銀河辺境戦記 〜鋼鉄の使徒と剣の惑星〜 作:モイクス・カルヴス
一時間弱走りぬいてヴォルシニィに到着した。
精神的にも肉体的にも少し疲れながら、石造りの荘厳な雰囲気の門へたどり着いた。
「お前、ハンス・シュトロレヴ少尉か?」
「え?そうでありますが」
トサカを頭に乗っけた人からいきなり尋ねられた。
「やはりな。早く行け、酔いどれ熊亭ってとこにいるぞ」
「あ、ありがとうございます!」
隊長たちが話を通していたのか?
同時に位置情報が送られてくる。かなり近いな。
メッセージも送られてきたぞ?
(メシは戦闘糧食並み、警戒されたし)
うん、まぁしょうがないよ。
* * *
酒場の一角にて、だ。
木のコップを交わしながら雑談をする。
「ハンスも来たことだし、明日はロムルスへ向かうぞ」
「馬は私が手配しましょう。他に必要なものは?」
「無いだろ、美味い飯ぐらいだ」
「私もウォルターがいれば大丈夫」
そうだなぁ、頭数が欲しいな。
フィロにコンバットスーツでも着させてみるか?
いや、オムニなしの訓練なしには危険か。
いっその事帝国軍入れちまおうかな。
「ハンスはいくら持ってきたの?」
「知らん、まぁ金貨が数百枚くらいだろ」
「それだけあれば土地が買えるわ……」
「多くて困るこたぁ無い!」
「それはそうね」
うし、ハンス合流まで、3,2,1。
「ハンス少尉、ただいま到着しました!」
「お疲れさん、荷物をくれ。あと飯を食え」
「自分は保存食がありますので……」
「いいから食え、お〜い!さっきのもう一個だ!」
「はいよ!」
クククッ、お前も味わうんだなぁ!
ふざけつつも荷物は見る。
コンバットスーツは無いもんだと思っていたが、エド少佐が用意してくれたようだ。
お、レーザーライフルもあるのか。
これだけあれば充分だろう。
ライフルをケースに入れたまま、ストラップに肩を通す。
「ハンス、どうだ?」
凄く渋い顔をしたハンスをおちょくる。
「凄く、美味しいです」
店主の耳が動いた。
ワインが1本ハンスの前に置かれる。
「新人の門出を祝って!」
俺が代わりに乾杯しようとするとハンスが言い返してきた。
「自分のです!」
部下のクセに!
まぁいい、この調子ならほっといて大丈夫だろう。
「さて、先に寝るぞ。フィロはどうする?」
さっきから酒を口に運びながら微笑んでいるフィロに話を振る。
「ご一緒しましょう。酒場で私を独りにするおつもりで?」
グハッ
「はいよ、上行くぞ。ハンス、おやすみ」
「自分も食い終わったら行きます。おやすみなさい」
「ハンス、ゆっくり食べていいのよ」
「は、ではお言葉に甘えて」
* * *
昨日はひどい目に遭った。
フィロの質問攻めだ。
故郷の事、帝国の事、俺の昔話。
にしてもこの街の朝は早いな。
既に人が行き交い、話し声が響く。
ロマンチックな雰囲気だな。
「おはよう、ウォルター」
コンバットスーツを着終わった所でフィロに声をかけられる。
「おはようさん、ハンスは?」
「そういえば見ないわね。散歩かしら?」
「ま、通信できるから後でもいい。下行くぞ」
下に降りると、朝から飲んでいるハンスを見つけた。
「ハンス!なにやってんだお前!」
「ゆっくり飲めというご命令だったので」
「そういう事じゃないだろ……」
「まぁいいじゃないウォルター」
フィロは海兵隊のノリに慣れてきてないか?まだ数日だぞ?
さて、円卓を囲んで作戦会議だ。
「ハンスは動けるな?買い物の荷物持ちだ。フィロ、必要なものは?」
「食料と防寒具、商人か旅人らしいマントも必要ですね。全て市場で買えるでしょう」
「ま、適当でいいだろ」
「私は少し用事がありますので。そうですね、正午にここで合流しましょう」
「了解。ハンス、行くぞ」
席を立って店主に青銅貨を投げる。
「まずは革製品ですか?」
「そうだな、店から探すぞ」
自分で言いながら店の外に出て気づいた。
どこで買えばいいんだ?
迷いながら工房のような建物に入った。
薄暗い店内には酸っぱい油の匂いがする。
「おーい、誰かいないのか?」
「いるよ、なんだ」
ぶっきらぼうな返事と共におっさんが出てきた。
カウンターの向こうは工房のようだ。
「防寒具用のマントと水袋、あと適当になんかくれ」
喋りながらカウンターに銀貨を数枚置く。
「旅人かい?マントはそっから選んでくれ」
「ハンス、選んどけ」
「了解」
店内には様々な品物がディスプレイされている。
無言で手渡された水袋を受け取り、さらに銀貨を払う。
「世間知らずは足元すくわれるぞ」
よそ者は気を付けろってことか?
「そうだな、やってみるか?」
「いや、遠慮しておこう」
「ロムルスまで行くんだ」
「そうか、冬場は気を付けろよ?ま、あんたらなら大丈夫だろう」
「何故そう思う?」
「そんな服を着ている。ましてや態度に余裕がある。馬鹿には見えねぇな」
「流石は商売人、見る目があるな。ま、またなんかあれば世話になるよ」
「はいよ」
「ハンス、行くぞ」
ハンスを急かして店の外に出る。
あと数時間で食料品を調達しなければだな。
市場の場所を聞けばよかったかな?
ちょこちょこついてくるハンスを見ながら思った。
「政治はボロボロ、経済もよくはない。でも生活は安定しているのか?」
「は?」
首をかしげるハンスを見て思考がちょっと進む。
インフラ整備に経済政策、社会福祉まである。
そのくせ蒸気機関すらない。まるであべこべだな、この世界は。