呪いの王がBLEACH世界に足を踏み入れる   作:ジェネリックたい焼き

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博壱様からのリクエスト話です。リクエストしてくださりありがとうございます。

この作品は久しぶりなのでおかしな点があるかと思いますが、ご了承ください。後、キャラ崩壊してます。

それではどうぞ。


おまけ
出会い


 とある日、宿儺はユーハバッハを連れて外に出ていた。

 心なしかその顔はやつれており、整った顔に影が落ちている。

 

「浦原喜助め……縛りで仕方ないとはいえ、遠慮というものを知らんのか奴は」

 

「……何があった」

 

 ユーハバッハが首を傾げながらこちらを覗き見る。

 ユーハバッハは宿儺と浦原が結んだ縛りの内容を知らない。

 

「俺は浦原喜助の研究に協力するという縛りを結んでいてな、それでこのザマだ」

 

「……なるほど、確かに奴ならば遠慮は無いだろうな。それも大義名分を得ているのならば尚更のことだ」

 

 納得したという表情で再び前を向き、歩き始めるユーハバッハ。

 宿儺ならば死ぬことは無いと信頼されているのだろうが、あまりに無関心な態度に宿儺はイラッとする。

 

「………………」

 

 そして無言のままユーハバッハの背にドロップキックを――決めたかったが、縛りの影響で他者に危害を加えられない宿儺は黙って歩く他なかった。

 

「(反撃すら出来んとは……我ながらつくづく馬鹿な縛りを結んだものだ)」

 

 あの時の己の判断を恨みつつ、宿儺はユーハバッハの後に続く。

 

「(そういえば、裏梅から使いを頼まれていたな。ついでに買って帰るか)」

 

 裏梅からなんと言われたか思い出そうと記憶を探っていると、ふいに前を歩くユーハバッハにぶつかった。

 

「っ、おいユーハバ――」

 

 考えごとをしていたにも関わらず文句を言おうと顔を上げると、視線の先にはオレンジ髪の少年。

 

 そして少年と手を繋ぐオレンジ髪の青年と、胡桃色の髪を持つ美女。

 

 宿儺には彼らに見覚えがあった。

 

「――黒崎一勇」「――黒崎一護」

 

「「……ん?」」

 

 二人は互いに顔を見合わせる。

 

 そして宿儺が口を開こうとした瞬間――元気のいい声がそこらに響いた。

 

「あ〜!おじさん!!」

 

 宿儺は顔を歪める。

 

「チッ、面倒なことになった。ユーハバッハは、離れる……ぞ……」

 

 宿儺がユーハバッハの手を取り背を向けた瞬間――目の前に黒崎一勇が居た。

 

「おじさんおじさん!また会ったね!今度こそおじさんのこと教えて!」

 

 宿儺は凄く嫌そうな顔を一勇に向ける。

 

 しかし、一勇は変わらず純粋な瞳を向けてくる。

 

 ユーハバッハは空気を読んだのか、気配を消した。

 面倒事を避けるためか、それとも愉悦を得るつもりかは判断がつかないが少なくともこの場において役に立たないことは分かった。

 

 兎に角、宿儺はユーハバッハを巻き込まんと口を開く。

 

「おいユーハ「一勇!」……あぁ」

 

 宿儺は肩を落とす。前方には黒崎一勇。背後には黒崎一護。

 

「(詰みだ……)」

 

「子供がすいません」

 

 いち早く一勇の元に駆け付けた織姫が、息を切らしながらこちらに謝罪をしてくる。

 

 宿儺からしてみれば謝罪など良いので早く解放してもらいたい。

 

 何かの拍子に尸魂界の面々にバレでもしたら、処刑まっしぐらだ。

 

 原作を読んだ限り、中央四十六室の老害共が誰かしらの隊長を送り込み、確保しようとしてくるだろう。

 

 今の指一本分の力しかない宿儺に彼らを退ける力はない。

 

「いえいえ、お気になさらず結構です。まだ子供ですから、こういうことは誰にでもあります」

 

 故に、猫を被る。

 

「ぶふっ……」

 

 後ろからユーハバッハの笑う声が聞こえるが務めて無視する。

 

「でもそんな……」

 

 今一勇は離れた所で一護叱られていた。内容までは分からないが、おおよそのことは検討がつく。

 

「(霊力を使ったことを怒られたのだろう。浦原喜助から貰った道後のお陰で、俺達は一般人にしか見えんはずだからな)」

 

「いえ、本当に結構ですので。では」

 

「……おじさんどっか行っちゃうの……?」

 

 織姫の横を通ってスッと立ち去ろうとした瞬間――目の前には眉尻を下げ涙を溜めた黒崎一勇。

 

