銀河辺境戦記 〜鋼鉄の使徒と剣の惑星〜   作:モイクス・カルヴス

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新人類 v2

ゴォ――――

 

風が吹き荒れ、木の葉が舞う。99降下艇に無理矢理脱出ポッドのエンジンを乗っけているからか、随分バランスが悪いしうるさい。下の草地はもはや吹き飛んでいる。

 

シュゥゥ――ン

 

アンバランスながらも着陸する、流石だ。

コーネリア特務大尉のアバターが降りてくるように見える。

 

「ま、こんなもんだろう。」

「最新型AIを舐めないでほしいな、少佐。」

「で?誰が大佐になるんだ?」

 

何の話だ。そうか、艦長及び艦隊指揮官の生存が確認できない場合、野戦任官が認められるのか。

 

「常識的には、だが。君だろう。」

 

その通りだ。最高階級者で人間のエド大佐に次席指揮官の俺が中佐か?何階級特進かな?

 

「あいにく、海兵隊に常識は通じんのでね。ウォルター!お前がやれ。」

「俺が?俺には小隊ですら手に余りますよ。」

「ウォルター、これは命令だ。頼むよ。」

 

どっちだ。命令なら命令拒否して銃殺を選択するが、この人の頼みは断れん。

 

「けっ、わかりました。最善を尽くしましょう。」

 

わかったぞ、この人は理解して両方言ったんだ。セコイな。

 

「ありがとう、ウォルター。そういうことだ、コーネリア特務大尉。」

「わかりました。」

「では――これより、帝国軍野戦任官を執行する。」

 

かたっ苦しいのは嫌いだが、こればっかりはしょうがない。

 

「本艦の艦長、及び副長の作戦遂行能力の完全喪失を確認。この事態は全部隊の安全に対する看過できない脅威と認定する。」

 

静かに、淡々とコーネリア特務大尉は述べる。

 

「よって帝国軍軍規・非常時大権条項、7-アルファに基づき、緊急事態を宣言する。」

 

AIの非常事態宣言の前例は存在するのだろうか?

非常事態において、AIは無制限にその権限を行使できるのか?

 

「非常事態を認識し、次期指揮官の指名及び必要な権限を付与する。ウォルター・フェン中尉。貴官の帝国への忠誠、類稀なる武勇、そして極限状況下における冷静な判断能力に深甚なる信頼を置き――」

 

やっぱり嫌かもしれない。下手したら銃殺刑だ。

 

「『モイクス・カルヴス』艦長、及び隷下全分遣隊の最高指揮官の任をただちに引き継げ」

「緊急事態及びその必要性を認識し、本日付で貴官を帝国軍海兵隊大佐に任命する。」

 

選択肢なんてなかった、いつもそうだ。

でも俺は知っている、これが最善の策だ。俺は信じた。

 

「……受領する」

「了解しました。では、大佐。最初の御命令を。」

 

敬礼するコーネリア特務大尉のアバターに答礼しながら言う。

 

「つっても何するんです、少佐ドノ。」

「あ?あぁ、そろそろフィロパトルが起きるだろう、バイタルチェックだ。」

 

彼女は光学迷彩を抜いて触ってきた。DNAでも何かわかるかもしれないしな。

 

「なるほど、ではコーネリア特務大尉、お願いします。」

「了解した、もういいぞ。ウォルター。」

 

え?俺、コーネリア特務大尉にウォルターなんて呼ばれる義理あったっけ?そういう事か。

 

「あんたらグルか!」

「今更ですか?」

「ま、そういうこった。」

 

俺の叫びは朝焼けの空に消えた。

 

 

 

「メンタル・バイタルともに異常なし、気になる箇所が一点だけ。」

 

コーネリア先生の往診の結果を聞く。その気になるところだけでいいんだよ。

 

「彼女は体内に次元連結点を持っている。つまり、体内から無限のエネルギーを取り出せるわけです。」

 

は?次元連結?宇宙が滅ぶぞ。

 

「何故安定しているんです?」

「わからない、それしか言えません。彼女自身も気づいていないようです。」

「それから、微弱な重力波を常に発信しています。これを無意識的にレーダーとして使ったのなら光学迷彩を破れます。」

「重力波?じゃあ母艦への攻撃との関連性は?」

「あの攻撃でメインフレームが損傷して残ったデータは少ないですが、類似点はあります。ですがそれほど大きな重力波ではありません。」

「謎は深まるばかり、ですか。」

「彼女らホモ・スペリオルがいれば無限のエネルギーを手にできます。」

「そのスペリオルってのは?」

「新人類……彼女らをそう呼称しようと考えました。」

 

なんでだ?彼女は人類とは関係ないだろう。では人類の名を冠するのは不自然では?

しかしそれにしては身体的特徴の一致点が多すぎる。新人類と呼称してもそこまでおかしくはないか。

 

「わかりました、留意しておきましょう。引き続き調査を続行せよ?してください?」

「せよ、で大丈夫ですよ大佐。了解しました。」

 

 

 

「エドワード少佐ドノ、データを送ります。」

「悪かったって、そうむくれんなよ。」

 

これはささやかな復讐であり、嫌がらせだ。とくと味わえ。

 

「自分は大佐という階級に不満を抱いているのではありません。少佐ドノに信頼を置かれていないという事実に不満を抱いているのです。」

「信頼しているからこうなったんだよ。許せ。」

 

そんなことは知っている。だから気に食わん。

 

「わかりました、次回からはちゃんと相談してください。少佐。」

「それは命令か?推進剤精製機はできたぞ、降下艇の融合炉を流用した。」

 

コイツゥ!やり直しじゃないか!

 

「命令であります、少佐ドノ。」

「はいよ、命令なら仕方ないな。」

「勘弁してください、俺の身体が持ちません。」

「わかってるよ、ハンスもいるし、気楽にな。あいつのケアもお前の仕事だぞ。」

「そういう事なら様子を見に行ってみますか。」

 

 

 

「ハンス!ハンス・シュトレロヴ少尉!」

「はい!なんでしょうか?」

「今は何をしていた?」

「降下艇の分解をしております!」

 

エド少佐の指示か。あの人も人使いが荒いよ、全く。

 

「固くなるなよ?昔な、人類が鉄器ってものを使ってた頃の話だ。」

「はい、その話が何でしょうか?」

「そう急ぐなってことだ。鉄は焼き入れ過ぎると折れやすくなる。焼きを入れるのなんて表面だけでいいんだ。気楽にいこうぜ。」

「は、はい!了解であります!」

「だ、か、ら、そういうとこだぞ。」

「サー!イエッサー!」

 

流石は士官学校主席だ。ジョークのセンスも首席だな。まぁジョークが言えるなら大丈夫だろう。

さて、拠点の構築も粗方できた。降下から丸々1.5日くらいか、いいペースだ。

次は東の居住地にフィロパトルを連れて行ってみるか。情報収集だ。

 

 




不定期更新の極みです。更新頑張ります。
今日は寝ます。おやすみなさい。
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