に武装のないセンチュリオンが止まっていた。
「お、戻ってきたか」
ステルスモードなのになんでわかるんだ?
「お姫様もご一緒ですよ」
コックピットを開け、彼女に降りるよう促す。
彼女は頷き、機体から降りる。
「Ecce, domina pulcherrima.」
は?エド少佐は何言ってるんだ?
「Dic, quaeso, ex qua terra ad nos venisti?」
エド少佐が続けて喋る。
久しぶりにオムニの思考伝達プロトコルを起動する。
(ハンス、どこだ、これはどういうことだ!)
俺は言語データを持ち帰らずに引き返してきた。
と、いうことは帝国のデータバンクにこの惑星の言語が存在したのか?まさか!
(小隊長!戻っていらしたんですね。なにがです?)
「Lingua tua, o dux, aeque ac miles tuus, mira arte polita est.」
彼女が返す。
(何故エド少佐がこの惑星の言語を喋れる?)
(そんなことですか?私が南の対岸の町で言語データを収集しました)
はっはー、さすがエド少佐。食えないお人だ。
「Veni de terra quae nomen suum amisit.」
彼女がしゃべり終わると同時にハンスから言語データが送られる。
「で?彼女は何者なんです?これからどうするんです?」
「まぁ待てウォルター、まだ何も話しとらんよ」
「あなたの事ですから言う前に決まってるでしょう?」
「まぁそうだ。彼女の意思次第だがな」
やっぱり決まってるんじゃないか。
「私が協力できるの事があれば、いたしますよ」
彼女が割って入る。正しく翻訳できているようだ。
「では、お願いしよう。我々はこの星の外から来た、つまり、この星について何も知らない」
「出会って間もなく我々の言語を解する方々に、私がお手伝いできることなどあるのでしょうか?」
ほう、見た目通りか。かなりの傑物だな、エド少佐と会話できるとは。
「まぁそう言わずに、我々も協力はするよ」
「ええ、そうでしたら。願ってもないお話です」
これはハンスも話を理解できてないな。翻訳しても変わらない2人の世界だ。
「夕食にしましょう!脱出ポッドから持ってきたレプリケーターが起動できました!」
そもそも話をしている事すら気づいてなかったのか。
「よし、少し早いが皆もいることだし」
「ええ、私もいただきましょう」
彼女もエド少佐に同調する。
「そういえば名前はなんというんだ?俺はウォルター・フェンだ」
「俺はエドワード・コリンズだ、エドでいい」
「フィロパトルです。ィロとお呼びを」
「ハンス・シュトレロヴ少尉であります!」
さて、飯にしようか。帝国製レプリケーターの飯はうまいぞ。
「ありがとう」
ハンスからプレートを受け取る。
味気ない戦闘糧食じゃない。レプリケーター特製ビフテキだ!噛り付け!
「これは随分と豪勢ですね」
彼女も驚いているようだ。
「科学の力さ、1万年も経てばわかるよ」
「我々も、ですか?」
「そうだ。俺は地球って星の出身でな、俺らの星も昔はこんな感じだった時があったらしい」
「それから1万年経ってここに来たのですか?」
「まぁ大体な、そんな昔のことはよくわからん。つまりは希望を捨てるなってことだ」
その後は喋らず、食事をしながら深く考え込んだ様子だった。
食事を終えて、センチュリオンの様子を見ていると、エド少佐が話しかけてきた。
「今後の話だ。まず、この辺りを切り開らく」
「一体何をしようって言うんです?」
「艦は生きている。先ほど通信で確認した」
「降りてきてくれるんですか?我々が宇宙へ帰るんですか?」
あれで生きてたのか、コーネリア特務大尉のダメコンはさすがだな。
「生存者はいなかった。脱出ポッドと降下艇の残骸を組みなおして降下させる」
「なるほど、着陸地点の確保ですね。了解しました」
「要は、だ。コーネリアのメインフレームが必要だ。今後のためにな」
「限られた情報を最大限に生かすためには妥当でしょう」
「そうだ。攻撃の原因を調べるまではこの星からは逃れられん」
「了解しました。何時ごろに降下のご予定で?」
「明朝7時だ。艦は軌道上においておく。電源自体は生きてるし、メインフレームなくとも制御可能状態にしておく」
「まぁそんなもんでしょう。ではウォルター中尉、作業に入ります」
「任せた、俺は推進剤精製機と基地施設の準備をしておく」
夜が明ける5時頃、作業が終了した。昨日の夜に慌てて設営したウェーブ用のテントにフィロパトルを詰め込み、寝ようとするハンスを無理やり作業させてやっと終わった。
「正直、脱出ポッドで降下艇を直した物で正確に降りられるんですかね」
「ま、お手並み拝見よ」
「あのー、自分はもう寝てもいいですか?」
ま、大丈夫だろう。もうやることもない。どちらかと言えばコーネリア特務大尉が降りてきてからのほうが忙しいが、それは黙っておこう。
「ん?いいぞ、あとは俺と少佐でやる」
「では、失礼します!」
「まだまだ新兵だな、あれじゃ」
「そんなもんです、可哀想でさえある。こんなとこ配備で頼れる先輩は先にヴァルハラへ行った。そういう意味では彼は優秀ですね」
「麻痺してるだけさ、いつか気づく。その時には一人前になってるといいが」
「そうですね、っと」
「こちらはコーネリア特務大尉だ。予定より早いがそちらは大丈夫か?」
「大丈夫だ、さっさとやってくれ」
「了解した、99式降下艇2隻だ。よろしく頼む」
「スペース的には問題ないぞ、お手並み拝見だ」
降下が終わったらいよいよ本格的に拠点構築だ。大型レプリケーターも持ってきているだろうから、簡易拠点ぐらいならすぐできるだろう。艦の構築ともなると衛星軌道にドックが必要だが、なるほどモイクス・カルヴスを利用すれば5年くらいでできるかもしれない。
とにかくまぁ、まだ始まったばかりだ。
トチ狂って2話作りました。お許しください。
やっと序章がおわった…まだまだこれからです。