「ぐっ……」

 

 本来ならば無理にでも突き放したい。だが、ここには人の目もある。

 

 どんな小さな騒ぎも見逃さない一般人達が少しずつ集まり始めていた。

 

「一勇、無理強いは駄目だ。すまねぇな息子がわがまま言っちまって」

 

「いえいえ。それでは失礼しま「でもおじさん約束したじゃん……」…………」

 

「約束?」

 

「うん。また会った時おじさんのこと教えてくれるって言ってた」

 

「また……?」

 

 一護の顔が険しいものになる。そしてこちらの顔を凝視し始めた。

 

 ここで宿儺は思い出す。

 

「(そういえばそこの女の能力で一度俺の姿を見られていたな……ちっ、面倒なことになった)」

 

 宿儺は静かに呪力を練り始める。戦闘は出来ない、つまり出来るのは――

 

「行くぞ!ユー…………着いてこい!」

 

 ――呪力を用いての逃亡。

 

「あっ、待てこら!」

 

 ユーハバッハの霊圧は既に記憶されている。

 

 故に宿儺がユーハバッハを担いで行かなければならないのだが――

 

「おい。どこ行くつもりだ」

 

 指一本分の力では黒崎一護から逃げ切れる訳もなく……。

 

「ちっ、つくづく運が悪い」

 

 

 

 

 

 

「それで、話を聞かせてもらおうか」

 

 黒崎家にて、机を挟んでの対面。

 

 今、宿儺の前には死神になった黒崎一護がいる。その横には井上織姫。そして彼女の膝上に、黒崎一勇。

 

「話すことなどない」

 

「だったら京楽さんに相談するけど良いのか?」

 

「ぐぅ…………」

 

「それとさっきから黙ってるあんたもだ。こいつと一緒に居るってことはなんかあんだろ」

 

 そう言って一護が目を向けたのはユーハバッハ。

 そんな彼は涼しい表情を貫いているが、内心では焦っていように見えた。

 

 からかってやりたい衝動に駆られるが、今はそんな事をしている暇は無い。

 

「(さてどうするか……俺がこの前の侵入者と同一人物だという事はバレたと思っていいだろう。ここからは俺達の正体を如何に隠し通すかが問題だな)」

 

 宿儺は深く考え込む。

 

 部屋の中に静寂が訪れ、一勇でさえ口をつぐみ、事の成り行きを見守っていた。

 

 そんな中――その静寂を破るように軽快な声が響いた。

 

「いや〜大変そうっスね〜」

 

 全員が声の主へ弾かれたように視線を向ける。

 

 そこに居たのは、窓に腰掛け軽快な笑みを浮かべる浦原喜助。

 

 あまりにも場違いな雰囲気に宿儺は毒気が抜かれる。

 そしていち早く口を開いた。

 

「遅かったではないか浦原喜助」

 

「すいませんオモシロ――ではなく用事があったんスよ」

 

「まぁ良い。で、どう説明するつもりだ」

 

 宿儺が指を差したのは口をあんぐりと開ける一護。

 織姫は両手で口を覆い信じられないといった表情をみせていた。

 

 そんな二人とは対照的に、一勇は状況が理解出来ていないように見えた。

 

「ん〜まぁ、端的に言っちゃうと――」

 

 ここで宿儺に悪寒が走る。

 

 このままこの阿呆(浦原喜助)を喋らせてはならないと直感が告げていた。

 

「浦原喜助ェ!!!」

 

 刹那――全身を呪力で強化し駆け出す。

 

 狙いは浦原の口。それだけを塞ごうと進む――が、一歩遅かった。

 

「――こっちの彼女が宿儺サンで、あっちの女性がユーハバッハサンっス」

 

 宿儺がそのニヤけた口を塞いだのは、全てを言い終えた後だった。

 

「…………はぁあ!!?!??!」

 

 一拍置いて、一護の絶叫が部屋中に響き渡る。

 

「何言ってんだ浦原さん。こいつらがあの宿儺とユーハバッハ?!二人はあの戦いで死「ちょっ!?声が大きいっスよ黒崎サン!」――あっ、あぁ。すまねぇ」

 

 浦原の圧に負け、素直に謝罪の言葉を口にする一護。

 しかし、すぐに違和感に気付いたのか再び声を張り上げた。

 

「――じゃねぇよ!?説明はしてくれよ!!せ・つ・め・い!!」

 

「……あれは、雨の降る日だったっス」

 

「そういうのいいから!」

 

「……まぁ、簡単に言えば宿儺サンを蘇らせました。あっ、でも他者に危害を加えられないようにしてるから大丈夫っス」

 

「なら安心か……じゃねぇよ!――――」

 

 ここから一護と浦原の口合戦が始まった。

 

 二人のやり取りが長くなることを察した宿儺は改めて椅子に座り直した。

 それを見た織姫が席を立ちどこかへ消えていく。

 

 一勇はツッコミに回る自身の父を物珍しそうに見ていた。

 

 そんなカオスな現場で宿儺はユーハバッハに話しかける。

 

「そういえば、お前は生き残りの滅却師と会おうとは思わんのか?」

 

「……思わんな。今の私は皇帝ではない。今更奴らをどうこうする気などありはせぬ」

 

「そうか」

 

「そういう宿儺も友達……いやすまぬ。なんでもない」

 

「お?喧嘩なら買うぞ?」

 

「ふっ……」

 

 今、宿儺の脳内で開戦の笛が鳴った。直接危害を加えるような真似は出来ない。

 

 故に、精神攻撃を食らわさんと口を開く――前に目の前に緑茶と茶菓子が置かれた。

 

「良いのか?敵だぞ」

 

 織姫はお盆を胸に抱きかかえ、静かに言葉を落とした。

 

「確かに……沢山人を殺した人達と仲良くするのはいけないことかもしれない。けど、私にあなた達を断罪する権利も勇気もないから………」

 

 優しい笑みをこちらに向けてくる織姫。

 そして、その笑みは次第に自信満々な表情に変わっていく。

 

 そして、腕を曲げ小さな力こぶを作ってこう言い放った。

 

「でも!黒崎君達の敵になるなら私は戦います!だって私は黒崎君の妻だもん!!」

 

 声高らかにそう放った織姫。

 

 次の瞬間――騒々しかった室内が一瞬にして静まり返った。

 

「……はぇ?」

 

 その異変に織姫が間抜けな声を漏らし、ブリキのような動きで周囲に目線を向ける。

 

 数秒遅れて、彼女の顔はリンゴのように赤く染まり出した。

 

「あっ、あっ、あっ」

 

 一護達のじゃれ合いも嘘のように止まり、浦原に至っては一護の脇腹を肘でつついてからかい、一護にチョップを食らっていた。

 

「あぁぁぁ〜〜〜/////」

 

 ――ピンポーン

 

 織姫の顔から湯気が立ち上り始めた時、黒崎家のチャイムが気まずい空気を打ち破った。

 

 織姫の体がビクリと震える。

 

「わわ、私が出てくるね!!」

 

 短くそう言い残し、慌てたように玄関へと向かっていく織姫。

 

 時々体を壁にぶつけたような鈍い音がこちらにも聞こえてくる。

 

「賑やかな家だ……」

 

 織姫を目で追っていたユーハバッハがポツリと、そう呟く。

 

「そうだな……」

 

 宿儺もそれに同意するように頷く。

 

 そうして暫く騒動の余韻に浸っていると、横から一護が声を掛けてきた。

 

「あんたらが宿儺とユーハバッハだってのは分かった。宿儺に至っては他人に危害を加えられないことも」

 

 真剣な表情でこちらを見つめてくる一護。

 

「――けど、あんたらを易々と見逃す訳にもいかねぇ」

 

「だったらどうする。護廷にでも突き出すつもりか?」

 

「………………」

 

「そう追い詰めることを言うな宿儺――お前だって分かっていよう」

 

「……ちっ」

 

 ユーハバッハに諭され宿儺は渋々そっぽを向いた。

 辺りに気まずい雰囲気が流れる。

 

 浦原は頬をポリポリとかき、宿儺とユーハバッハ、一護に、視線を流していた。

 

 尸魂界では大罪人となっている宿儺とユーハバッハ。

 その内の一人を受肉させ、間接的にもう一人の復活も手伝ったとなれば浦原もタダではすまない。

 

「(まぁ、奴がそう簡単に捕縛されるとは思えんが)」

 

 宿儺は間抜けな顔をしている浦原に目線を固定する。

 そして、大きく息を吐いた。

 

「はぁ……連れて行け。大人しくついて行ってやる」

 

 宿儺が両手首をくっ付け前に突き出す。

 一護は一瞬、呆気にとられた顔をする。そして、何やら複雑そうな顔で宿儺の腕に手を伸ばし――「あの、宿儺さんに来客が……」

 

 すんでのところで織姫の声が耳に届いた。

 

 宿儺は織姫に顔を向ける。彼女は困ったような顔をして首を傾げていた。

 

 そこで何か複雑な事情があるのだろうと察した宿儺。

 

「おい。俺を捕縛するのはその来客とやらに会ってからでも遅くはあるまい」

 

 宿儺は一護を見上げる形でそう語り掛ける。

 一護も同感だったのだろう。突き出した手を引っ込め頷いた。

 

 宿儺は織姫の横を抜け玄関に向かおうと歩みを進めた時、背後から声が掛かった。

 

「逃げたらとっ捕まえてやるからな」

 

 自信が滲み出た不遜な態度。宿儺は一瞬振り返り挑発的な笑みを返し、そのまま玄関へと向かう。

 

 明かりが無くヒンヤリとした廊下をゆっくりと進む。

 

 その道中、宿儺は考える。

 

「(来客か。どうも腑に落ちん。俺に知り合いななどいたか?猫の女ならばもっとずけずけと入ってくるはずだ。裏梅も俺を呼び出すのではなく自ら来ようとするはず)」

 

 そんな違和感を抱えつつ、宿儺はドアの前まで辿り着いた。

 

 そしてドアノブに手をかけ扉を押し上げようとした瞬間――宿儺の背に悪寒が走る。

 

 ――違和感

 

 強烈な違和感。扉を開けてしまえば何がとてつもない面倒事に巻き込まれそうな予感があった。

 

 ――違和感

 

「(思えばあの女が来客の主を伝えなかったのはなぜだ。口止めされていた?ならば一体どうして」

 

 ドアノブを少し捻ったところで宿儺は動きを止める。

 そして、静かに身を引いた。

 

「(彼奴らには適当に説明すればいいだろう)」

 

 そして振り向き、ユーハバッハの元へ帰ろうと足を一歩進めた時――ドアノブが捻られる音がした。

 

 ――鍵は既に織姫が開けっ放しにしている。

 

 そしてドアが開いたのか、外の冷たい空気がこちらにも流れ込んでくる。

 

「あら?どこへ行くのですか?」

 

 凛とした美しい声が宿儺の耳に届く。

 そしてそれは今、宿儺が会いたくない人物上位三人に該当する一人だった。

 

 その人物がゆっくりと近付いてくる。

 

 そして己の肩を掴み、静かに振り向かせられた。

 

「貴方は……」

 

 目線の先が整った顔に埋め尽くされた。

 

 ――宿儺はその人物を知っている。

 

「人違い……?」

 

 ――戦うことしか頭になく、己が殺したと思っていたはずの狂人。

 

「いえ、そんなはずありませんね」

 

 女が微笑みをこちらに向けてくるが、それは決して慈愛からくる笑みではない。

 

「久しぶりですね――両面宿儺さん」

 

「……………………あぁ」

 

 

 

 

 

 

 今黒崎家には新たな来客者が居た。

 

 名を卯ノ花烈。

 

 そんな彼女を前に宿儺は聞かねばならぬことがあった。

 

「お前はあの時……確かに殺したはずだ」

 

「ええ。確かに私は貴方の網目状の斬撃に当たりました」

 

「ならば何故生きている」

 

「簡単なことです。貴方に胴体を両断された瞬間、傷を癒すことのみに全神経を集中させただけ。何も難しいことではありません」

 

「………………」

 

 宿儺は顎に手を当て考え込む。

 

「(……確かに、原作でも両断された他者を治癒していた描写はあったか)」

 

 宿儺は改めて眼前の女を注視する。

 

 彼女の立ち姿からは隙が伺えず、前戦った時よりも気配が研ぎ澄まされているのが分かった。

 

 そんな彼女は相変わらず何を考えているのか分からない微笑みをこちらに向けてくる。

 

 それに対してなんとも言えぬ悪寒を覚えた宿儺は、卯の花に先を促す。

 

「それで、何の用だ。わざわざ俺を呼びつけてまで何をしに来た」

 

「それは……貴方と永遠に殺し合いをしに来た……と言いたいところですが、今の状態では叶わぬ願いのようですね」

 

「あぁ。忌々しいことに俺は他者を害することが出来ん。そもそも、指を一本しか取り込めていないからな」

 

「そうですか…………」

 

 卯ノ花が己に舐めるような視線を向けてくる。髪の毛からつま先まで一通り視線が動き、最後に視線が合った。

 

 そして彼女の口が薄く弧を描くのが分かった。

 

「ならば、再び鍛錬すれば問題無いでしょう。さぁ、時間が惜しいので始めてしまいましょう。それと並行して、貴方を枷から解き放つ方法も調べなければいけませんね――――」

 

「は?いや待て」

 

 宿儺は早口で唱えられたその言葉に動揺を隠せない。

 制止の言葉を口にするも彼女から溢れ落ちる言葉は止まらない。

 

 恍惚とした表情を浮かべながら、高速で何かを口にする卯ノ花。

 

 最早聞き取ることは不可能に近いが、断片的に聞き取れた言葉を繋ぎ合わせると、どうやら彼女は今後の生活を妄想しているようであった。

 

 ――朝から晩まで斬り結びましょう。

 

 だの。

 

 ――鍛錬の方法は共に考えましょう。

 

 だの。

 

 他にも様々な妄想が繰り広げられていた。

 

 その理解し難い光景に宿儺は一歩後ずさる。

 

「――あら?どこへ行くのですか?遠慮はいりません。既に手は幾つか考えてあります。さぁ、私と共に行きましょう」

 

 卯ノ花が笑顔のままこちらに手を差し出してくる。

 宿儺はその手を取れば、地獄行きになるであろうことを確信していた。

 

「断る」

 

 故に一刀両断。

 

 卯ノ花は一瞬体を硬直させるも、何も聞いていなかったかのように、足を前に進め、宿儺の腕を優しく握った。

 

「では。行きましょう」

 

 有無を言わさず微笑んだまま黒崎家のドアを潜ろうとする。

 

「くっ……」

 

 宿儺も抵抗するも、やはり指一本分程度の力しか持たない宿儺では、大した効果が無く。

 

 このまま地獄へ行きかけた瞬間――廊下の奥から救世主が現れた。

 

「おい。遅くねぇか…………………って卯ノ花さん!?」

 

 廊下の奥から姿を見せたのは黒崎一護。

 彼は、宿儺と卯ノ花を一瞬見てこちらに駆け寄ってくる。

 

 そして両者に交互に視線を移し、やがて納得したかのように頷いた。

 

「なるほど。卯ノ花さんは尸魂界から派遣されたってことか?」

 

「…………ええ。まぁそのようなものです」

 

「だったらもう一人いるんだわ。そいつも頼んでいいか?」

 

「……一人程度だったら問題ないでしょう。その方を連れて来て下さいますか?」

 

「おう」

 

 

 

 

 

 

「……捕まったか宿儺」

 

 数分後、一護に連れられ現れたのはユーハバッハ。

 

 ユーハバッハはこの状況を見て瞬時に悟ったのだろう。

 逃げることもなく卯ノ花の前に立ち止まる。

 

「私も連れて行け卯ノ花烈」

 

「貴方は人間のようですがお名前は?」

 

「ユーハバッハだ」

 

 その名を聞き卯ノ花が目を見開く。

 

「数ヶ月前、貴方の反応が突如として現れ、忽然と消えたと聞いていましたが、まさか蘇っているとは……」

 

 卯ノ花はそう言いながらユーハバッハの全身に視線を向ける。

 そして続けて口を開いた。

 

「では、貴方も尸魂界へ連行します」

 

「あぁ」

 

 

 

 

 

 

「で、なぜ俺はまだ生きている」

 

 宿儺は目の前の人物を睨みつけた。

 今、宿儺が居る場所は卯ノ花の私室。

 

 机を挟み向かい側にいる彼女は呑気に湯呑みを傾けていた。

 

「(俺は尸魂界にとって大罪人となったはず。それに俺には藍染惣右介のように不死ではない)」

 

「そうだ。私も分からぬな。世界を滅ぼしかけた我らがなぜ生かされている」

 

 卯ノ花は茶を飲むのを止め、静かに机へ置き話し始めた。

 

「簡単なことです。脅しただけですよ。それも更木隊長と一緒に」

 

「…………何故そこで更木剣八の名が出てくる」

 

「彼にはある条件を出したらすぐに協力を取り付けることが出来ました」

 

「……まさか」

 

「ええ。そのまさかです」

 

 卯ノ花はこちらを見つめながらニッコリと微笑む。

 

 その条件を嫌でも察せてしまった宿儺は、大きく溜め息を吐く。

 横ではユーハバッハが宿儺の肩をポンッと叩いていた。

 

「流石の中央四十六室の方達も剣八と元剣八に反旗を翻されたくはなかったのでしょう」

 

「そうか………………」

 

 折角死を免れたのにも関わらず、宿儺の気分は重いものだった。

 思わず頭をユーハバッハの肩に預けてしまう。

 

 宿儺はこれからの未来を想像する。

 

 ――楽しいですね貴方。

 

 ――まだまだこれからだろ!!

 

 既に戦いから身を引いた宿儺としてはあまり想像したくない未来であった。

 

「はぁ…………」

 

 宿儺は天井を仰ぎみながら大きく溜め息を吐く。

 

「(何故こんなことに……)




恋する乙女は最強。

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